インプラントは、治療後のセルフケアや歯科医院でのメンテナンスによって、長く使える可能性があります。
ただし、インプラントの使用期間には個人差があり、口腔内の清掃状態、噛み合わせ、喫煙、糖尿病などの全身状態によって変わります。
この記事では、インプラントの使用期間の目安、セルフケアやメンテナンス方法、インプラントのトラブルにつながる原因について紹介します。
これから治療を受ける方、すでに治療を受けた方も参考にしてください。
この記事の目次
1.インプラントの使用期間の目安と長く使うための方法
1-1 インプラントの使用期間の目安
インプラントは、歯を失った部分の顎の骨にインプラント体を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。
日本歯科医師会では、インプラントは顎の骨量や骨質などの条件にもよりますが、周囲の歯への負担を抑えながら、見た目や噛む機能の回復を目的とする治療法の一つと説明しています。
一方で、長期間使うには天然歯と同じように歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。
インプラントがどれくらい使えるかは、治療部位、骨の状態、噛み合わせ、全身状態、喫煙習慣、メンテナンスの継続状況などによって異なります。
そのため、「何年使える」と一律に断定することはできません。
1-2 インプラントを長く使うための方法
インプラントを長く使うためには、次の3つが大切です。
①セルフケアの質を高める
②歯科医院で定期的なメンテナンスを受ける
③生活習慣や全身の健康管理に気をつける
この3つのポイントを中心に、具体的な方法をご紹介します。
2.インプラントを長く使うためのセルフケア
2-1 セルフケアの重要性
天然歯には、歯と骨の間に歯根膜という組織があります。
一方、インプラントには歯根膜がありません。
そのため、天然歯とは構造が異なり、インプラント周囲の歯ぐきや骨に炎症が起こらないよう、丁寧な清掃が大切です。
インプラント周囲に歯垢がたまると、インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎につながることがあります。
インプラント周囲炎は、バイオフィルムが関係する炎症性疾患で、進行するとインプラントの脱落につながることがあります。
その予防には、プラークコントロールを主体としたメンテナンスが重要とされています。
2-2 すぐに実践できるセルフケア
利き手側の歯も意識して磨く
歯磨きをするとき、磨きやすい側から磨いてしまう方もいます。
利き手側の奥歯は歯ブラシを当てにくく、磨き残しが出ることがあります。
右利きの方は右側、左利きの方は左側など、磨きにくい部分を意識して磨きましょう。
ただし、磨き方の癖は人によって異なります。
歯科医院で磨き残しが出やすい部分を確認してもらい、自分に合った磨き方を教えてもらうことが大切です。
3.セルフケアに欠かせないアイテム
インプラント周囲を清潔に保つためには、歯ブラシだけでなく、補助清掃用具を組み合わせることが有用です。
ただし、インプラントの形や周囲の歯ぐきの状態によって適した道具は異なります。
歯科医師や歯科衛生士に相談して選びましょう。
3-1 歯ブラシ
歯ブラシは、軽い力で細かく動かすことが基本です。
歯と歯ぐきの境目、インプラントの周囲、人工歯の根元部分を意識して磨きましょう。
力を入れすぎると歯ぐきを傷つけることがあるため、毛先を軽く当てるようにします。
3-2 歯間ブラシ
歯間ブラシは、歯と歯の間やインプラント周囲のすき間を清掃するための道具です。
サイズが合っていないものを無理に入れると、歯ぐきを傷つけることがあります。
歯科医院で自分に合ったサイズを確認してもらいましょう。
使用する際は、歯と歯の間にゆっくり挿入し、数回やさしく動かします。
3-3 デンタルフロス
デンタルフロスは、歯と歯の間や人工歯の周囲の汚れを取り除くために使用します。
糸状のタイプや持ち手がついたタイプがあります。
初心者には持ち手つきのタイプが使いやすいことがあります。
ただし、インプラントの形状によっては、専用フロスや歯間ブラシの方が適している場合もあります。
使い方は歯科医院で確認しましょう。
4.歯科医院で行うメンテナンス
4-1 定期健診によるメンテナンスの重要性
インプラントを長く使うためには、セルフケアだけでなく歯科医院での定期的なメンテナンスが重要です。
インプラント周囲の炎症は、自覚症状が少ないまま進行することがあります。
メンテナンスでは、インプラントだけでなく、残っている天然歯や歯周病の状態も確認します。
受診頻度は、口腔内の状態や全身状態によって異なります。
歯科医院で指示された間隔で受診しましょう。
4-2 歯科医院による定期健診の中身
歯科医院で行うインプラントの定期健診では、主に次のような確認を行います。
①生活習慣や健康状態の確認
②ブラッシング状態の確認と清掃指導
③インプラント周囲の歯ぐきの状態確認
④必要に応じたレントゲン撮影
⑤噛み合わせの確認
⑥専用器具によるクリーニング
インプラント周囲炎の予防には、治療後の口腔衛生を主体としたメンテナンスの継続が重要とされています。
4-3 納得して任せられる歯科医院を選ぶ
インプラントは外科的処置を伴う治療です。
また、自由診療となることが多く、費用面の負担もあります。
そのため、治療前の説明、治療後のメンテナンス体制、トラブル時の対応などを確認しておくことが大切です。
不安な点がある場合は、納得できるまで歯科医師に相談しましょう。
5.インプラントのトラブルを防ぐための対策
5-1 基本は食生活と生活習慣、日頃の健康管理
インプラント周囲の炎症には、口腔内の清掃状態が大きく関係します。
間食が多い、糖分を含む飲食物を頻繁に摂る、歯磨きが不十分といった状態が続くと、歯垢がたまりやすくなります。
食生活を見直し、毎日の清掃を丁寧に行いましょう。
5-2 歯ぐきに異変を感じたらインプラント周囲炎に注意する
インプラント周囲の歯ぐきに腫れ、出血、膿、違和感がある場合は、インプラント周囲の炎症が起きている可能性があります。
インプラント周囲炎は、進行するとインプラントを支える骨に影響することがあります。
自覚症状が少ないこともあるため、異変に気づいたら早めに歯科医院へ相談しましょう。
5-3 歯ぎしりや食いしばりにはマウスピースを検討する
歯ぎしりや食いしばりがあると、インプラントや人工歯、周囲の骨に大きな力がかかることがあります。
必要に応じて、歯科医院でマウスピースを作製することがあります。
マウスピースによって、噛みしめによる負担を軽減できる場合があります。
5-4 糖尿病など全身状態に気をつける
糖尿病は、歯周病や傷の治りに影響することがあります。
血糖コントロールが不十分な場合、感染や炎症のリスクが高まることがあるため、インプラント治療を受ける前後も全身状態の管理が大切です。
持病がある方は、歯科医師と主治医に相談しながら治療やメンテナンスを進めましょう。
5-5 喫煙に気をつける
喫煙は、歯周病にかかりやすく、悪化しやすいことが知られています。
また、喫煙者では歯周病治療の効果が低く、治療後の治りが悪いとされています。
インプラント周囲の組織にも影響することがあるため、インプラントを長く使いたい場合は禁煙も含めて相談しましょう。
6.まとめ
インプラントを長く使うためには、毎日のセルフケア、歯科医院での定期的なメンテナンス、生活習慣や全身状態の管理が重要です。
インプラントは天然歯と構造が異なるため、治療後も継続的な管理が欠かせません。
歯ぐきの腫れ、出血、違和感、噛みにくさなどを感じたら、早めに歯科医院へ相談しましょう。
【参考サイト】
・日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/consultation/vol-22.html
・日本口腔インプラント学会
https://www.shika-implant.org/
・J-STAGE「口腔衛生を主体とするメインテナンスのインプラント周囲炎予防効果」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoi/35/1/35_3/_article/-char/ja
・厚生労働省 e-ヘルスネット 喫煙と歯周病の関係
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-011.html
・厚生労働省 歯科インプラント治療指針
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shika_hoken_jouhou/dl/01-01.pdf
目指したきっかけ:医療には関心あったが、やはり一番は両親の教育が大きかったのではないかと思う。
やりがい:大学のときは他の職種とは違う特殊性に惹かれていたのですが、実際歯科医になってからはお礼を言われる部分です。
松本歯科大学卒業後、同病院勤務。
琉球大学医学部付属病院歯科口腔外科にて
顎顔面領域悪性腫瘍治療に従事。
その後都内複数歯科医院勤務後、
麻布シティデンタルクリニックを開院。
現在に至る。

執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。
