プロバイオティクスという言葉について、細菌を利用した健康法のようなものということは何となく分かっていても、詳しく知らないという人は多いのではないでしょうか?
この記事では、プロバイオティクスとは何を指すのか、どんな効果が期待されているのかといった基礎知識からプロバイオティクスの特徴、日常生活に取り入れるときの注意点などを解説します。
この記事の目次
1.プロバイオティクスは善玉菌を用いた食品・作用・考え方などを指す
「プロバイオティクス」は、わかりやすくいうと「善玉菌」を意味します。
善玉菌とは、健康に有益な働きをする微生物のことです。
ただし、近年広く使われるようになったプロバイオティクスという言葉は、善玉菌そのものだけでなく、善玉菌に関連する以下のような意味合いが含まれていることがあります。
「善玉菌を含んでいる食品や製品」
「善玉菌がもたらしてくれる健康増進作用」
このことから、プロバイオティクスは「善玉菌を活用して健康になるという考え方」を指すこともあります。
1-1 プロバイオティクスが脚光を浴びているのはなぜ?
これまで、善玉菌よりも悪玉菌が注目されることは多くありました。
悪玉菌を退治して病気の改善を目指す「アンチバイオティクス」と呼ばれる考え方です。
アンチバイオティクスとは抗生物質のことです。
抗生物質を多用することで細菌が耐性を持つようになり、やがて効かなくなってしまうことがあります。
抗生物質に耐性を持つようになった細菌を「耐性菌」と言います。
耐性菌が増えていく中で、多くの抗生物質に対する耐性を得た「多剤耐性菌(たざいたいせいきん)」まで現れるようになりました。
こうした背景もあり「善玉菌をサポートして間接的に悪玉菌を減らす」というプロバイオティクスの考え方が注目されるようになったと言われています。
1-2 身近なプロバイオティクスといえば乳酸菌
私たちに身近なプロバイオティクスとして「乳酸菌」があります。
「ヨーグルトや乳酸菌飲料を摂取して、おなかの調子を整えている」という人が多くいるように、プロバイオティクスは特別なものでも、難しいものでもありません。
おなかの調子を整えてくれる善玉菌として広く知られているビフィズス菌やブルガリア菌などがありますが、一般的に、これらは乳酸菌に分類される細菌です(分類学的に、ビフィズス菌と乳酸菌を分けることもあるようです )。
同じように、虫歯菌や歯周病菌の数を減らして、口の中の健康に役立つと期待されている乳酸菌も出てきています。
例えば、ヒト由来のラクトバチルス・ロイテリ菌(L.ロイテリ菌)といった乳酸菌です。
2.プロバイオティクスを取り入れるにあたっての注意点
プロバイオティクスを始めるなら、サプリメントやヨーグルトといった食品からとる方法が始めやすいでしょう。
プロバイオティクスのリスクや、取り入れるにあたり知っておきたいことなどを解説します。
2-1 プロバイオティクスのリスクは?
プロバイオティクスに用いられる細菌の多くは、ヒトの体内に存在するもの、または似ているものです。
そのため健康な人であれば、副作用が起こったとしてもガスが出るといった消化管の軽い症状で済むことがほとんどです。
しかし、重病を患っている、免疫機能が低下しているといった人は、何らかの副作用を招く可能性はゼロではないとする考え方もあるようです。
プロバイオティクスについてさまざまな研究がおこなわれていますが、「安全性」に対する情報はまだ十分とは言えないのかもしれません。
重病を患っている、免疫機能が低下しているといった人がサプリメントやタブレットによるプロバイオティクスを始める場合、事前に医師に相談することをおすすめします。
また、ヨーグルトでプロバイオティクスを考えている人は、砂糖が多く含まれる製品の食べ過ぎに注意しましょう。
併せて、乳製品などにアレルギーがある人は、事前に医師に相談することをおすすめします。
2-2 プロバイオティクスを取り入れるにあたって
乳酸菌には多数の種類があります。
例えば、おなかの調子を整えたい場合は「ビフィズス菌」、虫歯や歯周病予防に活用したい場合は「L.ロイテリ菌」といったように、菌の働きもさまざまです。
そのため「どの菌が良い」ということは一概に言えません。
また、そのときの体調やその人の体質などによって、自分に合う菌の種類が変わってくることもあります。
プロバイオティクスを始めようと思っている人は、その食品(製品)にどんな細菌が含まれており、どう作用するのかといったことも調べておくことをおすすめします。
2-3 プロバイオティクスの注意点
どんなに善玉菌を摂取しても、悪玉菌を増やしてしまう生活習慣や食習慣を続けていては、善玉菌の働きを十分に生かせなくなってしまいます。
プロバイオティクスを始めるなら、健康の基本となる生活習慣や食習慣を見直し、必要に応じて改善することも大切です。
口の中のプロバイオティクスを検討している人は、歯磨きや、殺菌・消毒作用のあるマウスウォッシュでうがいをすることで、善玉菌が流れてしまうことがあります。
歯磨きと歯磨きの間に摂取するといったように、タイミングを自分の中で決めておくと良いでしょう。
3.まとめ
近年「おなかの善玉菌を増やして、腸内の細菌のバランスを改善する」といったプロバイオティクスは多くの人に知られるようになってきました。
人間は細菌と共存しており「大切なのは菌を殺すことではなく、善玉菌をサポートすること」という価値観も広がっています。
こうしたプロバイオティクスの考え方を、口の中や歯の健康のために生かしたのが、L.ロイテリ菌といった善玉菌を使った虫歯・歯周病予防です。
今後「虫歯は予防するもの」という考え方はますます強くなっていくことが予想されます。
日々の歯磨きで歯垢をしっかり落とすことを心がけながら、善玉菌を使った口の中のプロバイオティクスを上手に取り入れてみてはいかがでしょうか?
善玉菌を有効活用したくても、ヨーグルトとか乳酸菌飲料など、種類がいっぱいありすぎて違いがわかりにくいですよね。思わず一つにまとめて欲しくなってしまいます。rnでも、口の中に限って言えばロイテリ菌がすごいという論文はいくつも公開されています。菌によっても全然効果が違うというのは事実なんです。rnこのコラムは、そんな知識の一助になると思います。
執筆者:
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