顎関節に異常が生じて、「顎が痛い」「顎が鳴る」「口を開けにくい」といった症状を感じる顎関節症。症状の程度は人によりますが、食事や会話に支障が出ることがあります。
この記事では、顎関節症に対して自宅でできるケアと、歯科医院で行われる治療法をそれぞれ紹介します。
どのような対応が自分の状態に合っているのかを知るためにも、症状が続く場合は歯科医院に相談しましょう。
この記事の目次
1.顎関節症を治療する方法
顎関節症には、軽度のものから重度のものまで、さまざまな状態があります。それぞれの状態によって必要な治療法も異なります。
1-1 自分でできる方法
「かたいものを食べたら顎が痛くなった」など、軽い症状であれば、顎に負担をかけないように過ごすことで症状が軽くなることもあります。
ただし、痛みが続く、口が開けにくい、食事に支障があるといった場合は、自己判断で放置せず歯科医院に相談しましょう。
生活習慣を見直しながらセルフケアを行うことも大切です。マッサージ、温める・冷やす、姿勢の見直しなどが自宅でできる主な方法です。
1-2 歯科医院で行える方法
自宅でのケアも大事ですが、顎関節症は原因や状態を確認することが重要です。
顎関節症は、顎の関節だけでなく、噛みしめ、歯ぎしり、姿勢、ストレス、筋肉の緊張など、複数の要因が関係することがあります。
歯科医院では、問診や診察を行い、症状に応じて治療法を選択します。
2.自宅でできる治療法
自宅でできる治療法は、顎関節症の原因となることがある歯ぎしり、食いしばり、噛み癖、姿勢の癖などを見直し、顎への負担を減らすことが中心になります。主な方法としては、以下が挙げられます。
2-1 マッサージ
顎のまわりの筋肉が緊張している場合は、顎のまわりをやさしくマッサージすることで、こわばりの軽減を目指すことがあります。
ただし、強く押したり、痛みを我慢して行ったりすると、症状が悪化することがあります。痛みが強い場合は無理に行わず、歯科医院に相談しましょう。
2-2 温める・冷やす
顎のまわりの筋肉のこわばりがある場合は、温めることで症状が和らぐことがあります。
一方、急な痛みや腫れがある場合は、冷やすほうがよいこともあります。ただし、冷やし過ぎると血流が悪くなることがあるため注意が必要です。
温めるべきか冷やすべきか判断に迷う場合や、痛みが続く場合は、自己判断せず歯科医院に相談しましょう。
2-3 姿勢の見直し
猫背になっていたり、顎を突き出すような姿勢になっていたりすると、顎や首まわりに負担がかかることがあります。
立っている時だけでなく、座っている時の姿勢にも気をつけましょう。
長時間同じ姿勢を続けることを避け、時々ストレッチをして、首や肩まわりの緊張をほぐすようにしましょう。
3.歯科医院で行える治療法
自宅でもある程度のケアは行えますが、症状の原因や状態によって適した方法は異なります。
原因と症状を確認して治療を始めたい場合は、歯科医院に相談しましょう。歯科医院では、状態に応じて以下のような治療法が検討されます。
3-1 認知行動療法
顎関節症に関係する可能性がある生活習慣や癖を自覚し、改善を目指す方法です。
たとえば、日中の食いしばり、頬杖、うつぶせ寝、片側だけで噛む癖などを見直すことがあります。
3-2 物理療法
痛みの軽減を目指して、患部を温めたり、必要に応じて冷やしたりする方法です。
症状によって適した方法が異なるため、歯科医院の指導を受けて行うことが大切です。
3-3 運動療法
口を開閉させたり、顎をなめらかに動かしたりする訓練を行います。
顎関節症では、自己開口訓練などの運動療法が行われることがあります。
頬杖、うつぶせ寝、片噛み、歯ぎしり、食いしばりなどの生活習慣の見直しもあわせて行われることがあります。
3-4 スプリント療法
歯列を覆うスプリントという装具を装着し、歯ぎしりや食いしばりによる顎への負担の軽減を目指す治療法です。
スプリントには複数の種類がありますが、代表的なものにスタビライゼーション型があります。
スタビライゼーション型
上下の歯列を安定させ、顎や筋肉への負担を軽減する目的で使われるスプリントです。
アンテリア リポジショニング型
下顎の位置を調整し、顎関節への負担を軽減する目的で使われることがあるスプリントです。ただし、症状や状態によって適応が異なります。
ディスク リキャプチャリング型
関節円板の位置や動きに関係する症状に対して検討されることがあるスプリントです。使用の可否は歯科医師の診断によって判断されます。
3-5 薬物療法
痛みが強い場合には鎮痛薬が用いられることがあります。
筋肉の緊張が関係している場合は、症状に応じて薬が処方されることもあります。
薬の種類や使用期間は、全身状態や既往歴、服用中の薬などによって異なります。自己判断で服用せず、歯科医師や医師の指示に従いましょう。
3-6 マニピュレーション法
手技によって、顎関節の動きを改善する目的で行われる治療法です。
関節円板の位置や顎の動きに問題がある場合に検討されることがあります。
運動療法や薬物療法と組み合わせて行われることもあります。
3-7 外科療法
保存的な治療を行っても症状が改善しない場合や、関節内に問題がある場合には、専門医療機関で外科的な治療が検討されることがあります。
関節腔内洗浄療法、関節鏡視下手術などが行われることがあります。
ただし、顎関節症の治療では、まず保存的な治療やセルフケアが中心となることが多く、外科療法が必要かどうかは専門的な診断によって判断されます。
より詳しい内容は「顎関節症で手術が必要なのか?診察から治療まで徹底分析」
4.顎関節症の治療にかかる費用と期間
顎関節症がどの程度の状態なのか、どの治療を行うのかによって、治療にかかる費用も期間も異なります。
歯科医院や医療機関によって行われる検査や治療内容が異なるため、費用や期間には幅があります。
4-1 費用
顎関節症の治療費は、検査内容、治療方法、保険診療か自由診療か、自己負担割合などによって異なります。
スプリント療法、薬物療法、運動療法、外科的処置など、どの治療が必要かによっても費用は変わります。
具体的な費用は、受診する歯科医院や医療機関で確認しましょう。
保険診療時の目安の費用として
スプリント/約12,000円~25,000円程度
おおよその費用 関節腔洗浄療法/5,000円~15,000円程度
関節鏡視下手術/約30,000円~80,000円程度
関節開放手術/50,000円~150,000円程度
※2026年現在の3割負担の場合の保険診療の費用(ここでは初診料やレントゲンは含んでいません。区分や制度の改定でも変動しますので、あくまで目安としてください)
4-2 期間
顎関節症の治療期間は、症状の程度や原因、治療への反応によって異なります。
軽い症状であれば、セルフケアや生活習慣の見直しで症状が軽くなることもあります。
一方、痛みや開口障害が続く場合は、数週間から数カ月程度の治療や経過観察が必要になることがあります。
基本的な治療で症状が改善しない場合は、画像検査や専門医療機関での治療が検討されることもあります。
5.顎関節症を歯科医院で治療する理由
歯科医院では、顎関節症の症状や原因を確認したうえで、状態に応じた治療法を提案できます。自宅でのセルフケアだけでは判断が難しい場合があることを知っておきましょう。
5-1 自分で対処できることもあるが判断が難しい
顎関節症は、セルフケアや生活習慣の見直しで症状が軽くなることもあります。
ただし、口が開けにくい、痛みが強い、食事に支障がある、症状が長引くといった場合は、自己判断だけで対処するのは避けましょう。
歯科医院では、顎関節の状態や筋肉の痛み、噛み合わせ、生活習慣などを確認し、必要に応じて治療を行います。
5-2 原因に応じた対応が必要
顎関節症は、原因が一つとは限りません。
歯ぎしり、食いしばり、噛み合わせ、姿勢、ストレス、筋肉の緊張など、複数の要因が関係することがあります。
原因に合わないセルフケアを続けると、症状が長引くこともあります。
歯科医院で状態を確認し、必要な治療やセルフケアの方法を教えてもらうことが大切です。
また、歯科医院で治療を受けた後も、日常生活で顎に負担をかけないようにすることが重要です。
6.まとめ
顎関節症の治療では、歯科医院で症状や原因を確認してもらい、状態に合った治療やセルフケアにつなげることが大切です。
治療にはさまざまな方法があり、かかる期間や費用も症状や治療内容によって異なります。
自宅でできるケアもありますが、それだけに頼らず、痛みが続く、口が開けにくい、食事や会話に支障がある場合は、早めに歯科医院へ相談しましょう。
【参考サイト】
・日本顎関節学会「顎関節症とは」
https://kokuhoken.net/jstmj/general/about_tmd.html
・日本顎関節学会「診療ガイドライン」
https://kokuhoken.net/jstmj/publication/guideline.html
・Mindsガイドラインライブラリ「顎関節症初期治療診療ガイドライン2023 改訂版」
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00780/
・日本歯科医師会「お口のなんでも相談 顎関節症」
https://www.jda.or.jp/consultation/vol-14.html
・日本歯科医師会 テーマパーク8020「顎関節症」
https://www.jda.or.jp/park/trouble/index04_02.html
・厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。
