インプラントの寿命と歯科医院で行う寿命を延ばすメンテナンス

インプラントの寿命と歯科医院で行う寿命を延ばすメンテナンス

インプラントに寿命があることをご存知でしょうか。インプラントにも平均的な寿命年数があります。しかし、インプラントは、正しいセルフケアと歯医者さんでのメンテナンスにより、本当の歯と同じように長く使い続けることが可能なのです。

この記事では、インプラントの寿命を理解し、正しいセルフケアやメンテナンス方法、またインプラントの寿命を縮める原因についてご紹介します。これから治療を受ける方、既に治療済みの方も、参考にして下さい。

この記事の目次

1.インプラントの平均寿命と寿命を延ばす方法

1-1 インプラントの平均寿命

インプラントは、歯が失われた場所のあごの骨に人工物を埋め込み、それを土台に人工歯を入れる治療法です。

データによって違いがありますが、インプラントを10年間使用できる確率は90%以上という報告があります。実際40年程度、快適な状態で使用したというケースもあります。

また、ブリッジの平均寿命は約6~7年、入れ歯の平均寿命は約5年といわれています。これを考えると、インプラントの寿命がいかに長いかがわかるはずです。

しかも、インプラントの品質や技術の進歩により、さらに使用できる年数は長くなると予想されます。

1-2 インプラントの寿命を延ばす方法

寿命の長いインプラントをより長く使うためにはどのようにすればよいのでしょうか。

主なポイントは3つです。

①セルフケアのレベルを上げる

②歯科医院での定期検診によるメンテナンス

③普段の習慣や健康管理に気をつける

この3つのポイントを中心に、具体的な方法をご紹介します。

2.インプラントの寿命を延ばすセルフケア

2-1 セルフケアの重要性

天然歯には、歯と骨の間に歯根膜という膜があります。歯根膜には、感覚としての役割や細菌の侵入を防ぐバリアとしての役割があります。

一方、インプラントには歯根膜がありません。つまり、天然歯よりも細菌が侵入しやすい状況です。そのためインプラントは、天然歯以上に清潔にしていないと歯肉に炎症が起きてしまいます。

インプラントと歯肉の間に食べかすが残らないように、丁寧にセルフケアすることが基本であり、それがインプラントの寿命を決めるのです。

2-2 すぐに実践、セルフケア術

利き手側の歯から歯磨きする(右利きなら右側の歯から)

歯磨きをするとき、右と左のどちらの歯から磨きますか。自分の利き手とは反対の歯から磨いていませんか。この理由は、利き手側の歯は、磨きづらいからです。

人は、無意識に磨きやすい歯を選び、歯磨きをしています。しかし、これはちょっとした落とし穴です。利き手側の歯は、磨きづらさから短時間で歯磨きを終わらせ、磨き残しがある可能性が高いのです。

利き手ではない歯もしっかりと磨くように心掛けましょう。

3.セルフケアに欠かせないアイテム

では、清潔な歯を保つためのお助けアイテム、歯ブラシとその補助掃除器具について、具体的な掃除法をご紹介します。

3-1 歯ブラシ

歯ブラシは、親指、人差し指、中指の3本の指で持ちます。歯と歯の間を意識してブラシの毛先を使い、軽い力で細かく振動させるとキレイに磨けます。

3-2 歯間ブラシ

歯間ブラシは手を汚すこともなく、爪楊枝のように歯と歯の間を掃除できる便利アイテムです。また、歯間ブラシは、歯だけでなく歯肉にも触れるため、歯周病予防にもつながります。

使用方法は、歯磨きの後、歯と歯の間に歯間ブラシを入れて数回動かします。掃除後は、お口をゆすいで終わりです。

3-3 デンタルフロス

デンタルフロスは、歯の側面や歯と歯の間の汚れを細かく掃除することができます。糸状のものや持ち手がついたものがあり、持ち手がついている方が初心者には使いやすくオススメです。

持ち手がついたデンタルフロス

直接お口の中に入れ、歯と歯の間にデンタルフロスを入れて歯にそって前後、上下に動かし、掃除後はお口をゆすいで終わりです。

糸状のデンタルフロス

まず適当な長さに切り、中指に巻きつけ、両手の間隔を10cm程度にして使います。歯の場所により使い方や持ち方は違いますが、基本的にデンタルフロスは、歯と歯の間に通して前後に動かし、上下にずらして掃除します。掃除後は、お口をゆすいで終わりです。

4.歯科医院で行うメンテナンス

4-1 定期検診によるメンテナンスの重要性

インプラントは、天然歯よりもデリケートです。セルフケアをしっかりしても、不十分な場所が隠れているかもしれません。インプラントだけはなく残された天然歯のためにも、定期検診は最低でも半年に1度は受けておくことが大切です。

4-2 歯科医院による定期検診の中身

歯科医院で行うインプラントの定期検診は、主に5つあります。

①生活習慣の確認(健康状態や食生活の確認とブラッシング指導)

②レントゲン撮影(骨の状態を確認)

③お口全体の確認(歯周ポケット検査、出血の検査)

④噛み合わせの確認(歯全体のバランスを確認し、不具合があれば調整)

⑤歯のクリーニング

4-3 納得でき任せられる歯科医院を選ぶ

インプラントは、外科的処置が伴う治療であり、自由診療のため費用もかかります。そのため、歯科医院選びは慎重になります。それは、自分が精神的にも、肉体的にも行きやすい場所であることです。そして最終的には、歯科医師と自分との相性が合うかどうかです。

もし判断に迷った時は、納得できるまで歯科医院を訪ねて、医師とよく話し合った上で自分に合う歯科医院を選択して下さい。

5.インプラントの寿命を縮めないための対策

5-1 基本は食生活と生活習慣、日頃の健康管理

インプラントの寿命の大敵は、細菌です。細菌が増殖しないための良い生活習慣が大切です。それには、食事に注意が必要です。

現代の日本人は、豊かな食料の時代に生きています。そのため、好きな食べ物を好きな時に食べることができます。

これは、間食を多くさせ、柔らかく手軽な食べ物を口にすることになり、お口の中で細菌が増殖してしまう状況を作ります。

5-2 歯茎に異変を感じたらインプラント周囲炎を疑う

あなたの歯茎は、ピンク色の引き締まった状態ですか。出血や腫れがある場合は、インプラント周囲炎の可能性があります。

インプラント周囲炎とは、インプラントの周りにある粘膜に炎症が起こる病気です。原因は、メンテナンス不足です。自覚症状がなく進行し、インプラントが外れてしまうこともあります。

5-3 歯ぎしりや食いしばりにはマウスピース対策

寝ている間は、自分がどのような動きをしているかわかりません。知らず知らずに歯ぎしりや食いしばりをしている方もいるかもしれません。

歯ぎしりや食いしばりは大きな力がかかり、歯を削ってしまう場合もあります。インプラントを保護するためにマウスピースを作ると、インプラントの寿命はさらに延びます。

5-4 免疫力低下につながる糖尿病に気をつける

糖尿病は血糖値が高くなる病気で、血液の流れを悪くします。つまり、栄養や酸素を運ぶ役割をしている血液の流れが悪くなることで、細胞が栄養を受け取れず免疫力が落ちてしまうのです。インプラントにも悪影響です。

5-5 骨にも影響する喫煙に気をつける

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血液を濃くしたり血液の流れを悪くしたりと全身にとって悪影響です。

骨や歯に酸素や栄養が行き届かなくなり、インプラントを支える骨やまわりの組織まで弱くなり、酷い時にはインプラントが外れてしまいます。

6.まとめ

お口の中は、唾液の量、食生活、噛む回数などが影響し個人差が激しいものです。自分に合ったセルフケアと歯科医院での定期検診、そしてメンテナンスにより、インプラントの寿命を延ばせる可能性があります。

どれだけ良いインプラント治療をしても、治療後の自分自身の行動によってインプラントは寿命切れを起こします。インプラントの寿命切れを起こさないために、日頃の健康管理に注意し、少しでもお口の中に異変を感じたら歯科医院へ相談に行くようにしましょう。

プロフィール&経歴

目指したきっかけ:医療には関心あったが、やはり一番は両親の教育が大きかったのではないかと思う。
やりがい:大学のときは他の職種とは違う特殊性に惹かれていたのですが、実際歯科医になってからはお礼を言われる部分です。

松本歯科大学卒業後、同病院勤務。
琉球大学医学部付属病院歯科口腔外科にて
顎顔面領域悪性腫瘍治療に従事。
その後都内複数歯科医院勤務後、
麻布シティデンタルクリニックを開院。
現在に至る。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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