歯医者さんが怖い!「優しい歯科医院」を見分ける5つのポイント

歯医者さんが怖い!「優しい歯科医院」を見分ける5つのポイント

「歯医者さんが怖い」と感じている人は、決して少なくありません。歯を削ったり、抜いたりするのが怖いのは当たり前です。しかし、世の中には限度を超えた恐怖に悩んでいる人がいます。歯科医院・歯科治療に強い恐怖心を抱いていて、必要な治療が受けられない。このレベルになると、「本人の努力で何とかなる問題」とは言えません。このような状態を指して、「歯科恐怖症」と呼ぶことがあります。

こちらの記事では、歯科恐怖症をはじめ、「歯医者さんが怖い」と受診を躊躇している人に向けて、「痛み・恐怖を抑えた優しい歯科治療」を紹介しています。現在、歯科医院の数は日に日に増えており、ほとんどの歯医者さんは「患者さんが快適に治療を受けられるように」と配慮しています。「今の歯医者さんは怖くない」と納得していただくための一助になれば幸いです。

この記事の目次

1.今は優しい歯医者さんが増えている!

軽度の歯科恐怖症であれば、自力で克服することも可能だと思います。「歯科治療が怖い」という人の多くは、子供の頃のトラウマが原因になっているようです。たとえば、以下のような記憶が「歯科恐怖症」を作り出します。

・麻酔なしで痛い治療をされた
・治療を嫌がったら、押さえつけられた
・虫歯を放置したことを、ひどく叱られた

1990年代までは、あちこちに「怖い歯医者さん」があったように思います。「神経を抜くときしか麻酔を使わない歯科医院」「ぐずっている子供を押さえて治療する歯科医院」「ちゃんと歯磨きしない子供に説教する歯科医院」というのが、確かに存在していました。

しかし、時代が変わっていくにつれて、医療の世界も大きく変わってきています。「痛みに耐える治療」は不合理で時代遅れなもの…とされていて、「痛みはできる限り緩和するもの」という考え方が常識になっています。

当然、子供を押さえつけて治療するようなことも、今はありません。医療従事者が必要に応じて患者さんを押さえることを「行動抑制」と呼び、たとえば精神科などでは、不安定な患者さんに対してやむを得ず実施することがあります。そういうケースでさえ、今では本人・保護者などの同意書が必要です。同意なく、患者さんを押さえつけることなど、基本的にできません。

かつて、行きすぎた行動が事実上、黙認されていた時代がありました。そして、当時の記憶が歯科恐怖症の要因になっているのだと思います。しかしながら、今、同じような治療を受ける心配はまずありません。

現在、歯科医院の数は非常に多く、2017年1月末時点で6万8,872院を数えます。2017年6月時点のコンビニエンスストア件数が5万6,222軒ですから、「歯医者がコンビニより多い」というのは本当なのです。歯科医院もまた、患者さんを獲得するための競争下に置かれていて、「患者さんの納得感を上げる」ことに力を入れています。当然、「痛い治療」「怖い治療」をするはずがありません。

以上から、現在は優しい歯医者さんが増えており、「歯医者さんは怖い」というのは過去の話になっていることがわかります。

2.優しい先生に見てもらう!怖くない歯科医院を探す5つのポイント

「今の歯医者さんは怖くない」と力説しましたが、中には「それでも、怖いものは怖い!」という人もいらっしゃるでしょう。そういう場合は、「痛みを緩和すること」「恐怖をなくすこと」に力を入れている歯科医院をおすすめします。

歯科治療に対する恐怖感を抱いているのなら、麻酔方法に工夫をし痛みの軽減に力を入れている歯科医院を選ぶと良いでしょう。

同時に、「患者さんの不安が解消するまで、丁寧に治療説明をしてくれること」「患者さんのペースに合わせて治療を進めてくれること」も大切です。歯科医師が「患者さんの『怖い』という気持ちを理解してくれるかどうか」がポイントになります。

そこで、「優しい治療に重きを置いている歯科医院の見分け方」を具体的に紹介したいと思います。具体的には、以下に紹介する医療機器を備えた歯科医院がおすすめです。公式サイト・予約サイトで「使用している医療機器」を公開している医院も多いので、ぜひ、確認してみてください。

2-1 「表面麻酔」「無針麻酔」を採用している!

痛みを抑えることに力を入れている歯科医院は、「麻酔注射の痛み」にまで配慮してくれます。注射針が入ってくるときの感覚をわかりにくくするための「表面麻酔」「無針麻酔」を使用している歯医者さんを選んでみてはいかがでしょうか?

表面麻酔は「塗るだけで歯茎表面がマヒする麻酔」です。テープ型、スプレー型、ペースト状などがあります。「リドカイン」や「アミノ安息香酸エチル」など、種類によって主要な麻酔成分が異なりますが、患者さんの体感的に大きな差はありません。

無針麻酔は、名前のとおり「針のない麻酔」です。粘膜に麻酔液を高圧噴射することで、内部まで浸透させます。子供なら無針麻酔だけで抜歯できることもありますが、成人には麻酔注射の痛みをなくすための補助麻酔として使います。

2-2 「電動麻酔器」「33G注射針」「保温器」を採用している!

麻酔を注射するときの痛みを抑える方法としては、「電動麻酔器」も有力です。コンピューター制御で圧力をコントロールし、痛まないように注射する機器になります。

また、注射針が「33G」かどうかも要注目です。「33G注射針」は直径0.26mmの針で、歯科用の注射針としてはとくに細い針になります。当然ながら、針が細ければ細いほど、注射の痛みは緩和されます。

さらに、麻酔液の入ったカートリッジを保温しているかどうか…も大切です。人間は「体温と同じ温度のもの」に対して、あまり刺激を感じません。注射の前に麻酔液を37℃に保温しておけば、痛みを小さくすることができます。麻酔液の保温器を導入している歯科医院なら、注射の痛みをさらに緩和してくれるはずです。

2-3 不安を取り除くための「鎮静法」に対応している!

医学的に「不安・恐怖を取り除く方法」というのも、存在しています。「鎮静(セデーション)」と呼ばれる方法です。鎮静は「意識をぼんやりさせて、半分眠ったような状態にすること」を意味します。歯科治療で用いられる鎮静には、2通りの方法が存在します。

1つは「笑気吸入鎮静法」と呼ばれる方法です。亜酸化窒素という気体に麻酔作用があることから、「亜酸化窒素と医療用酸素の混合気体(笑気ガス)」を吸入させれば、意識をぼんやりさせることができます。鎮静作用は穏やかで、吸入を中止すればすぐに正常な状態に戻ります。反面、強い歯科恐怖症には作用が不十分です。

もう1つは、「静脈内鎮静法(IVS)」と呼ばれる鎮静法です。これは全身麻酔薬・麻酔導入薬を静脈内に点滴して、鎮静作用を得る方法になります。薬剤自体は全身麻酔に使うものと同じですが、分量が少ないので意識を失うことはありません。半分眠ったような状態ですが、医師の言葉に応答することくらいは可能です。健忘作用があるため、鎮静下で起こったことはほとんど覚えていません。重度の歯科恐怖症であっても、静脈内鎮静下では歯科治療に耐えられることが多いです。

2-4 個室のカウンセリングルームを用意している!

「痛みが少ないこと」「鎮静できること」など、設備面は確かに重要です。しかし、「怖い」というのは人間の感情です。すべてを理屈だけで処理することはできません。やはり、人間の恐怖を本当の意味で抑えてくれるのは、「人間の優しさ」「明るい笑顔」「真摯な対応」といった部分ではないでしょうか?

歯科恐怖症の患者さんは「いったい何をされるだろう?」と怯えているわけですから、丁寧な治療説明が不可欠です。そして、治療説明はカウンセリングルームでおこなわれるべきでしょう。歯科治療に恐怖を抱いている患者さんは、診療ユニットに座った時点で緊張感が増してしまいます。診療ユニットで治療説明をしても、きっと落ち着いて話を聞くような気分にはなれないはずです。

2-5 モニター・図面で説明を「見える化」してくれる!

人間は「理解できない物事」に恐怖を感じます。「深夜、背後から近づいてくる足音」は怖いですが、足音の原因が親しい隣人だとわかれば怖くありません。「何が何だかわからない物事」に対して、恐怖を覚えるのです。歯科治療にしても、「何のために、どのような治療をおこなうか」を理解できれば、たいてい恐怖は半減します。

しかし、聞き慣れない歯科用語で説明されても、そうそう理解できるものではありません。人間は「目で見た情報」のほうが理解しやすいのです。できれば、モニター・図面などを用いて視覚に訴えるカウンセリングをしてもらいたいと思いませんか? 中には、アニメーション・ソフトを活用し、動画で説明するスタイルの歯科医院も出てきています。不安をしっかり解消するためには、カウンセリングの見える化が不可欠です。

3.どうしても歯医者さんが怖い場合は?

ここまで、「歯科恐怖症でも通える歯科医院の探し方」を紹介してきましたが、中には極度の歯科恐怖症…という人もいます。実際、静脈内鎮静法を用いても、治療に耐えられない症例が存在しているのです。

あまりに恐怖が強いと、メンタル面が要因で「異常絞扼反射(いじょうこうやくはんしゃ)」が起こることもあります。異常絞扼反射とは「治療器具を口に入れただけで嘔吐反射が起こる」といった症状を指す言葉です。静脈内鎮静法を用いても嘔吐反射が出るようだと、治療が難しくなってしまいます。

しかし、だからといって歯科治療をあきらめる必要はありません。総合病院・大学病院の歯科口腔外科では、全身麻酔下の歯科治療に対応しているからです。全身麻酔で意識を消失させれば、極度の歯科恐怖症でも治療を受けることができます。異常絞扼反射による嘔吐も起こりません。

「歯科恐怖症で歯科治療が不可能」という診断があれば、全身麻酔も保険適用になります。平均して2泊3日の入院を要するなど、不便な点も多々ありますが、「どれほどの歯科恐怖症でも歯科治療ができる」という事実が1つの救いになるのではありませんか?

4.まとめ

世の中には歯科恐怖症が原因で「虫歯を放置せざるを得ない状況の人」がいます。そういった方々も、全身麻酔に対応できる歯科口腔外科を紹介してもらうことで、きちんと歯科治療を受けることができるのです。

現在では「患者さんの負担を減らして治療する方法」がさまざまに提供されています。「歯医者さん=怖い」という時代は終わり、誰もが前向きに歯科治療を受けられる時代といえるでしょう。
 

先生からのコメント

歯医者さんが日常診療をしていて患者さんから言われてうれしいのは「全く痛くなかった」の一言です。また、そう言ってもらえるように日々工夫、研鑚をしています。個人的見解ですが、急性症状(痛みが強いとき)は別として、初診時にしっかりと話をする時間を取って説明を受けられる歯医者さんは信用できると思います。自分の症状・状態をしっかりと理解して治療を受けられることを願っています。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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