三叉神経痛が歯痛の原因に!?虫歯ではない「非歯原性歯痛」を解説

三叉神経痛

890view

歯痛を感じたとき、多くの人が「あれ、虫歯になったかな?」と考えるはずです。しかし、感覚的に「歯の痛み」だからといって、必ずしも歯に原因があるとは限りません。中には、まったく別のところに原因がある症例も存在します。

「歯に問題がないのに歯が痛い状態」を総称して、「非歯原性歯痛」と呼んでいます。こちらの記事では、非歯原性歯痛の要因となる「三叉神経痛」を解説することにしました。

1.歯が痛いけれど、歯は何ともない…? 非歯原性歯痛

「歯が痛いから…」と歯科医院を受診しても、虫歯が見つからない例があります。もちろん、最初は「虫歯以外の口腔トラブル」を考えることでしょう。たとえば、「知覚過敏」「歯周病に起因する炎症」などです。しかしながら、「どう検査しても、歯・歯茎に原因が見当たらない」という症例があります。この場合、非歯原性歯痛が疑われます。

この記事では主に「三叉神経痛」を扱いますが、非歯原性歯痛の原因はほかにも存在しています。せっかくですから、主な原因を列挙した上で、それぞれ簡単に解説することにしましょう。

1-1 三叉神経痛

顔の神経は、3つにわかれています。顔の上部にある「眼神経」、真ん中あたりにある「上顎神経」、下部にある「下顎神経」です。眼神経、上顎神経、下顎神経は大元でつながっているので、顔の神経全体を見ると「3つに分岐した神経」といえます。神経が三叉路のように分岐していることから、これらの神経全体を指して「三叉神経」と呼んでいます。

三叉神経が神経痛を起こす原因の大半は、血管による圧迫です。動脈硬化を起こした血管が三叉神経を圧迫すると考えられており、これは「三叉神経痛を起こしやすいのが中年以降である」という事実とも矛盾しません。血管が神経を圧迫することで痛みが生じるわけです。

三叉神経のうち、上顎神経、下顎神経が痛むと、多くの人が「歯が痛い」と誤解します。かなり強い痛みを生じることも多く、患者さんも「歯の神経がズキズキと痛む歯髄炎に違いない」と訴えることがあるほどです。実際、患者さんがあまりに痛みを訴えることから、歯科医師まで歯に原因があると誤認する例があります。この場合、三叉神経痛の患者さんに対して抜髄(神経を抜く処置)・抜歯を実施する…という判断ミスにつながることがあります。

1-2 帯状疱疹

「帯状疱疹」はウイルス感染症の1つです。ヘルペスウイルスの一種である「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって引き起こされます。水痘・帯状疱疹ウイルスは一度でも感染すると、体内から除去することができません。そのため、体調を崩したときなど、免疫が低下した際に帯状疱疹を発症するようになります。ちなみに、初感染のときは「水疱瘡(みずぼうそう)」を発症するので、水疱瘡にかかったことがあるなら、水痘・帯状疱疹ウイルスを体内に持っています。

一般的に、帯状疱疹は「痛み・かゆみを伴う水疱(水ぶくれ)ができる病気」と考えられています。もちろん、この認識は間違っていません。帯状疱疹の典型的な皮膚症状です。しかし、水痘・帯状疱疹ウイルスは本来、「神経に感染し、神経の炎症を引き起こすウイルス」です。実際、痛みが生じる場所は、「神経が通っている位置」に一致します。以上から、帯状疱疹は「神経に炎症が起こり、それに付随して皮膚症状が出る」と理解したほうが正確なのです。

さて、歯痛と間違いやすいのは「水痘・帯状疱疹ウイルスが三叉神経に感染している場合」です。三叉神経のうち、上顎神経、下顎神経に痛みが出たのを歯痛と勘違いすることがあります。口の中に水疱があれば帯状疱疹と判断できますが、時折、「皮膚症状がなく、神経痛だけが生じる帯状疱疹」があり、この場合は診断に難渋します。

原因が帯状疱疹であれば、抗ウイルス薬による治療をおこないます。水痘・帯状疱疹ウイルスに有効な抗ウイルス薬としては、「アシクロビル(商品名:ゾビラックス)」「バラシクロビル塩酸塩(商品名:バルトレックス)」「ファムシクロビル(商品名:ファムビル)」「アメナメビル(商品名:アメナリーフ)」などが知られています。ただ、いずれもウイルスの増殖を抑えるだけで、体内から根絶できるわけではありません。あくまでも、治癒を早める薬です。

1-3 偏頭痛・群発頭痛

偏頭痛や群発頭痛などの頭痛を「歯の痛み」と誤認するケースが存在しています。どちらの頭痛も「三叉神経の問題が関与している」と考えられているので、上顎神経、下顎神経に感じた痛みを「歯痛である」と誤認することは十分にあり得るでしょう。

患者さん自身で「偏頭痛なのか、群発頭痛なのか」を判断するのは困難ですから、医療機関で診断してもらってください。原因不明の頭痛であれば、神経内科を受診することで適切な診断を受けられるはずです。

1-4 筋・筋膜性歯痛

首・肩・顔の筋肉がこわばり、筋肉が痛むのを「歯が痛い」と誤認することがあります。首・肩・顔の筋肉が緊張状態になる原因としては「歯を強く噛みしめる癖」「口呼吸の癖」「過度のストレス」などが存在します。これを「筋・筋膜性歯痛」と呼びます。筋・筋膜性歯痛の場合、ほとんどのケースで「この部分の筋肉を押すと痛む」というトリガーポイント(圧痛点)が存在します。

急性の筋・筋膜性歯痛には、「トリガーポイント注射(トリガーポイントに麻酔を打って神経ブロックする治療)」「中枢性筋弛緩薬」「抗炎症薬」などを用います。慢性的な筋・筋膜性歯痛に対しては、理学療法士によるマッサージ・温熱療法などを試みます。

1-5 非定型歯痛

原因不明の歯痛を指して、「非定型歯痛」または「突発性歯痛」といいます。患者さん本人は「歯が痛い」と訴えますが、神経を抜いても、抜歯しても、非定型歯痛の痛みは解消しません。抜歯後は「存在しない歯が痛む」という症状に悩まされます。

原因ははっきりしていませんが、「精神的ストレスで血管が充血して痛むのではないか」「歯科治療を繰り返すうち、痛みを伝える神経(侵害受容ニューロン)が混乱するのではないか」など有力な説はいくつか存在しています。実際、歯科治療を何度も受けた人が非定型歯痛を訴えることが多く、神経因説を支持する医療関係者も多くいるようです。ただ、歯科治療されたことがない歯に非定型歯痛の症状が出る例もあるので、いくつかの複合的要因によって発症する…と考えるべきでしょう。

さて、非定型歯痛に対して、鎮痛剤はまったく効果がなく、麻酔による神経ブロックも奏効しません。8割くらいの患者さんは、抗精神病薬(神経遮断薬)や三環系抗うつ薬を投与することで症状が改善します。

1-6 精神疾患に起因する歯痛

「歯・歯周組織に疾患がなく、精神疾患を有している患者さん」が歯痛を訴える場合、その痛みは精神疾患に起因すると考えられます。1つは疼痛性障害といって、「特に問題がない部位に痛みを感じる精神疾患」です。身体表現性障害という疾患の一種です。もう1つは「うつ病」の患者さんが歯痛を訴えるケースで、これは欝病の症状と考えるべきでしょう。

疼痛性障害・うつ病に対しては、抗不安薬(マイナートランキライザー)や抗うつ薬による治療が試みられます。

2.三叉神経痛の症状・治療法とは?

それでは、三叉神経痛の症状をもう少し詳しく確認することにしましょう。主な症状は痛みだけなので、「痛みの持続時間」「痛みが発生するタイミング」などをもとに、三叉神経痛かどうかを判断しなくてはなりません。

2-1 三叉神経痛の具体的な症状

三叉神経痛の特徴は「激しい痛みが突発的に生じて、すぐに消える」というものです。ほとんどの場合、痛むのは数秒であり、どんなに長くても数十秒以内と考えてください。分単位で痛みが続くようなら、恐らく三叉神経痛ではありません。

痛みが出るタイミングは、顔面・口腔に何らかの刺激が加わったときです。メイク、ひげそり・歯磨きなどで痛むことが多いです。そのほか、食べ物を噛んだ瞬間、冷たいものを口に含んだ瞬間などに痛みを訴える人もいます。特定の部位に何かが触れたとき、同じ場所に突発的な痛みが走るなら、三叉神経痛の可能性があります。

手術療法による根本治療

三叉神経痛の原因は、「血管が神経を圧迫すること」です。そこで、神経を圧迫している血管の位置を移動させます。要するに、血管を神経から剥離して、別の場所に移動させるための手術です。根本原因を取り除く手術なのですが、現実には術後10年で2~3割の患者さんに再発が見られます。

若年で三叉神経痛を発症したなら、根本解決を目指して手術を選択するのも有力でしょう。外科手術を希望する場合、脳神経外科を受診することになります。

ガンマナイフを用いた放射線治療

ガンマナイフは、「周囲からガンマ線を照射し、その焦点を病変部に合わせる医療器具」です。病変部だけにピンポイントで、高線量のガンマ線を照射することが可能になります。脳腫瘍の治療にも用いられている「定位放射線治療の装置」です。

かつて三叉神経痛は保険適用外でしたが、2015年7月から「薬物療法で痛みをコントロールするのが困難な症例」に限って保険適用となりました。脳神経外科のある大規模病院の放射線科などで、ガンマナイフによる放射線治療をおこなっています。

2-2 三叉神経痛治療の第一選択は神経ブロック…?

さて、原因が三叉神経痛と思われる場合でも、確定診断には慎重を期さなくてはなりません。現実問題として、「原因不明の顔面痛を三叉神経痛と診断する」という部分があり、厳密に三叉神経痛かどうかを判別するのは難しいからです。歯科医院・歯科口腔外科で三叉神経痛の疑いを指摘された場合、神経内科・脳神経外科などで改めて診断を受けてから、治療方針を決めることになるでしょう。

ただ、「外科手術にも再発例があること」「平均発症年齢が50歳代であること」「神経ブロックで長期間にわたって除痛できること」などを踏まえると、第一選択は神経ブロックによる除痛になるのではないでしょうか?

3.まとめ

以上のように、歯が痛いからといって、必ずしも虫歯があるとは限りません。別の場所の痛みを「歯痛」と認識する例も珍しくないのです。非歯原性歯痛にもさまざまな種類があることから、「歯が痛いけれど虫歯が見つからない」というケースで原因を特定するのは簡単ではありません。

ごく稀に「非歯原性歯痛にもかかわらず、難治性の知覚過敏と誤診されて抜髄(神経を抜くこと)される」といったケースが存在するのも事実です。患者さん側としても、三叉神経痛を含めて「非歯原性歯痛の疑いがあるのではないか」という意識を持っておくことは重要だと思います。

高村歯科医院_三叉神経痛_歯痛

不正確な情報を報告

不正確な情報を報告

メールアドレス:任意
※メールアドレスをご入力いただいた方には、改善結果をご報告致します。
コメント(オプション):
ページトップへ