歯槽膿漏・歯周病のガイドブック~原因・治療法を網羅的に解説!

歯槽膿漏

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恐らく、多くの人が「歯周病 / 歯槽膿漏」という言葉をご存じだと思います。もちろん、「歯周病と歯槽膿漏の違いは?」と訊かれたら、返答に困る人も多いでしょう。それでも、なんとなく「歯茎が下がって、最終的に歯が抜け落ちる病気」という程度には、意味を把握しているのではないでしょうか?

こちらの記事では、歯周病 / 歯槽膿漏の原因・症状をまとめ、一般的な治療法について解説することにしました。自分の歯を少しでも長く維持するため、歯周病の予防・治療について、理解を深めていただければ幸いです。

【目次】

1.歯槽膿漏とは何か?

2.重度歯周病は、歯をなくす原因に…!
2-1 歯周病で歯が抜ける理由は?
2-2 歯周病で骨が溶けるのはなぜ?
2-3 歯周病菌の種類

3.歯周病の治療法
3-1 歯周病の検査
3-2 スケーリング
3-3 ルートプレーニング
3-4 歯周ポケット掻爬術
3-5 フラップ手術
3-6 組織再生誘導法

4.まとめ

1.歯槽膿漏とは何か? 歯周病とは何が違う…?

結論から申し上げると、歯槽膿漏と歯周病は同じ病気です。医学的に正式な言葉では「歯周病」と言いますが、世間一般では歯槽膿漏と表現されることも多いです。

歯槽膿漏のイメージ

昔、「老人の歯茎が痩せて膿を持ち、歯が抜けていくこと」は老化現象の1つだと考えられていました。その頃、この現象を歯槽膿漏と呼んでいたのです。ただ、後に「歯肉炎・歯周病などはすべて歯周病菌が引き起こす感染症である」とわかり、すべてまとめて歯周病と呼ぶようになりました。

要するに、歯槽膿漏の症状そのものは「歯周病が重症化し、歯を失うかどうかの瀬戸際に至った状態」です。よって、より正確に表現するならば、「歯槽膿漏は重度歯周病を意味する」ということになります。以上から、「昔、重度歯周病を歯槽膿漏と呼んでいた」というのが正確な理解です。

2.重度歯周病(歯槽膿漏)は、歯を失う最大の要因…!

厚生労働省の統計によると、抜歯に至る原因は「1位:歯周病(42%)」「2位:虫歯(32%)」「3位:破折(11%)」となっています。歯を失う要因として、「虫歯より歯周病のほうがハイリスク」ということです。

歯槽膿漏で歯が抜けるイメージ

歯周病は、痛みを伴わないまま進行していきます。虫歯は痛むので、たとえ歯科治療が苦手でも「悪化すれば、治療を受ける」という選択をするのが普通です。一方、歯周病は痛まないので、「進行しても気づかない」「気がついても治療を受けない」という人が多いのです。結果、歯周病は歯を失う最大の要因となっています。

2-1 なぜ、歯周病で歯が抜けるのか…?

歯周病は、「歯と歯茎の隙間」で進行していきます。もともと、「歯と歯茎の隙間」には溝があります。ただ、正常な歯茎なら、溝は2~3mm以内の深さです。正常な溝のことを「歯肉溝」と呼んでいます。

ただ、歯肉溝に歯垢が溜まり、それが歯石に変化すると、状況が変わってきます。歯石の中で歯周病菌が増殖し、歯肉溝の内部は歯周病菌の棲み処になってしまうのです。歯肉溝で歯周病菌による炎症が起きると、だんだん溝は深くなっていきます。こうして、溝の深さが4mm以上になると、「歯周ポケット」と呼ばれるようになります。歯周ポケットが形成されたら、すでに歯周病です。

さて、歯周病は歯周ポケットの内部で進行していきます。ポケット内の歯石に棲みついた歯周病菌は、歯肉の炎症を起こして歯周組織(歯肉など)を破壊していきます。そして、中等度の歯周病(歯周ポケット6mm程度)になると、歯を支えている骨―歯槽骨が溶けはじめます。

歯槽骨が溶ければ、次第に歯はグラグラと揺れる(=動揺する)ようになります。いわゆる歯槽膿漏(歯周ポケット7mm以上)になる頃には、歯槽骨の1/2~2/3が溶けているでしょう。歯の動揺は悪化し、いずれは自然に抜け落ちてしまいます。歯槽骨が2/3以上も溶けている症例では、仮に歯科医院を受診しても、もう歯を救うことはできません。歯周病菌が周囲の歯に悪影響を与えてしまうので、即抜歯となるでしょう。

歯槽膿漏のイメージ

2-2 なぜ、歯周病で歯槽骨が溶けるのか?

ところで、「どうして、歯肉が炎症を起こしたくらいで、骨が溶けるの?」と不思議に思ったことはありませんか? 実のところ、歯周病には骨免疫と呼ばれるシステムが大きく影響しているのです。

骨は、新しくつくられたり、体内に吸収されたりを繰り返しています。骨を新しくつくるのは「骨芽細胞」、体内に吸収する(=溶かす)のは「破骨細胞」です。「骨を吸収する細胞」と聞くと恐怖感があるかもしれませんが、破骨細胞もまた、健康を維持するために必要な細胞です。

もし、骨芽細胞ばかりが働き続けると、骨の密度が過剰になり、骨髄(骨の内側にある柔組織)が狭くなる…などの問題が発生します。ですから、破骨細胞にもきちんと働いてもらう必要があります。骨芽細胞と破骨細胞は相互にバランスを保たなければいけません。そのために、骨芽細胞が働き過ぎないように、適度なところで「RANKL(破骨細胞分化因子)」が働き、破骨細胞が増加するようになっています。

問題は、歯周病を起こしたとき、「歯槽骨における骨芽細胞と破骨細胞のバランス」が崩れてしまうこと…です。歯周病にかかると、3つのメカニズムにより、歯槽骨におけるRANKL産生(=破骨細胞の増加)が促されます。

歯槽膿漏で骨が溶けるイメージ

歯周病菌の毒素によるRANKL産生

骨芽細胞ばかりが過剰に働くのを防ぐため、「骨芽細胞がRANKLを産生する」というメカニズムが存在します。骨芽細胞によって生み出されたRANKLは、「破骨細胞前駆細胞(破骨細胞になる前の細胞)」と結びついて破骨細胞へと成長させます。こうして、骨芽細胞と破骨細胞のバランスが維持されるわけです。

しかし、歯周病菌が有するLPS(細胞内毒素)には、「骨芽細胞に働きかけて、RANKL産生を促す性質」があります。さらに、破骨細胞前駆細胞に刺激を与えて、破骨細胞に変わるのを促進する性質まであるのです。結果、破骨細胞が優位の状況になり、歯槽骨の吸収が促進されることになります。

その上、歯周病菌のLPSは破骨細胞の細胞自然死(アポトーシス)を抑え、延命させる働きも持っています。結果、本来なら役割を終えて消えていくはずの破骨細胞までが生き残り、歯槽骨を吸収していくわけです。

免疫システムによるRANKL産生

恐らく、「炎症」という言葉の意味はご存じだと思います。口腔内が細菌に感染すると、炎症を起こして腫れ・痛みなどが現れます。しかしながら、厳密に言うと、炎症を起こしているのは病原体ではありません。細菌などの病原体は「感染する」だけです。「炎症反応」を起こしているのは、むしろ身体の免疫システムのほうなのです。

歯槽膿漏・歯槽骨と免疫

たとえば、歯茎が細菌に感染したとします。免疫は歯茎に炎症を起こして、免疫細胞を結集し、そこで細菌と戦います。腫れ・痛みが生じている「炎症部位」は、まさに免疫システムにとっての戦場です。そこで細菌を食い止め、ほかの場所に移動させずに倒す…。それが炎症の目的なのです。

さて、歯周病においては、歯周ポケットで炎症が起こります。歯周病菌が体内の至るところに入りこんでは大変ですから、免疫システムは歯周組織に炎症を起こし、「歯周組織内でカタをつける」という方向で戦います。

具体的には、歯周ポケットが歯周病菌のLPSで刺激されると、病原体に抵抗するための免疫細胞―Th1細胞が増殖を開始します。Th1細胞は、炎症を誘発して「この場所で病原体と戦うと伝達する物質―炎症性サイトカイン」を分泌します。こうして、歯周組織に炎症が発生するわけです。

炎症が起こると、炎症部位に「マクロファージ(病原体を貪食する細胞)」「細胞傷害性T細胞(病原体を攻撃する細胞)」などが集まり、歯周病菌と戦いはじめます。しかし、歯周病菌は歯周ポケットの歯石に棲みついていますから、いくら戦ってもキリがありません。歯石の中で増殖し、どんどん援軍が来るわけですから、戦いに終わりがないのです。これこそ、歯周病が自然治癒しない理由です。

さて、終わりの見えない戦いを続けると、大きな弊害が出てきます。炎症で活性化したTh1細胞、マクロファージは、「腫瘍壊死因子―TNF-α」「インターロイキン1β」などの物質を産生します。これらの物質には、RANKLの産生を促す働きがあり、骨芽細胞を増加させてしまうのです。こうして、「歯周組織の炎症により、歯槽骨が吸収される」という一連の流れに行き着きます。

もっとも、「炎症が長引くと、その部位の骨が吸収される」というメカニズム自体が病的なのではありません。炎症部位の骨を吸収することは、「骨を炎症から逃がすこと」と同義です。骨への感染は重篤な結果を招く恐れもありますから、骨を炎症から遠ざけること自体は合理的といえます。問題は「骨吸収の機能が必要以上に働いてしまい、歯が失われる」という部分に尽きるのです。

物理的ストレスによるRANKL産生

日本語で「ストレス」というと、心理的ストレスを指すことが多いように思います。しかし、「英単語―stress」の日本語訳は「圧力・重圧」です。本来、心理的ストレスだけを指す言葉ではありません。人間の身体に対して「物理的ストレス」という言葉を使うときは、字義どおり、物理的圧力と理解してください。

歯槽膿漏・歯槽骨と物理ストレス

さて、骨に対して、物理的ストレスがかかると、どうなるでしょうか? 実は、骨細胞は物理的ストレスに応じて、RANKLを産生する性質を持っています。強い物理的圧力がかかっていると、その部位の骨は破骨細胞に吸収され、造りかえられます。結果、過剰な物理的ストレスのかからない形状(=そのときの状況に適した形状)に変化するわけです。

特に物理的ストレスが炎症部位に加わると、RANKLの産生量は有意に増加します。この事実は、ラットを用いた実験でも明らかになっています。つまり、歯周病による炎症が起きている部位に、過剰な噛み合わせ圧力が加わると、歯槽骨の吸収が促されるわけです。

以上から、「無理な噛み合わせ」「歯ぎしり・食いしばり」といった物理的ストレスにより、RANKL産生(=歯槽骨の吸収)が促進される…と考えられます。

2-3 歯周病菌には、どんな種類があるのか?

歯周病菌は、すでに10種類以上が確認されています。ここでは、代表的な歯周病菌5種について解説することにしましょう。ただ、「どれか1つだけに感染している」ということはなく、複数の歯周病菌に感染しているのが普通です。複数の菌が歯周組織・歯槽骨にダメージを与えた結果、歯周病・歯槽膿漏が進行していくのです。

歯槽膿漏・歯が菌に攻撃される

ポルフィロモナス・ジンジバリス菌

もっとも代表的な歯周病菌の1つで、成人性歯周炎の原因菌です。タンパク質分解酵素で組織を破壊するほか、免疫細胞が情報伝達に用いる物質―サイトカインを分解して免疫反応を撹乱します。また、ジンジバリス菌の有する酵素(ジンジパイン)には、破骨細胞の増加を促し、歯槽骨吸収を促進する働きがあります。

付着力が強く、歯周ポケット内にバイオフィルムを形成する主力となります。バイオフィルムは細菌と分泌物から構成される「膜状の構造」です。内側には空気が届かないので、酸素を苦手とする嫌気性細菌も増殖することができます。実際、歯周ポケットに入りこむのは大部分が嫌気性細菌です。

トレポネーマ・デンティコラ菌

歯周組織の中はもちろん、血管内部にまで侵入する歯周病菌です。ジンジバリス菌、フォーサイシア菌と同時に見つかることが多く、いずれも歯周病患者の6、7割から見つかる細菌です。

タネレラ・フォーサイセンシス菌

成人性歯周炎の患者から、高い頻度で見つかる歯周病菌の1つです。ただ、生育が遅く、培養条件も厳しいので、あまり研究が進んでいません。歯周病の原因菌と見られてはいるものの、歯周病の発症・進行において、どのように働いているのかは未解明です。

プレボテラ・インターメディア菌

血液を養分として利用する歯周病菌です。女性ホルモン・黄体ホルモンによって生育が促進されるので、妊娠性歯周炎の主な原因になっています。また、インターメディア菌の内毒素は早産・低出生体重児出産の一因になると考えられています。

アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス菌

「免疫反応のときに働く細胞―好中球」などを破壊する外毒素―ロイコトキシンを産生する菌株が存在します。歯周組織にダメージを与えるのはもちろん、歯肉内部にまで入りこみます。若いうちから進行し、骨が急速に失われる「侵襲性歯周炎」と強い関連があると言われています。

参照URL:http://www.tmd.ac.jp/grad/bac/TF.html

3.歯周病・歯槽膿漏の一般的な治療法とは…?

「歯茎から出血する」「歯茎が腫れている」など、歯周病が疑われる場合は歯科医院を受診するようにしてください。適切な治療を受けなければ、重症化し、やがて歯を失う要因になるかもしれません。

この章では、歯周病治療のために歯科医院を受診した場合、どのような治療がおこなわれるのかを解説したいと思います。

歯槽膿漏・歯科医師イメージ

3-1 歯周病の有無・進行度を検査!

まずは、「歯周病かどうか」「歯周病なら、進行度はどの程度か」を検査しなければなりません。歯周基本検査または歯周精密検査をおこない、歯周ポケットの状態を確認することになります。

歯周基本検査

歯周ポケットに「プローベ」と呼ばれる器具を差しこみ、深さを計測します。25gの圧力で差しこんで、止まったところが「歯周ポケットの底」です。結果が4mm以上なら、「歯周病になっている」と判定できます。また、プローベを挿した刺激で出血するようなら、「歯肉に炎症が起きている」と判断します。歯の動揺(ぐらつき)の有無も確認し、歯周病の進行度を検査します。

歯周精密検査

歯周基本検査と大きく異なる検査内容…というわけではありません。ただ、プローベを差しこむとき、歯1本につき4箇所の歯周ポケットを測ります。基本検査は1箇所なので、より正確な進行度がわかります。実際、プロービングしてみると、「歯の内側だけ急速に歯周ポケットが深くなっている」といったケースもあるのです。

そのほか、基本検査と同様、「出血の有無」「歯の動揺度」も確認します。さらに、歯周精密検査では「歯根にどれくらいの歯垢(プラーク)が付着しているか」も確認し、より細かい部分までチェックしていきます。

歯槽膿漏の歯周病検査

3-2 初期の歯周病治療~スケーリング

歯周ポケットが4mm以内なら、初期の歯周病と判断します。この場合は、「スケーリング」を実施します。「スケーラー」と呼ばれる器具を歯周ポケットに差しこんで、歯根に付着した歯石を除去します。

歯周病菌は歯石の中で増殖するので、歯石を除去すれば菌を大幅に減少させることが可能です。「歯周病菌の棲み処をなくす」という方法で、歯周病の治癒を目指すわけです。歯周ポケット4mm程度の歯周病なら、スケーリングだけで回復に向かう(=歯周ポケットが浅くなる)ことも珍しくありません。

スケーラーは、先端が鉤状になった金属製の器具です。手動で歯石を掻き取る「手動スケーラー」のほかに、超音波振動で歯石を除去する「超音波スケーラー」が存在します。超音波スケーラーは痛みが少ない上、短時間で歯石を取り除くことが可能です。

とはいえ、一概に超音波スケーラーが優れている…というものではありません。超音波スケーラーは、広範囲の歯石を効率良く除去するのに向いている反面、細かい部分には向いていません。超音波スケーラーを導入している歯科医院でも、最後の仕上げは手動スケーラーでおこなうのが一般的です。

歯槽膿漏・歯周病治療器具

3-3 中等度の歯周病治療①~ルートプレーニング

歯周ポケットが4~6mm程度なら、中等度歯周病と判断します。歯周ポケットが深くなっているので、通常のスケーリングでは深部の歯石を除去できません。より深い位置の歯石を除去するために「ルートプレーニング」をおこないます。

ルートプレーニングでは、「キュレット」と呼ばれる鋭利な器具を用います。歯周ポケットの奥深くまで差しこんで、歯石を掻き取るためです。深い部分に器具を差しこむので、多くの場合は局所麻酔下にて実施します。

歯槽膿漏・キュレット

3-4 中等度の歯周病治療②~歯周ポケット掻爬術

中等度歯周病には、「歯周ポケット掻爬術」を選択する場合もあります。歯茎を切開する「歯周外科治療」の1つです。使用する器具はスケーリング・ルートプレーニングと同じですが、歯周外科手術に分類されます。

局所麻酔をしたあと、スケーラーで歯周ポケット内の歯石・炎症組織・汚染セメント質を掻き出します。「セメント質」というのは、歯根部分にある歯質です。歯冠部分はエナメル質に覆われていますが、歯根はセメント質に覆われています。歯周病菌に汚染された歯肉・セメント質を除去するわけです。

歯周ポケット内・歯根の衛生状態が回復すれば、歯肉と歯根が再び接着する可能性があります。うまく癒着すれば歯周ポケットが縮小し、健全な状態に近づきます。

3-5 重度歯周病(歯槽膿漏)の治療①~歯肉剥離掻爬術

難治性の重度歯周病(歯槽膿漏)に対しては、歯周外科手術を試みます。もっとも一般的なのは、歯肉剥離掻爬術(フラップ手術)です。

まずは歯肉を切開して剥がし、歯根を露出させます。目視できる状態で、スケーラー・キュレットによる掻爬(そうは)をおこなうわけです。歯石・炎症組織・汚染セメント質を除去することができたら、剥がした歯肉を再びかぶせて縫合します。術後は抗生物質・鎮痛薬を服用し、1週間~10日で抜歯・消毒をおこないます。

最近では、歯根面の汚染組織を取り除くとき、歯科用レーザー(エルビウムヤグレーザー)を照射する例も増えてきました。2011年4月から、「Fop及びGTR1次手術時歯根面レーザー応用加算」として保険適用になっています。

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3-6 重度歯周病(歯槽膿漏)の治療②~組織再生誘導法

歯槽骨の吸収が著しい場合は、組織再生誘導法(GTR法)と呼ばれる選択肢が存在します。歯肉剥離掻爬術をおこなったあと、メンブレン(人工膜)を入れて「歯周組織が再生するための空間」を確保する方法です。

歯肉剥離掻爬術のあと、何もせずに放っておくと、外側から歯肉組織が伸びて傷口を覆います。しかし、歯槽骨の吸収が著しい場合、歯肉だけでなく歯槽骨を修復しなくてはなりません。そこで、メンブレンで歯根を多い、歯肉組織が内側に伸びるのを阻害します。結果、内側から歯根膜・セメント質などが再生し、歯槽骨がある程度、修復されるのです。

ただ、選択肢としては存在するものの、実際に保険診療で利用することは難しいと思います。GTR法は2008年に保険適用され、2017年現在、1次手術(メンブレン固定)が「保険点数:840点」、2次手術(メンブレン除去)が「保険点数:380点」と定められています。保険点数は「1点=10円」(3割負担なら患者が支払うのは1点=3円)なので、GTR法を実施することで歯科医院が受け取るのは「12,200円」です。

材料費は別に算定できますが、それでもGTR法にかかる手間・労力を考えると、歯科医院にしてみれば「わりに合わない金額」のようです。また、保険適用にするためには、「決められた種類のメンブレンを使用する」などの制約も多いのが現状です。

以上から、あまり保険適用のGTR法を提供している歯科医院は多くありません。また、歯槽骨再生・歯周ポケット縮小についても、それほど画期的な結果が得られる保証はない…と理解してください。

4.まとめ

歯周病・歯槽膿漏は気づかないうちに進行し、歯を失う原因になります。治療についても「歯周病菌の棲み処をなくして治癒を期待する」など、あくまでも「自然治癒を促進する手法」が中心です。「手術さえすれば元通りになる」というほど、単純な話ではありません。

こういった特徴を踏まえると、歯周病・歯槽膿漏は予防が何より大切といえます。「悪化してから歯科医院を受診する」というのでは、後手に回らざるを得ません。日々の歯磨きを再度見直し、歯面・歯肉溝のバイオフィルムをしっかり除去する習慣をつけましょう。もちろん、定期的に歯科医院を受診し、検診を受けることも大切です。

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