歯が茶色くなるのはどうして?5つの原因と対処方法を解説

歯が茶色くなるのはどうして?5つの原因と対処方法を解説

「歯は白いもの」というイメージはありますが、実際のところはどうでしょう? 茶色っぽく変色することも珍しくありません。実のところ、「歯=白い」というのは理想像です。現実に歯が真っ白という方は、そんなにいません。

しかし、なぜ歯が茶色くなってしまったのでしょうか? 原因がわかれば、改善する方法もありそうなものです。そこで、この記事では「歯が茶色くなる原因」をまとめることにしました。

この記事の目次

1.着色汚れ(ステイン)で茶色くなる…!

着色汚れのつきやすい食べ物・飲み物を口にしていると、だんだん歯が茶色くなっていきます。歯に付着する着色汚れのことを「ステイン」といいます。

ステインの原因になる飲食物・嗜好品
コーヒー

紅茶

赤ワイン

ポリフェノールをたくさん含んでいるので、着色の原因になります。ポリフェノール自体は健康に良い成分なのですが、歯が茶色くなる原因にもなるのです。
チョコレートカカオポリフェノールが豊富で、着色汚れになりやすい食べ物の1つです。コーヒーや紅茶と一緒に食べる人も多いと思いますが、「歯の着色」という意味ではあまり良くない組み合わせです。
ネギ

ニンニク

色の濃い食べ物ではありませんが、硫黄(いおう)を含んでいます。硫黄は、色素が歯に付着するのを助長する働きがあるのです。
タバコ食べ物とは少し違いますが、代表的な着色の原因です。コーヒーを飲みながらタバコを吸う人は、特に歯が茶色くなりやすいので注意が必要です。

1-1 着色汚れのメカニズム

歯の表面には「ペリクル」という膜があります。歯の表面を保護する役割を持っています。ただ、ペリクルは「歯が茶色くなる原因の1つ」でもあるのです。

食事をしたとき、口の中が酸性になってペリクルが溶け出します。食後、30分くらいで再生するのですが、このときに「着色の原因物質」と一緒になって歯を覆うのです。ペリクルが再生するとき、着色汚れを歯に付着させてしまう…というわけです。

早めに歯磨きをすれば問題ないのですが、時間が経つと、着色汚れが表面で固まります。固まってしまうと、もう歯磨きで簡単に取り除くことはできません。この状態になった着色汚れが「ステイン」です。

1-2 ステインで茶色くなった歯を白くするには…?

自宅でできるセルフケアとしては、「ステインを除去する歯磨き粉」があります。

◆ポリリン酸ナトリウム

◆ピロリン酸ナトリウム

◆メタリン酸ナトリウム

◆ポリエチレングリコール

このような成分を配合した歯磨き粉が、いわゆる「歯を白くする歯磨き粉」です。ただし、すぐに白くなることは期待できません。根気よく使い続けて多少は白くなるかも?、といったところでしょう。
もし、すぐに歯を白くしたいなら、歯医者さんでクリーニングしてもらうほうが効率的です。歯医者さんのクリーニング(PMTC)なら、1日でもとの白さを取り戻すことができます。

2.虫歯になって、茶色くなる…!

虫歯が進行してくると、歯が茶色くなってきます。最初は歯の一部分が白濁して、それから茶色くなり、最後は黒く変わります。虫歯が進行していくなかで、「歯の一部が茶色い」と感じる時期があるわけです。

2-1 虫歯のメカニズム

歯の表面(エナメル質)は、虫歯菌の酸などで容易に溶けはじめます。でも、最初のうちは、エナメル質を構成している成分(カルシウム、リン)が溶けるだけです。歯に穴があくわけではありません。カルシウムやリンが溶けた段階を「脱灰(だっかい)」と呼びます。歯の表面が白濁した状態です。

カルシウムとリンが溶けた(=脱灰)だけなら、まだ虫歯ではありません。きちんとセルフケアをすれば、進行は止まります。しかし、さらにエナメル質がダメージを受けると、物理的に穴があいてしまいます。

歯の一部が茶色くなっているのは、「エナメル質に穴があきはじめた段階」です。つまり、すでに虫歯になっています。そのまま悪化を続けると、穴が広がって黒くなり、「どこからどう見ても虫歯」という状態になるでしょう。

2-2 虫歯で茶色くなった歯を白くするには…?

すでに虫歯になっているので、歯医者さんで治療を受けるしかありません。表面が茶色くなった段階なら、十中八九、初期の虫歯(エナメル質う蝕)でしょう。今すぐに治療をすれば、それほど大がかりな治療にはなりません。

エナメル質に穴があいただけなら、表面を少し削って、歯科用プラスチックを詰めるだけで済みます。通院も1回で済むことがほとんどです。治療の跡も目立ちませんから、ぜひ、早めに歯医者さんを受診してください。

3.歯の神経が死んで、茶色くなる…!

神経が死んでしまった歯は、茶色っぽく変色することがあります。神経が死ぬ理由には、次のようなものがあります。

◆重度の虫歯

◆歯科治療で神経を抜いた

◆歯を強くぶつけた

神経は正式な名前を「歯髄(しずい)」と言います。歯髄は神経・血管などが通った組織で、歯に栄養を行き渡らせる…など「歯を生かす役割」をしています。歯髄が死んでしまえば、もう、その歯は「死んだ歯」になるのです。

3-1 死んだ歯が変色するメカニズム

歯の表面にはエナメル質があり、その内側には象牙質があります。象牙質にはいくつもの小さな管が通っていて、これを「象牙細管」といいます。死んだ歯が変色するのは、象牙細管の中に何らかの物質が入るせいです。

では、わかりやすくメカニズムを説明しましょう。

たとえば、歯をぶつけると歯髄で出血しますし、虫歯で炎症を起こすと歯髄の血液量が増えます。歯髄のまわりにどんどん血液が押し寄せて、その状態が解消しないと、血液の流入圧力で歯髄が死んでしまうのです。

「壊れた歯髄」と「余分な血液」は象牙細管に侵入します。そして、血液に含まれる鉄分が象牙質に色をつけて、黒っぽく、あるいは茶色っぽく変色させるのです。

3-2 死んで茶色くなった歯を白くするには…?

神経が死んだ歯を白くするには、いくつかの方法があります。「ずっと白くする方法」と「一時しのぎの方法」があるので、ニーズに合わせて選択してください。

クラウン修復
変色した歯を削り、上から「かぶせ物」をする方法です。白いかぶせ物をすれば、当然、見た目は白くなります。天然の歯と変わらない見た目を望むなら、自由診療のセラミッククラウンを使用することになるでしょう。費用はやや高額ですが、白い状態をずっと維持することができます。

インターナルブリーチ
歯の内側をきれいにしたあと、内部に漂白剤を入れてホワイトニングする手法です。「内側からのホワイトニング」と表現すると、わかりやすいでしょうか? インターナルブリーチをしてから普通の(外側からの)ホワイトニングをするとより白さを期待できるでしょう。

ただし、ホワイトニングの白さはいつまでも続くわけではありません。インターナルブリーチをしても数か月で色の後戻りがはじまり、数年かけて茶色に戻っていきます。作用が薄れるまでの期間には個人差がありますが、5年~10年で元の色に近づいてくるのが普通です。

歯のマニキュア
歯の表面を白く塗る方法です。表面をコーティングするだけなので、一時しのぎの方法になります。市販のマニキュアなら数時間~1日(要するに、歯磨きするまで)、歯医者さんで実施するなら1~2か月ほど持続します。

漂白剤によるホワイトニングができない妊婦さんにも適用できるので、結婚式など「せめて一時的にでも白くしたい」といったケースに向いています。

4.詰め物・かぶせ物が劣化して、茶色くなる…!

虫歯治療をしたときの「詰め物・かぶせ物」は、時間経過で変色することがあります。自由診療のセラミッククラウンはほとんど変色しませんが、保険診療の「白い詰め物・かぶせ物」は数年かけて黄色~茶色に変色するのです。

4-1 詰め物・かぶせ物の変色メカニズム

前歯の詰め物・かぶせ物には「コンポジットレジン」「硬質レジン」など白色のプラスチック樹脂が使われます。

しかし、レジンが白いのは最初の数年だけです。少しずつ唾液を吸って変色する性質があるからです。保険診療のレジンだと、5年くらいで黄色くなってきます。

また、自由診療の素材でも、変色するものがあります。セラミックの中でも安価な「ハイブリッドセラミック」は10年くらいで変色することも多いです。それはレジンとセラミックの混ぜ物だからです。

4-2 詰め物・かぶせ物を白くするには…?

詰め物・かぶせ物は人工物ですから、新しいものに交換するのが合理的でしょう。表面を磨けば多少はきれいになりますが、内側も多少は変色しているのが普通です。
レジンに「唾液を吸う性質」がある以上、一定期間で劣化することは避けようがありません。「保険診療の詰め物・かぶせ物は消耗品である」という視点に立つのが、現実的だと思います。

5.抗生物質の副作用で、茶色くなる…!

抗生物質にはいくつもの種類があり、そのなかに「テトラサイクリン系抗生物質」と呼ばれる種類があります。テトラサイクリン系の抗生物質には、歯を「茶色~黒に変色させる副作用」があるのです。

5-1 抗生物質が歯を変色させるメカニズム

テトラサイクリン系抗生物質は、金属と結びつく性質があります。そのため、歯の材料となるカルシウムに結びつくことがあるのです。歯に沈着したテトラサイクリン系抗生物質は、紫外線の影響でだんだん黒くなっていきます。

永久歯のもとが形成させるのは、8歳くらいまでの期間です。この時期にテトラサイクリン系抗生物質を用いると、永久歯が変色する恐れがあります。そのため、妊婦・授乳期の母親・小児には、テトラサイクリン系抗生物質の投与を避けるのが普通です。

でも、絶対に使わない…とは言い切れません。「副作用のリスクを考慮しても、病気を治療するために必要」と医師が判断すれば、テトラサイクリン系抗生物質を使用します。なので、今でも「抗生物質による歯の変色」が起こることはあります。この状態の歯を「テトラサイクリン歯」と呼びます。

5-2 テトラサイクリン歯を白くするには…

テトラサイクリン歯を白くするためには、複数の方法が存在します。それぞれ「白い状態がどれくらい持続するか」が異なるので、自分のニーズに合った方法を選ぶことが大切です。

クラウン修復
歯を全体的に削り、かぶせ物をする方法です。白いかぶせ物をすれば、当然、白い歯を手に入れることができます。ただし、自然な色合いを求めるなら「オールセラミック」と呼ばれるクラウンが必要です。自由診療になるので、かなり高額になる…というデメリットがあります。 

ラミネートベニア
歯の表側を少しだけ削り、白い板を貼りつける方法です。クラウンに比べると、歯のダメージが少なくなります。「正面から白く見えれば良い」という人には、ラミネートベニアのほうがおすすめです。

ホワイトニング
ホワイトニングをすることで、テトラサイクリン歯を漂白することは可能です。ただ、ホワイトニングの白さはいつまでも続くわけではありません。半年~1年くらいで、色が元に戻ってきます。白い歯を維持するためには、定期的にホワイトニングをする必要があります。ただ、歯を削る必要がないのは大きなメリットでしょう。

6.まとめ

歯が茶色く変色するのには、いろいろな理由があります。まずは原因を特定して、それから対処法を考えましょう。

ただ、多くの場合、歯が茶色くなる原因は着色汚れ(ステイン)です。日々の歯磨きはもちろんのこと、定期的に歯医者さんで着色を取り除いてもらうと良いでしょう。また、ホワイトニングでは歯の白くなり方には個人差があるため、一回の施術では希望の白さにならなかったというケースもあります。まずはご自分のイメージを歯医者さんに伝え、希望に合った施術方法を相談するのがおすすめです。

先生からのコメント

着色の中でもいわゆるステイン(外来色素)は歯科医院で比較的容易に取り除くことができますので、定期的な歯科受診が望まれます。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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