乱杭歯の悩みを解消する!歯列矯正の方法まとめ

歯列が描く曲線のことを「歯列弓(しれつきゅう)」と呼びます。名前のとおり、きれいな弓状に並んだ口もとには、きっと誰もが憧れることでしょう。しかしながら、歯列矯正をすることなく、弓状の美しい歯列を実現している人は決して多くありません。現代人は顎が小さく、なかなか「すべての歯がきれいに生えそろった状態」にはならないのが現実です。

こちらの記事では、「歯並びがガタガタで悩んでいる」という乱杭歯(らんぐいば)の人に向けて、「乱杭歯の問題点」と「歯列矯正の基礎知識」をお届けしています。

この記事の目次

1.「乱杭歯」は、どんな歯並びを指す?

乱杭歯は、歯科用語では「叢生(そうせい)」と呼びます。ただ、世間では乱杭歯と呼ぶことが多いので、こちらの記事では乱杭歯で統一したいと思います。さて、乱杭歯というのは、歯が部分的に重なり合ったり、デコボコに並んでいたりする「乱れた歯並び」を指す言葉です。

たとえば、犬歯が「外側に飛び出し、前歯とやや重なったような生え方」をしているのを「八重歯」と呼びますが、八重歯もまた乱杭歯の一種です。つまり、乱杭歯というのは、かなり広い意味の用語になります。歯がガタガタとした並びになっているなら、「乱杭歯の一種である」と認識してよいでしょう。

2.乱杭歯が引き起こす問題点とは…?

近年、歯並びを矯正することは珍しくなくなり、歯列矯正をする人の割合は増加しました。もちろん、「見た目をよくしたい」「口もとを美しくしたい」といった美容面のニーズが第一でしょう。しかし、それと同時に「不正歯列を放置すると、機能面でもネガティブな影響がある」という事実が広く知られるに至ったことも見逃せません。

この章では、乱杭歯を放置することによって生じる「機能的な影響」について解説したいと思います。

2-1 虫歯になるリスクが増大する

乱杭歯は部分的に「歯と歯が重なっている状態」です。その状態では、歯磨きをしても、手前の部分しか磨けません。手前の歯が邪魔になってしまい、奥に引っこんだ歯を磨けないからです。また、斜めに傾いた歯がある場合も、周囲に歯ブラシが届きにくくなる要因になり得ます。結果、「特定の部分だけ、磨けていない状態」が続き、その部分に歯垢が溜まります。当然、虫歯になるリスクは増大します。

2-2 歯周病のリスクが増大する

虫歯と同じく、歯肉炎・歯周病のリスクも拡大します。歯並びがガタガタでは「歯と歯茎の境目」に歯ブラシを当てることが難しくなります。隣接する歯が邪魔になるからです。その結果、歯周ポケットの歯垢を掻きだすことができず、歯周病の進行が早まってしまいます。

また、特定部位がきちんと磨けていないと、歯垢が急速に溜まり、急性の炎症を起こす恐れもあります。「歯茎の腫れ・痛み」が主な症状で、悪化すると「発熱・倦怠感といった全身症状」をきたすこともあります。疲労・体調不良などで、身体の抵抗力が下がっていると、急性の炎症を起こしやすくなります。

2-3 噛み合わせによるダメージを受けやすい

乱杭歯を含め、不正歯列の人は「噛み合わせによるダメージが大きくなる」というデメリットを抱えています。「特定の歯だけが強く噛みあっている」「一部の歯に横向きの力がかかってしまう」といった歯列になっていると、噛み合わせるたび、歯・歯周組織に過度な圧力がかかります。

一部の歯に強い圧力がかかると「単純性歯根膜炎」、長期的に圧力がかかると「咬合性外傷」を引き起こす原因になります。また、歯の摩耗・顎関節症のリスクも増大します。

3.乱杭歯を治すには…?歯列矯正の方法まとめ

乱杭歯を解消するためには、歯列矯正をおこなう必要があります。この章では、乱杭歯の矯正に用いられる歯列矯正方法の種類を紹介することにしましょう。

3-1 ワイヤー矯正

歯の表面に「ブラケット」と呼ばれる器具を装着し、ワイヤーでブラケットを引っぱる矯正方法です。長らく主流となっている方法で、「歯列矯正」という場合、多くの人がこの方法を想定すると思います。

ワイヤー矯正の特徴

・歯を動かす力が強く、重度の乱杭歯でも矯正できる
・普及している方法なので、たくさんの歯科医院で実施可能
・歯の表側にブラケットを装着するので目立つ
・ブラケットの周囲を磨きにくく、虫歯リスクがある
・口腔粘膜と矯正器具が接触するため、口腔内外傷のリスクがある

矯正方法として歴史があり、すでに技術が築かれています。そのため、多くの歯科医院でワイヤー矯正を受けることができます。歯を動かす力が強く、十分な期間をかければ重度の乱杭歯でも矯正することが可能でしょう。

また、歯の表面にブラケットを取りつけることから、「矯正期間中の外見が気になる」という人もいます。とはいえ、最近では透明ブラケット・白色ブラケットが広く用いられるようになっていて、ある程度、美容面の問題も軽減されてきています。

ただし、人と接触するような激しいスポーツ(格闘技・サッカー・ラグビーなど)をしている場合、ワイヤー矯正にはリスクが伴います。前歯表面のブラケットが、「唇の裏側の粘膜」と密着しているからです。口の周辺をぶつけた場合、ブラケットによって口腔粘膜に裂傷を負う危険があります。

3-2 舌側矯正(ワイヤー矯正)

ブラケットを歯の裏側に装着し、表面から見えない状態で矯正する方法です。「ワイヤーでブラケットを引っぱる」という仕組み自体は、ワイヤー矯正と同じになります。

舌側矯正の特徴

・歯の裏側にブラケットを装着するので、周囲から見えない
・歯の裏側は虫歯になりにくいので、虫歯リスクが低い
・対応可能な歯科医院が限定される
・表側矯正に比べて、矯正期間・費用が余分にかかる
・舌の動きを制限するので、発音への悪影響が大きい

歯の裏側は周囲から見えないので、「矯正期間中の見た目」が気になる人にはメリットの大きい手法です。また、歯の裏側は唾液腺に近いことから、プラークが付着しにくく虫歯リスクが低いとされています。そのため、表側矯正に比べると、矯正中の虫歯リスクが低くなります。

ただ、裏側矯正は技術的に難しく、対応できる歯科医院は限られます。また、矯正を終えるのにかかる期間、費用とも表側矯正の1.5倍程度になります。そのほか、ブラケットが舌に当たりやすく、発音への悪影響が出やすいことにも注意が必要です。

3-3 マウスピース矯正

患者さん自身が着脱できるマウスピースを使って、歯並びを矯正する方法です。ワイヤー矯正より取り組みやすい反面、矯正する力に劣る部分があります。

マウスピース矯正の特徴

・透明のマウスピースを使うので、周囲からはほとんどわからない
・食事・歯磨きのときは外せるので、不便を感じない
・ワイヤー矯正に比べて、痛み・違和感が少ない
・歯を動かす力が弱く、軽度の乱杭歯にしか適用できない

矯正期間中の見た目に優れ、痛み・違和感も少ない方法です。反面、歯を動かす力は弱いので、重度の乱杭歯を矯正することはできません。「少し八重歯が目立つ」「ところどころ、歯並びがガタガタしている」など、軽度の乱杭歯までが守備範囲です。

自分で取り外せるのはメリットでもありますが、場合によってはデメリットになることもあります。「邪魔だから」とついつい外してしまうと、なかなか歯並びを矯正することができません。意志を強く持って、装着し続けることが求められます。

4.まとめ

乱杭歯は、虫歯・歯周病リスクを増大させるなど、機能面でのデメリットも大きいのが特徴です。長期的な視野で考えれば、歯列矯正をおこなったほうが「将来おける歯科治療費が少なくなる」ということさえ、あるかもしれません。乱杭歯の程度にもよりますが、悩んでいるなら、一度は歯医者さんで相談してみると良いでしょう。

 

 

先生からのコメント

将来的な虫歯リスクの回避や歯周病リスクの回避のため、歯列矯正をお考えになる方も多いと思います。歯列矯正法にもさまざまな方法がございますので、歯科医院でのご相談が必要ですね!

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。