差し歯が取れた!歯を失わないためにすべきこと【緊急トラブル対処法】

差し歯が取れた!歯を失わないためにすべきこと【緊急トラブル対処法】

前歯が差し歯になっていると、思わぬトラブルに見舞われることがあります。それほど頻繁ではないにしても、「急に差し歯が取れた」「噛んだ拍子に差し歯が割れた」といった経験がある方も珍しくないと思います。

一般に「差し歯」という言い方をする場合、基本的に「前歯のかぶせ物(クラウン)」を指します。前歯は「笑ったとき、喋ったときにどうしても見えてしまう場所」です。差し歯が取れたままでは、なかなか外出することさえできません。

こちらの記事では、「差し歯が取れたときの対処法」「差し歯が外れる原因」などを解説しています。

この記事の目次

1.差し歯が取れたらどうすれば良い?~困ったときの対処法

急に差し歯が取れたり、壊れたりしたら、どうしますか? 差し歯が外れる…というのは、決して些細な問題ではありません。土台部分の状態によっては、抜歯になる恐れもあります。

また、対処法を間違えると、「抜歯しなくて良かったはずの歯を抜歯しなければならない」という最悪の状況になることも考えられます。この章では、急に差し歯が取れたときの正しい対処法を見ていくことにしましょう。

1-1 差し歯を自分でつけ直そうとするのはNG!

やってはいけないことの筆頭は、「自分で差し歯をはめ直すこと」です。差し歯・土台に変形がなかったとしても、もとの位置に戻すのは非常に困難です。つけ直そうとして無理な力が加われば、歯の根っこにヒビが入る恐れがあります。歯の根っこにヒビが入ると、もう歯を保存することはできません。抜歯になってしまいます。

中には、瞬間接着剤でつけ直す方もいますが、これはもっとNGです。仮につけ直すときに何も起こらなくても、噛んだ拍子に歯の根っこが割れる確率が高くなります。歯医者さんで差し歯を入れるときは、噛み合わせの調整をおこなっています。自分で適当につけ直した場合、噛み合わせに無理が生じているはずです。噛んだときに無理な力が加わり、根っこが割れてしまいます。

自分で差し歯をつけ直そうとせず、口元はいったんマスクなどで隠してください。歯医者さんにとっては「差し歯の外れ方」も診断材料ですから、なくさないように袋などに入れて保管しておきましょう。

1-2 差し歯が取れた箇所では絶対に噛まない!

差し歯が取れた部分は、歯の土台がむき出しになっています。土台に無理な力がかかると、歯の根っこにヒビが入る恐れもあります。差し歯が入っていた箇所で食べ物を噛むのは避けて、刺激を与えないように注意してください。

1-3 なるべく早く、歯医者さんを受診する!

歯の根っこにダメージがなければ、差し歯をつけ直すことは可能です。歯の運命は「根っこ部分が無事かどうか」にかかっています。歯の根っこに問題が起きないうちに歯医者さんを受診してください。夜間・休日であっても、できることなら夜間診療・休日診療している歯医者さんを探して、応急処置をお願いしたほうが良いでしょう。

差し歯が取れたということは、「かぶせ物がない状態」を意味します。歯の中身が露出しているわけですから、非常に虫歯リスクの高い状況です。根っこ部分が重度の虫歯になると、やはり抜歯に至る確率が高まります。痛みがなくても、できるかぎり早く歯医者さんを受診するようにしてください。

2.差し歯が取れたら、どうなる?~状況ごとの治療内容まとめ

差し歯が取れた場合、どのような治療をおこなうのでしょうか?また、抜歯に至り、歯を失うリスクはどれくらいなのでしょうか?この章では、「差し歯が取れた場合の一般的な治療法」を解説したいと思います。

2-1 土台部分のセメントが壊れたり、接着力がなくなったりした例

差し歯をするときは、歯の根っこの上に土台をつくり、土台に差し歯をかぶせます。そのため、土台が壊れると差し歯は外れてしまいます。また、土台と差し歯を接着しているセメントの接着力が失われた場合も同様です。

ただ、あくまでも土台は作り物です。土台が壊れただけなら、歯自体には特に問題が起きていません。この場合は、土台をつくり直すなどして、取れた差し歯をつけ直せることが多いです。差し歯にもダメージがあるようなら、差し歯を作り直す必要があるかもしれませんが、いずれにしても、もう一度、差し歯を入れるだけで済みます。

2-2 歯の根っこ部分で、虫歯が再発している例

歯の根っこ部分で虫歯が再発すると、差し歯が外れてしまいます。「差し歯と歯の隙間」に虫歯ができれば、差し歯がゆるんでしまうからです。この場合は、虫歯を治療した上で差し歯をつくり直すことになります。

差し歯になっている場合、ほとんどが神経を抜いているはずです。差し歯にしたとき、歯の根っこ部分(根管)の虫歯を除去する「根管治療」を受けていると思います。虫歯が再発しているなら、根管治療をやり直さなければいけません。根管治療で根っこを無菌化して、再び差し歯で覆うことになります。ただし、根っこの虫歯があまりにも重度であれば、抜歯するしかありません。

2-3 歯の根っこが横方向に欠けている例

無理な力がかかってしまうと、土台だけでなく歯に損傷が生じることがあります。もし、歯の一部が横向きに欠けただけなら、土台をつくり直せば治療できるかもしれません。ただし、根っこの奥深くで割れたり欠けたりしているなら、抜歯になります。

2-4 歯の根っこが縦方向に割れたり、ヒビが入ったりしている例

歯の根っこが縦に割れてしまっている場合、残念ながら、歯を残すのは不可能です。噛むたびにヒビが広がりますから、もう土台を立てることができません。この場合は抜歯して、入れ歯・ブリッジなどを検討することになります。

3.まとめ

差し歯が取れた原因によって、「歯を保存できるかどうか」は変わってきます。また、差し歯が取れたところは土台が露出しているので、無理な力を加えると抜歯リスクが上がってしまいます。「無理に差し歯をつけ直そうとしたせいで抜歯に…」ということがないように、自己判断は慎みましょう。大切なのは、できる限り早く、歯医者さんを受診することです。

経歴

出身校(最終学歴): 北海道医療大学 歯学部
歯科医暦:24年目
歯科医を目指したきっかけ:父親が歯科医で、背中を見て歯科医になろうと思った。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

ページトップへ