歯の異変

大切な歯を失う歯根破折の原因と歯医者で行う2つの治療法

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「歯根破折」とは何かご存じでしょうか? 一言で言えば「歯の根の骨折」です。ご自身がなったり、周りでなったという人をあまり聞かないと思いますが、「歯根破折」は虫歯・歯周病に次いで歯を失う原因の上位に位置しています。

最近では抜歯以外の治療を行う歯科も少しずつ増えてきているようですが件数は少なく、まだまだ抜歯治療が主流です。

ご自身の歯を出来るだけ多く残すためには「歯根破折」にならないことも非常に重要です。では、予防のためにはどうすればいいのか、そもそもの原因やどのような症状が出るのか、抜歯以外の治療法はあるのかといった、普通の人にはあまり知られていなかった「歯根破折」についてまとめています。

1.歯の根が割れる「歯根破折」について

1-1 歯茎の中の根が割れるのが歯根破折

あまり馴染みのない「歯根破折(しこんはせつ)」という言葉ですが、文字通り「歯根」が「折れる(割れる)」ことです。歯茎の中に埋まっている歯の根っこが歯茎の中で割れてしまう状態のことを言います。

目で見えない部分なので気付くのが遅れがちです。物を噛んだ時に違和感があったり、痛みが出たり、腫れたりしてから気付くことが多いようです。

1-2 虫歯・歯周病に次ぎ歯を抜く原因の第3位

馴染みのない言葉ではありますが、「虫歯」「歯周病」についで歯を失う原因の第3位というから驚きです。それだけ誰でもかかる可能性があるということです。最近は少しずつ抜歯以外の治療方法を行う歯科が増えてきているとは言え、依然として治療の基本は抜歯です。

将来、少しでも多くの歯を残すためには、「虫歯」「歯周病」だけではなく「歯根破折」にならないようにすることも頭に入れておかなくてはなりません。

参考資料:平成17年(財)8020推進財団調査

1-3 歯が突然割れる・ヒビが入る

今まで何ともなかったのに、ある日突然割れたりヒビが入ったりしてしまいます。治療で削ったりして弱っている歯に日々力が積み重ねられ、ついに耐えられなくなって割れてしまうのです。治療もしたことのない、まるきり健康な歯が唐突に歯根破折になることは滅多にありません。

歯 ヒビ

2.歯根破折になる原因

2-1 大きな原因は歯の神経を取ること

歯根破折になる歯の多くは虫歯治療で神経を取った歯です。神経を取った歯は栄養分や水分が届けられず、乾燥してしまうので折れやすくなります。瑞々しい葉を掴んでも何ともありませんが、枯れ葉を掴むと粉々になってしまうのを想像して頂くとイメージしやすいかと思います。

また、神経を取るということは重症の虫歯だったということですから、それまでにもたくさん歯を削っている可能性が高く、既に脆くなっているのです。奥歯で神経を取った場合は破折しやすいので、インレーよりクラウンの形態にしたほうが頑丈になります。

2-2 何度も治療している歯は危険

歯は何度も治療を繰り返すことで弱ってしまい、歯根破折になりやすくなっています。健康な歯に比べて歯を削って、細く小さくしているのですから当然です。虫歯の治療が完了しても安心せず、その後の経過も注意する必要があります。

2-3 歯ぎしり、食いしばりの癖がある人は要注意

歯ぎしりや食いしばりは、歯や歯の根っこに負担がかかるため歯根破折のリスクが高まります。歯ぎしりをすることで起きるリスクは、歯がすり減ることですが、歯根破折もそうなのです。

歯ぎしりをする人は一晩で平均40分ほどもするそうですから、これが毎晩となればどれだけ歯に負担がかかっているかは想像に難くないと思います。

食いしばりの力も成人男性で60kg、成人女性は40kgということですから、成人一人分の体重ほどの強い力がかかっているのです。これらの癖がある人は、就寝時にマウスピース(ナイトガード)を使用すると良いでしょう。

歯ぎしり 食いしばり

2-4 金属の土台は歯の根が割れる原因に

神経を取った歯の土台が歯より硬い金属であった場合、柔らかい歯の方に力が集中してしまい、やがて割れてしまいます。また、土台を太くしなければならないので、残っている歯をたくさん削ることで薄くなり、割れやすくなります。

2-5 転ぶ、ぶつける等の歯への外傷

強い力がかかることにより割れてしまいます。歯の頭の部分が欠けるだけでなく、歯根までダメージを受けてしまった場合は歯根破折となります。

この場合は上の前歯が歯根破折するケースが大半です。スポーツなどの際にはスポーツマウスピース(マウスガード)で保護する方が安心です。

3.歯根破折の症状

3-1 歯茎の腫れ・膨らみができる

割れた部分から細菌が入り込み、腫れてしまいます。また、痛みが出ることもあります。歯茎や根の病気と間違いやすいので注意が必要です。それらの治療を試しても症状が改善されない場合は、歯根破折を疑ってみてください。

3-2 被せものが外れる

歯の割れた部分から被せ物の中に水分が入ってしまい接着剤が弱ったり、根が割れて土台が抜け落ちてしまったりすると、やがて被せ物は外れてしまいます。土台を金属にした場合に多く見られますので、可能であれば土台は金属以外にする方が無難です。

3-3 噛むとなんとなく違和感がある

噛むと痛みがあったり、しみたりするものの、噛まなければ何ともない場合があります。割れる手前のヒビが入った状態であることの可能性が高いです。

これが初期症状なので何とかこの段階で治療を開始したいところです。気のせいかと放置してしまうと細菌が入ったりして腫れてしまう場合があるので気をつけましょう。

3-4 神経を取って治療してある歯が急に痛み出す

神経を取ると歯に栄養分や水分がいかなくなるので、歯が脆くなってしまい歯根破折を起こしやすくなります。根っこが割れてしまうと、歯そのものが痛くなくてもその周りの歯茎などが痛くなります。

また「神経を取る」と言っても全て完全に取り去れるわけではないので、歯そのものが痛いこともあります。

4.歯根破折を治す2つの方法

歯根破折を起こしていてもあまり痛みが出ない場合があります。破折に気付かない方もいるくらいですので日常生活に支障がないため、気付いても放置しがちです。しかし破折するとその隙間から細菌が入り込み炎症を起こします。

治療をせずに放置すると炎症は周辺の歯肉や顎の骨にまで広がり、最悪の場合、顎の骨を溶かしてしまいます。こうなってしまったらインプラントをすることもできません。すぐに歯科へ行き、なるべく抜歯以外の治療をしましょう。

4-1 口腔内接着法

比較的小さい破折の場合は、歯を抜かずに口腔内で接着処理をする「口腔内接着法」が行われます。抜歯や固定の必要がないので身体への負担が少なく済みます。

4-2 口腔外接着再植法

一度、抜歯を行い、特殊な接着剤で歯折した部分をきれいに修復する方法を「口腔外接着再植法(こうくうがいせっちゃくさいしょくほう)」といいます。その後、抜歯をしたあとの傷口である抜歯窩(ばっしか)に再び戻します。

一ヶ月ほど固定をして、生着させます。抜歯をするので炎症部分の除去などを確実に行えるため、口腔内接着法よりも予後が良好です。

5.歯根破折を防ぐ3つの方法

5-1 とにかく虫歯を放置しない

重症の虫歯になればなるほど神経を取ったりたくさん歯を削ったり被せ物をしたりと、歯が脆くなる治療をしなければなりません。

軽症の段階で治療する、更に言えばそもそも虫歯にならないことが非常に重要になります。毎日の歯磨きや定期健診、クリーニング、虫歯になりにくい食生活などにも気を配りましょう。

5-2 神経を残す治療法を選ぶ

神経を取った歯は脆くなり歯根破折のリスクが高まりますから、神経を残す治療法が可能であればそちらを選ぶ方が良いでしょう。

最近では神経を取る治療のリスクが広まり、なるべく神経を取らずに治療をする方針の歯科が増えています。安易に神経を取る前に、お医者さんに相談してみるのが良いでしょう。

5-3 金属の代わりにグラスファイバーの土台を入れる

グラスファイバーの土台は自然の歯に近い硬さなので歯根への負担がかかりにくく、破折の可能性が下がります。これまでの主流である金属の土台では硬すぎるため、力が分散されずに歯根の特定の部分への負担が大きかったのです。

6.まとめ

何度も治療したり神経を抜くことは歯を弱め、ひいては歯根破折を引き起こしてしまうということが分かりました。有効な予防法はそもそも虫歯にならないことですので、日頃の丁寧なケアが大事です。

それでも虫歯になってしまって治療する際には、少しでも歯根破折の可能性を下げるために神経を残す治療法を選んだり、グラスファイバーの土台にしたり、ナイトガードを使用するなどして歯根の負担を軽減すると良いでしょう。

また、抜歯以外の歯根破折治療を行っている歯科を探しておくのも大切です。

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