朝の眠気覚ましや仕事の合間にコーヒーを飲む人は多いと思います。ただ、コーヒーには歯を着色させる性質があります。「ステイン」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょうが、コーヒーはステインによる着色を引き起こす食品の一つです。
今回は、コーヒーを楽しみながらもステインによる着色をできるだけ抑える方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
なぜコーヒーで歯が着色するのか?
飲食物の色は、さまざまな色素の組み合わせからできています。コーヒーは、コーヒー豆に含まれるタンパク質や糖質が焙煎されて焦茶色に変化し、水に溶けると琥珀色の褐色になります。ただし、色素が飲食物に含まれているからといって、すぐに歯に沈着するわけではありません。歯の保護膜の働きが加わることで着色が起こります。
歯の表面には、ペリクルと呼ばれる保護膜が存在します。ペリクルは唾液に含まれるタンパク質が膜のようになったもので、エナメル質の保護や歯表面の修復に役立っています。しかし、歯の着色について言えば、ペリクルはネガティブな働きをしています。
食事をすると口内が酸化し、ペリクルが溶け出します。しかし、30分ほどでペリクルが再び歯の表面を覆うようになります。その際、唾液の中に色素が残っていると、ペリクルが色素を巻き込んで歯を覆い、着色が起こります。
とはいえ、すぐに色が染みつくわけではありません。色素の強いものを飲食した後、早めに歯磨きをすれば、色素の混じったペリクルを落とすことが可能です。しかし、放っておくと表面に固着して、いわゆる「ステイン汚れ」になってしまいます。
自宅でできるステインを落す方法
自宅でも実践できる方法がいくつかありますので、ご紹介いたします。
歯を白くする歯磨き粉を使う
歯を白くする歯磨き粉が市販されています。この場合の「白くする」は「ステインを落とし、歯本来の白さを取り戻す」という意味です。漂白するわけではなく、汚れを落とす歯磨き粉です。
ステインを落とす成分としては「ピロリン酸ナトリウム」「ポリリン酸ナトリウム」「メタリン酸ナトリウム」などが知られています。
歯の消しゴムを使う
歯の消しゴムには、シリコンゴムと研磨剤が含まれています。普通の消しゴムのように、歯の表面をこすることで付着したステイン汚れを落とします。研磨剤が入っていますので、力を入れすぎると表面に傷を作ってしまいますので、あまり強くこすりすぎないように、注意が必要です。
電動歯ブラシで磨く
ステイン除去機能がついた電動歯ブラシが市販されています。多くは、音波振動で汚れを落とす仕組みになっているようです。歯ブラシの振動で汚れを落とすので、研磨剤が入っている歯磨き粉は使わないようにしましょう。歯の表面を傷つけてしまう恐れがあります。
歯医者さんでできるステインを落す方法
ここでは、歯医者さんでできるステイン除去の方法をご紹介します。
PMTCを受ける
歯医者さんで行う口腔クリーニングには「PMTC」と呼ばれる処置があります。これは「プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング」の略で、専用機器を用いた清掃です。着色が目立ってきたと感じたら、ぜひ歯医者さんでPMTCを受けてみてください。頑固な着色汚れがあっさりと落ちるのを実感できるはずです。
PMTCは保険適用できるケースも
PMTCは、通常は自由診療ですが、虫歯や歯周病の治療と一緒に行う場合は保険が適用されることがあります。成人の多くは軽度の歯周病を持っているため、保険でクリーニングを受けられることもあります。受診する前に、「虫歯や歯周病の検査・治療と同時に保険でクリーニングが受けられるか」を確認することをおすすめします。
日常的にできるステインを防ぐ方法
ステインを落しても、また汚れてしまったら…と心配になりますよね。ここでは、日常的にできる着色予防法をご紹介しますので、ぜひ実践してみましょう。
優しく歯を磨く
毎日の歯磨きでは、力を入れすぎないようにしましょう。強く磨くと歯の表面に傷がつき、その傷に色素や汚れが入り込んでしまいます。これが原因で、汚れが落ちにくくなり、頑固な汚れができてしまうのです。
食後にうがいをする
食事の後は、うがいをする習慣をつけましょう。着色しやすい食べ物を食べても、すぐにステインになるわけではありません。口の中の色素をうがいで洗い流せば、簡単には着色しません。食後すぐにうがいをすることは、今日から始められる予防法です。
唾液の分泌を促す
唾液には、口の中の汚れや雑菌を洗い流し、殺菌する働きがあります。寝る前の歯磨きが重要なのは、寝ている間に唾液の分泌が減るためです。普段からガムを噛むなどして唾液の分泌を促すと、虫歯予防だけでなく、着色予防にも効果的です。
ステインを作り出すコーヒー以外の飲食物
歯を着色させる飲み物はコーヒーだけではありません。他にもステインを引き起こす飲食物があります。ここでは、歯の着色の原因となる飲食物を紹介します。
紅茶
紅茶に含まれる「タンニン」は唾液中のミネラルと結びついてステインを作ります。タンニンはポリフェノールの一種で健康には良いのですが、歯の美容には悪影響を与えます。
緑茶
緑茶に含まれる「カテキン」が、歯を着色させる要因となります。
赤ワイン
ブドウ由来の「ポリフェノール」が豊富な赤ワインは、見た目のとおり、着色の原因になりやすい飲み物です。コーヒーもそうですが、色味の強い飲み物は基本的に歯を着色させると考えましょう。
カレー
カレーのように、色の濃い食べ物はステインの原因になります。基本的に色の濃い食べ物を口にしたら、早めに歯磨きやうがいをするべきでしょう。
チョコレート
チョコレートは「カカオポリフェノール」を豊富に含んでいるので、歯を着色する食べ物の一つです。コーヒーともよく合いますが、残念ながらコーヒー&チョコレートの取り合わせは、着色のダブルパンチになってしまいます。
ニンニク・ネギ
ニンニクやネギは「硫黄」をたくさん含む食材です。硫黄には色素が歯にこびりつくのを促進する働きがあります。ニンニク・ネギ自体は色の薄い食べ物ですが、最終的にステインの原因になるという意味では要注意です。
タバコ
食べ物ではありませんが、着色汚れの原因を語る上では外せません。タバコのヤニは、ほかのさまざまな要因を上回る着色要因になります。タバコとコーヒーをセットで楽しんでいる人は、特に着色リスクが高くなるでしょう。
まとめ
コーヒーを飲みながらステインを防ぐには、着色しやすい食べ物を知り、飲食後に歯磨きやうがいをすることが重要です。着色が目立ち始めたら、歯医者さんでPMTCを受けることも大切です。これらを実践すれば、着色しやすい飲食物を摂取しても大きな問題にはなりません。コーヒーを楽しむためにも、正しいケア方法を知っておくことが大切です。
出身校:神奈川歯科大学
卒業年月日:2009年3月
2010年 新潟大学付属医歯学総合病院 勤務
2011年 神奈川歯科大学付属横浜クリニック インプラント科 入局
2013年 斉藤歯科クリニック 院長就任

執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。