舌の「できもの」の見分け方と対処法!口内炎・舌がんの特徴【歯科医師監修】

舌にできものがあると、口内炎なのか、それともほかの病気なのか、気がかりになるものです。自然治癒するものもあれば、重い病気が原因のものもあるため、まずは「できもの」が何なのかはっきりさせることが大切です。

この記事では、舌の「できもの」の種類や特徴、症状、治療法などを紹介しています。歯医者さんをはじめ医療機関を受診すべきかどうか迷ったときの参考にしてください。

この記事の目次

1.舌の「できもの」が口内炎の場合

舌にできる「できもの」の中でも多いのは口内炎です。
口内炎には次のような種類があり、それぞれ特徴が異なります。

1-1 アフタ性口内炎

アフタ性口内炎の特徴
黄白色~灰白色
見た目の特徴 2~6mm程度の円形で、やや窪(くぼ)んでいる
周囲との境目 はっきりしている
一度にできる数 多くの場合、1~3個程度
痛み 強い~非常に強い

口内炎の中でもよく見られるのが「アフタ性口内炎」です。
食品や歯、辛味・酸味といった刺激物が触れたときに強い痛みが走ります。

アフタ性口内炎の原因

アフタ性口内炎の発症率を高めると考えられている要素
睡眠不足 慢性的疲労
過度のストレス 口の中の清掃不足
物理的刺激 ドライマウスによる唾液不足
鉄分の欠乏 ビタミンB群の欠乏

アフタ性口内炎の原因は分かっていません。
ただし、上記のような要素はアフタ性口内炎を発症しやすくさせると考えられています。

この場合の物理的刺激とは、同じ部位に繰り返し刺激が加わる慢性的な刺激です。
「歯のとがった部分」「入れ歯の金具」といったものが、舌の同じ場所に何度も当たると、アフタ性口内炎ができることがあります。

アフタ性口内炎の基本的な治療法

基本的には1~2週間程度で収まります。
ただし、同時に4個以上できている、2週間以上経っても改善されないといった場合、歯医者さんをはじめ医療機関を受診することも検討しましょう。

医療機関では、抗炎症剤を処方されるのが基本です。
ビタミンB群の不足が考えられればビタミン剤を投与したり、割れてとがった歯がある場合は、歯を治療したりすることもあります。

1-2 カタル性口内炎

カタル性口内炎の特徴
赤~紅色
見た目の特徴 小さな斑点で、周囲に発赤や腫れをともなう
周囲との境目 はっきりしない
一度にできる数 複数できることが多い
痛みの強さ 強くはないが熱感をともなうことがある

赤いできものの場合、カタル性口内炎の疑いがあります。
小さな赤い斑点が複数でき、周囲も含めて全体が赤く腫れることが多いです。

何もしていないときはほとんど痛みませんが、熱感を訴える人もいるようです。
辛味・酸味といった刺激の強い食品を口に含むと、痛むことがあります。

また、悪化すると「粘り気のある唾液が分泌される」「口臭が悪化する」といった症状があらわれることもあります。

カタル性口内炎の原因

物理的刺激が原因とされています。
サイズが合わない歯の詰め物やかぶせ物、入れ歯の金具などによる刺激が引き金になることがあります。

体調不良のときや、口の中が不衛生な状態が続いた場合、発症率が高くなると言われています。

カタル性口内炎の基本的な治療法

基本的には1週間~10日程度で収まります。
口の中の衛生状態が悪いと治りが遅れることがあるため、口の中を衛生的に保つことが大切です。

ただし、アルコールの入ったうがい薬は刺激が強すぎることがあるため、ノンアルコールや低刺激性のものがおすすめです。
医療機関では、ステロイド系の抗炎症薬を処方されることが多いです。

1-3 ヘルペス性口内炎

ヘルペス性口内炎の特徴
白~赤色
見た目の特徴 中心が白く、周囲が赤い水疱(水ぶくれ)
周囲との境目 はっきりしている
一度にできる数 多くの場合、多数の水疱
痛みの強さ 強い~非常に強い

ヘルペス性口内炎は、ウイルス感染症の一種です。

初めて感染し発症した場合、広い範囲に水ぶくれのようなできものが生じ、高熱や倦怠感(けんたいかん=だるさ)といった全身症状をともなうことが多くあります。
一方、すでに感染している人が再発する場合、「口唇ヘルペス」「ヘルペス性口内炎」といった、皮膚や粘膜の症状にとどまることが多いようです。

ヘルペス性口内炎は痛みが強く、症状が出ている間は食事に苦労する人も多いとされています。
舌だけでなく、唇・歯茎・頬の粘膜など、口の中全体に水ぶくれのようなものができます。

ヘルペス性口内炎の原因

原因は「単純ヘルペスウイルス1型」です。
日本人の7~8割が感染しているとされるウイルスで、一度でも感染すると体内から除去することは難しいと言われています。

ウイルスは普段はおとなしくしていますが、風邪や体調不良で免疫力が低下したときに、感染症を引き起こすことがあります。

ヘルペス性口内炎の基本的な治療法

医療機関では、ウイルスの増殖を抑えるために抗ウイルス薬を使った治療をおこなうのが主な方法です。

抗ウイルス薬は、「DNAポリメラーゼ(ウイルスが増殖するために必要な酵素)の働きを抑える」作用があります。
そのため「DNAポリメラーゼ阻害薬」とも呼ばれています。

市販薬に「口唇ヘルペスの再発例」に適応したものもありますが、ヘルペス性口内炎は別なので注意しましょう。

1-4 カンジダ性口内炎

偽膜性(ぎまくせい)カンジダ症の特徴
白色
見た目の特徴 苔(こけ)のような膜状
周囲との境目 はっきりしない
一度にできる数 多くの場合、ひと続きの1ヶ所
痛みの強さ 多くの場合、痛みは出ない
萎縮性(いしゅくせい)カンジダ症の特徴
赤色
見た目の特徴 広範囲に発赤が見られる
周囲との境目 はっきりしない
一度にできる数 多くの場合、ひと続きの1ヶ所
痛みの強さ 熱感をともなうことがある
肥厚性(ひこうせい)カンジダ症の特徴
白色・肉色・赤色など
見た目の特徴 皮膚のように盛り上がる
周囲との境目 明確・不明確のいずれもある
一度にできる数 多くの場合、1個
痛みの強さ 多くの場合、痛みは出ない

「カンジダ性口内炎」は「口腔カンジダ症」とも呼ばれています。

症状によって「偽膜性カンジダ症」「萎縮性カンジダ症」「肥厚性カンジダ症」に分かれています。
それぞれ外見的な特徴が異なりますが、いずれも痛みはあまりありません。

中でも多く見られるのは偽膜性カンジダ症で、舌の表面に「もやもやとした白い苔のようなできもの」があらわれます。
苔のようなものは擦ると剥がれますが、ただれたり出血したりすることがあります。

カンジダ性口内炎の原因

カンジダ菌と呼ばれる真菌(しんきん=カビ)です。
カンジダ菌は健康な人の口の中にも生息する常在菌で、普段は病気の原因となることはありません。

しかし、体調不良で免疫力が低下すると、増殖して感染症を引き起こすことがあります。

抗生物質を多用したり、長期間使用し続けたりすることも、カンジダ菌の増殖を招く原因になると言われています。
抗生物質は細菌を殺菌するため、長期間の使用によって、口の中の細菌や真菌のバランスが崩れることがあります。
このとき、カンジダ菌が増殖すると感染症を発症することがあります。

カンジダ性口内炎の基本的な治療法

カンジダ性口内炎は真菌感染症です。
医療機関では、真菌の増殖を抑えるための抗真菌薬を含んだうがい薬や飲み薬を処方されるのが基本的です。

併せて、口の中を衛生的に保つことが大切です。
歯磨きやうがいといった、日々のケアを丁寧におこなうようにしましょう。

2.口内炎以外の舌の「できもの」

舌に発生する「できもの」は、口内炎だけではありません。
この章では、口内炎とは異なる「できもの」を紹介します。
将来的にがんに変わる恐れのあるものもあります。

2-1 地図状舌(ちずじょうぜつ)

見た目の特徴

舌表面に「白いふち取りのある赤斑(せきはん=赤い斑点)」が生じます。
「できもの」というよりは「模様」のような外見です。

赤斑は不規則な形をしており、大小の赤斑が複数できることもあります。
赤斑の模様が地図のように見えることもあるため、「地図状舌」と呼ばれています。

症状・対処法

外見的な変化を除けば、症状らしい症状はほとんどありません。
ただし、人によっては軽度の痛みを訴えることもあるようです。

原因は不明ですが、「ビタミンBの欠乏」「自律神経失調症」といった要因が考えられています。
無症状なら経過観察、痛みがある場合は対症療法をおこなうことが多いです。

2-2 口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)

見た目の特徴

舌を含む口の中の粘膜に、網状模様(もうじょうもよう=網のような模様)、発赤、びらん(ただれ)、水疱(すいほう=水ぶくれのようなもの)といった症状があらわれます。

放置すると、可能性は低いですががん化する恐れがある「前がん病変」の一つです。

白色になる白色型と、白色に加えて赤色をともなう紅色型の2種類に分けられています。
いずれも「レースのように広がる、ひとつながりの見た目」で、やや広範囲にわたることが多いです。

症状・対処法

自覚症状には個人差がありますが、痛みを訴える人が多いようです。
そのほか、熱感、口の中の不快感、出血、味覚異常などを訴える人もいます。

原因ははっきりしていませんが、「自己免疫性疾患(じこめんえきせいしっかん※)」の一種と考えられています。
40代以降の女性に多く発症する傾向があるとされています。

基本的には痛みといった症状に対処しながら、経過観察することになります。
炎症が強い場合は、ステロイド剤を用いて炎症を鎮(しず)めるのこともあります。

※免疫細胞が、自分自身の正常な細胞を攻撃してしまうことで、さまざまな症状を引き起こす病気を、自己免疫性疾患と言います。

2-3 口腔白板症(こうくうはくばんしょう)

見た目の特徴

口腔白板症は、舌を含めた口の中の粘膜の一部が「白くなって盛りあがる症状」を指します。
前がん病変の一つで、4.4~17.5%程度(※)が、がんに変わるという報告もあるようです。

舌の口腔白板症は側面にできることが多く、表面の質感は「つやつやと滑らかなもの」「ざらざらしたもの」「凹凸があるもの」など、さまざまです。
自然治癒は期待できず、時間が経過するほど大きくなる傾向があります。
舌に白いできものができ、2週間経っても改善しなければ、白板症の疑いがあります。

※【参考】兵庫県歯科医師会 口腔白板症

症状・対処法

放置すると、白い部分に赤い斑点が混じる「紅斑混在型(こうはんこんざいがた)」に変わることがあります。
紅斑が混じると痛みが生じることもあります。

「少しずつ大きくなっている白いできもの」がある場合、早めに歯医者さんを受診しましょう。

2-4 紅板症(こうばんしょう)

見た目の特徴

舌をはじめ、口の中の粘膜の一部が盛りあがって赤くなっている場合、紅板症の恐れがあります。

表面がつやつやしていることが多いですが、一部にえぐれたような潰瘍(かいよう)が見られるケースも多いです。
紅板症は「前がん病変」の中でも特にリスクが高く、全体の50%前後(※)が口腔がんに変わると言われています。

※【参考】日本口腔外科学会 紅板症

症状・対処法

紅板症が形成される過程で粘膜が薄くなる際、刺激痛を感じることがあります。
しかし、紅板症が形成されてからは、基本的に痛みを感じないようです。

「刺激痛のあった部位が赤く盛りあがってきた」という場合、紅板症が疑われます。
紅板症の恐れがあるできものを見つけたら、早めに歯医者さんを受診しましょう。

2-5 舌がん

見た目の特徴

口腔がん全体の約6割を占めると言われているのが舌がんです。
舌の中央に発生することはほとんどなく、大部分が側面やふちの部分に発生します。

口内炎のようなもの、白く厚い皮が張ったようなもの、赤くなっているもの、盛り上がっているものなど、見た目はさまざまです。
口内炎のような症状の場合、舌がんと見分けるのが難しいこともあります。

症状・対処法

痛みがあったりなかったりします。
しこりのようになっていたり、2週間以上治らない口内炎のようなものがあったりする場合は、舌がんも考えられます。

舌には「食べ物を歯の位置に固定する役割」「飲みこむ物を喉に送る役割」があります。
そのため、舌がんが大きくなってくると、噛んだり飲み込んだりする動作が困難になることがあります。

腫瘍の大きさによっては、放射線治療や化学療法で腫瘍の縮小を試みることもあります。
初期の舌がんに対しては「舌部分切除」「舌可動域半側切除」、進行したがんには「舌可動部全摘出」「舌全摘出」といった外科手術をおこなうことがあります。

舌を切除した場合、発音機能に障害が残ることもあります。
早期発見のため、少しでも舌に異変を感じたら、早めに歯医者さんを受診しましょう。

3.まとめ

舌の「できもの」にはさまざまな種類があります。
自然に収まる口内炎から、生命にかかわる恐れのある舌がんまで、リスクもさまざまです。
自己判断が難しいものもあるため、舌に気になるできものがある人は、一度歯医者さんを受診してみましょう。

特に、2週間を過ぎても改善されない口内炎やできものがあるときは、歯医者さんで診てもらうことをおすすめします。
併せて、口の中を清潔に保つよう、毎日の歯磨きといったケアを丁寧におこないましょう。

コメント

あまりに治りが遅い場合は、かかりつけの歯科医院で相談した方が良いです。「しみる」「痛い」などの症状があれば、レーザーで緩和できる場合もあります。特に舌癌等は早期発見が需要である、等医院でも開業33年目ですが、口腔癌をみたのは2症例ですので、かなり少ないですが、ゼロではないです。

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執筆者:歯の教科書 編集部

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