歯の詰め物や被せ物が取れたら、どうすればよいのでしょうか。すぐに歯科医院へ行ければよいのですが、時間がないときや、予約が先になってしまうようなときは不安になってしまいますよね。
この記事では、自然な口元に見せるために用いられる被せ物の種類や費用の目安を紹介し、被せ物が取れてしまったときの注意点についてもお伝えします。
自己判断で間違った処置をしてしまうと、歯や被せ物を傷めたり、治療が複雑になったりすることがあります。被せ物が取れた場合は、できるだけ早めに歯科医院で適切な対処を受けましょう。
※本記事に掲載している自由診療の料金は、2026年時点でEPARK歯科に掲載されている歯科医院の料金情報を参考にしたものです。料金は地域や施術内容、使用する機材、歯科医院の方針等によって異なります。実際の料金については受診予定の歯科医院へご確認ください。
この記事の目次
1.被せ物の種類と費用について
どのような被せ物を選択するかによって、見た目や噛み心地、耐久性、費用は変わってきます。特に前歯の被せ物は、口元だけでなく、全体の印象にも影響することがあります。歯を治療するなら、見た目や機能面を考えて材料を選びたいものです。
審美性を重視する場合、オールセラミックが選択肢になることがあります。オールセラミックの治療は金属を使用しないため、金属が原因で歯ぐきが黒ずんだり、金属アレルギーが起きたりする心配が少ないとされています。
この章では、オールセラミックをはじめ、その他の材料の費用や特徴について説明していきます。
1-1 オールセラミック
見た目の自然さを重視する人には、オールセラミックが選択肢になります。
主に前歯に用いられることがあります。 自由診療です。
料金目安:96,000円~120,000円程度
※2026年時点のEPARK歯科掲載自由診療料金情報を参考に編集部集計
セラミックは非金属の材料で、歯の色に近づけやすく、見た目を自然に整えやすいのが特徴です。金属アレルギーの心配が少なく、天然歯に近い透明感を目指せる場合があります。
一方で、歯ぎしりや食いしばりが強い方では、割れや欠けのリスクを考慮する必要があります。また、費用は保険診療より高くなることが一般的です。
1-2 メタルボンド
見た目と機能性の両方を重視したい方には、メタルボンドが選択肢になります。
前歯・臼歯ともに自由診療となることが一般的です。
料金目安:63,000円~102,000円程度
※2026年時点のEPARK歯科掲載自由診療料金情報を参考に編集部集計
メタルボンドは、内面が金属、外面がセラミックで覆われた被せ物です。金属の強度を生かしながら、外側を白く仕上げられる特徴があります。
ただし、オールセラミックと比較すると透明感が出にくい場合があり、歯ぐきとの境目に金属色が見えることもあります。金属を使用するため、金属アレルギーがある方は注意が必要です。
1-3 セラミック治療システムのセラミック
自由診療になります。
料金目安:80,000円~100,000円程度
※2026年時点のEPARK歯科掲載自由診療料金情報を参考に編集部集計
セラミック治療システムを用いた被せ物は、口腔内スキャナーや専用機器などを用いて作製されることがあります。症例によっては短期間で治療できる場合があり、金属を使用しないため金属アレルギーの心配が少ない点が特徴です。
ただし、適応できる症例は限られることがあります。また、費用がかかる点も確認が必要です。
1-4 ゴールド
見た目よりも、機能性を重視する方に選択されることがあるタイプです。
金相場による変動があります。 主に奥歯に用いられることがあります。 自由診療です。
料金目安:84,000円~105,000円程度
※2026年時点のEPARK歯科掲載自由診療料金情報を参考に編集部集計
ゴールドは金合金でできており、しなやかで歯との適合を得やすい材料とされています。奥歯のように噛む力が強くかかる部位で用いられることがあります。
ただし、色が白くないため、見た目の自然さには欠けます。また、金属を使用するため、金属アレルギーがある方は事前に相談が必要です。
1-5 ハイブリッド
自由診療です。条件を満たしていれば保険適用となる場合があります。
料金目安:保険適用で約6,000~10,000円/自由診療で40,000円~70,000円程度
※ここでは2026年現在の3割負担の場合の保険診療の費用を記載しています。初診料やレントゲンは含んでいません。区分や制度の改定でも変動しますので、あくまで目安としてください。
※2026年時点のEPARK歯科掲載自由診療料金情報を参考に編集部集計
セラミックと樹脂を組み合わせた材料です。天然歯に近い色調を目指せるため、見た目を自然に整えやすい場合があります。
一方で、年数が経過すると変色や摩耗が起こることがあります。また、部位や噛み合わせによっては適応が限られる場合があります。
1-6 パラジウム
保険適用となる場合があります。前歯の場合は、表面に白い材料を貼り付けることがあります。
料金目安:臼歯3,000円~6,000円程度/前歯5,000円~8,000円程度
※ここでは2026年現在の3割負担の場合の保険診療の費用を記載しています。初診料やレントゲンは含んでいません。区分や制度の改定でも変動しますので、あくまで目安としてください。
パラジウム合金を使った被せ物は、保険診療で用いられることがある材料です。費用を抑えやすい一方で、銀色が目立つ場合があります。
また、金属を使用するため、歯ぐきが黒っぽく見えることや、金属アレルギーが生じる可能性があります。むし歯の再発リスクは材料だけで決まるものではなく、適合状態や清掃状態、噛み合わせなどにも影響されます。
2.被せ物が取れた場合の応急処置
食事中に何か変な音がしたと思ったら、歯の詰め物や被せ物が取れていた、ということもありますよね。すぐに歯科医院で診察を受けられればよいのですが、都合上、すぐに歯科医院に行けないこともあります。
この章では、そんな時に知っておきたい応急処置法について、大事な注意点をご紹介します。
2-1 神経が残っている場合
神経が残っている場合には、被せ物が取れたことにより、刺激を受けやすい部分が露出している状態になります。そのため、特に熱いものや冷たいものを飲食するときは注意が必要です。
熱い飲み物を飲んでから、すぐに冷たいものを食べるというように、大きな温度差も刺激になることがあります。たとえ被せ物が取れた部分が浅くても、そこから受けた刺激が歯の神経に伝わり、痛みやしみる症状が出ることがあります。
被せ物が取れた部分が深いほど、刺激を感じやすい場合があります。その時に痛みがなくても、後から痛みが出ることもあるため、できるだけ早めに歯科医院へ相談しましょう。
2-2 神経がない場合
神経が残っていない場合は、痛みを感じにくいことがあります。しかし、痛みがないからといって問題がないとは限りません。
被せ物が取れた箇所は、穴が開いたり欠けたりして不衛生になりがちです。歯科医院に行くまでは、丁寧に歯磨きを行い、できる範囲で清潔に保ちましょう。
歯磨き粉がしみる場合には、無理に使わず、水でやさしく磨くようにしてください。穴が大きく、食事がとりづらい場合でも、自分で綿などを詰めると不衛生になることがあります。自己判断で詰め物をせず、歯科医院へ相談しましょう。
2-3 温度差のある食事は控える
熱い飲み物や、極端に冷たい飲み物は避けましょう。被せ物が取れてしまった時は、象牙質が露出し、知覚過敏のような症状が出る可能性があります。
取れた被せ物が神経の残っている歯だった場合、被せ物が取れることによって象牙質がむき出しになる場合があります。象牙質には神経につながる細い管があり、この管が露出すると、冷たいものや甘いものなどの刺激が痛みとして伝わりやすくなります。
被せ物が取れてしまった場合には、取れた側で噛むことを避け、刺激の強い飲食物を控えるようにしましょう。
2-4 容器で保存する
取れた被せ物は、ティッシュペーパーに包んで放置せず、できれば小さな容器に入れて保存してください。
ティッシュペーパーに包んだままだと、誤って捨ててしまうことがあります。ご家族の方がゴミと間違えて捨ててしまうケースもあります。
取れてしまった被せ物は容器に入れ、診療の時に持っていくのがよいでしょう。状態によっては再装着できる場合もあり、再装着できない場合でも、取れた原因を確認する手がかりになることがあります。
3.被せ物が取れたときにやってはいけないこと
歯の被せ物が取れてしまったら、痛みがなかったとしても飲食しづらいですし、口の中が気になってしまいますよね。特に前歯は、見た目にも影響します。
しかし、歯科医院にすぐに行けないからといって、自己判断で処置をすると、正しい診察ができなくなったり、治療が難しくなったりすることがあります。この章では、歯科医院で診てもらう前に、自分でやってはいけないことについてお伝えします。
3-1 自分で無理やりくっつけようとしないこと
取れた被せ物を、市販の接着剤などで付けないようにしましょう。自分で被せ物を無理にくっつけようとすると、歯と被せ物の間に隙間ができたり、噛み合わせがずれたりすることがあります。
その隙間からむし歯が進行しやすくなる場合もあります。また、接着剤で付けた被せ物を歯科医院で外す際に、被せ物や歯を削る必要が出ることがあります。
気になっても、被せ物を無理にくっつけないようにしましょう。
3-2 取れた被せ物を捨てないこと
取れた被せ物が古かったり、穴が空いていたりすると、戻せないだろうと考えて捨てたくなるかもしれません。しかし、捨てずに保管し、歯科医院へ持っていきましょう。
歯科医院は、取れた被せ物のすり減り具合や破損状態を手掛かりに、外れた原因を確認できる場合があります。次の被せ物を作製する上でも参考になることがあるため、取れてしまった被せ物は保管しておきましょう。
3-3 自分ではめ直さないこと
被せ物が取れてしまったからといって、無理にはめ直さないようにしましょう。
浮いた状態で噛んでしまうと、被せ物が変形したり、残っている歯が割れたり、噛み合う歯が欠けたりすることがあります。
また、取れた被せ物を戻した場合、飲食中に誤って飲み込んでしまう恐れもあります。特にお子さんや高齢者の方は注意が必要です。
4.被せ物が取れた状態のまま放置すると危険
歯の被せ物が取れてしまった場合、放置していると、さまざまなリスクが生じます。被せ物が手元に残っているのであれば再装着できる場合もあるため、できるだけ早めに取れた被せ物を持っていき、歯科医院で診察してもらいましょう。
被せ物が取れた状態が続くと、隣の歯や噛み合う歯の位置関係に影響することがあります。また、噛み合わせが変わって、元の被せ物が戻せなくなる場合もあります。
4-1 むし歯になる
被せ物が取れた状態で放置すると、露出した歯の部分に汚れがたまりやすくなり、むし歯のリスクが高まります。
歯の表面はエナメル質に守られていますが、被せ物が取れた歯では、治療で削られた部分や象牙質が露出している場合があります。象牙質はエナメル質よりもむし歯が進行しやすいとされています。
もともとむし歯がなかったとしても、被せ物が取れた原因が内部のむし歯である場合もあります。早めに歯科医院で確認してもらいましょう。
4-2 歯に穴があく
被せ物が外れた状態を放置すると、むし歯が進行し、歯に穴があくことがあります。
お口の中では、食事や間食によって酸が作られ、歯が溶けやすい状態になることがあります。象牙質が露出していると、むし歯が進行しやすくなる場合があります。
むし歯が神経まで達すると、強い痛みが出たり、根管治療が必要になったりすることがあります。痛みが出る前に受診するようにしましょう。
4-3 歯が欠ける
被せ物が取れた歯は、補強されていない状態になるため、噛む力によって欠けたり割れたりすることがあります。
特に神経がない歯は痛みを感じにくい一方で、歯質が弱くなっている場合があります。むし歯が進行しても気づきにくく、歯の内側から崩れてしまうことがあります。
ここまで進行すると、再治療が難しくなり、抜歯が検討される場合もあります。放置せず、早めに歯科医院で相談しましょう。
5.まとめ
歯の被せ物が取れた時は、痛みが出ないこともあります。しかし、痛みがないからといって放置してよいわけではありません。
被せ物が取れたまま長期間が経過すると、むし歯が進行したり、歯が欠けたり、元の被せ物を戻せなくなったりすることがあります。治療が複雑になり、通院回数や費用が増える場合もあります。
被せ物が取れても、自己判断で戻したり接着したりせず、取れた被せ物を容器に入れて保管し、早めに歯科医院を受診しましょう。
【参考サイト】
・日本補綴歯科学会
https://www.hotetsu.com/
・日本補綴歯科学会 接着ブリッジのガイドライン2024(追補版)
https://www.hotetsu.com/files/files_1150.pdf
・厚生労働省 診療報酬情報提供サービス
https://shinryohoshu.mhlw.go.jp/
・厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
・厚生労働省 歯科用貴金属材料の基準材料価格改定について
https://www.mhlw.go.jp/
・日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

執筆者:
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