冷たいものがしみる!虫歯・知覚過敏・歯周病それぞれの原因と対処法

冷たいものがしみる!虫歯・知覚過敏・歯周病それぞれの原因と対処法

アイスクリーム・かき氷といった冷たい食べ物を口に入れた瞬間、歯に激痛が走った経験はありませんか?「冷たいものがしみる」という症状で、口内のトラブルに気づく例はよくあります。

冷たいものがしみる場合、虫歯・知覚過敏の両方を疑う必要があります。この記事では、虫歯・知覚過敏の症状・治療法を解説します。冷たいものがしみると感じたときの、参考にしてください。

この記事の目次

1 虫歯で冷たいものがしみる原因

「歯の痛み」を引き起こす原因の代表格は、虫歯です。
歯がしみたり痛かったりするとき、「虫歯かな…?」という疑いを持つ方は多いでしょう。
虫歯の進行度合いによっては、「ズキズキと痛む」というより、「冷たいもの・甘いものがしみる」という痛み方をする時期があります。

1-1 虫歯で冷たいものがしみるなら、「C2」の段階

「普段は痛くないけれど、冷たいものがしみる」という場合、虫歯の進行度は「C2:象牙質まで達した虫歯」の段階です。
この症状に対する治療では、神経を抜く必要はありません。
歯の寿命に大きな悪影響を与えることなく、虫歯の治療を行うことができます。

象牙質まで達した虫歯まで進行すると、「虫歯の穴」を目で見て確認することができます。
または、舌先で歯に触れたとき、虫歯の存在がわかることがあります。
虫歯が原因で冷たいものがしみるのであれば、「虫歯ができているかどうか」を自分で確認することが可能です。

1-2 進行度別!虫歯の痛み方を確認

虫歯の進行度によって、「どのように痛むことが多いか」を確認しておきましょう。

C1 エナメル質までの虫歯

歯の表面(エナメル質)にわずかに虫歯ができた状態で、痛みが出ることはほとんどありません。

C2 象牙質まで達した虫歯

虫歯が象牙質に及んだ状態で、冷たいもの・甘いものがしみることがあります。
何も口に入れていないときには、痛みません。

つまり、虫歯が原因で冷たいものがしみる場合、この段階である確率が高いです。

C3 歯髄(しずい:神経のこと)に達した虫歯

象牙質を突破され、歯髄(神経)が虫歯菌に感染した状態です。
歯髄炎という炎症を起こしているため、何もしなくてもズキズキと痛みます。
このように、外部からの刺激がなくても痛むことを「自発痛」と呼びます。

この段階になると、神経を抜く処置(専門的な用語では、抜髄(ばつずい))が必要になることが多くあります。
抜髄した歯は10年ほど寿命が縮むとされています。
なるべく、この段階に至る前に治療をおこなうべきです。

C4 歯の根だけが残っている状態

歯髄炎がさらに悪化し、歯髄が死んでしまった状態です。
神経が死んでしまっているので、痛みを感じることはありません。
歯を救うことは難しく、抜歯になるケースが多いです。

2 知覚過敏で冷たいものがしみる原因

虫歯が見当たらないのに「冷たいものがしみる」という自覚症状があるなら、知覚過敏を起こしている疑いがあります。
知覚過敏は、「なにもしなくても痛む(自発痛)」がありません。
「冷たいもの・甘いもの・物理的刺激」に対して、「短く鋭い痛み」を感じます。

2-1 知覚過敏が起こるメカニズム

歯に穴があいているわけでもないのに、なぜ、冷たいものがしみるのでしょうか?

知覚過敏のメカニズムをわかりやすく説明すると、以下のようになります

1 歯の表面が削れて、象牙質が露出している状態の歯がある
2 冷たいものを口に含む
3 「冷たいという刺激」が象牙質に存在する象牙細管を通じて歯髄に伝わる
4 歯の痛みとして感じる(知覚過敏)

さらに深く理解するために、まずは歯の構造から確認していきましょう。
歯の構造は歯冠・歯根で少し異なるので、歯冠・歯根それぞれの意味を含めて、解説していきます。

歯冠

歯本体のうち、歯茎より上の部分を指します。
外側はエナメル質で覆われ、その内側に象牙質があります。

歯根

歯本体のうち、歯茎に隠れている部分を指します。
歯根にはエナメル質が存在せず、表面はセメント質という層に覆われています。
セメント質の内側には、歯冠と同様に象牙質が存在しています。

表面のエナメル質・セメント質が何らかの理由で削れると、象牙質が露出することになります。
象牙質には、象牙細管と呼ばれる無数の穴が存在しています。
そして、象牙細管は「象牙質の表面」から「歯髄」の方向に、細いトンネルのようにいくつも伸びています。

言い換えると、エナメル質・セメント質は象牙細管の表面に蓋をする役割を負っていたことになります。
エナメル質・セメント質が削れるということは、「象牙細管の入口を塞ぐものがなくなること」になります。

象牙細管の内側には、組織液と呼ばれる液体が入っています。
そして、組織液は「温度が上がると膨張し、温度が下がると収縮する性質」があります。

結果、冷たいものが象牙細管の入口に触れると、象牙細管内の組織液が収縮し、体積が小さくなります。
組織液の体積が小さくなると、象牙細管内の圧力がさがり、歯髄に「引っぱる力」が働きます。
「ひっぱる力」を、歯の痛みとして感じます。

このようなメカニズムで痛みが生じることを、「動水力学説」と呼びます。
これは、多くの専門家が指示している説です。

3 歯周病で冷たいものがしみる原因

歯周病は、歯の病気ではなく、歯茎や骨の病気に当たります。
一見、虫歯のない健康な歯でも、歯周病になっている場合があります。

3-1 歯周病でしみるのは歯茎が下がっているから

歯周病は、歯茎や骨の病気だと説明しました。
歯周病が進行すると、骨が溶けていくため、歯がグラグラしたり、歯茎が全体的に下がったりします。

歯茎が下がると、元々、歯茎に隠れていた部分(歯根)が外に晒されることになります。
このとき晒された部分は、セメント質が薄く、ほとんど象牙質が剥き出しになっている状態です。
象牙質には痛みを伝える象牙細管が通っているため、この部分が露出することで、知覚過敏を引き起こします。

3-2 歯周病とは

歯の周りにある組織を、歯周組織と呼びます。
一言で言うと、この歯周組織が歯垢(プラーク)によって炎症を起こしている状態です。

歯周病はほとんど症状を自覚することなく進む病気で、近年では虫歯より歯周病で歯を失う人が多くなっているとする専門家もいます。
冷たいものがしみるほか、歯ブラシのときに歯茎から出血しやすい、歯がグラグラするという症状があります。

4 冷たいものがしみるときの治療方法

原因が虫歯なのか、知覚過敏なのかで治療方針が変わります。
それぞれのケースごとに治療方法を確認していきましょう。

4-1 虫歯(C2:象牙質まで達した虫歯)の治療法

C2の段階にある虫歯の治療は、原則、「虫歯になっている歯質を削って、詰め物を入れる」という方法でおこなわれます。
詰め物は「コンポジットレジン充填」と「型取りを要する詰め物」の2種類があります。
虫歯の大きさ・部位によって、選択する方法が変わります。

コンポジットレジン充填

奥歯の溝部分にある虫歯を削った場合や、虫歯の穴が比較的小さい場合には、コンポジットレジン充填がおこなわれるケースが多いです。
コンポジットレジンは歯科用のプラスチック樹脂で、見た目は白色です。
型取りの必要がないので「虫歯を削ってレジンを詰める」まで1日で完了するのが利点です。

詰め物(インレー)

奥歯の隣接面にある虫歯の場合や、虫歯が比較的大きい場合には、詰め物を入れることが多いです。
型取りをしたあと、歯科技工士が詰め物を作製します。
そのため、通院回数は少なくとも2回以上になります。
保険が適用される詰め物を選択した場合は、銀歯になります。

4-2 知覚過敏の治療法

知覚過敏の場合、問題は「冷たい刺激が象牙細管を通じて歯髄に伝わる」というところにあります。
そのため、「何らかの方法で、刺激が歯髄に伝わるのを阻止する」というのが、治療目的になります。

知覚過敏用歯磨き粉を使う

刺激を受けとる神経を鈍らせて、痛みを感じにくくする方法です。
具体的には、知覚過敏用の歯磨き粉を使い、歯磨きをします。
継続して歯磨きをすることが大切です。

刺激の伝達を妨害する成分には、「硝酸カリウム」があります。
硝酸カリウムは、市販の知覚過敏用歯磨き粉に配合されている成分です。

薬を塗る

知覚過敏を引き起こしている歯の上に、症状の軽減作用のある薬を塗布します。
使用する薬は、「硝酸カリウム」や「乳酸アルミニウム」です。

上述の通り、硝酸カリウムには神経を鈍らせる働きがあります。
乳酸アルミニウムは、象牙細管を塞ぐ作用が期待できます。
歯医者さんで受けられる治療です。

歯をコーティングする

露出している象牙質を保護するために、上からレジン(歯科用樹脂)や、歯科用セメントでコーティングします。
象牙質を保護すれば、痛みを感じる経路を塞ぐことができるため、知覚過敏の症状軽減に効き目があります。

レジンや歯科用セメントでのコーティングは、毎日の歯磨きですり減っていきます。
そのため、定期的に歯医者さんに通う必要があります。

レーザー治療

露出した象牙質にレーザーを照射し、象牙細管を塞ぎます。
この方法も、痛みを引き起こす経路を塞ぐので、「しみる」症状を軽減することが可能です。

歯医者さんで受けられる治療ですが、自由診療になります。

神経を抜く

様々な治療法をおこなっても知覚過敏の症状が軽減されない場合、神経を抜くことが検討されます。
当然痛みは感じなくなりますが、神経を抜いた歯は脆(もろ)くなるため、虫歯になりやすかったり割れやすかったりするリスクが高まります。

4-3 歯周病の治療法

歯周病の治療目的は、「冷たいものがしみる」状態をなくすことが目的ではなく、ダメージを負った歯茎や骨の状態を改善することです。
しかし、歯周病治療をおこなうことで、知覚過敏の症状も軽減されます。

歯磨き方法の見直し

歯周病の原因は歯垢です。
いままでの歯磨きできちんと歯垢が除去できていないのであれば、歯医者さんで正しい歯磨きの方法や、歯ブラシ以外のケアアイテムの使用方法を身につけましょう。
歯周病に効く歯磨き粉を使用するのも、おすすめです。

歯のクリーニング

毎日のセルフケアだけでなく、歯医者さんで歯垢や歯石を取り除いてもらうことも重要です。
歯茎の中に溜まった歯石を取り除くクリーニングもあります。

服薬や骨の造成

重度の歯周病まで進行している場合、口内の歯周病菌の活動を抑える薬を処方されることがあります。
さらに、症状や口内環境の改善だけでは十分な治療と言えない場合は、人工の骨を埋入(埋め込むこと)する手術を検討することもあります。

5 まとめ

冷たいものがしみるときには、まず「原因が虫歯なのか知覚過敏なのか」を判別しなければなりません。セルフケアで改善できる可能性があるのは「軽度の知覚過敏」というケースだけです。多くの場合、歯医者さんで治療を受ける必要があります。

しかし、虫歯にせよ、知覚過敏にせよ、「冷たいものがしみる」という段階で治療を開始すれば、「歯に大きなダメージを与えることなく治療できる確率」が高いです。
早期に治療を開始するチャンスだと受け止め、歯医者さんを受診しましょう。

先生からのコメント

歯がしみるとき、虫歯なら原因を除去すれば治りますが、問題は知覚過敏ですね。字から想像すれば、脳神経がしみる事に過敏になっていることですが、原因は色々あります。一番に考えられるのが、歯の磨き方、もしくは歯の磨きすぎによって歯の表面が削れて象牙質が露出したことにより、しみてきてしまうこと(虫歯も象牙質に達すると痛み等が出てくる)。しみる原因すべてが象牙質に関係しています。なぜかというと、象牙質には象牙細管という穴があり歯髄組織(神経)につながっているからです。その象牙細管に対しての予防、治療をおこなっていきます。唾液には象牙細管を塞ぐ作用や歯の再生灰化もありますので、それを利用するのが良いですが、詳しくはかかりつけの歯科医院で相談して下さい!

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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