口内炎を早く治す方法は?種類別の特徴、原因、治療法を紹介

口内炎を早く治す方法は?種類別の特徴、原因、治療法を紹介

「口内炎=食事するのも嫌になるほど痛い」という認識を持つ方がほとんどではないでしょうか。実際、頻繁に見られる種類の口内炎は、激しい痛みを伴います。

しかし、中には「ほとんど痛みを感じない口内炎」も存在します。口内炎は「口の中に発生する炎症」の総称であり、特定の病気を指し示す言葉ではありません。口内炎にはたくさんの種類があるのです。

こちらの記事では、「口内炎の種類」を分類した上で、それぞれ「どのように治すのか」を解説しています。「口内炎と間違えやすい病気」も紹介していますので、あわせてご確認いただければ幸いです。

この記事の目次

1.痛みを伴う口内炎を治す!~症状・原因・治し方

まずは、「痛みを引き起こす口内炎」を紹介したいと思います。皆さんが「自分はどのタイプの口内炎か」を判別できるように「外見的特徴・症状」をまとめ、それから「原因・治療方法」を解説する形式にしました。

1-1 アフタ性口内炎の特徴

一般に「口内炎」と口にするとき、多くは「アフタ性口内炎」を指しています。もっとも頻繁に見られる口内炎で、強い痛みを伴うのが特徴です。「口内炎=痛い」という印象を作りだしたのは、このアフタ性口内炎です。

黄白色~灰白色で、周囲との境界線はくっきりしています。大きさは2~6mmくらいで、多くの場合、一度にできるのは1~3個です。潰瘍(かいよう)なので、やや窪んでいるのが普通です。強い痛みが特徴で、「物理的接触」「辛味・酸味などの刺激」に対して耐えがたいほどの痛みを訴える人もいます。

アフタ性口内炎の原因

現状、アフタ性口内炎の発症メカニズムがはっきりと解明されているわけではありません。とはいえ、直接的原因がはっきりしていないだけで、「アフタ性口内炎の発症率を上げるリスクファクター」はわかっています。

・物理的刺激
・ドライマウス
・口腔内の不衛生
・ビタミンB群の欠乏
・鉄分の欠乏
・睡眠不足
・ストレス
・疲労

「詰め物・かぶせ物にとがった部位がある」「入れ歯の金具が当たる」などの理由で、同じ場所に慢性的刺激が加わると、アフタ性口内炎を発症しやすくなります。また、唾液が少なくなるドライマウス(口腔内乾燥症)になると、口腔粘膜が刺激に弱くなり、口内炎の発症率が上がります。そのほか、ビタミンB群・鉄分が不足していたり、睡眠不足など広義の体調不良が続いていたりすると、口内炎を誘発しやすくなるようです。

アフタ性口内炎の治し方

基本的には、1~2週間で収まります。ただ、「一度に4個以上の口内炎ができている」「早く治す必要がある」といった場合は、医療機関を受診したほうが良いでしょう。

医療機関では「ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)」を処方して治療を早める方法があります。口腔用の「デキサメタゾン軟膏(商品名:CH / イワキ etc.)」を用いることが多いです。「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」など、漢方薬に一定の有用性を認める医師もいます。

そのほか、ビタミンB群の欠乏が疑われる場合にはビタミン剤を投与します。口腔内の慢性的刺激が原因の場合には、刺激の原因となっている詰め物・かぶせ物・入れ歯の調整を実施します。

1-2 カタル性口内炎の特徴

アフタ性口内炎の次に多いのが、カタル性口内炎です。「赤い口内炎」の中でもっとも代表的な種類と言えます。粘膜に赤い斑点が生じるのが特徴で、周囲が全体的に赤く腫れることも多いです。斑点の輪郭はぼんやりしていて、病変の境界線は不明瞭です。

それほど強い痛みではありませんが、赤く腫れた部位に「熱感(灼けるような熱い感覚)」「ヒリヒリした刺激感」を覚えることがあります。また、「酸味・辛味のある刺激物」が触れると、やや痛みが強くなります。

悪化すると、「周囲が白っぽくただれる」「表面がひび割れる」などの症状が出ることもあります。そのほか、人によっては「味覚がにぶる」「口臭が悪化する」などの自覚症状を訴えるケースも見られます。

カタル性口内炎の原因

口腔内の同じ場所に、慢性的な物理刺激が加わると、カタル性口内炎を発症することがあります。「睡眠不足・疲労などの体調不良が続いている」「歯磨きを怠り、口腔内が不衛生になっている」などの副次的要因が加わると、発症率が増大します。

カタル性口内炎の治し方

基本1週間~10日で収まります。口腔内を不衛生にしておくと治りが遅れますから、早く治すためには「口の中をきれいに保つこと」が大切です。「ポビドンヨード(商品名:イソジン)」「クロルヘキジシン(商品名:コンクール)」など、うがい薬で口腔内を消毒すると良いでしょう。アルコール濃度の高い洗口液は、刺激が強すぎるのでNGです。

「痛みがひどい場合」「広範囲にわたる場合」は、医療機関を受診すると良いでしょう。抗生物質を処方して、雑菌を抑える対症療法がベーシックです。また、入れ歯・矯正器具による物理刺激が要因のケースでは、入れ歯・矯正器具の調整をおこないます。

1-3 ヘルペス性口内炎の特徴

ヘルペス性口内炎は、ウイルスによって発症する「ウイルス性口内炎」の1つです。原因となるウイルスは「単純ヘルペスウイルス1型」です。幼児期、初めてヘルペスウイルスに感染したときは発熱などの全身症状を伴いますが、成人の場合は「口腔内・喉に痛みを伴う赤い発疹ができる」という症状が主軸になります。

ヘルペス性口内炎の原因

前述のとおり、「単純ヘルペスウイルス1型」が原因です。ただ、日本人の7~8割が単純ヘルペスウイルス1型に感染しており、すでに多くの人が体内にウイルスを飼っている状態です。いったん感染すると、(現代の医学では)体内の単純ヘルペスウイルスを根絶することができません。一生涯、三叉神経節という場所にウイルスを飼い続けることになります。

そのため、「ウイルスが体内に入ると発症する」というより、「風邪・疲労などで免疫力が低下すると、体内のウイルスが暴れ出して発症する」と捉えたほうが正しいです。ヘルペス性口内炎のほか、「口唇ヘルペス」「ヘルペス角膜炎」「単純ヘルペス脳炎」などを引き起こすこともあります。

ヘルペス性口内炎の治し方

ウイルス感染症なので、抗ウイルス薬を用います。ヘルペスウイルスを根絶することはできませんが、増殖を抑えて軽快を早めることが可能です。以下にかかげる3成分が、単純ヘルペスウイルスに効く抗ウイルス薬として知られています。

・アシクロビル(商品名:ゾビラックス、ヘルペシアetc.)
・塩酸バラシクロビル(商品名:バルトレックス)
・ビダラビン(商品名:アラセナetc.)

いずれの成分も、ヘルペスウイルス(正しくはヘルペスウイルスに感染した細胞)がウイルスを増殖させるときに使う酵素―「DNAポリメラーゼ」を阻害することで、ウイルスの増殖を抑える薬です。これらを「DNAポリメラーゼ阻害薬」と総称します。

軟膏などの外用薬に限って「ヘルペスの市販薬」が存在しますが、市販薬の適応症は「口唇ヘルペスの再発例」です。ヘルペス性口内炎は適応外なので、市販薬で治すことはできません。早く治すなら、きちんと医療機関を受診しましょう。医療機関で処方される内服薬で治療したほうが、修復が早まります。

口内炎の痛みを抑えるために鎮痛剤を処方する際は、「アセトアミノフェン」を用います。「ジクロフェナクNa」「ロキソプロフェン」などは症状を悪化させる恐れがあります。炎症を抑える作用が強く、ウイルスへの抵抗力を弱めてしまうからです。同様に、免疫抑制作用がある「ステロイド(副腎皮質ホルモン)」も使いません。

2.痛みが少ない口内炎を治す!~症状・原因・治し方

中には、「それほど痛みを伴わない口内炎」というのも存在しています。ただ、「痛みが出ない=気にしなくて良い」というものではありません。きちんと経過観察して、なかなか治らないようなら医療機関を受診する必要があります。

2-1 カンジダ性口内炎の特徴

カンジダ性口内炎には3つの種類が存在しており、それぞれ特徴が異なります。まずは、個々の特徴をまとめることにしましょう。それぞれ「偽膜性カンジダ症」「萎縮性カンジダ症」「肥厚性カンジダ症」と呼ばれています。

偽膜性カンジダ症

偽膜性カンジダ症では、口蓋(口の天井部分)、頬粘膜(ほっぺたの内側の粘膜)に苔状の「白い膜」が現れます。この状態であれば、痛みを感じることはありません。ただ、こするなどして「白い膜」を剥がすと、膜の裏側に発赤・びらんが見られることが多いです。膜を剥がしてしまうと、痛みを感じることもあります。

萎縮性カンジダ症

萎縮性カンジダ症は、入れ歯を装着している人に見られます。入れ歯の床部分が接していた部位に発赤が生じます。それほど痛みは強くありませんが、人によっては「ヒリヒリした感覚」「熱感(灼けるような熱い感覚)」を訴えることもあります。

肥厚性カンジダ症

肥厚性カンジダ症は、口腔粘膜の一部が盛りあがり、皮膚のように固く厚くなっていきます。痛みなどの自覚症状はほとんどなく、医療機関を受診する人のほとんどは「見た目が変わったこと」を気にして受診します。

カンジダ性口内炎の原因

真菌(カビ)の一種であるカンジダ菌への感染が原因です。カンジダ菌は口腔内に棲んでいる常在菌であり、基本的に感染することはめったにありません。しかし、「免疫力の低下」「カンジダ菌の大量増殖」などが起こると、感染することがあります。

また、入れ歯の手入れを怠っていると、入れ歯の内部でカンジダ菌が増殖し、感染を招くことがあります。高齢者は免疫力も低くなっていることが多いので、「不衛生な入れ歯を使っている高齢者」がカンジダ性口内炎にかかりやすくなっています。

カンジダ性口内炎の治し方

真菌感染症なので、抗真菌薬による治療を試みます。真菌は植物性の細胞膜を持っているので、植物性細胞膜を破壊する「アゾール系抗真菌薬」が多用されます。

ちなみに、真菌に抗生物質は効きません。抗生物質を使用すると細菌だけが死んで、真菌であるカンジダ菌は生き残ります。口腔内の常在菌は常に勢力争いをしていますから、抗生物質を使用すると、ライバルのいなくなったカンジダ菌がどんどん増殖します。

つまり、抗生物質はカンジダ性口内炎を増悪させる要因になります。当然、抗生物質の連用・多用はカンジダ感染症を誘発する原因になり得ます。

2-2 ニコチン性口内炎の特徴

ニコチン性口内炎にかかると、口腔の天井部分―口蓋が白く変色していきます。変色部位は楕円形・円形のいずれかの形状をとることが多いです。あるいは、口腔内に唾液を供給している小唾液腺が赤く腫れる…という症状が出ることもあります。ふだん、痛みを感じることはほとんどないのですが、「刺激の強い飲食物が触れると痛む」と訴える人もいます。

ニコチン性口内炎の原因

名前のとおり、ニコチン性口内炎の原因は喫煙です。タバコに含まれる有害物質が、口腔粘膜に悪影響を与えます。また、吸っている本人はあまり気づきませんが、タバコの煙は高温です。高温の煙を口に含んで、「口腔内が軽い火傷を繰り返したこと」を原因の1つと考える人もいます。

ニコチン性口内炎の治し方

ニコチン性口内炎を治すためには、禁煙することが第一です。タバコをやめてから数ヶ月で、症状はほとんど軽快すると考えられています。禁煙が難しい場合は、喫煙の後、うがいをして口腔内の有害物質を洗い流すと良いでしょう。

ただ、喫煙は口腔癌の原因にもなりますから、なるべくなら禁煙する、少なくとも本数を減らす…という方向に持っていくことをおすすめします。

3.全身疾患の一部として現れる口内炎を治す!症状・原因・治し方

全身疾患に罹患したときに「症状の1つ」として、口内炎を生じることがあります。もちろん、口内炎の症状を抑えることも大切ですが、何よりも「根本原因となっている全身疾患を抑える・治す」ことを考えなければいけません。

3-1 手足口病・ヘルパンギーナの特徴

手足口病とヘルパンギーナは、いずれも夏場に子供の間で流行する感染症です。症状がよく似ているので、ひとくくりに解説することにします。

手足口病

手足口病は、ウイルス感染症の1つです。病名のとおり、手足と口腔内に発疹・水疱(水ぶくれ)が生じます。37~38℃くらいの発熱を伴いますが、流行しているウイルスの型によって症状の程度は変わってきます。ほとんど発熱しないこともあれば、39℃を超える高熱が出ることもあるようです。

口腔内の水疱は口内炎と区別しにくいかもしれませんが、手のひら・足の裏など広範囲に発疹が出るので、「手足口病の疑い」に気づくこと自体は難しくありません。

ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナもまた、ウイルス感染症の1つです。口腔内に水疱を生じますが、手足に発疹ができることはありません。代わりに39~40℃の高熱を出すことが多く、発熱・倦怠感といった全身症状は、手足口病より重篤になりがちです。

手足口病・ヘルパンギーナの原因

いずれもウイルス感染症ですから、原因はウイルスです。手足口病を引き起こすのはエンテロウイルス属の複数ウイルスで、代表的なのは「コクサッキーウイルスA16」「エンテロウイルス71」です。ヘルパンギーナもエンテロウイルス属のウイルスによって発症し、主に「コクサッキーA型ウイルス」が原因となります。

手足口病・ヘルパンギーナの治し方

手足口病・ヘルパンギーナともに、よく効く抗ウイルス薬は存在しません。発熱・発疹・水疱といった諸症状に対症療法をおこないながら、自然治癒を待つことになります。口腔内の水疱で飲食が困難になりますが、きちんと水分を与えるようにしてください。夏場の病気なので、脱水症状が心配です。

3-2 猩紅熱(しょうこうねつ)の特徴

「発熱」「喉の痛み」「頭痛」など風邪のような症状に加え、赤~紅色の発疹が全身に現れます。小さな発疹が無数に発生することから、「サンドペーパー様発疹」と表現することがあります。

口腔内の症状としては、舌が腫れて「赤い斑点」が浮かびあがる「いちご舌」があげられます。この症状を指して「猩紅熱性口内炎」と呼んでいます。ただし、必ずしも口腔内の症状が出るとは限りません。

猩紅熱の原因

溶連菌感染症なので、原因は「A群β溶血性連鎖球菌(化膿レンサ球菌)」です。溶連菌の菌体・毒素に対してアレルギーを起こすことが、直接の要因となります。

猩紅熱の治し方

1998年までは法定伝染病に指定されていましたが、猩紅熱が「怖い病気」だったのは抗生物質が実用化する前の話です。現在、猩紅熱(しょうこうねつ)をはじめとする溶連菌感染症は、抗生物質の投与で治すことができます。ペニシリン系の抗生物質に対して感受性が高いので、ペニシリン系の抗生物質を処方するのが第一選択です。

3-3 全身性エリテマトーデスの特徴

自己免疫性疾患―全身性エリテマトーデスの症状として、アフタ性口内炎によく似た「口腔内の潰瘍」があります。外見的にはアフタ性口内炎とほとんど区別がつかず、黄白色~灰白色で、2~6mm程度の境界線がくっきりした潰瘍を生じます。ただ、アフタ性口内炎が有痛性口内炎なのに対し、全身性エリテマトーデスは無痛性口内炎となります。要するに、痛みはありません。

全身性エリテマトーデスは、口内炎のほか、「腎障害」「関節炎」「神経障害」「溶血性貧血」「白血球・リンパ球減少」など、さまざまな症状をきたします。

全身性エリテマトーデスの原因

発症原因はわかっていませんが、内分泌異常・ウイルス感染・遺伝などが複雑に影響しているものと考えられています。ただ、男性に比べると、女性の発症率が10倍ほど高く、20~40歳の出産可能年齢に多発することから、エストロゲン(女性ホルモン)が関与していると考える研究者も多いです。

全身性エリテマトーデスの治し方

現代の医学で、全身性エリテマトーデスを治すことはできません。ただ、1950年代に入って「ステロイド系抗炎症薬」が実用化されたことで、全身性エリテマトーデスの病状をコントロールすることは可能になっています。かつては「発症から5年以内に死に至る」とされた病気ですが、現在では病状を抑えたまま一生を送る患者さんがたくさんいます。

発症時、悪化時には「免疫抑制剤の投与」「免疫グロブリンGの大量投与」「高容量ステロイド内服」などで症状を抑えこみ、安定したら少量の「ステロイド系抗炎症薬(プレドニゾロン)」を一生涯、服用します。

4.口内炎と間違えやすい症状!癌に変わる病変も…?

世の中には、「口内炎に見えるが、口内炎ではない症状」が存在しています。中には、「癌に変わることがある病変(前癌病変)」も存在しているので、むしろ、「ただの口内炎ではない」という場合にこそ、注意が必要です。

4-1 粘液嚢胞の特徴

粘液嚢胞は1.5~5.0mmくらいの水ぶくれです。基本、口腔内に1つだけ発生して、だんだん大きくなることが多いです。指・舌で強く圧迫したり、歯が引っかかったりすると容易に破けて、中から粘液が出てきます。しかし、いったん潰れたとしても、大半は再発して、何度でも繰り返します。痛みはまったくありません。

粘液嚢胞の原因

ご存じのとおり、口腔内には唾液が供給され続けています。唾液を供給するのは大唾液腺と小唾液腺ですが、粘液嚢胞を起こすのは小唾液腺です。「自分の歯」「魚の骨」などが小唾液腺の出口に刺さると、出口が塞がることがあります。すると、供給されるべき唾液が出てこなくなり、粘膜の内側に溜まっていきます。結果、粘膜の一部が唾液で膨らみ、水ぶくれを生じるわけです。

粘液嚢胞の治し方

出口の塞がった小唾液腺がある限り、粘液嚢胞は再発します。そこで、嚢胞に加え「原因となっている小唾液腺」を外科的に切除するのが有効です。放っておいても害はありませんが、気になるようなら治すほうが良いでしょう。

4-2 口腔白板症の特徴

口腔白板症は、口腔粘膜の一部が白色に変色する症状です。多くの場合、特に痛みは感じません。形状はさまざまで、「表面が滑らかなもの」「表面にしわが入っているもの」「イボのように隆起するもの」などが存在し、一概には言えません。放置すると、赤い斑点が混じる「紅斑混在型」に変化する例があり、紅斑混在型になると痛みを伴うこともあります。

前癌病変の1つであり、放置すると口腔癌に変わることがあります。おおむね3~5%が癌化すると考えられています。経過観察しても治ることがないので、「白い口内炎が2週間経過しても改善しなければ白板症を疑う」という姿勢でいてください。

口腔白板症の原因

慢性的な刺激が原因になる…とされています。「欠けた歯の鋭利な断面」「合わない詰め物・かぶせ物」「入れ歯の金具」などが同じ部位に物理的刺激を与え続けると、白板症のリスクが増大します。そのほか、喫煙習慣があると、有害物質の刺激を慢性的に受け続けることから、リスクが上がると考えられています。ただ、慢性的刺激によらない白板症もあると言われており、明確な原因が提示される段階には至っていません。

口腔白板症の治し方

治すためには、白板症の部位を外科的に切除するしかありません。ただ、範囲が広い場合は切除によって口腔機能が低下するため、まずは生検(わずかに切り取って、組織を検査)をおこない、「すでに癌化していないか」「悪性腫瘍になるリスクはどれくらいか」を調べることになるでしょう。結果によっては即切除ですが、癌化していない白板症ならば経過観察にとどめることも多いです。定期的に検査を受ければ、癌化しても早期切除できるので、それほど心配いりません。

4-3 紅板症(紅色肥厚症)の特徴

口腔内の一部が盛りあがり、赤く変色しているなら、紅板症かもしれません。表面はなめらかでつやつやしていることが多いですが、一部に潰瘍ができることもあります。赤く変色する過程で粘膜が薄くなっていくので、発生当初に刺激痛を感じる場合があります。ただ、患部が典型的な紅板症になってからは、ほとんど痛みません。

前癌病変の1つで、口腔癌に変わることがあります。全体の半数ほどが癌化すると考えられており、白板症よりリスクの高い前癌病変です。

紅板症の原因

白板症・口腔癌と同様に、慢性的刺激がリスクファクターになると考えられています。もちろん、喫煙、過度の飲酒(特にアルコール度数の高い種類)も原因になり得ます。ただ、明確な発症メカニズムが解明されているわけではありません。

紅板症の治し方

紅板症の治療方法は、外科的切除になります。まずは生検をおこない、「すでに癌化していないか」を確認することになるでしょう。非常に癌化リスクの高い前癌病変なので、検査してみると「上皮内癌になっている」というケースも珍しくありません。ただ、上皮内癌(腫瘍が表層にとどまっているもの)のうちに切除すれば、問題なく治すことが可能です。むしろ、「紅板症・上皮内癌のうちに発見できて良かった」とポジティブに捉えるようにしてください。

5.なかなか治らない病変は医療機関へ!口腔癌の恐れも…

基本的に、ただの口内炎は2週間ほどで自然に収まります。2~3週間が経過しても改善の兆候さえ見られないなら、恐らく、単なる口内炎ではありません。なかなか治らない病変があるなら、念のために医療機関を受診するようにしてください。口腔癌など、生命にかかわる病気の恐れもあるからです。

口腔癌は癌全体の1~3%程度に過ぎず、肺癌・胃癌などと比べればマイナーな存在です。しかし、国立がんセンターの発表では「口腔癌・咽頭癌による死亡者は増加傾向」となっており、決して軽視することはできません。

さて、口腔癌にはいくつかの種類があります。まずは、「口腔内に発生する癌の種類」と「それぞれの発症割合」を確認してみましょう。発症率のデータは、「日本頭頸部癌学会」が2002年に集計したデータを引用しています。

5-1 舌癌の特徴&治療法

口腔癌全体の60.0%が舌癌となっており、もっとも頻繁に見られる口腔癌です。舌の側面(左右いずれかの縁どりの部分)に発生することが多く、舌の真ん中に癌ができることは稀(まれ)です。

外科手術・放射線治療・化学療法を組み合わせた集学治療をおこないますが、根治を目指すにあたっては外科手術が基本になります。放射線治療と「超選択的動注(腫瘍に栄養を送る動脈に抗癌剤を入れる方法)」を組み合わせて腫瘍をなるべく小さくして、それから外科手術をおこなうのが治療の流れです。あらかじめ腫瘍を小さくしておけば、手術による切除範囲を縮小できるからです。

初期舌癌には「舌部分切除」「舌可動域半側切除」をおこないます。舌の切除範囲が半分までなら、再建によって嚥下・構音(発音)機能をほぼ維持することが可能です。もちろん、味覚も正常なままです。

ただ、進行癌になると、「舌可動部全摘出」「舌全摘出」が必要になります。この場合、嚥下・構音機能に大きな障がいが残ります。舌は「噛んでいる間、食べ物を歯の位置にとどめる役割」を負っているので、舌がなくなると咀嚼も困難になります。固形物を食べるのは難しくなり、流動食中心の生活になるでしょう。

また、腫瘍が下顎にまで浸潤していれば、「下顎合併切除」をおこない、下顎骨の一部も切り取らなければなりません。

5-2 下顎歯肉癌の特徴&治療法

口腔癌全体の11.7%が下顎歯肉癌で、下顎の歯茎に発生します。奥歯の歯茎に発生することが多く、進行すると早期に下顎骨に浸潤する傾向です。

下顎は放射線・化学療法(抗癌剤)が効きにくいので、外科手術が第一選択となります。腫瘍が歯肉だけにとどまっていれば「歯肉切除」で済むこともありますが、骨に浸潤している(または浸潤の疑いがある)ようなら下顎骨まで切除範囲に入ってきます。下顎骨を切除する場合、癌の進行度に応じて、以下のように切除範囲が決まります。

下顎辺縁切除

腫瘍が歯槽骨にとどまっているようなら、辺縁切除となります。下顎骨の上部(歯が生えてるあたり)をえぐるように切り取ります。下顎骨の下部(顔の輪郭あたり)は手をつけないので、下顎が分断されることはありません。

下顎区域切除

腫瘍が下顎骨に浸潤していれば、腫瘍の周辺にある骨を完全に切除する必要があります。下顎骨の一部を取りのぞくので、下顎の骨は2つに分断されます。

下顎亜全摘出・下顎全摘出

下顎骨の深くまで浸潤しているようなら、下顎骨を大きく切り取ることになります。亜全摘出は「下顎の半分以上を切除する術式」で、全摘出は「下顎すべてを切除する術式」です。咀嚼できなくなるので、QOLは大きく低下します。

5-3 上顎歯肉癌・硬口蓋癌の特徴&治療法

上顎歯肉癌は口腔癌の6.0%、硬口蓋癌は3.1%を占めます。上顎歯肉癌は上顎の歯茎、硬口蓋癌は「口の天井部分」に腫瘍ができます。上顎部の癌が進行すると、頬粘膜・鼻腔などに浸潤していきます。

上顎の腫瘍は頭部に浸潤していくので、外科手術の影響が大きくなりがちです。そこで、手術前に放射線治療・超選択的動注で腫瘍の縮小を試み、外科手術の範囲をなるべく抑えます。ただ、それでも下顎と比べて予後が悪く、術後のQOLも低下しやすいのが現状です。

腫瘍が歯肉・口蓋表層にとどまっていれば「歯肉切除」「口蓋の部分切除」で事足りますが、上顎骨への浸潤が疑われるようなら「上顎部分切除」が必要です。上顎骨に大きく浸潤している場合は、浸潤の程度により、切除範囲を決定します。

浸潤の範囲に応じて、眼窩底を温存して上顎骨の大半を切除する「上顎亜全摘出」、眼窩底を含めて上顎骨すべてを切除する「上顎全摘出」などを実施します。上顎全摘出で眼窩底を切除した場合、眼球下垂(眼球が下に落ちる)で複視(モノが二重に見える)を起こすことがあるので、コラーゲンプレート・頭蓋骨片などを用いて眼窩底の再建を試みます。

浸潤範囲が広い場合は、やむを得ないので「上顎拡大全摘出」の適応となります。上顎骨すべてに加えて、眼窩内容物なども摘出することになり、視力を失います。患者さんのQOLを大きく低下させてしまうので、この事実からも早期発見の大切さが浮き彫りになります。

5-4 口腔底癌の特徴&治療法

口腔底癌は、口腔癌の9.7%に相当する癌です。「口の底(舌の下)」に腫瘍が発生します。中央寄りの前歯側にできるものを「正中型」、左右の奥歯側にできるものを「側方型」と呼んで区別します。進行すると、歯槽骨・下顎骨に浸潤します。

放射線治療・化学療法で腫瘍の縮小を試みることはありますが、根治を目指すためには外科的切除が必要です。腫瘍が2cmくらいまでなら「口腔底部分切除」、2cmを大きく超えていれば「口腔底全切除」の適応となります。

また、歯槽骨周辺・下顎骨に浸潤が認められる場合、「下顎合併切除」をしなければなりません。浸潤の程度に応じて、「下顎辺縁切除」または「下顎区域切除」がおこなわれます。

5-5 頬粘膜癌の特徴&治療法

口腔癌全体の9.3%に相当し、頬(ほほ)の内側の粘膜に腫瘍を生じます。頬粘膜に加え、上下の唇粘膜・臼後三角(奥歯の後方にある粘膜)なども頬粘膜癌の発生範囲に含まれます。

進行すると、腫瘍は「頬筋」「皮膚」「上下の歯肉」「上下の顎骨」「口角」などに浸潤していきます。腫瘍が頬粘膜にとどまっていれば、「頬粘膜切除」「放射線治療」で根治を目指せますが、進行癌では切除範囲が大きくなり、QOLにネガティブな影響が出ます。具体的には「上顎骨合併切除」「下顎骨合併切除」「皮膚切除」などの必要性が生じます。

5-6 リンパ節に転移している場合

口腔癌が、所属リンパ節に転移しているときは、「頸部リンパ節郭清」をおこなってリンパ節を切除します。転移が認められなくても、腫瘍が2cmを超えていれば、予防的に頸部リンパ節郭清をおこなうのが普通です。

6.まとめ

口内炎の多くは自然に収まりますが、中には「前癌病変」「口腔癌」といったハイリスクな症例も存在します。目安として、2週間が経過しても改善の兆候が見られない場合、医療機関を受診したほうが良いでしょう。

原則、口腔内に何らかの異変を見つけたら、「経過観察は2週間まで」を考え、それまでに収まる気配がなければ「医療機関で治す方向」に切り替えましょう。もちろん、全身症状がある場合、痛みが強い場合などは、早急に医療機関に相談してください。

 

経歴

1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年 (医)友歯会ユー歯科 箱根、横浜、青山、身延の診療所に勤務
1984年~1994年 アクアデルレイ ダイビングショップ 非常勤スタッフ
1985年 コージ歯科 開業
1996年 日本大学松戸歯学部生化学教室研究生
~2002年 歯学博士
2014年 昭和大学  客員講師
現在に至る

医院情報
住所:東京都葛飾区お花茶屋2-5-16
電話:03-3601-7051
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

ページトップへ