舌癌の治療法・初期症状!口腔癌の分類方法まで1から解説

舌癌の治療法・初期症状!口腔癌の分類方法まで1から解説

口の中にできる癌を「口腔癌」と総称します。癌は全身のあらゆる場所にできるので、口腔内でも舌・歯肉・頬粘膜などいろいろな部位に発生する恐れがあります。ただ、部位ごとに発生確率は異なっており、特に発生頻度の高い口腔癌は舌癌です。

こちらの記事では「舌癌の基本的な治療法」「代表的な初期症状」について解説しています。口腔内の健康に関心を持つきっかけとして、皆さんのお役にたてば幸いです。

この記事の目次

1.舌癌の進行度に応じた「基本的な治療法」を確認

舌癌の治療は、外科手術・放射線治療・化学療法を組み合わせておこないます。ただ、具体的な治療方法は、舌癌の進行度によって変わってきます。そこで、まずは進行度による舌癌の分類を確認して、その後に具体的な治療法を紹介することにしましょう。

舌癌の病期分類をおこなうためには、まず「TNM分類」を知る必要があります。そこで、まずはTNM分類の詳細を解説したいと思います。

1-1 TNM分類の方法とは…?

TNMは「Tumor(腫瘍)」「Lymph Node(リンパ節)」「Metastasis(転移)」の頭文字をとった表現で、癌の進行度を端的に表す指標となります。TNM分類を知るためには、「T」「N」「M」の3要素について理解しなければなりません。

T:腫瘍の大きさ

「T」は腫瘍の大きさを指しています。外科手術は「腫瘍を除去する手術」ですから、外科手術の規模はほぼ「T」の要素で決定づけられます。「治療方法への理解を深める」という意味では、特に重要性の高い要素と言えるでしょう。腫瘍の大きさは、T0~T4で表現されます。

【腫瘍の大きさ…分類基準】

T0…腫瘍が認められない
Tis…腫瘍が上皮内にとどまっている
T1…腫瘍の最大径が2cm以下
T2…腫瘍の最大径が2cmを超えて、4cm以下
T3…腫瘍の最大径が4cmを超える
T4a…「舌深層の筋肉」「骨髄質」「周囲の口腔粘膜」などに浸潤
T4b…「顔面の皮膚」「頭部」「喉の奥」などに拡大・浸潤

N:頸部リンパ節転移

「N」は所属リンパ節である「頸部リンパ節への転移状況」を示しています。リンパ節を通って癌が拡大する「リンパ節行性転移」を防ぐ(または止める)ための「頸部リンパ節郭清(けいぶりんぱせつかくせい)」を実施するか否かに影響を与える要素です。リンパ節郭清とは、リンパ節を取りのぞく手術になります。頸部リンパ節への転移は、N0~N3で表現されます。

【頸部リンパ節転移…分類基準】

N0…頸部リンパ節への転移が認められない
N1…腫瘍と同じ側の頸部リンパ節に転移(単発 / 3cm以下)
N2a…腫瘍と同じ側の頸部リンパ節に転移(単発 / 3cmを超え、6cm以下)
N2b…腫瘍と同じ側の頸部リンパ節転移(複数 / 6cm以下)
N2c…腫瘍と異なる側、または両側のリンパ節転移)(複数 / 6cm以下)
N3…6cmを超えるリンパ節転移

M:遠隔転移

「M」は血管を通じて遠くの臓器に転移する「遠隔転移の有無」を示しています。遠隔転移が認められる場合、残念ながら根治は望めません。積極的に医療行為をおこなう場合は、延命・疼痛緩和が主となります。場合によっては「QOLの維持・向上」を基軸とした医療に移行するため、ホスピスでのターミナルケア(終末医療)を視野に入れることも必要でしょう。遠隔転移の有無はM0~M1で表現されます。

【遠隔転移…分類基準】

M0…遠隔転移が認められない
M1…遠隔転移が認められる

1-2 TNM分類を踏まえた病期分類(Stage)

病期分類はStageⅠ~Ⅳで表現されます。5年生存率などのデータは病気分類に応じて示されることが基本なので、多くの人が癌のStageを気にかけています。この項目では、TNM分類をふまえて、舌癌を含む口腔癌の病期分類基準を確認することにしましょう。

ちなみに、「M1(遠隔転移あり)」の場合、無条件でStageⅣcに分類されます。そのため、特に「M」に関する記述がない場合は「M0」を示しているものとご理解ください。

【口腔癌のStage分類】

Tis・N0→Stage 0
T1・N0→StageⅠ
T2・N0→StageⅡ
T3・N0 / T1~3・N1→StageⅢ
T4a・N0~2 / T1~3・N2→StageⅣa
T4b・N0~3 / T1~T4b・N3→StageⅣb
M1→StageⅣc

参照URL:http://jsco-cpg.jp/guideline/04.html

1-3 舌癌の進行度に応じた治療法

舌癌の治療には外科手術・放射線治療・化学療法がおこなわれます。ただ、主としておこなわれるのは外科手術と放射線治療の2つであり、化学療法は「超選択的動注(腫瘍に栄養を送っている血管に抗癌剤を注入)」が放射線治療と併用されるなど補助的に用いられます。また、腫瘍を切除して根治を目指すにあたっては、やはり「外科手術が治療の中心を占める」という認識が正しいでしょう。

さて、外科手術の規模を決定づけるのは「TNM分類」における「T:腫瘍の大きさ」の要素です。そこで、T1~T4における「外科手術の規模」を解説することにしましょう。

T1 / early T2 / late T2(表在型) / T3(表在型)

「舌部分切除」で根治を目指せます。腫瘍と「腫瘍の周囲」だけを切除するのが、舌部分切除です。舌の変形はあるものの、機能面ではほとんど問題ありません。入院を要するとしても数日、切除範囲が小さければ日帰り手術も可能です。

early T2(深い浸潤) / late T2(深い浸潤) / T3(深い浸潤)

「舌可動部半側切除」で根治を目指します。腫瘍ができた側の半分を切除するのが、舌可動部半側切除です。欠損部位を再建する治療もおこなわれるので、日常生活レベルの発音・嚥下に大きな影響はありません。味覚も保たれます。

T3(非常に深い浸潤)

「舌可動部全摘出」で根治を目指します。舌根を残し、舌をほぼ摘出する手術です。欠損分の再建もおこないますが、嚥下・発音には大きな障がいが残ります。味覚はある程度残りますが、流動食中心の生活になります。

T4

「舌可動部全摘出」または「舌全摘出」になります。いずれにしても、嚥下・発音には大きな障がいが残ります。

LateT2~T4・N0症例 / N1~3症例

「頸部リンパ節郭清」をおこない、頸部リンパ節を切除します。頸部リンパ節に転移がある場合(N1~3)はもちろんのこと、転移がなくても予防的に切除する例があります。具体的にはLate T2以上の腫瘍があるケースで、予防的切除がおこなわれます。

下顎骨・口底に浸潤している症例

「下顎合併切除」をおこない、腫瘍の浸潤部位を取りのぞきます。浸潤の程度に応じて「下顎辺縁切除」または「下顎区域切除」の適応になります。辺縁切除は「えぐるように切除し、下顎を真っ二つにはしない手術」で、区域切除は「下顎の一部を全て切除し、左右の連結が保たれなくなる手術」です。

参照URL:http://jsco-cpg.jp/guideline/04_2.html

2.舌癌の代表的な初期症状は?

舌癌は早い段階で所属リンパ節に転移する傾向があるので、できる限り早い段階で発見することが大切です。早期発見ならば舌部分切除で済み、嚥下・発音・味覚へ影響しないよう根治させることも可能になります。

2-1 白斑病変

舌の辺縁(ふちどりの部分)に「表面が白くてざらざらする部分」があれば、白斑病変かもしれません。前癌病変(癌の一歩手前)または初期癌の疑いがあります。この段階では痛みがないので、見づらい部分の白斑病変は発見するのが難しい場合も多いです。

2-2 潰瘍形成

舌の一部に「裂け目」「穴」のような部位があれば、潰瘍の疑いがあります。この段階まで来ると持続的な痛みを伴うことも多いです。「治る気配のない口内炎」を見かけたら、舌癌を疑ったほうが良いでしょう。

3.まとめ

舌癌は口腔癌の中でもっとも発生頻度が高い癌です。とはいえ、鏡を見れば自力で発見できる可能性もありますから、わりと早期発見しやすい癌でもあります。「口腔内の状態に関心を持つ習慣」をつければ、癌を早期発見できる可能性もあるのです。

癌に限らず、すべての口腔トラブルを予防・早期治療するため、常に口腔内の健康状態を意識するようにしましょう。そして、何か違和感を覚えたときには、早めに歯科口腔外科に相談するように心がけてください。

 

先生からのコメント

癌と聞くと怖いですね。早期発見・早期治療が何よりも大切です。私個人として診療していく中で癌と診断をさせていただいて、大学病院に紹介させていただいたところ1週間以内に手術とかなり速度感をもって処置を進められたこともありました。早期発見でしたので会話も問題なくでき、食事も普通に食べられるところまで回復できました。やはり癌は少しでも早く対応することで予後が大きく変わるなと実感した経験でした。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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