歯が透けて見えるのは酸で溶けている酸蝕歯(さんしょくし)の進行サイン!その治療と予防策

歯が透けて見えるのは酸で溶けている酸蝕歯(さんしょくし)の進行サイン!その治療と予防策

飲食物の酸によって歯が透けてしまう「酸蝕歯(さんしょくし)」は、歯周病や虫歯に次ぐ疾患として、注目され始めています。歯が透けて見える理由は、歯の表面のエナメル質がすり減り、その下の象牙質が透けて見えることです。その要因として、口の中が酸性に傾いていることがあげられます。飲食物に含まれる「酸」や、胃や食道などの病気によって胃酸が逆流し、口の中が酸性に傾く時間が長引くことで、エナメル質が溶け、酸蝕歯になりやすくなります。この記事では、酸蝕歯の症状や治療、予防法について解説します。

この記事の目次

1.歯が透ける「酸蝕歯」の症状

1-1.酸蝕歯とは?

私たちの大切な歯は、主体となる「象牙質」と、それを守るように「エナメル質」が覆っています。ただ、エナメル質が食事中の『酸』によって溶かされてしまうと、歯が透けたような状態が起きてしまいます。この状態を「酸蝕歯(さんしょくし)」と呼んでいます。

下記のイラストのように、歯の先端部分が薄くなり、歯医者さんが歯の裏側から特殊なライトを照らすと、その状態がはっきりと認識できます。

酸蝕歯の中期症状である「歯の先端」が透けた状態

歯が透ける症状

歯が透けていることに気づいたら、酸蝕歯がすでに進行した中期の状態であるといえます。酸蝕歯は自然治癒できるものではありません。もし、酸蝕歯の疑いがあるならば、歯医者さんで処置を施してもらう必要があります。

1-2.酸蝕歯を放置するとどうなる?

酸蝕歯を放置すると、以下のような事態を引き起こす可能性があります。

  • ・歯の中の神経が損傷する
  • ・噛み合わせが悪くなる

1-3.酸蝕歯の疑いがある症状とは?

◆初期症状
・軽度の知覚過敏
熱いものや冷たいものを口に含んだときに感じる“しみる”という感覚があります。この感覚が生じた場合、酸蝕歯の初期症状を疑ってみてください。

・歯の表面が丸みを帯びる。
酸による摩耗が起きると、歯の表面は丸みを帯びてきます。

・歯が黄ばんで見える
歯の表面全体に光沢がないか変色している、黄ばんで見えるという状態は、酸蝕歯の初期状態であるといえます。

酸蝕歯の初期状態

◆中期以降の症状

以下の症状が起きている場合は、中期の酸蝕歯の可能性が高いといえます。

・歯が透けて見える

・重度の知覚過敏

・歯が茶色く見える

・歯に小さなへこみが出来る(進行して深くなると二次的に虫歯が発生する)

2.症状に合わせた酸蝕歯の治療

2-1.初期の治療

  • ・セルフケアの徹底
  • ・歯医者さんで薬剤を塗ってもらい、症状の解消に努める

2-2.中期以降の治療

中期以降の酸蝕歯の状態

中期以降の酸蝕歯

◆詰め物や被せ物による処置

基本的な虫歯治療と同じように、詰め物や被せものによる治療を行います。

◆3DS治療

『3DS』は、「Dental Drug Delivery System」を略したもので、自分に適した歯型のマウスピースを作成し、その中に歯の表面を再石灰化させるためのカルシウム製剤のジェルを入れ、約2時間装着させる治療法

◆ダイレクトボンディング法

歯科用レジン(プラスチック)を使って、歯の形や色をきれいに修復させる治療法

ダイレクトボンディング法

◆抜歯

ダメージがひどい場合の処置として行います。

◆注意点

酸蝕歯の治療は、原則、歯医者さんで行います。初期症状の場合、歯磨き粉の選び方や、歯を磨くタイミングに気をつければ解消が見込まれることがあります。

しかし、「歯が透ける」などの症状が生まれた場合、歯医者さんでの治療を行わないと症状は解消されません。悪化すると最悪の場合「抜歯」を選択せざるを得なくなり、大切な自分の歯を失う原因となりますので、注意しなければいけないのです。

3.歯が透ける「酸蝕歯」を予防する

3-1 酸性の強い食品に気をつける

酸蝕歯を進行させないようにするには、酸性の強い食品に気をつけることです。どんなふうに気をつけるかというと、そのポイントは摂取の仕方です。酸性の食品というと主に以下のようなものが挙げられます。

  • ・コーラやサイダーなどの炭酸飲料
  • ・梅干しや酢の物
  • ・柑橘系の果物
  • ・ビールやワインなどのアルコール
  • ・クエン酸やリンゴ酸を含むスポーツドリンク

上記のようなものを長時間、口に含み続けたりすることで、酸蝕歯のリスクが高まります。私たちが酸性の食品を一切摂取しないということは事実上不可能ですが、こうした食品の過度な摂取を避け、長時間口内を酸性にし続けることさえ気をつけたり、摂取後はうがいをするなど気をつけたりすることで、酸蝕歯のリスクを抑えることは可能です。

3-2 歯磨きのタイミングに気をつける

酸性の食品を口にした場合、その後の歯磨きのタイミングに気をつけましょう。私たちのお口の中が酸性になった場合、歯から「カルシウム」や「リン」などのミネラル成分が溶け出す「脱灰(だっかい)」という現象が起きます。これが虫歯を引き起こす原因となってしまうのです。

しかし、お口の中では「再石灰化(さいせっかいか)」という、唾液によって溶けたミネラルを元の正常な状態に戻す作用が働いてくれます。このメカニズムが存在する限り、溶けてしまった歯を修復することが可能なのです。

ところが、再石灰化が起きる前に歯を磨いてしまうと、この修復機能が作用しなくなってしまいます。歯磨きは再石灰化の働きを十分に利用するためにも「1時間程」経過してから行うようにしましょう。

3-3.エナメル質強化の歯磨き粉で「セルフケア」

酸蝕歯の初期状態を見逃さずに対処していくためには、歯磨き粉選びも重要です。『酸』によって起こる歯のダメージに焦点を当てた歯磨き粉を選びましょう。「エナメルプロテクション処方」の製品であれば、エナメル質の強化を図り、虫歯の予防や、酸蝕歯の初期症状である、知覚過敏によって歯がしみる症状を防いでくれます。

5.まとめ

この記事では、歯が透ける症状について言及し、透ける原因が「酸蝕歯」という病気であることをお伝えしてきました。歯が透ける症状は酸蝕歯の中期の状態なので、歯医者さんに診てもらい、お口に合った治療をしてもらいましょう。酸蝕歯にならないための予防策をしっかり頭に入れて実践することが大切です。

経歴

1975年 東京歯科大学 卒業
1975年~1977年 新宿ビル歯科 勤務
1978年 早川歯科医院 開業
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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