歯根嚢胞の痛みはなぜ?いつまで続く?治療や応急処置も解説

歯根嚢胞の痛みはなぜ?いつまで続く?治療や応急処置も解説

歯根嚢胞は、歯の根っこ付近にできる袋状のもので、中には液状の膿が入っています。この記事では、治療前、治療後の痛みや、どんな治療、応急処置があるのか解説します

過去に歯の根の治療をした方、歯の神経を抜いた方は、歯根嚢胞になるリスクが高いと言えます。また、気付かないうちに虫歯で神経が死んでしまうことがあり、その場合も可能性があります。

この記事の目次

1.歯根嚢胞はなぜ痛む?メカニズムを解説

歯根嚢胞が痛むとき体の中で何が起きているのでしょうか?痛みが起きるメカニズムと、治療中、治療後の痛みについて説明します。

1-1.歯根嚢胞ができたときの痛みや症状

歯根嚢胞が痛むのは、嚢胞が周囲を圧迫することによります

歯の内側に虫歯菌が入り込んで炎症を起こし、次第に膿が溜まって大きくなると痛むようになるのですが、嚢胞が小さい初期のうちは気づかないことが多いです。なぜなら、歯根嚢胞ができる歯は「過去の治療で神経を抜いている」「虫歯で神経が死んでいる」などの状況で、痛みを感じないためです。

歯根嚢胞が大きくなってきたとき、次のような場面で痛みや違和感が出始めます

・噛んだ拍子に痛みが出る

歯の根っこには「歯根膜(しこんまく)」という部位があります。これは「噛んだものが固いのか、柔らかいのか」を判断するための組織で、とても繊細に感じ取ることができます。

歯の内側に入り込んだ虫歯菌が起こした炎症が歯根膜に及ぶと、噛んだときに痛みを感じるようになります。

・歯茎が腫れて、脈拍に合わせて痛む

歯根嚢胞に膿が溜まりすぎると、内部からの圧力が強まります。結果、歯茎の腫れが強くなり、圧迫による痛みが生じます。この場合、「脈拍に合わせてズキズキと痛む」と訴える患者さんが多いです。

・歯茎から膿が出てくる

歯茎の腫れが強くなり、表面にオデキのようなものが現れることがあります。オデキの中には膿が入っているので、オデキが破れると膿が出てきます。

・歯が浮くような感覚が生じる

歯根嚢胞が膨れ上がると、内側から歯を押すような状態になります。そのため、「歯が浮く」「歯が動くような感じがする」といった自覚症状を訴える患者さんもいます。

1-2.歯根嚢胞の痛みはいつまで続くのか

・治療前

痛みや違和感があれば、それ以上ひどくなる前に早めに歯医者さんへ相談するようにしましょう。歯根嚢胞であれば、次の章で説明するような治療、状況によっては抜歯が必要になることもあります。

・治療中

治療は必要に応じ麻酔をし、痛みに配慮して進められます。緊張が強い、炎症がひどいなど麻酔が効きにくい状況もあるので、麻酔の方法や薬の量を調整するなどの対策が取られます。

・治療後

歯の根の治療後に痛みが生じることも珍しくありません。炎症を起こしている部分を取り除いたときに、体が免疫反応を起こすためです。

歯茎が腫れたり、歯がシクシク痛んだり、あるいは浮いたような感じが見られます。1週間程度で自然に治まることも多いです。

治療後にズキズキと強い痛みが生じることもあります。痛みがひどければ洗浄したり、抗生物質の薬を処方されたりすることもあるので、我慢せず歯医者さんに相談しましょう。

2.歯根嚢胞の治療は?手術、抜歯が必要?

この章では、歯根嚢胞の一般的な方法をいくつか紹介します。歯医者さんでは炎症の大きさなど口内の状況によって、どの治療が良いか判断していきます。

2-1.歯茎を切らない治療、切る治療

・感染根管治療

歯根嚢胞が小さければ、虫歯治療と同じように「感染根管治療」をすることで治療できることがあります。感染根管治療とは、「ファイル」「リーマー」といった針状の器具で、根管内の感染部位を除去する方法です。

感染した部分をすべて取り除いたら、再感染を防ぐために「ガッタパーチャ」という薬剤を詰めていきます。隙間なく薬剤で埋めて、虫歯菌が入ってこられないようにするわけです。

・歯根端切除術

根管治療だけでは細菌を取り除けない場合、「歯根端切除術」という処置をおこないます。この方法では、麻酔をかけた上で歯茎を切開し、外科的に嚢胞を摘出します。

さらに、歯の根っこ部分を切除し、医療用のセメントを詰めて塞ぎます。

これは要するに「嚢胞を摘出し、さらに虫歯菌に感染した根管を切除する治療法」です。時間が経過すれば、切除した歯の根っこ部分は骨に覆われます。

・嚢胞開窓術

歯茎を切開し、嚢胞に穴をあけて膿を外に出す方法です。傷口を縫合するとき、一部だけ「穴が開いたままの状態」で残しておき、継続的に膿が外に出るための道を用意します。

傷口が治るときに骨が修復し、嚢胞を覆ってしまうことを期待する治療法です。

しかし、嚢胞自体を中に残したままなので、一定の再発リスクがあります。そのため、あまり採用されることは多くありません。

2-2.抜歯はする?痛みはどのくらい?

歯を残して治療することが困難であれば、抜歯となります。抜歯すれば歯根嚢胞は治りますが、歯を失うことになります。

3.歯根嚢胞の痛みを和らげる方法はある?

歯の内部の感染状況により、普段は痛まなくても疲れや体調不良などで体力が落ちているときに鈍い痛みが起きるときがあります。

その一方で、腫れが強く眠れないほど痛む場合もあります。そういうときは、痛み止めを飲んでも効かないかも知れません。なるべく早く歯医者さんを受診しましょう。

歯医者さんでは、抗生物質や解熱鎮痛の飲み薬を処方し、腫れや発熱がひどく食事もままならないような場合であれば点滴をすることもあります。

◆歯医者さんにかかるまでの応急処置

・頬の外側からゆっくり冷やす

冷やしすぎは低温やけどを起こしたり、かえって刺激になる恐れがあるので気をつけてください。

・噛みしめる力がなるべく歯にかからないようにする

・痛み止めを服用する

市販薬を飲むときは、薬剤師の指示や、製品の使用上の注意点をよく確認してください。

4.まとめ

過去に歯の根の治療をした、虫歯などで歯の神経を抜いた、神経が死んでしまった、などの場合は歯根嚢胞を生じる可能性があります。痛みや違和感が出たら、早めに歯医者さんに相談しましょう。

治療後に痛みが続くとき、1週間ほどで自然と治まることもあります。洗浄や薬が必要なこともあるので、痛みや腫れがひどい、発熱がある、などの場合はできるだけ早く歯医者さんを受診してください

広島大学 名誉教授
濱田泰三名誉教授監修
略歴・プロフィール

【略歴】
1969年 大阪大学歯学部 卒業
1973年 大阪大学大学院 修了
1981年 広島大学 教授
2008年 広島大学 名誉教授
東北大学 教授
2012年 東北大学 客員教授
東北大学 教育研究支援員
東北大学 学術研究員
今日に至る。

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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