歯の被せ物の種類と費用、被せ物が取れた場合の正しい対処法

歯の詰め物が取れたら、どうすればよいのでしょうか。すぐに歯医者へ駆け込めればいいのですが、その時間がない時や、予約しても一週間先になってしまうような時、不安になってしまいますよね。

この記事では、綺麗な口元に見せるために利用する被せ物の種類や費用を紹介し、被せ物が取れてしまった時の注意点についてもお伝えしていきます。

うっかり間違った処置をしてしまうと逆効果になったり、治療期間が伸びてしまったり、治療費が高額になる事もありますので、歯医者さんで適した対処してもらいましょう。

この記事の目次

1.被せ物の種類と費用について

どのような被せ物を選択するかによって、その歯の持ち具合は、大きく変わってきます。特に前歯の被せ物は、口元だけでなく、全体の印象にも大きく影響してきます。 歯を治療するなら、綺麗で丈夫なものを使いたいものです。

現在流行している材料と言えば、オールセラミックです。オールセラミックの治療は、金属を使用しないので、歯茎が黒ずんだり、金属アレルギーが発生する事もありません。

この章では、オールセラミックをはじめとし、その他の材料の費用や特徴について説明していきます。

1-1 オールセラミック

見た目の美しさを第一に考える人には、オールセラミックがおすすめです。

※主に前歯に用いる

※自由診療

料金例:60,000円~200,000円(エコノミータイプ~)

セラミック(非金属)なのであまり目立たず、見た目が良いのと、強度にも優れているのが特徴です。金属アレルギーの心配もなく、健康的な白い歯の輝きで、天然歯のような美しさがキープできます。

デメリットは、歯ぎしりのある方には向かない点と、普通のオールセラミックほど、精密にできていないところです。

1-2 メタルボンド

見た目と機能性の両方を重視したい方におすすめなのが、メタルボンドです。

※前歯・臼歯共に自由診療

料金例:73,500円~100,000円

内面は金属、外面はセラミックで覆われた白い歯になります。見た目の美しさと機能性のどちらも優れ、お手入れが良ければ、永久的に美しいです。ただし、オールセラミックと比較すると、経年的な美しさは劣りますし、コストもかかります。歯ぎしりのある方には、あまりおすすめできません。

1-3 セラミック治療システムのセラミック

※自由診療

料金例:50,000円~80,000円

容易にできるところや、金属アレルギーの心配がないところがおすすめです。最短一日ででき、対応年数も長いという症例があります。デメリットと言えば、コストがかかってしまうところでしょう。

1-4 ゴールド

見た目よりも、機能性重視の方におすすめしたいタイプです。

※金相場による変動有

※主に奥歯

※自由診療

料金例:40,000円~120,000円

金合金でできており、しなやかで歯との適合性も良く、虫歯が再発しにくくなります。天然歯に近い硬さなので、歯を傷めず、奥歯に用いるのに適しています。ただし、コストがかかり、色も白くないので見た目の自然さには欠けるでしょう。

1-5 ハイブリッド

※自由診療

料金例:50,000円~80,000円

セラミックの硬さと、樹脂の粘り強さを併せ持つ素材を使っています。天然歯に似た色調で、見た目が自然で綺麗な仕上りです。年が経過すると共に黄身を帯びる事があり、コストがかかるという点がデメリットとして挙げられます。

1-6 パラジウム

※保険適用

料金例:臼歯3000円/前歯6000円(前歯の場合は、表面に薄いプラスチックを貼り付ける)

治療はシンプルですが、色は銀色で、虫歯が再発しやすい可能性がります。歯茎が黒ずんで、金属アレルギーが生じる場合もあります。

2.被せ物が取れた場合の応急処置

食事中に何か変な音がしたと思ったら、歯の詰め物や被せが取れていた!という時もありますよね。すぐに歯科医院で診察を受けられればいいのですが、都合上、すぐに歯科医院に行けない事もあります。

この章では、そんな時に知っておきたい応急処置法について、大事な注意点をご紹介します。

2-1 神経が残っている場合

神経が残っている場合には、被せ物が取れた事により、刺激を受けやすい部分が露出している状態になります。そのため、とくに熱いものや冷たいものを飲食する時は、注意しなければなりません。

熱いコーヒーを飲んでから、すぐに冷たいアイスを食べるというように、大きな温度差も、負担になってしまいます。たとえ被せ物が取れた部分が浅くても、そこから受けた刺激が、歯の神経にまで届き、何らかの悪い症状が出てしまう恐れもあります。

そのリスクは、被せ物が取れた跡が深ければ深い程大きくなるので、十分に気を付けてください。神経が残っているという事は、痛みを伴うという事です。その時に痛みがなくても、翌日に痛み出すケースもあるので、どんなに忙しい時でも、できる限り迅速に応急処置してもらうのが第一です。

2-2 神経がない場合

神経が残っていない場合には、歯医者に行かない期間が一週間でも、大きな問題はありません。しかし、被せ物が取れた箇所は、穴が開いたり欠けたりするので不衛生になりがちです。丁寧に歯磨きを行い、歯医者に行くまでに清潔に保つよう努めましょう。

歯磨き粉がしみる場合には、しなくても構いません。穴が大きく、食事がとりづらいのであれば、清潔な脱脂綿を丸めて詰めておくとよいでしょう。

2-3 温度差のある食事は控える

熱い飲み物や、キンキンに冷えたビールを飲むのは避けましょう。被せ物が取れてしまった時は、神経も過敏で、知覚過敏になっている可能性もあります。知覚過敏だと、痛みをさらに感じやすくなります。

取れた被せ物が、神経がまだ残っている歯のところだった場合、被せ物が取れる事によって、象牙質がむき出しになってしまいます。象牙質には、神経につながる管があり、この管が露出する事で、痛みを神経に伝えやすくなってしまうのです。そのため、痛みが増したように感じてしまいます。

例えば、根元に詰めていたプラスチックが取れた場合、根元の部分は歯髄までの管の距離が短く、温度差のある刺激が、痛みとして感じやすくなってしまいます。被せ物が取れてしまった場合には、反対側で刺激の強いものを飲食するように工夫しましょう。

2-4 容器で保存する

取れた被せ物は、ティッシュペーパーに包んで放置せず、できれば容器に保存して下さい。ペーパーに包んだまま放置してしまうと、被せ物が小さくて弱いものであれば、変形しやすくなります。

また、ティシュペーパーに包んでおいても、なくしてしまう方も多いです。ご家族の方が、誤って捨ててしまうケースもあります。取れてしまった被せ物は容器に入れ、診療の時に持っていくのがよいでしょう。

3.被せ物が取れたときにやってはいけないこと

歯の被せ物が取れてしまったら、痛みがなかったとしても飲食しづらいですし、口の中が気になって仕方がないですよね。特に前歯は、見た目にも影響しますし、何とかしたい!と思うものです。

しかし、だからといって歯科医院にすぐに行けるとは限りませんよね。そこで思わずやってしまいがちなNG行動によって、正しい診察ができなくなったり、治療が困難になってしまったりします。この章では、歯医者で診てもらう前に、自分でやってはいけない事についてお教えします。

3-1 自分で無理やりくっつけようとしないこと

取れた被せ物を、接着剤などで付けないようにしましょう。自分で被せ物を無理にくっつけようとすると、歯と被せ物の間に隙間ができてしまいます。

そして、その隙間から虫歯が進行しやすくなります。また、接着剤で付けた被せ物を歯医者で取る時には、まずはその被せ物を削り取らなくてはなりません。

もしも、接着剤の成分が歯に浸透してしまうと、歯自体も削らなければならなくなるのです。気になっても、被せ物を無理にくっつけないようにしましょう。

3-2 取れた被せ物を捨てないこと

取れた被せ物が古かったり、穴が空いていたりすると、どうせ戻せないだろうと諦めてしまい、捨てたくなるものですが、こんな時でも捨てずにちゃんと保管し、歯医者へ持っていきましょう。

歯医者は、取れた被せ物のすり減り具合を手掛かりに、様々な情報を得る事ができます。次の被せ物を作製する上でも、非常に良い参考となるので、自分に合った被せ物を新しく作り直すためにも、取れてしまった古い被せ物も、きちんと取っておくようにしましょう。

3-3 自分ではめ直さないこと

被せ物が取れてしまったからといって、無理にはめ直さないようにしましょう。上手に戻せれば問題ないのですが、もしも浮いた状態で噛んでしまうと、被せ物が変形してしまいます。残っている歯が割れてしまったり、噛み合う歯が欠けてしまったりする事があります。

また、取れた被せ物を戻した場合、その戻し方が不安定ですと、飲食している時に間違って飲み込んでしまう恐れもあります。特にお子さんや高齢者の方は、気管に入りやすく、危険です。

4.被せ物が取れた状態のまま放置すると危険

歯の被せ物が取れてしまった場合、放置していると、色々なリスクが発生します。被せ物が手元に残っているのであれば、すぐに戻せる場合もあるので、できるだけ早めに取れた被せ物を持っていき、歯医者で診察してもらいましょう。

隙間ができてしまうと、歯は一日でも移動してしまうものです。それが一週間も期間があいてしまうと、なかなか元に戻らなくなってしまいます。

4-1 虫歯になる

歯の被せ物が取れて、一ヶ月経過すると、虫歯の初期段階へと進んでいきます。歯の表面は、エナメル質(身体でとくに硬い部分)に守られています。被せ物が取れてしまった歯の表面は、一度治療で削られていて、エナメル質はなくなっています。

被せ物が取れることで、エナメル質の下にある象牙質が露出します。露出した柔らかい象牙質は、虫歯が進行しやすくなります。もともと虫歯がなければ、進行する事はないのですが、初期虫歯が始まっていたら、早期に治療することが得策です。

4-2 歯に穴があく

被せ物が外れて三ヶ月経過してしまうと、虫歯の進行も加速していき、最終的には歯に穴が空きます。被せ物をなくした歯は、柔らかい象牙質がむきだしになった状態になります。

お口の中は酸性やアルカリ性など、歯が溶けやすい条件が多く、象牙細管(象牙質から神経までつながっている細い管)から、虫歯がどんどん進行していきます。こうなると、細菌が神経まで入り、痛みが生じると神経の処置が必要になります。神経がなくなると再生力も奪われる事になり、寿命も短くなります。つらい痛みが出る前に受診するようにしましょう。

4-3 歯が欠ける

被せ物が取れて半年経過すると、歯が欠けてしまいます。虫歯が硬いエナメル質を溶かすには時間がかかるものです。被せ物が取れてしまった歯は、柔らかい象牙質がたくさん露出しているため、歯の内側から虫歯が進行していきます。

残った外側のエナメル質が象牙質の裏打ちをなくし、歯が欠けていくのです。神経がない歯の被せ物が外れると、痛みは感じませんが、再生力もないため、虫歯の進行を食い止めることもできず、内側の象牙質を溶かし続けます。

裏打ちをなくしたエナメル質は、次第に薄くなり、最後には欠けていきます。ここまで虫歯が進行すると、抜歯する必要性も出てきます。

5.まとめ

歯の被せ物が取れた時は、基本的に痛みが出ない事も多いですが、たしかに虫歯は進行していきます。被せ物が取れてから、歯医者に行かないまま長期間が経過すると、治療期間も長引いて費用も高額になります。被せ物が取れても、痛みが出ていないからといって放置せず、早めの受診を心がけましょう。

経歴

1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。