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親知らずの抜歯後、タバコはNG…?ドライソケット予防の基礎知識

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「きわめて悪化した虫歯」「斜め・横向きの親知らず」は、抜歯が基本になります。ところで、喫煙者の方が抜歯したときは、必ずといって良いほど、歯科医師に「せめて当日・翌日はタバコを我慢するように」と言われるはずです。

なぜ、抜歯後にタバコを吸ってはいけないのでしょうか? 抜歯後にタバコを吸うと、いったい、どのようなリスクがあるのでしょうか? こちらの記事では、「抜歯後の喫煙が推奨されない理由」を解説しています。

1.親知らずの抜歯後、タバコを吸ってはいけない理由

親知らずを抜歯したとき、「タバコを控えるように」と言われるには理由があります。別に「将来的な健康のために」という漠然とした提案ではありません。抜歯後、順調な治癒を目指すためには、タバコを控える必要があるのです。

1-1 タバコは、傷口の治癒を遅くする…?

タバコの煙に含まれるニコチンは、「血管を収縮させる働き」を持っています。ニコチンの血管収縮作用はきわめて即効性が高く、喫煙開始から1分未満(多くは10秒程度のうちに)毛細血管が収縮します。

タバコを吸い始めた当初、「吸った瞬間、クラクラする感覚」があったと思いますが、これは頭の血管が収縮して酸素不足になり、瞬間的な眩暈(めまい)を起こしたことによります。あの感覚を思い起こせば、ニコチンの血管収縮作用がどれほど強力か、察しがつくのではないでしょうか?

さて、傷口が治癒していくためには、血液が必要です。しかし、定期的にタバコを吸い続けていると、血管が収縮して、傷口への血流が阻害されることになります。結果、傷口が塞がるまでに余分な時間を要するのです。

1-2 タバコは、傷口の感染リスクを増大させる…?

タバコの煙には、免疫力を下げる作用があります。たとえば、喫煙者の肺には、大量のマクロファージが存在します。マクロファージは別名を貪食細胞といい、体内に入ってきた有害物質を取りこむ(=貪食する)働きを有しています。喫煙者の肺には有害物質が絶えず入ってくるので、マクロファージはタバコの有害物質を貪食し続けるのです。結果、本来、マクロファージが対応するべき病原体にまで、手が回りません。

そのほか、タバコには「唾液の分泌量を低下させる働き」も知られています。唾液にはリゾチーム、ラクトフェリンといった抗菌物質が含まれており、口腔内における雑菌の増殖を抑えています。唾液の分泌量が減れば、それだけ口腔内の雑菌は増える傾向にあるのです。

以上のように、タバコはさまざまな側面から、「免疫力の低下」を招きます。抜歯後の傷口が細菌感染するリスクは、明確に増大する…と考えるべきでしょう。

1-3 タバコはドライソケットの原因になる…?

親知らず抜歯後の喫煙が招く問題として、特に注意したいのは「ドライソケット」です。本来、抜歯後の傷口は「血餅(けっぺい)」と呼ばれる「ゼリー状になった血の塊」で覆われます。皮膚でいうところの「かさぶた」みたいなもので、傷口の保護・修復をする物質です。

しかし、抜歯後にタバコを吸うと、血餅を形成するために必要な血流が確保できなくなることがあります。結果、傷口がきちんと塞がれず、「歯槽骨まで剥き出しの穴」になってしまうのです。この状態を指して、ドライソケットと呼んでいます。ドライソケットは、傷口の治癒を大幅に遅らせる要因になります。

1-4 タバコを吸うと、意外な理由で血餅が外れる…?

ところで、ドライソケットの発生メカニズムは「血餅の形成不全」だけではありません。「いったんは血餅が形成されたものの、何らかの弾みで脱落する」というケースが存在します。むしろ、ドライソケットの原因として頻繁に見られるのは、「血餅が脱落するケース」です。

喫煙は、「血餅の脱落」を招く要因にもなります。血餅は「かさぶた」と違い、しっかりと固まっているわけではありません。物理的刺激によって、容易に脱落します。たとえば、「指・舌でいじる」「ブクブクとうがいする」などの刺激が、脱落の要因になります。

とはいえ、「直接、血餅をいじる」「ブクブクと強くうがいをする」などの動作を控えることは難しくありません。「うっかり、やってしまう」という種類の動作ではないからです。ドライソケットをよほど軽視していなければ、まず、やらないでしょう。

しかし、血餅が脱落する要因のうち、「うっかり、やってしまいがちなもの」が、1つあります。それは、「何かを吸いこむ動作」です。「ストローで飲み物を吸う」「麺類をすする」「思い切り鼻をかむ(鼻と口がつながっているので)」などの動作は、無意識のうちにやってしまう人もいるでしょう。しかし、たったこれだけの動作で、傷口の血餅を吸い出してしまうことがあるのです。

非喫煙者なら、「ストロー」「麺類」「鼻をかむ」といった動作に気をつけるだけで済みますが、喫煙者はそうはいきません。日常的に「タバコを吸う動作」をおこなっているからです。タバコを吸いこんだ拍子に血餅が…という恐れもあり得ます。

2.親知らずの抜歯後!ドライソケットになると、どんな問題が…?

ここまで「タバコはドライソケットのリスクを増やす」と説明してきました。しかし、ドライソケットになると、どのようなリスクがあるのでしょうか?この章では「ドライソケットが招く口腔トラブル」に関して、もう少し具体的に解説することにしましょう。

2-1 ドライソケットは激痛の原因になる…!?

先述のとおり、ドライソケットは「歯槽骨まで直通の穴」です。食べ物・飲み物が入りこんだ場合、骨の神経が直接刺激を受けることになります。当然、歯茎の傷が痛むのとは別次元の痛みが生じるはずです。

普通の傷口は抜歯後2~3日で痛みが弱まりますが、ドライソケットの場合は2~3日で逆に痛みが増大する傾向にあります。仕事にも集中できないほどの激痛が2週間~1か月ほど続き、日常生活に一定の悪影響が出ることは避けられません。

2-2 最悪の場合、歯性感染症の原因になることも…?

ドライソケットの内部に細菌が入りこむと、歯槽骨が細菌感染を起こすことがあります。歯槽骨が炎症を起こすので、「急性歯槽骨炎」と呼びます。

歯槽骨炎が拡大すると、「首のリンパが腫れて熱が出る(急性化膿性リンパ節炎)」「顎骨の周囲に感染して、顔が大きく腫れる(顎骨骨膜炎)」などの感染症を起こすこともあります。このように、歯が原因で生じる感染症を「歯性感染症」といいます。

3.まとめ

親知らずの抜歯後にタバコを吸うと、ドライソケットをはじめ、さまざまなリスクを増大させることになります。禁煙を指示する期間は、歯科医師によって異なり、「抜歯当日は禁煙」「抜歯翌日まで禁煙」「抜歯1週間は禁煙」など、いくつかのバリエーションがあります。

ただ、「当日・翌日」と指示する場合は「1週間なんて指示しても、きっと禁煙できないだろうから…」と妥協しているに過ぎません。できることなら、傷口がおおむね塞がってくるまで禁煙を継続しましょう。もちろん、さらなる理想を申し上げるなら、親知らずの抜歯を機会に、タバコをやめるのが一番だと思います。

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