歯茎や歯を「押すと痛い」!その5大原因と治療法を歯科医師が監修

歯茎や歯を「押すと痛い」!その5大原因と治療法を歯科医師が監修

歯茎や歯の付け根を“押すと痛い”という人は、歯の根に問題が生じている可能性があります。

歯医者さんでレントゲンを撮ってみないと、歯の根の状態まではわかりません。
しかし、万が一、歯の根に異常があれば、最悪なケースとして大切な歯を失ってしまうことも考えられます。

歯茎や歯の付け根などを押すと痛いときに考えられる原因や治療法、早い段階で歯医者さんを受診した方が良い理由などを解説します。

この記事の目次

1.歯茎や歯の付け根を押すと痛いときに考えられる原因

1-1 以前治療した歯の根が再感染している

押すと痛い歯が、以前虫歯治療のために神経を抜いた歯だった場合「治療の際に細菌を除去しきれなかった」などの原因で再感染し、炎症を起こしていることが考えられます。

被せ物が劣化して隙間ができ、細菌が侵入することもあります。

神経を抜いた歯は痛みを感じにくいため、自覚症状が出る頃には、感染がかなり進行していることがあります。

1-2 歯根膜(しこんまく)が細菌に感染している

歯の根の周りには歯根膜という組織があります。

歯根膜は、ものを噛んだときの硬さや、おせんべいのバリっという感触を捉えたりします。
髪の毛一本すら感じ取ると言われているほど、非常に繊細で敏感な組織です。

歯根膜が細菌に感染すると、噛んだときや押したときに痛いと感じたり、何もしなくても強い痛みを感じたりすることもあります。

歯根膜の感染がさらに進むと、顎の骨にも炎症が広がります。
歯茎の中に膿が溜まって腫れたり、一日中ズキズキと痛んだり、あるいは歯がグラグラ揺れるようになったりします。

歯根膜の炎症を「歯根膜炎」さらに進んだ状態を「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」と言います。

歯周組織の名前が分かるイラスト

1-3 外力による歯根膜の炎症

細菌による感染以外でも、次のようなことがきっかけで歯根膜が炎症を起こすことがあります。

  • 歯根膜炎を招く恐れがある外力の例
    ・外傷などで強く歯を打った
    ・固いものを必要以上に強い力で噛みしめた
    ・瓶の蓋を歯で開けるような無理なことをした
    ・無意識で奥歯で強く喰いしばった

打ち身で痛いのと同じ理屈です。
症状としては歯茎や歯を押すと痛いのはもちろん、歯が浮いた感じがしたり、噛むと痛いので強く噛めません。

噛み合わせを調整するなど、しばらくその部分で強く噛まないように安静にしていると収まることがほとんどです。
しかし、ときに歯の神経が充血を起こし、最悪のケースとして神経を抜かないといけなくなることもあります。

1-4 歯の根が割れている

以前の治療で歯の神経を抜いているような場合は特に、歯の強度が劣化していて、普通に噛み合わせていても、知らないうちに歯の根が割れていることがあります。

神経を抜いていない歯では頻度は少ないですが、あまりに噛む力が強いと割れることがあります。
歯の根の割れ方にもよりますが、やはり最悪は抜歯のケースになってしまいます。

1-5歯根嚢胞ができている

歯の根の先から顎の骨に炎症が広がると、根の先の部分に袋状の病巣が出来ることがあります。

これを「歯根嚢胞」と呼んでいます。

少し時間をかけた慢性の経過をたどることがほとんどのため、小さいうちは自覚症状もほとんどありません。
嚢胞の中には、透明に近い浸出液がたまっています。

大きくなって感染を起こすと膿がたまってきて、急性発作を起こすと歯茎が腫れたり、押すと痛かったり、歯が浮いた感じや噛むと痛くなったりします。

袋から出てくる膿の出口が、歯茎に吹き出物のような小さな膨らみで現れることもあります。
膿なので強い口臭の原因にもなります。

このような症状があれば、早めに歯医者さんを受診した方が良いでしょう。

2.歯茎や歯の付け根を“押すと痛いとき”の治療法

2-1 根管治療

歯の根の治療を根管治療と言います。
根管とは、歯の根の中にある、血管や神経が通る管です。

神経を取り除いたあと、根管内の細菌に感染している部分をきれいに掃除・洗浄・消毒し、薬剤を隙間なく詰めて被せ物をします。

2-2 再根管治療(感染根管治療)

過去に根管治療した歯が再感染している場合「再根管治療(感染根管治療)」をおこないます。
治療の流れは根管治療とほぼ一緒です。

ただし、既存の被せ物や詰め物などを除去しなければならない点、根管治療を受けたときより症状が進行している点など、根管治療よりも処置が難しくなることがあり、患者さんの負担も大きくなります。

2-3 歯根端切除術

歯の根に人工の歯をかぶせるためのしっかりとした芯が入っている場合、それを撤去するのは難しいです。

また、歯に既にセラミックなどの被せ物が入っている場合や、ブリッジなどで何本かの歯が連結されていてそのうちの一本の歯だけを外して治療出来ない(または患者さんが望まない)場合があります。

あるいは、再根管治療では十分な治療が見込めないほど病巣が進行していたりすることもあります。

その場合には、病巣のある歯の根の先端付近に相当する歯茎を切開して、直接外科的に病巣を搔把・摘出する「歯根端切除術」と言う治療法もあります。

その際には、感染している病巣に含まれる根の先端の一部を切除し、根管には薬などを詰めて封鎖します。その後、歯茎は縫合して閉鎖します。

2-4 抜歯

上記いずれの方法でも治療が困難であると判断された場合、抜歯となることもあります。

「“押すと痛い”症状があったにも関わらず放置してしまった結果、抜歯するしかなくなってしまった」

ということのないよう、症状が出たら、できるだけ早い段階で歯医者さんを受診しましょう。

関連記事 「歯根治療の方法と費用の目安、治療中や治療後の痛みの原因と対策も紹介!」

3.早めに歯医者さんを受診した方が良い理由

3-1 悪化するほど治療期間・通院回数・治療費など負担が増える

ごく初期の「CO」と呼ばれる虫歯であれば、たった1回の治療、それも痛みをともなわない治療で済むことがほとんどです。
保険診療で済むため費用もほとんどかかりません。

虫歯が進行すればするほど、処置が大がかりになり、治療期間や通院回数といった負担が大きくなります。

歯の根まで進行し、歯根端切除術など外科的な処置が必要になれば身体的負担が増えます。歯を失い、それを補うために人工歯を作るとなれば、治療費も膨れ上がってしまいます。

3-2 自然治癒せず細菌が全身に広がってしまう恐れがある

痛みを和らげるためだけでなく、早めに歯医者さんに行くべき理由がほかにもあります。

細菌が、歯の根の先から血管内に侵入して全身を駆け巡ると、心筋梗塞や脳梗塞といった全身疾患を招くリスクが高まることも指摘されています

歯の病気は、歯だけに留まらないということを覚えておきましょう。

4.まとめ

歯や歯茎、歯の付け根などを「押すと痛い」ときの原因のほとんどは、歯の根にあります。
歯の根の病気は、そのまま放置しても自然治癒が期待できません。

「痛みが治まった」
「強い自覚症状が出なくなった」

という場合も、症状は進行しています。
放置すれば細菌感染がどんどん広がってしまうため、できるだけ早く、歯医者さんで歯の根の中を診てもらいましょう。

コメント

歯茎や歯を押すと痛いのはほとんどの場合、歯の根に原因があると考えられます。特に過去に根の治療を行っている歯ではすぐに症状が出ずに時間が経過してから痛みが出てくることがほとんどです。歯の根の治療は家を建てるならば基礎工事の部分なので、きちんとしておかなければ、その上にどんな立派な家を建てても立て直さないといけなくなると大変ですから、きちんとした治療を受けるようにしてください。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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