歯科の保険診療とは?仕組み・自己負担と自由診療との違いを解説

歯科の保険診療とは?仕組み・自己負担と自由診療との違いを解説

日本では、公的医療保険に加入している方が、保険適用となる歯科治療を受けた場合、医療費の一部を窓口で負担します。

むし歯、歯周病、抜歯、根管治療、入れ歯など、多くの歯科治療が保険診療の対象です。一方、見た目を主な目的とするホワイトニングや、一般的な歯列矯正などは自由診療となります。

ただし、保険診療と自由診療の違いは、単に治療の良し悪しを表すものではありません。適用できる材料や治療法、費用、見た目、治療期間などが異なるため、患者さんの口腔内の状態と希望に合わせて選ぶことが大切です。

この記事では、歯科における保険診療の基本的な仕組み、メリットと注意点、主な治療ごとの保険適用について解説します。

この記事の目次

1.保険診療の基本的なルールについて

歯科の保険診療では、診察、検査、処置、手術、材料などに診療報酬点数が定められています。

原則として、点数の合計に1点10円を掛けた金額が医療費の総額となり、そのうち年齢や所得に応じた割合を患者さんが負担します。

診療報酬は定期的に改定されます。2026年6月にも改定が実施され、歯科の点数や適用項目などが見直されています。古い記事に掲載された点数や費用を、現在の治療費として使用することはできません。

1-1 保険点数は全国共通の点数表を基礎にする

保険診療の点数表は全国共通です。

同じ検査や処置を同じ条件で行った場合は、基本となる点数も同じです。しかし、実際の窓口負担額は、次のような条件によって異なります。

・治療する歯の位置や本数
・むし歯や歯周病の進行度
・行った検査や処置
・使用した材料
・施設基準を満たす医療機関で行う加算
・受診回数
・患者さんの自己負担割合
・公費による医療費助成の有無

例えば、抜歯といっても、歯の位置や生え方、手術の難しさによって点数が異なります。初診料、画像検査、麻酔、薬剤などが加わる場合もあるため、処置名だけから窓口負担額を計算することはできません。

治療前に費用を確認したい場合は、歯科医院へ概算を尋ねましょう。ただし、治療中に病状が判明し、予定していた処置が変わることもあります。

1-2 自己負担割合は年齢や所得によって異なる

保険診療の自己負担割合は、原則として次のように定められています。

・義務教育就学前:2割
・義務教育就学後~69歳:3割
・70~74歳:原則2割、現役並み所得者は3割
・75歳以上:原則1割、一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割

また、子ども、障害のある方、ひとり親家庭などを対象に、自治体が医療費助成を行っていることがあります。助成の対象年齢や窓口負担は、自治体によって異なります。

保険診療の自己負担額が一定の上限を超えた場合は、高額療養費制度を利用できることがあります。ただし、自由診療や保険外部分の費用は、原則として高額療養費の対象になりません。

1-3 海外の歯科医療費とは単純に比較できない

日本の公的医療保険では、保険適用となる歯科治療について、窓口で支払う費用が自己負担割合に応じて軽減されます。

一方、海外では、公的保険の対象範囲、民間保険の加入状況、材料費、歯科医師の報酬、物価などが国ごとに異なります。

同じ「根管治療」や「被せ物」であっても、治療する歯、使用材料、画像検査、被せ物の費用が含まれるかなど、比較条件は一定ではありません。

そのため、「日本は何番目に安い」「海外の何分の一」といった単純なランキングだけで、制度の優劣を判断することはできません。

1-4 保険診療と自由診療の併用は原則として制限される

日本では、保険診療と保険適用外の診療を一連の治療で併用する、いわゆる混合診療は原則として制限されています。

ただし、保険外併用療養費制度など、国が定めた一定の条件では、保険診療部分と保険外部分を併用できる場合があります。

また、自由診療の被せ物を選んだからといって、同じ時期に受ける無関係な歯の治療まで、すべて自由診療になるとは限りません。

どこまでが保険診療で、どこからが自由診療になるかは、治療内容によって異なります。治療開始前に、次の点を確認しましょう。

・保険診療と自由診療のどちらになるか
・費用の総額
・追加費用が発生する条件
・治療途中で方法を変更できるか
・保証や再治療の条件

1-5 予防・審美目的でも内容によって扱いが異なる

病気の診断や治療を目的としない健康診断、審美目的のクリーニング、ホワイトニングなどは、原則として保険適用外です。

一方、歯周病や初期むし歯などがあり、その治療や重症化予防として行う検査、歯石除去、継続管理などは、保険診療となる場合があります。

厚生労働省の資料でも、歯周病の安定期治療や重症化予防治療、フッ化物歯面塗布などの保険診療実績が示されています。

自治体が行う歯周病検診などは、健康保険ではなく、公費によって費用の一部が助成される場合があります。対象年齢や自己負担額は自治体によって異なります。

「予防だから必ず自由診療」「歯石除去だから必ず保険診療」とは判断せず、診察の目的と病状を確認することが大切です。

2.保険診療のメリットと注意点

保険診療には、費用負担を抑えながら、病気の治療や口腔機能の回復を目指せるというメリットがあります。

一方、使用できる治療法や材料には、診療報酬上の要件があります。自由診療との違いを理解したうえで選択しましょう。

2-1 保険診療のメリット

費用の負担を抑えられる

保険適用となる治療では、患者さんが医療費の全額を負担するのではなく、年齢や所得に応じた一部を窓口で支払います。

治療が長期にわたる場合や、複数の歯を治療する場合でも、自由診療と比べて費用負担を抑えられることがあります。

基本的な歯科治療を幅広く受けられる

保険診療では、主に次のような治療が対象になります。

・むし歯治療
・根管治療
・歯周病治療
・抜歯や口腔外科処置
・詰め物や被せ物
・ブリッジ
・入れ歯
・顎関節症の治療
・口腔機能の検査や管理
・一定の条件を満たす歯列矯正

すべての治療法や材料を自由に選べるわけではありませんが、痛みの除去、感染の治療、噛む機能の回復などに必要な診療が幅広く含まれています。

費用の計算基準が定められている

保険診療では、国が定めた診療報酬点数を基礎として費用を計算します。

自由診療のように歯科医院が独自に料金を設定するものではないため、費用の計算方法が一定です。

2-2 保険診療の注意点

使用できる材料や治療法に条件がある

保険診療では、国が有効性や安全性、必要性、費用などを評価し、対象となる治療法や材料、算定要件を定めています。

そのため、次のような希望には対応できない場合があります。

・保険の適用条件に含まれない材料を使用したい
・より自然な色調や透明感を重視したい
・保険で認められていない治療方法を選びたい
・審美性を主な目的とする治療を受けたい

自由診療が常に優れているわけではない

自由診療では、保険診療に含まれない材料や治療法を選べる場合があります。

ただし、高額な材料を使えば必ず長持ちする、むし歯が再発しない、見た目が理想どおりになるとは限りません。

治療結果には、次のような要素も関係します。

・むし歯や歯周病の状態
・残っている歯質の量
・噛み合わせ
・歯ぎしりや食いしばり
・毎日の口腔ケア
・定期的な経過観察
・喫煙や全身疾患

保険診療と自由診療について、期待できる効果と限界を確認して選択しましょう。

診療報酬や適用条件が変更される

保険診療の点数や材料の適用範囲は、診療報酬改定などによって変更されます。

以前は自由診療だった材料や製作方法が、条件付きで保険適用になることもあります。反対に、材料価格や診療報酬上の評価が見直される場合もあります。

過去の記事や知人の治療内容だけで判断せず、受診時点の制度を歯科医院へ確認してください。

3.治療別に見る保険診療と自由診療

保険診療と自由診療の区分は、病状、治療部位、使用材料、医療機関の施設基準などによって異なります。

以下は一般的な考え方であり、実際に保険適用となるかは、診察後に確認する必要があります。

3-1 むし歯の治療や詰め物・被せ物

保険が適用される主なむし歯治療

保険診療でも、むし歯に感染した部分を取り除き、必要な歯質をできるだけ保存して修復することが基本です。

小さなむし歯では、歯科用のコンポジットレジンを直接詰められる場合があります。

むし歯の位置や範囲、歯の状態によっては、次のような材料が保険適用になる場合があります。

・コンポジットレジン
・レジンインレー
・金属製の詰め物や被せ物
・CAD/CAMインレー
・CAD/CAM冠
・チタンを使用した被せ物など

使用できる材料は、前歯・小臼歯・大臼歯といった歯の位置、噛み合わせ、残っている歯質などによって異なります。

白い材料であっても、すべての歯へ無条件で使用できるわけではありません。

自由診療となる主な治療

保険適用の条件に該当しないセラミック、ジルコニア、金合金などの詰め物・被せ物は、自由診療となります。

自由診療では、色調や形態を細かく調整できる場合がありますが、割れ、欠け、脱離、二次的なむし歯などのリスクがなくなるわけではありません。

材料を選ぶ際は、次の点を比較します。

・見た目
・強度
・歯を削る量
・噛み合わせへの適合
・金属アレルギー
・費用
・修理や再治療の方法

3-2 ブリッジによる治療

保険が適用されるブリッジ

ブリッジは、失った歯の両隣などを支えとして、複数の被せ物を連結する治療です。

保険適用となるかは、単純な欠損歯数だけでなく、次の条件を確認して判断します。

・失った歯の位置と本数
・支えとなる歯の本数や状態
・歯周組織の状態
・ブリッジの設計
・噛み合わせ
・使用材料

2026年度診療報酬改定では、純チタンによる一定の3歯ブリッジが新たに保険評価の対象となり、高強度硬質レジンブリッジの評価も見直されました。

保険が適用されないブリッジ

保険診療の設計や材料の条件に該当しない場合や、セラミック、ジルコニアなどを使用する場合は、自由診療となります。

ブリッジでは支えとなる歯を削る必要があり、支台歯の状態によっては適さない場合があります。

失った歯の治療には、ブリッジのほか、入れ歯やインプラントなどもあります。歯や骨の状態、費用、清掃方法などを比較して選択しましょう。

3-3 入れ歯

保険が適用される入れ歯

保険診療では、レジンと呼ばれる材料を主に使用した部分入れ歯や総入れ歯を作製します。

部分入れ歯では、残っている歯に金属製の留め具を掛ける設計が一般的です。

2026年度診療報酬改定では、一定の施設基準を満たす医療機関で作製する3次元プリント有床義歯について、新たな評価が設けられました。

ただし、すべての歯科医院やすべての患者さんが対象となるわけではありません。

自由診療となる主な入れ歯

自由診療では、次のような入れ歯が選択肢になる場合があります。

・床部分に金属を使用した入れ歯
・金属製の留め具を目立ちにくくした入れ歯
・特殊なアタッチメントを使用する入れ歯
・シリコーンなどの材料を使用した入れ歯

自由診療の入れ歯が、すべての患者さんにとって薄く、痛みがなく、よく噛めるとは限りません。

顎の骨や粘膜、残存歯、唾液、噛み合わせなどによって使用感が異なります。作製後の調整や定期管理も必要です。

3-4 歯列矯正

歯並びや見た目の改善を主な目的とする一般的な歯列矯正は、自由診療です。

ただし、次のような場合は、届出を行った医療機関で保険診療となることがあります。

・厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常
・前歯と小臼歯の永久歯のうち、3歯以上の萌出不全に起因する咬合異常で、埋伏歯開窓術を必要とする場合
・18歳未満で、連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因する咬合異常
・顎の骨を切る手術を必要とする顎変形症の手術前後

保険適用の矯正治療を受けられるのは、所定の施設基準を届け出た医療機関に限られます。

歯並びが悪い、噛みにくいという症状だけで、必ず保険適用になるわけではありません。

3-5 歯周病治療や歯石除去

歯周病の検査・診断に基づいて行う歯石除去、歯磨き指導、歯周ポケット内の清掃などは、保険診療となる場合があります。

歯周病治療では、一般に次のような流れで進めます。

・歯周組織検査
・歯磨き方法の確認と指導
・歯石や歯垢の除去
・再検査
・必要に応じた歯周外科治療
・病状に応じた継続管理

歯周病の治療後も病状が安定しない場合や、再発・重症化のリスクがある場合は、保険診療として継続的な治療や管理を行うことがあります。

一方、歯周病などの病気がなく、見た目を整えることだけを目的としたクリーニングは、自由診療となることがあります。

保険で歯石除去を受けるために、不要なむし歯検査を行うということではありません。歯周病を診断し、治療計画を立てるために、歯や歯ぐきの検査が必要になります。

3-6 ホワイトニング

薬剤を使って歯そのものの色を明るくするホワイトニングは、一般に審美目的のため自由診療です。

主な方法には、歯科医院で行うオフィスホワイトニングと、専用のマウスピースを使って自宅で行うホームホワイトニングがあります。

ホワイトニングでは、歯がしみる、歯ぐきが刺激される、詰め物や被せ物の色は変わらないといった点に注意が必要です。

歯の表面に付着した着色を除去するクリーニングについては、目的によって扱いが異なります。

歯周病の治療や口腔衛生管理に必要な処置として行う場合は保険診療となることがありますが、審美目的で着色だけを除去する場合は、自由診療となることがあります。

4.まとめ

歯科の保険診療では、国が定めた診療報酬点数を基礎に医療費を計算します。点数は原則として1点10円ですが、診療報酬改定によって治療項目や点数、材料の適用条件が見直されます。

窓口で支払う割合は一律3割ではありません。年齢や所得、公費による医療費助成などによって異なります。

保険診療では、むし歯、歯周病、根管治療、抜歯、ブリッジ、入れ歯など、幅広い歯科治療を受けることができます。

一方、使用できる材料や治療方法には条件があります。見た目や材料、治療法に特別な希望がある場合は、自由診療が選択肢になることもあります。

ただし、自由診療が保険診療より必ず優れているわけではありません。反対に、保険診療だから治療の質が低いともいえません。

治療方法を選ぶときは、次の点について説明を受けましょう。

・現在の病状
・保険診療で可能な治療
・自由診療を選ぶ場合の違い
・期待できる効果と限界
・治療に伴うリスク
・治療期間や通院回数
・費用の総額と追加費用
・治療後の管理方法

保険診療か自由診療かだけで決めるのではなく、自分の歯や歯ぐきの状態、希望、費用負担を踏まえ、納得できる治療を選ぶことが大切です。
────────────────────────
【参考サイト】
・厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

・厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671913.pdf

・厚生労働省「保険診療の仕組み」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken01/dl/01b.pdf

・厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000937919.pdf

・全国健康保険協会「高額療養費」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/index.html

・厚生労働省「いわゆる『混合診療』問題について」
https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/bukyoku/hoken/1-3.html

・厚生労働省「歯科医療施策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158505_00002.html

・厚生労働省「歯周病検診について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/shikakoukuuhoken/periodontal_disease.html

・厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周治療の流れ」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-005.html

・公益社団法人 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」
https://www.jos.gr.jp/facility

飯田尚良 先生監修
経歴

1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

ページトップへ