ホワイトニングすると痛いってホント?知覚過敏のリスクを解説

ホワイトニングすると痛いってホント?知覚過敏のリスクを解説

「歯をホワイトニングすると、知覚過敏で痛い…」という話を聞いたことはありませんか? 実際、歯科医院の公式ページを見ても「ホワイトニングから24時間は冷たいものに刺激を感じる」といった説明がなされています。

中には「ホワイトニング=痛い」と考えて、なかなか施術に踏み出せない人もいらっしゃるようです。そこで、こちらの記事では「なぜ、ホワイトニングをすると痛みが出るのか」を解説することにしました。痛みのメカニズムを知ることで、「多くの場合、それほど強く痛むわけではない」という事実を知っていただければ幸いです。

この記事の目次

1.なぜ、ホワイトニングをすると痛いのか?

中には「ホワイトニングをすると歯が痛むことがある」という話を聞いて、過度に心配している人もいるようです。たとえば、歯が溶けるのではないか…などと誤解している人もいるかもしれません。

そこで、まずは「ホワイトニングを受けたあとに痛みが出る理由」を解説することにしました。痛いと感じる理由がわかれば、「特に危険なものではない」と納得できるはずです。どんな物事であれ、不安を克服するための第一歩は「正しく理解すること」にあります。

1-1 「痛い…!」と感じる原因は、ペリクル層が剥がれること…!

歯は外側から「エナメル質→象牙質→歯髄」という順序で構成されています。このあたりは、世間一般でも広く知られているように感じます。ただ、エナメル質の外側にできる皮膜については、あまり知られていません。

エナメル質の外側には、有機物の皮膜が存在します。唾液に含まれる「糖タンパク」が皮膜をつくることで形成される「ペリクル層」です。ペリクル層は、歯磨きなどで除去されても、ほんの数秒で再生されます。

しかし、ホワイトニング剤には、ペリクル層を分解・除去する働きがあります。ホワイトニング剤は、ペリクル層を取り除いた上でエナメル質に直接作用する薬剤なのです。以上から「ホワイトニングをすると、歯の表面を保護していたペリクル層がなくなる」ということがわかりました。

1-2 ペリクル層がなくなると、知覚過敏が起こりやすくなる!

歯の表面をコーティングしているペリクル層がなくなると、一時的に刺激に弱い状態になります。結果、知覚過敏のような痛みが出ることがあるのです。具体的には、「冷たいもの」「甘いもの」「歯ブラシなどの物理的接触」に対して痛いと感じます。

ホワイトニング剤によって分解された場合でも、24時間ほどでペリクル層は再生します。なので、大きな問題がなければ、24時間で痛みは解消するはずです。ただし、以下のようなケースでは、24時間を超えても知覚過敏の症状が出ることがあります。

◆もともと知覚過敏だった場合
◆歯に亀裂・破折がある場合
◆歯周病などで歯茎が下がっている場合
◆歯ぎしり・食いしばりなどの癖がある場合

歯の象牙質が剥き出しになると、知覚過敏が起こりやすくなります。エナメル質が削れていたり、歯にヒビが入っていたりすれば、外部からの刺激が直接、象牙質に伝わるはずです。もともと、知覚過敏の素因がある人の場合、「ホワイトニングをきっかけに知覚過敏の症状が強まる」という恐れも否定できません。

以上から、「ホワイトニングに起因する痛みは24時間ほどで治まる」という事実に加えて、「もともと知覚過敏の素因がある人は、ホワイトニングをきっかけに症状が顕在化することがある」という結論が導かれます。

2.そもそも、知覚過敏とは何か?

ところで、知覚過敏の痛みはどこから生じるのでしょうか? 歯に穴があいているわけでもないのに、どうして「痛い」と感じるのでしょう? この章では、「知覚過敏のメカニズム」を解説したいと思います。

2-1 象牙質には神経が通っていない…!

知覚過敏の痛みは「象牙質が露出している場合」に生じます。しかし、実のところ、象牙質に神経は通っていません。歯の神経が通っているのは「歯髄」です。それでも、事実として、象牙質は「冷たいもの・甘いもの・物理的刺激」に触れると痛みます。神経も通っていないのに、なぜ痛むのでしょうか?

2-2 「痛い」と感じる原因は「象牙細管」の存在!

象牙質には「表面から歯髄の方向」に無数の穴が存在します。表面と歯髄を結ぶトンネルのようになっている穴を「象牙細管」と呼んでいます。そして、象牙細管の中には「象牙細管内組織液」と呼ばれる液体が入っています。

さて、象牙質の表面にある「象牙細管の入り口」に「冷たいもの」が触れると、どうなるでしょう? 象牙細管はあまりに細いので、「冷たいもの」自体が奥に侵入することはありません。しかし、象牙細管が冷やされたことで、象牙細管内組織液の体積が変わります。結果、組織液が動いて、歯の深部にある歯髄が刺激されるのです。

「甘いもの」「物理的刺激」でも、ほとんど同様です。「甘いもの」は象牙細管内の浸透圧を変化させることで、「物理的刺激」は象牙細管を刺激することで、やはり組織液を移動させます。結果、外部の刺激が「組織液の移動」という形で歯髄に伝わるのです。

この「象牙細管内組織液の動きにより、歯髄が刺激される」というメカニズムを「動水力学説」と呼んでいます。証明されたわけではありませんが、ほとんどの歯科医師・医師・医学博士が指示する有力な説となっています。事実上、確定事項であると考えて問題ないでしょう。

3.ホワイトニングで知覚過敏の痛みが出たら…?

ホワイトニングをきっかけに知覚過敏の痛みが現れた場合、どうすれば良いのでしょうか? もちろん、当初は「鎮痛剤を服用し、痛みが落ち着くのを待つ」といった経過観察措置が採られるでしょう。しかし、ある程度の期間を経ても痛い場合、知覚過敏の治療をおこなう必要性が出てきます。

3-1 知覚過敏用の歯磨き粉でケアする

「歯髄への神経伝達を妨げて、痛みを抑える(=感覚を鈍磨させる)」という方法があります。神経伝達を妨げる成分―「硝酸カリウム」を配合した歯磨き粉などが市販されているので、試してみると良いでしょう。

3-2 象牙細管を封鎖する治療を受ける

知覚過敏の痛みがなかなか緩和されない場合、「象牙細管の表面を封鎖する」という方法を採ることもあります。象牙細管にフタをしてしまえば、象牙細管内組織液が移動することはなくなるはずです。象牙細管を封鎖する薬剤としては、「フッ化ナトリウム」「シュウ酸カルシウム」などが知られています。

4.まとめ

以上から、「ホワイトニングをすると知覚過敏の痛みが出ることがある」という噂は事実です。しかし、歯の状態が健全であれば、24時間程度で痛みは解消します。「長期間が経過しても、まだ痛い」という人は少数なので、過度な心配はしなくても良いでしょう。

万一、ホワイトニングをきっかけに知覚過敏の症状が出ても、治療方法は存在します。それほど怖がる必要はないので、歯科医院に相談しながらホワイトニングをするかどうか検討してみてください。

 

先生からのコメント

知覚過敏などの痛みが出た場合、一般的にはフッ素などの塗布、場合によってはレーザーなどで疼痛の緩和、象牙細管の封鎖で対応します。

医院情報
住所:東京都葛飾区お花茶屋2-5-16
電話:03-3601-7051
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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