親知らずの抜歯にかかる費用は?生え方・状況別の金額をリサーチ

親知らずの抜歯にかかる費用は?生え方・状況別の金額をリサーチ

 

 

親知らずは、生え方によっては周囲の歯や歯ぐきに影響を与え、口腔内のトラブルにつながることがあります。実際、「斜めに生えてくる」「横向きのまま歯ぐきや骨の中に埋まっている」などの場合、痛みや腫れ、むし歯、歯周病の原因になることがあります。そのため、状態によっては抜歯が検討されます。

そこで、こちらの記事では「親知らずの抜歯にかかる費用」を解説します。親知らずの抜歯費用は、生え方や処置の難易度、検査内容などによって変わるため、「生え方による費用の違い」にも言及しています。

※ここでは2026年現在の3割負担の場合の保険診療の費用を記載しています。区分や制度の改定でも変動しますので、あくまで目安としてください。

この記事の目次

1.親知らずの抜歯費用は、生え方によって異なる!

保険診療の費用は「診療報酬点数」によって定められています。ただし、実際に支払う金額は、抜歯の難易度、検査内容、薬の処方、麻酔の種類、受診する医療機関の体制などによって変わることがあります。

親知らずの抜歯をおこなう場合、「親知らずの生え方」によって診療報酬点数が異なります。生え方によって、抜歯の難しさや方法が変わるからです。

まずは、「親知らずの生え方」ごとに定められている診療報酬点数を確認し、「親知らずの抜歯費用がいくらなのか」を確認することにしましょう。保険点数を金額に直すときは「1点=10円」です。ただし、実際には保険適用されて3割負担になる場合が多いため、「1点=3円」で計算すると、窓口で支払う費用の目安を出すことができます。

※この章では「抜歯費用」だけを算出していますが、実際には初診料・再診料・レントゲン撮影料・処方料なども加わります。親知らずの抜歯にかかる一般的な諸費用は後述します。

1-1 親知らずを普通抜歯するときの費用

親知らずを抜歯するとき、特に「抜歯が難しくなるような事情」がなければ普通抜歯になります。普通抜歯というのは、歯を器具で動かしながら抜く一般的な抜歯方法です。斜めに生えていたとしても、普通抜歯の術式で抜歯可能なら「普通抜歯」として扱われることがあります。

《普通抜歯の保険点数》

乳歯:130点(医療費総額1,300円、3割負担390円)
前歯:160点(医療費総額1,600円、3割負担480円)
臼歯:270点(医療費総額2,700円、3割負担810円)

親知らずは永久歯の臼歯に分類されるため、普通抜歯として算定される場合は270点となります。3割負担の場合の自己負担額は810円が目安です。なお、親知らずの状態によっては埋伏歯抜歯など別の区分が適用され、費用が高くなることがあります。

1-2 親知らずが難抜歯となるときの費用

「歯根が曲がっている」「歯根が肥大している」「歯根が歯槽骨(歯を支える骨)に癒着している」などの問題があると、通常の方法だけで抜歯するのが難しい場合があります。骨を削ったり、歯根を分割したりして抜歯する必要がある場合は「難抜歯」として扱われます。

《難抜歯の保険点数》

難抜歯加算:230点(医療費総額2,300円、3割負担690円)

「難抜歯加算」という表記のとおり、この保険点数は普通抜歯の費用に加算されます。そのため、骨の開削や歯根分離などを必要とする親知らずの抜歯では、普通抜歯(臼歯)270点と難抜歯加算230点を合わせて500点となります。3割負担の場合の自己負担額は約1,500円が目安です。

1-3 親知らずが埋伏歯であるときの費用

難抜歯より、さらに抜歯が困難な例として「埋伏歯」が存在します。ただ、診療報酬における「埋伏歯」の定義は、世間一般で使われるときの「埋伏歯」とは意味合いが異なります。

世間一般で埋伏歯というのは「歯の全部または一部が歯ぐきに埋まっている歯」を指すことがあります。全部が歯ぐきに埋まっていれば「完全埋伏歯」、一部が埋まっているだけなら「不完全埋伏歯」と呼ばれます。

一方、診療報酬上の埋伏歯は、完全埋伏歯(骨性)または水平埋伏智歯など、一定の条件に該当する場合に算定されます。親知らずが横向きに埋まっている状態は「水平埋伏智歯」と呼ばれます。

《埋伏歯の保険点数》

埋伏歯:1,080点(医療費総額10,800円、3割負担3,240円)
下顎智歯加算:230点(医療費総額2,300円、3割負担690円)

水平埋伏智歯を抜歯するときの費用は、埋伏歯抜歯の1,080点(3割負担3,240円)が基本となります。さらに、下顎の水平埋伏智歯を抜歯する場合には、下顎智歯加算230点(3割負担690円)が加算されます。

そのため、費用の目安は

上顎の水平埋伏智歯:約3,240円
下顎の水平埋伏智歯:約3,930円

となります。

一般に、「上の親知らず抜歯」と「下の親知らず抜歯」では、下の歯を抜くほうが難しくなることがあります。下顎骨(かがくこつ)は上顎骨(じょうがくこつ)より硬く、神経との位置関係にも注意が必要になるためです。

水平埋伏智歯抜歯術とは…?

横向きに埋まっている親知らずを抜歯するときは、「水平埋伏智歯抜歯術」と呼ばれる手術をおこなうことがあります。

基本的に、横向きの親知らずは「手前の歯(第二大臼歯)」のほうを向いていることが多くあります。歯は生えている方向に沿って抜く必要があるため、横向きの親知らずをそのまま上方向に引き抜くことは難しい場合があります。手前を向いているなら、手前に引き抜く必要があります。しかし、親知らずの手前には第二大臼歯があるため、そのままでは抜けないことがあります。

そこで、水平埋伏智歯抜歯術が行われます。まず、歯ぐきを切開し、必要に応じて歯槽骨を削って、埋まっている親知らずを見える状態にします。その後、親知らずを分割し、「歯冠側」と「歯根側」にわけます。歯冠は「歯の上部」で、歯根は「歯の根っこ」です。埋まった状態のままで、歯を分割するわけです。

歯冠と歯根を分けることで、歯冠側を取り出しやすくなります。歯冠を取り出すと、親知らずの歯根と第二大臼歯の間にスペースができます。この隙間を利用して、歯根を抜歯します。

これが、水平埋伏智歯抜歯術の基本的な手順です。手間のかかる術式なので、水平埋伏した親知らず1本を抜歯するのに時間がかかることもあります。ただし、処置時間は親知らずの位置や形、神経との距離、炎症の有無などによって異なります。

2.親知らずの抜歯にかかる一般的な諸費用

ここまでに「親知らずの抜歯費用」を紹介しましたが、実際に請求される金額はもう少し高くなります。歯科医院を受診すれば初診料や再診料がかかりますし、レントゲンの検査費用、薬の処方費用などが加わるためです。

この章では、「実際、親知らず抜歯のために歯科医院を受診した場合、どのような費用がかかるのか」を確認することにしましょう。

2-1 歯科初診料・歯科再診料

歯科医院を初めて受診する場合、初診料がかかります。同じ歯科医院に以前、通っていたとしても、「一連の治療が終了して以降、あらためて受診する場合」は初診扱いになることがあります。

一連の治療で2回目以降に受診するときは、受診のたびに歯科再診料がかかります。つまり、「親知らずを抜いてほしい」と最初に受診したときに歯科初診料を支払い、それからは通院するたびに歯科再診料を支払うことになります。

《初診・再診の保険点数》

歯科初診料:272点(3割負担約820円)
歯科再診料:59点(3割負担約180円)

2-2 医学管理料など諸費用

「医学管理料」というのは、患者さんの状態を確認し、治療計画や注意点などを説明・管理することに対して算定される費用です。歯科医院の場合は「歯科疾患管理料」と呼ばれるものがあります。

説明内容を文書化して受け取る場合、文書提供に関する加算がかかることがあります。また、個別の保険点数を細かく記載した明細書を発行している医療機関では、明細書発行体制等加算が算定される場合があります。

《医学管理料など諸費用の保険点数の例》

歯科疾患管理料:90点(3割負担270円)※算定要件を満たす場合
明細書発行体制等加算:1点(3割負担3円)

※医学管理料は、患者さんの状態や診療内容、医療機関の届出状況などによって算定の有無や点数が異なります。

2-3 レントゲン撮影にかかる検査費用

抜歯をする前には、レントゲン写真を撮って親知らずの状況を確認します。下顎の親知らずなら「下顎管や神経までの距離」、上顎なら「上顎洞(鼻の両脇にある空洞)までの距離」を確認する必要があるため、顎全体を撮影するパノラマレントゲンを撮影することがあります。

また、神経や上顎洞との位置関係をより詳しく確認する必要がある場合には、歯科用CTを撮影することもあります。

《画像検査の費用の目安》
パノラマレントゲン:撮影方法や算定条件により異なる
CT撮影:撮影部位や算定条件により異なる

※レントゲンやCTの費用は、撮影方法、診断料、電子画像管理加算などの有無によって変わります。

2-4 伝達麻酔にかかる費用

歯科治療・抜歯では、一般的に局所麻酔をおこないます。歯の周囲に麻酔液を入れる「浸潤麻酔」が使われることが多いです。

ただ、下顎の奥歯では、骨の状態や炎症の有無などによって浸潤麻酔が効きにくいことがあります。浸潤麻酔で十分な作用が得られない場合、神経の近くに麻酔を効かせる「伝達麻酔」が行われることがあります。

浸潤麻酔の費用は抜歯費用に含まれる場合がありますが、伝達麻酔をおこなった場合は別に算定されることがあります。

《伝達麻酔の保険点数》
伝達麻酔:42点→126円

2-5 投薬にかかる費用

親知らずの抜歯をした場合、処方される可能性があるのは鎮痛薬や抗菌薬などです。鎮痛薬は「痛かったら飲んでください」という形式で処方されることがあります。抗菌薬は、炎症の状態や抜歯の内容、患者さんの全身状態などを踏まえて、歯科医師が必要と判断した場合に処方されます。

処方された薬は、歯科医師や薬剤師の指示に従って服用しましょう。

処方を受けるときは、処方箋料や薬剤料などがかかります。薬の種類や日数、院内処方か院外処方かによって費用は異なります。

2-6 そのほかの費用がかかる場合も…!?

状況によっては、上述した以外の費用がかかることもあります。あくまでも「費用の目安」を紹介する記事ですので、すべての可能性をあげることはしていません。「時間外診療・休日診療の場合」「治療に特段の配慮を要する患者さんの場合」「処置後に追加の処置が必要になった場合」などをはじめ、追加で費用が加算されるケースは考えられます。

2-7 抜歯に入院を要するケースも…?

また、中には抜歯に入院を要する場合もあり、そういった特殊なケースでは費用が大きく変動します。通常の歯科医院では対応が難しい場合、総合病院・大学病院の歯科口腔外科に紹介されることがあります。

全身麻酔や静脈内鎮静を用いる場合は、麻酔に関する費用や入院費用がかかります。大きく費用が変動し得るケースとしては、たとえば、以下のような状況が考えられます。

無歯科医地区の住人

離島など無歯科医地区に在住の人が近隣地域の医療機関で抜歯する場合、通院回数を少なくするため、複数本の抜歯を同時に検討することがあります。この場合、全身麻酔下または静脈内鎮静下で抜歯をおこない、入院が必要になることがあります。

歯科治療への協力が困難な患者さん

障害や疾患などにより、通常の歯科治療に協力することが難しい患者さんでは、全身麻酔下で抜歯が検討されることがあります。この場合も、入院が必要になることがあります。

仕事の都合などで複数本を同時に抜歯する人

「スケジュール上、どうしても通院回数を少なくしたい」といった事情がある場合、全身麻酔下または静脈内鎮静下で複数本を同時に抜歯することがあります。ただし、実施の可否は、親知らずの状態や全身状態、医療機関の方針によって異なります。

全身疾患のコントロールを要する患者さん

抜歯中に全身管理を要するような全身疾患があれば、入院での抜歯をおこなうことがあります。たとえば、重度の糖尿病、血液疾患、抗凝固薬の服用、心疾患などがある場合は、医科と連携しながら慎重に判断されます。

3.親知らずの抜歯が保険外になることもある…?

通常、親知らずの抜歯は保険診療で行われることが多いです。ただし、一部、保険外(自由診療)になるケースがあります。たとえば、「矯正治療に伴って、親知らずを抜歯する場合」や「歯を失った部位に親知らずを移植する場合」などです。

自由診療は「歯科医院が自由に価格を決める診療」なので、一律の料金は設定されていません。費用は医院によって大きく異なるため、事前に見積もりを確認しましょう。

3-1 矯正治療に伴う親知らずの抜歯は、自由診療?

歯列矯正のために親知らずを抜歯する場合、親知らずの抜歯を含めて自由診療になることがあります。保険診療と自由診療を一連の治療の中で併用することは「混合診療」として原則認められていないためです。

ただし、矯正治療でも、厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常や、顎変形症など一定の条件を満たす場合には、保険診療の対象となることがあります。具体的な適用可否は、受診する医療機関で確認しましょう。

3-2 すでに歯を失った部位に歯牙移植するなら自由診療になる場合がある

歯を失ったところに、親知らずを移植する「歯牙移植」という治療があります。保険診療で歯牙移植を行うには、移植に使う歯や移植先の状態など、一定の条件を満たす必要があります。

「すでに歯がなくなった場所」に歯牙移植する場合など、条件を満たさないケースでは、親知らずの抜歯費用を含めて自由診療の扱いになることがあります。治療を検討する場合は、保険適用の可否と費用を事前に確認しましょう。

4.まとめ

以上、親知らずの抜歯にかかる一般的な費用でした。保険診療で抜歯する場合、抜歯そのものの費用は高額になりにくい傾向があります。ただし、実際には初診料、再診料、画像検査、薬、麻酔、処置後の通院費用などが加わります。まずはふだん受診している歯科医院に相談してみてください。

また、「抜歯費用の目安」を解説する記事なので「抜歯前提の解説」をしましたが、親知らずは必ずしも抜歯が必要というわけではありません。真っ直ぐ生えていて、清掃しやすく、周囲に悪影響を及ぼしていないなら、経過観察できる場合もあります。抜歯するかどうかも含めて、まずは歯科医院で相談してみてください。

【参考サイト】

・厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

・e-診療報酬点数表「K404 抜歯手術」
https://recenavi.net/shinryohoshu/K/K404.html

・国税庁「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm

貝塚浩二 先生監修
先生からのコメント

1回で4本抜歯したら、退院後もしばらくは食事などが大変です。片側の上下2本なら浸潤麻酔で可能です。

医院情報
住所:東京都葛飾区お花茶屋2-5-16
電話:03-3601-7051
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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