舌が白いときに考えられる病気とは?受診は必要?

舌が白いときに考えられる病気とは?受診は必要?

「鏡に向かって舌を出してみると、白さが目立っている」そんな経験、ありませんか?舌の表面が若干白くなることは良くあることです。普通のことなので、治療について気にかける必要はありません。しかし、舌の一部だけ不自然に白かったり、全体的に白く汚れて見えたりするようであれば少し注意が必要です。口の中に何かしらの不健康が生じているサインかもしれません。

この記事では、舌が白いことで考えられる病気とその症状、歯医者さんを受診した方が良いかどうかについて解説しています。「舌が白いのはなぜ?」「歯医者さんを受診した方が良い?」「セルフケアできる?」といった疑問や不安を解消し、対処につなげていきましょう。

この記事の目次

1. 「舌が白い」ときに考えられる病気とは?受診は必要?

健康な人でも舌が白くなることはありますが、明らかに際立って白い場合や、不自然に一部だけ白いという場合は、原因に病気が潜んでいる恐れがあります。

具体的には、

  • 舌苔(ぜったい)
  • 口内炎(アフタ性口内炎、カンジダ性口内炎)
  • 口腔白板症(こうくうはくばんしょう)
  • 舌がん

などです。

これらの病気の主な症状や見た目の特徴、歯医者さんを受診した方が良いかを一覧表にまとめました。

病名見た目や主な症状受診の必要性
舌苔・舌の表面全体が白っぽくまたは黄色っぽくなる
・味覚が低下したり口臭が強くなったりする
すぐに受診する必要はないが、
生活習慣を見直したい
アフタ性口内炎・舌の一部が白っぽくなる
・辛味や酸味、物理的刺激に対して痛みを感じる
基本的に自然治癒するが、
6mm以上や5~6箇所同時にできたといった場合は歯科口腔外科の受診を検討
カンジダ性口内炎(偽膜性カンジダ症)・舌の一部が白っぽくなる
・白い部分を擦ると出血することがある
歯科口腔外科を受診
口腔白板症・主に舌の側面の一部が白くなり盛り上がって見える
・痛みは出ないが自然に収まらず、肥大することがある
歯科口腔外科を受診
舌がん・舌の側面によく見られる
・白っぽくなる以外にもさまざまな症状がある
歯科口腔外科を受診

※見た目の特徴についても解説していますが、自己判断で「病気である」「病気ではない」と決めることを推奨するものではありません。中には重い病気につながる症状もあるため、気にかかることがあれば歯科口腔外科を受診し、歯科医師の判断を仰ぎましょう。

それでは、各病気の詳しい解説を見ていきましょう。

1-1. 舌苔(ぜったい)

舌苔とは、舌の表面に「食べかす」「雑菌」「口の中の粘膜の垢(あか)」などが固まって付着している状態です。
舌苔がつきすぎると口臭の元になるほか、ひどくなると味を感じる舌の器官である「味蕾(みらい)」が覆われてしまい、食べものの味を感じにくくなります。

舌苔は健康な人の舌にもあります。
そのため、舌苔があること自体は悪いことではありません。

口内環境の悪化につながるのは、びっしりとこびりついている状態です。

見た目の特徴

見た目で分かるほど舌の表面全体が白い、あるいは黄色がかった白さである場合、その原因は舌苔かもしれません。
加えて、口臭が気になる、唾液がネバネバするといった症状に思い当たる場合は、舌苔である恐れが高まります。

原因

舌苔の原因の多くは「ドライマウスによる唾液不足」「口の中が不衛生なことによる雑菌の増殖」「体調不良からくる免疫力の低下」といったものです。

治療について

舌苔は必ずしも歯医者さんでの治療が必要という病気ではありません。
しかし、生活習慣の改善や口内ケアを見直す必要があります。

1-2. 口内炎

口内炎にはいくつか種類がありますが、舌が白く見える口内炎には「アフタ性口内炎」や「カンジダ性口内炎」が考えられます。

カンジダ性口内炎はさらに3種類に分類されますが、白い見た目になるのは「偽膜性(ぎまくせい)カンジダ症」です。
ここでは「カンジダ性口内炎(偽膜性カンジダ症)」として紹介します。

アフタ性口内炎はよく見られる代表的な口内炎で、辛味や酸味、物理的刺激などに対して痛みを感じます。
一方、カンジダ性口内炎(偽膜性カンジダ症)を発症しても、痛みはほとんどありません。

見た目の特徴

【アフタ性口内炎】
舌や口内の粘膜にでき、表面が白や黄色く見えます。
2~6mm程度の大きさで、円形をしていることがほとんどです。

【カンジダ性口内炎(偽膜性カンジダ症)】
舌や頬の内側、口蓋(こうがい=舌の上にある、口内の上側部分)の一部に、白い苔のようなものがまだらに見られます。

原因

【アフタ性口内炎】
ストレス、睡眠不足、ビタミンB群や鉄分の摂取不足といった、さまざまな原因が考えられますが、大きな要因は免疫力の低下だとされています。

【カンジダ性口内炎(偽膜性カンジダ症)】
「カンジダ菌」と呼ばれる真菌(しんきん=カビ)に感染することで発症します。
カンジダ菌は口の中に棲(す)んでいる常在菌(※)です。
免疫力が低下した、あるいは何らかの原因でカンジダ菌が大量増殖した、といったことが原因で感染症を発症することがあります。

健康な人がカンジダ菌に感染することは、あまりありません。

※常在菌(じょうざいきん)とは
健康な人の体にも存在する菌で、基本的には病原性を持たない菌のことです。

治療について

【アフタ性口内炎】
基本的には自然治癒します。
ただし、見た目が大きいと感じる(6mm程度が目安)、同時に5~6箇所にできているといった場合は、歯科口腔外科の受診を検討しましょう。

【カンジダ性口内炎(偽膜性カンジダ症)】
しみたり痛みが強かったりする場合は、我慢せずに歯科口腔外科を受診しましょう。
白い苔のようなものは容易に剥(は)がれますが、腫れたり出血したりすることもあります。

1-3. 口腔白板症(こうくうはくばんしょう)

口腔白板症とは、舌や歯茎、口内の粘膜に「板状(ばんじょう)」や「まだら状」に発生する症状です。
粘膜にしっかりくっついているため、こすっても剥がすことができません。

口腔白板症は、がんに発展する恐れのある症状として知られています。
放置すると徐々に大きくなることがありますが、痛みはほとんどありません。

見た目の特徴

「一部が白くなり盛り上がって見える」という場合は、口腔白板症かもしれません。
特に舌の側面にできやすいとされていますが、ツヤツヤしているもの、ザラザラしているもの、ボコボコしているものなど形状はさまざまです。

原因

口腔白板症の原因は、はっきりとわかっていません。
タバコやアルコールといった刺激物、身体に合わない金属の詰め物や入れ歯、ビタミンAの不足が関係しているのではないかと考えられています。

治療について

痛みといった症状はありませんが、自然治癒しません。
「口腔白板症かな?」と思われる部位を見つけたら、念のため歯科口腔外科を受診しましょう。

1-4. 舌がん

舌がんとは、その名の通り、舌にできるがんのことです。
口内にできるがんを総称して「口腔がん」と呼びますが、そのうちとくに多くみられるのが舌がんです。(※)
舌がんは、舌の中央よりも側面にできることが多いという特徴があります。

※参考サイト:日本癌治療学会 がん診療ガイドライン

見た目の特徴

舌がんのすべてが「舌が白い」という見た目になるわけではありませんが、白板型(はくばんがた)といって、白く膨らむがんが現れることがあります。

また、舌が白くなる以外に次のようなケースもあります。

  • 患部がなだらかに隆起している(盛り上がっている)
  • 舌の表面に複雑な凹凸がある
  • 舌の一部が裂けたりえぐれたりして、内側に窪(くぼ)んでいく
  • 舌の表面が広範囲に荒れて、ややえぐれている
  • しこりのようなものが舌の内側で成長していく

原因

舌がんのはっきりとした原因は、今のところわかっていません。
飲酒や喫煙が関係しているのではないかと考えられています。

治療について

上記のような見た目の変化が2週間以上経過しても改善されない場合、早期発見・早期治療のためにも、歯科口腔外科を受診しましょう。

2. 舌が白いときのセルフケア方法や注意点について

舌が白いときに考えられる病気とその特徴、歯医者さんを受診した方が良いかどうかについて解説してきました。
続いては、舌が白いときのセルフケア方法や注意点について解説します。

2-1.セルフケアできるのは?

舌が白いときにセルフケアで改善が見込めるのは、舌苔やアフタ性口内炎です。

【舌苔の原因とセルフケア方法】
舌苔の原因の多くは

  • ドライマウスによる唾液不足
  • 口の中が不衛生なことによる雑菌の増殖
  • 体調不良からくる免疫力の低下

です。上記のような原因は、次の方法で改善を目指しましょう。

ドライマウスが原因の場合

ドライマウスになってしまう要因としては「噛む回数が不足している」「口呼吸する習慣がある」「加齢」「薬の副作用」などが挙げられます。

このうち加齢や薬の副作用についてはセルフケアが難しいため、水分を意識して摂取するようにしましょう。
その一方、「良く噛んで食べる」「鼻呼吸を心がける」といったように、改善できる部分もあります。
心当たりがある場合は、意識して改善しましょう。

口の中が不衛生なことによる雑菌の増殖が原因の場合

口の中が不衛生な環境になっている人は、正しく歯磨きできているかといった口内ケアを見直しましょう。
毎日の歯磨きと併せて、デンタルフロスや歯間ブラシ、デンタルリンスといったケア用品の活用も効果的です。

なお、歯医者さんで、自分に合った正しい歯磨きの仕方を指導してもらえます。
この機会に歯医者さんを受診して、指導してもらうのもおすすめです。

体調不良からくる免疫力の低下が原因の場合

疲労やストレス、睡眠不足といったことが原因で体調不良を招いている場合、免疫力が低下して舌苔ができやすくなります。

十分な睡眠、栄養バランスの整った食事、適度な運動、タバコや飲酒を控えるなど、生活習慣を見直し、改善できるところから取り組みましょう。

【アフタ性口内炎の原因とセルフケア方法】
アフタ性口内炎は、発症原因がはっきりしていません。要因として考えられていることは

  • 睡眠不足
  • ドライマウス
  • 過度なストレス
  • 不衛生な口内環境
  • 慢性的な疲労や胃腸障害
  • 同じ部位への慢性的な刺激
  • ビタミンB群や鉄分の不足

このように多岐にわたります。

疲労や栄養の偏り、睡眠不足といった心当たりがある場合は、それらの改善に努めましょう。
生活習慣の改善をしても治りにくい場合は、市販のアフタ性口内炎治療薬を使用して様子を見ましょう。

なお、口内炎にはいくつか種類があります。
アフタ性以外にも、感染症や別の病気が原因といった口内炎も考えられます。
アフタ性口内炎かどうかの判断が難しい場合は自己判断せず、まずは歯科口腔外科を受診して、医師に診断してもうことをおすすめします。

2-2. それ以外の病気は歯科口腔外科を受診

カンジダ性口内炎(偽膜性カンジダ症)、口腔白板症、舌がんなどは、自分では判断が難しい上、セルフケアでは改善が望めないことも考えられます。
舌が白い原因や何の病気かを知るためにも、歯科口腔外科を受診することをおすすめします。

2-3. どんな病気であっても舌が白い部分は刺激しない

続いて、舌が白い場合の注意点です。

舌が白いと汚れが付着していると思い込んでしまい、歯ブラシや舌ブラシ、ガーゼなどでゴシゴシこすったり、爪でひっかいたりしてしまいがちです。
確かに舌苔は汚れが付着しているものですが、ゴシゴシこすったりひっかいたりしたところで、きれいに落とすことはできません。
逆に、舌の表面を傷つけてしまうことで炎症を招いたり、口内炎を悪化させたりする恐れがあるので、刺激を与えることは控えましょう。

また、症状に改善が見られるまでは、辛味や酸味、熱いものといった刺激性の高い飲食物の摂取も、できるだけ控えることをおすすめします。

3. まとめ

この記事では、舌が白いときに考えられる病気について、見た目の特徴や症状、歯科口腔外科を受診した方が良いかどうかを解説してきました。

アフタ性口内炎のように自然治癒するものもあれば、舌苔のように生活習慣を見直すといったことで改善できるものもあります。

しかし、中には舌がんのように放置してしまうことで治療が大がかりになってしまうものもあります。
1章で紹介した見た目や症状については参考程度に捉え、舌が白い状態が続く場合は、歯科口腔外科を受診しましょう。

先生からのコメント

舌が白いからといって、必ずしも健康に問題がある訳ではありません。舌の奥は健康な人でも白くなっていることがあります。しかし、舌苔が舌先まである人、または厚みがある人は、胃の粘膜に異常をきたしていたり、自律神経が乱れていたりといったように、健康に何らかの問題があるかもしれません。舌苔は、タバコやストレス、睡眠不足などが原因でできることもあります。舌苔を防ぐには、原因を取り除くことが大切です。身体のケアと同時に、舌ブラシといったケアグッズを利用して、健康な舌の状態を保ちましょう。rnケアをしても改善の効果が見られないと感じたら、すぐに口腔外科や歯科で相談してください。ですが、全く舌苔のない人はいません。少し白っぽい程度なら、あまり気にしすぎないことも大切です。

医院情報
住所:東京都葛飾区お花茶屋2-5-16
電話:03-3601-7051
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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