親知らずの抜歯にかかる費用は?生え方・状況別の金額をリサーチ

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親知らずは、世間一般で「口腔内にさまざまなトラブルを引き起こす存在」と認識されています。実際、「斜めに生えてくる」「横向きのまま歯茎に埋まっている」など問題のある生え方をして、口腔トラブルを引き起こす例が多いようです。そのため、最近では「親知らずは抜歯するもの」と考える人が増えてきました。

そこで、こちらの記事では「親知らずの抜歯にかかる費用」を解説することにしました。親知らずの抜歯費用は生え方によって変わるので、「生え方による費用の違い」にも言及しています。

1.親知らずの抜歯費用は、生え方によって異なる!

保険診療の費用は「診療報酬点数」によって定められています。そのため、保険診療である限り、日本全国どこの歯科医院でも費用は同じです。ただ、親知らずの抜歯をおこなう場合、「親知らずの生え方」によって診療報酬点数が異なります。生え方によって、抜歯の難易度が変わるからです。

まずは、「親知らずの生え方」ごとに定められている診療報酬点数を確認し、「親知らずの抜歯費用がいくらなのか」を確認することにしましょう。ちなみに、保険点数を金額に直すときは「1点=10円」です。ただ、実際には保険適用されて(ほとんどの人は)3割負担になるので「1点=3円」で計算すると、実際の費用目安を導き出すことができます。

※この章では「抜歯費用」だけを算出していますが、実際には初診料・レントゲン撮影料なども加わります。親知らずの抜歯にかかる一般的な諸費用は後述します。

1-1 親知らずを普通抜歯するときの費用

親知らずを抜歯するとき、特に「抜歯が難しくなるような事情」がなければ普通抜歯になります。本来、抜歯というのは「歯根をテコの原理で脱臼させる術式」です。斜めに生えていたとしても、普通抜歯の術式で抜歯可能なら「普通抜歯」になります。

《普通抜歯の保険点数》
乳歯:130点→390円
前歯:150点→450円
臼歯:260点→780円

親知らずは「永久歯で、なおかつ臼歯」ですから、「260点=780円」となります。よって、親知らずを普通抜歯するときの費用は、1本あたり780円です。

1-2 親知らずが難抜歯となるときの費用

「歯根が曲がっている」「歯根が肥大している」「歯根が歯槽骨(歯を支える骨)に癒着している」などの問題があると、「テコの原理だけで抜歯する」というのは不可能です。骨を削り、歯根を歯槽骨から外す必要があります。この処置を「骨開削」と呼びます。骨開削を要する抜歯は「難抜歯」に分類されます。

《難抜歯の保険点数》
難抜歯加算:210点→630円

「難抜歯加算」という表記のとおり、この保険点数は「通常抜歯の金額に上乗せされる費用」となります。以上から、骨開削を必要とする親知らず抜歯は、「780円+630円=1,410円」です。

1-3 親知らずが埋伏歯であるときの費用

難抜歯より、さらに抜歯が困難な例として「埋伏歯」が存在します。ただ、診療報酬における「埋伏歯」の定義は、世間一般で使われるときの「埋伏歯」とは意味合いが異なります。

世間一般で埋伏歯というのは「歯の全部または一部が歯茎に埋まっている歯」です。全部が歯茎に埋まっていれば「完全埋伏歯」、一部が埋まっているだけなら「不完全埋伏歯」と呼ばれます。

それに対して、診療報酬における埋伏歯は「骨に埋まっている(骨と癒着している)歯」を意味します。「骨と癒着して埋まっている歯」を骨性埋伏歯と呼んでおり、診療報酬における埋伏歯は骨性埋伏歯だけを指しています。親知らずが骨性埋伏する場合、ほとんどが横向きに埋まっています。「横向きに骨製埋伏している親知らず」のことを、正式名称で「水平埋伏智歯」と呼称します。

以上から、「埋伏歯として扱われる親知らず=水平埋伏智歯」であることがわかります。

《埋伏歯の保険点数》
埋伏歯:1,050点→3,150円
下顎智歯加算:100点→300円

水平埋伏智歯を抜歯するときの費用は「1,050点=3,150円」となります。ただ、「下顎の水平埋伏智歯」を抜歯する場合には、下顎智歯加算として、さらに「100点=300円」が加算されます。よって、「上顎の水平埋伏智歯=3,150円」「下顎の水平埋伏智歯=3,450円」ということがわかりました。

一般に、「上の親知らず抜歯」と「下の親知らず抜歯」では、下の歯を抜くほうが大変です。下顎骨(かがくこつ)は上顎骨(じょうがくこつ)より硬く、骨を開削するのに手間がかかるからです。その労力が、保険点数に上乗せされているわけです。

水平埋伏智歯抜歯術とは…?

横向きに骨性埋伏している親知らずを抜歯するときは、「水平埋伏智歯抜歯術」と呼ばれる手術をおこないます。

基本的に、横向きの親知らずは「手前の歯(第二大臼歯)」のほうを向いています。歯は生えている方向にしか抜けません。ですから、横向きの親知らずを上方向に引き抜くことは不可能です。手前を向いているなら、手前に引き抜く必要があります。しかし、親知らずの手前には第二大臼歯がありますから、普通に考えれば「手前に引き抜く」などという芸当はできません。第二大臼歯が障害になって、抜けないからです。

そこで、水平埋伏智歯抜歯術が役に立ちます。まず、歯茎・歯槽骨を切開して、水平埋伏している親知らずを露出させます。その後、親知らずを2つに割り、「歯冠側」と「歯根側」にわけます。歯冠は「歯の上部」で、歯根は「歯の根っこ」です。埋まった状態のままで、歯を分割するわけです。

さて、上下に分割した時点で、歯冠側は摘出可能になります。歯根と切り離してしまえば、歯冠を取り出すのは容易です。すると、どうでしょう? 「親知らずの歯根」と第二大臼歯の間に、いくらかの隙間ができるはずです。もちろん、この隙間は先ほどまで歯冠が存在していたスペースです。

これで、親知らずの歯根を抜歯する準備が整いました。歯冠がなくなった隙間を利用して、「生えている方向(=手前)」に引き抜くことができます。これが、水平埋伏智歯抜歯術の手順です。手間のかかる術式なので、水平埋伏した親知らず1本を抜歯するのに1時間ほどかかることもあります。

2.親知らずの抜歯にかかる一般的な諸費用

ここまでに「親知らずの抜歯費用」を紹介しましたが、実際に請求される金額はもう少し高くなります。歯医者さんを受診すれば初診料がかかりますし、レントゲンの検査費用もかかるからです。

この章では、「実際、親知らず抜歯のために歯科医院を受診した場合、どのような費用がかかるのか」を確認することにしましょう。

2-1 歯科初診料・歯科再診料

歯科医院を初めて受診する場合、初診料がかかります。同じ歯科医院に以前、通っていたとしても、「一連の治療が終了して以降、あらためて受診する場合」は初診扱いになり、初診料が必要です。さらに「患者さん都合で治療を1ヶ月以上にわたって中断したあと、受診を再開する場合」も初診となります。

一連の治療で2回目以降に受診するときは、受診のたびに歯科再診料がかかります。なので、「親知らずを抜いてほしい」と最初に受診したときに歯科初診料を支払い、それからは通院するたびに歯科再診料を支払うわけです。

《初診・再診の保険点数》
歯科初診料:234点→702円
歯科再診料:45点→135円

2-2 医学管理料など諸費用

「医学管理料」というのは、「治療計画を作成し、患者さんに内容説明すること」に対して請求される料金です。簡単に言うならば、「治療説明&カウンセリング費用」となります。歯科医院の場合は「歯科疾患管理料」と呼ばれます。説明内容を文書化して受け取る場合、さらに「文書提供加算」がかかります。

また、「個別の保険点数を細かく記載した明細書」を発行している医療機関の場合、「明細書発行体制等加算」が上乗せされます。

《医学管理料など諸費用の保険点数》
歯科疾患管理料:100点→300円
文書提供加算:10点→30円
明細書発行体制等加算:1点→3円

2-3 レントゲン撮影にかかる検査費用

抜歯をする前には、レントゲン写真を撮って親知らずの状況を確認します。下顎の親知らずなら「下顎神経までの距離」、上顎なら「上顎洞(鼻の両脇にある空洞)までの距離」を測る必要があるので、顎全体を撮影するパノラマレントゲンを撮影することが多いです。

「フィルム式レントゲン」と「デジタルレントゲン」で費用が変わりますが、現在はデジタルレントゲンが主流です。こちらの記事でも、デジタルレントゲンを使用した場合の金額で計算することにしましょう。

《デジタルレントゲンの保険点数》
画像診断料(単純X線):58点→174円
画像診断料(パノラマレントゲン):402点→1,206円
画像診断料(CTスキャン):1,170点→3,510円

2-4 伝達麻酔にかかる費用

通常、歯科治療・抜歯には浸潤麻酔という麻酔をおこないます。これは、歯の根元あたりにある「傍骨膜(ぼうこつまく)」に麻酔液を入れる方法です。だいたい100秒~240秒で麻酔液は神経まで染みこんでいきます。

ただ、下顎の骨は骨密度が高く、なかなか浸潤麻酔が染みこんでくれません。特に体格の良い男性の場合、骨がしっかりしていて染みこみにくい傾向があります。結果、下顎の奥歯には浸潤麻酔が効きにくい…と言われています。浸潤麻酔で十分な作用が得られない場合、顎の神経叢(神経が束になっているところ)に直接、麻酔を打ちます。この方法を「伝達麻酔」または「歯槽神経ブロック」と呼びます。

浸潤麻酔の費用は抜歯費用に含まれていますが、伝達麻酔をおこなった場合は別計算になります。

《伝達麻酔の保険点数》
伝達麻酔:42点→126円

2-5 投薬にかかる費用

親知らずの抜歯をした場合、処方される可能性があるのは鎮痛剤と抗生物質です。鎮痛剤に関しては「痛かったら飲んでくださいね」という形式(頓服薬)でほぼ確実に処方されます。抗生物質は「周囲に炎症が見られるときだけ処方する歯科医師」と「傷口への細菌感染を予防するため、状況にかかわらず処方する歯科医師」にわかれます。一応、処方された場合はきちんと飲みましょう。

さて、投薬を受けるとき、処方箋を書いてもらうための費用として「処方箋料」がかかります。処方薬が「6種類以下の場合」と「7種類以上の場合」で保険点数が異なりますが、親知らずの抜歯であれば、普通に考えて「6種類以下」です。

ちなみに、同じ有効成分を用いたジェネリック(後発医薬品)での調剤を認める「一般名処方」を行う場合は「一般名処方」の加算が生じます。

《投薬の保険点数》
処方箋料(6種以下):68点→204円
一般名処方:2~3点→6~9円

2-6 そのほかの費用がかかる場合も…!?

状況によっては、上述した以外の費用がかかることもあります。あくまでも「費用の目安」を紹介する記事ですので、すべての可能性をあげることはしていません。「時間外診療・休日診療の場合」「治療に特段の配慮を要する患者さんの場合」などをはじめ、追加で費用が加算されるケースは十分に考えられます。

2-7 抜歯に入院を要するケースも…?

また、中には抜歯に入院を要する場合もあり、そういった特殊なケースでは費用が大きく変動します。通常の歯科医院では対応できないので、総合病院・大学病院の歯科口腔外科に相談する必要があるでしょう。

全身麻酔を用いるなら全身麻酔の費用に加えて、平均2泊3日の入院費用がかかります。大きく費用が変動し得るケースとしては、たとえば、以下のような状況が考えられます。

無歯科医地区の住人

離島など無歯科医地区に在住の人が近隣地域の医療機関で抜歯する場合、通院回数を1回にするため4本同時抜歯することがあります。この場合、全身麻酔下(または静脈内鎮静下)で抜歯をおこない、全身麻酔なら平均2泊3日、鎮静なら平均1泊2日の入院を要します。

歯科治療への協力が困難な患者さん

精神疾患などで、歯科治療に協力することが難しい患者さんであれば、全身麻酔下で抜歯することになります。やはり、2泊3日程度の入院が必要です。

仕事の都合などで4本同時抜歯する人

「スケジュール上、どうしても1回しか通院できない」といった事情がある場合、全身麻酔下(または静脈内鎮静下)で4本同時抜歯することがあります。原則として、入院しての全身管理を要します。

全身疾患のコントロールを要する患者さん

抜歯中に全身管理を要するような全身疾患があれば、入院での抜歯をおこなうことがあります。「重度の糖尿病でインスリンのコントロールが必要」「血友病で、出血を伴う処置には血小板の輸血が必要」といった場合です。

3.親知らずの抜歯が保険外になることもある…?

通常、親知らずの抜歯は保険診療ですが、一部、保険外(自由診療)になるケースがあります。それは、「矯正治療に伴って、親知らずを抜歯する場合」と「すでに歯を失った部位に親知らずを移植する場合」です。

自由診療は「歯科医院が自由に価格を決める診療」なので、一律の料金は設定されていません。ただ、一般的に「保険診療でもおこなわれる術式を自費診療で実施する」という場合、保険診療における10割負担の金額を1.3~1.5倍した金額が設定されます。仮に「10割負担×1.5倍」と仮定した場合、以下のようになります。

《自由診療での親知らず抜歯費用》
通常抜歯:約3,900円
難抜歯:約7.050円
水平埋伏智歯:約15,750円
下顎水平埋伏智歯:約20,250円

実際には検査費用・投薬費用・麻酔費用などが加わるので、もっと高くなります。普通抜歯で「約6,000円~」、水平埋伏智歯で「約50,000円~」といった価格設定が多いようです。

3-1 矯正のために実施する親知らず抜歯は自由診療!

歯列矯正のために親知らずを抜歯する場合、親知らずの抜歯を含めて自費になります。現状のルールでは「一連の治療において、自由診療と保険診療をまぜこぜに実施すること」は「混合診療」と呼ばれ、禁止されています。自由診療を実施するなら、関連する治療はすべて自費になるのです。

3-2 すでに歯を失った部位に歯牙移植するなら自由診療!

歯を失ったところに、親知らずを移植する「歯牙移植」という治療があります。保険内で歯牙移植をするためには「移植に使う歯が親知らず・埋伏歯のどちらかであること」と「移植先の歯がまだ存在していること」の2条件を満たさなくてはなりません。「すでに歯がなくなった場所」に歯牙移植するなら、親知らずの抜歯費用を含めて自由診療の扱いになります。

4.まとめ

以上、親知らずの抜歯にかかる一般的な費用でした。保険診療で抜歯する場合、それほど高い金額になることはありません。よほど難しい症例でなければ「町の歯医者さん」で対応可能なので、まずはふだん受診している歯科医院に相談してみてください。

また、「抜歯費用の目安」を解説する記事なので「抜歯前提の解説」をしましたが、親知らずは必ずしも抜歯適応…というわけではありません。真っ直ぐ生えていて、周囲に悪影響を及ぼしていないなら、保存可能です。抜歯するかどうかも含めて、まずは歯医者さんで相談してみてください。

コージ歯科_親知らず_抜歯_費用

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