歯周ポケットを改善させるために、毎日の歯磨きは欠かせません。しかし、正しい歯磨きを行っていないと、どんなに毎日ゴシゴシ歯を磨いても、歯周ポケットは改善されません。
この記事では、歯周ポケットを改善させるための、歯磨きテクニックについてご紹介していきます。これを機に、自分の歯磨き方法を振り返ってみてくださいね。
この記事の目次
1.歯肉を傷つけずに磨く歯磨きのポイント
歯周ポケットを改善させるための一つの方法が、毎日の歯磨きです。歯磨きをする時は以下のポイントに気を付けていきましょう。
- 良い歯ブラシを選び、歯磨き粉を上手に使う
- 歯肉を傷つけずに磨く事
- 歯垢の取りにくい小さな隙間も上手に磨く
1-1 良い歯ブラシ選びと歯磨き粉の上手な使い方
歯周病ポケットの改善には歯ブラシ選びは欠かせません。この章では良い歯ブラシの条件と歯磨き粉の上手な使い方についてお伝えしていきます。
良い歯ブラシを選ぶ
以下の条件をもとに、自分に合っているものを選び、毎日使ってみてください。
- 柄の部分が真っ直ぐでシンプル
- かたさは、柔らかめ~普通程度
- 歯ブラシのヘッドの植毛は3列
- ヘッドはコンパクトタイプ
歯磨き粉を上手に使う
歯磨き粉は、泡立ち過ぎないようにするため、歯ブラシに1.5センチ程の量を出しましょう。歯磨き粉に含まれるフッ素の虫歯予防の作用により、日本の虫歯は減少したと発表されています。
歯垢を落としてくれる成分も入っているので、歯磨き粉はなるべく使いましょう。フッ素の薬用成分をお口の中に残すためにも、1~2回のすすぎに留めておくと良いでしょう。
1-2 歯を傷つけずに磨く
歯や歯茎を傷つけないように磨く事も大事です。歯ブラシを強く押し付けた状態でゴシゴシ磨いてしまうと、歯茎が傷つき、腫れて出血してしまいます。歯茎がダメージを受けてしまうと、歯槽膿漏にもなりかねません。 歯槽膿漏になると、歯の根がもろくなり、固いものが食べられなくなります。
皆さんが思っている以上に、歯は傷つきやすく、デリケートな部分です。歯磨きは、力を入れたからといって、綺麗に汚れが落ちるわけではありません。
歯を綺麗にしたいからといって、力を入れ過ぎてゴシゴシ磨いてしまう方もいらっしゃいますが、歯や歯茎が傷つく一因となるので、やめましょう。そこまで力を入れなくても、細かく振動させながらブラッシングしていき、きめ細かいケアをしていけば、歯や歯茎の汚れは十分に取れていきます。
1-3 ワンタフトブラシで小さな隙間を上手に磨く
小さな隙間に入り込んだ食べカスを取り除くためにも、ワンタフト歯ブラシがおすすめです。いつも使っている歯ブラシと、併せて利用してみましょう。
生えかけの親知らずや、歯が重なって磨きにくい部分や、歯の裏側の歯肉の境目なども、しっかり磨いてくれます。ペンタイプなので持ちやすく、習慣にしやすいでしょう。
2.歯周ポケットを引き起こす要因と解決策
歯周ポケットができる原因はさまざまですが、主に歯石の蓄積によって歯と歯茎の溝が生まれます。また、タバコや親知らずの影響で歯周ポケットができてしまう可能性があります。この章では、歯周ポケットができる原因とその解決策についてお伝えしていきます。
2-1 歯医者さんで歯石を取る
細菌が唾液成分と結びつき、石のように固まったものを「歯石」と呼んでいます。歯石は、歯科医院で、超音波で砕きながら取る必要があります。歯石はザラザラしているため、細菌が繁殖しやすくなります。歯石を取って歯の表面をツルツルにしておくと、細菌の住処をなくす事ができ、増殖を防げます。
2-2 タバコを止める
タバコを吸う習慣のある方は、歯周ポケットの改善のために、控える必要があります。喫煙は、歯に大きなダメージを与えるからです。歯周ポケットは、細菌と体の免疫力の闘いで負けると、より深くなってしまいます。
タバコは、歯茎の毛細血管を収縮するため、免疫力を低下させ、細菌の活動を促してしまうため、歯周ポケットが深くなってしまうのです。
2-3 親知らずを抜く
親知らずが斜めに生えている場合、親知らずの手前の歯に、深い歯周ポケットを作ってしまう可能性があります。親知らずは、20歳前後で抜歯すれば骨ができるので、歯周ポケットは残りませんが、20代後半になると、抜歯しても歯周ポケットが残ってしまい、その後、管理が必要になってきます。歯周ポケットを深くしないためにも、できる限り若い頃に親知らずを抜いた方が賢明です。
3.歯周ポケットが深くなる原因とその怖さ
歯と歯茎の境目の溝が、ポケットのように深くなってしまった状態が歯周ポケットです。歯周ポケットができると、それは歯周病の始まりでもあります。歯周ポケットによって、歯がぐらぐら揺れ始め、食べ物が噛みにくくなったり、噛み合わせた時に痛みが出る事があります。
この章では、まず歯周ポケットが深くなる原因を紹介し、歯周ポケットが招く怖さについてお伝えしていきます。
3-1 歯周ポケットはプラークと免疫力低下が原因
プラーク
歯周ポケットが深くなる原因の一つがプラーク(歯垢)です。プラークとは、細菌の塊の事です。これが上手に取り除けていないと、プラーク内の細菌が歯茎を炎症させ、歯周ポケットが生まれてしまいます。このポケットに汚れがたまると、さらにポケットは深くなり、歯周病も悪化します。
プラークの付着期間が長ければ長い程、歯周ポケットは深くなります。歯周病のほとんどは、このプラークから始まります。歯ブラシやデンタルフロスを使用し、できる限り汚れを口内に残さないようにしましょう。プラークは毎回丁寧に取り除いていないと、歯周ポケットは深くなるばかりです。
歯周ポケットは深くなればなる程、プラークを除去する事が困難になってくるため、初期段階でプラークをコントロールして食い止める事が重要です。普段の歯磨きは勿論の事、生活習慣からも改善できる事があるので、見直していきましょう。毎日の習慣の中で、口内を清潔にしておき、初期段階で歯周ポケットを食い止めるようにしましょう。
免疫力の低下
免疫力の低下も歯周ポケットを深くしてしまう原因の一つです。人は年をとると、免疫力が弱まってきます。細菌と闘う白血球の力や、身体全体の抵抗力も落ち、風邪やインフルエンザなど、様々な病気にかかりやすくなります。
歯周ポケットは細菌が入り込んで作られるものなので、免疫力が下がってしまうと、細菌と戦う力がなくなり、歯周ポケットも深くなってしまいます。加齢に対する免疫力低下を防止していく事も大切です。
身体全体の免疫力が低下していると、歯周病ポケットの治りも遅くなり、なかなか改善しません。さらに、生活習慣が荒れていると、改善しないどころか、もっと深くなる恐れがあります。
口内の免疫力が下がらないように気を付け、起床時にお水を飲むなどして、口腔環境を良好にしておくと免疫力アップにつながります。
3-2 歯周ポケットが深くなると最悪は抜歯も
歯の長さは、大よそ10cm程度です。9ミリ以上ある歯周ポケットは、根の先まで到達しているため、改善の余地がありません。こうなってしまうと、歯の全部を抜歯するか、一部の根を抜歯するかで、いずれにしても抜歯する必要があります。抜歯しないと、他の歯にも悪い影響を及ぼすからです。
4.歯周ポケットの改善は生活習慣がカギ
歯周ポケットの改善は生活習慣がカギを握っています。歯周ポケットが深い方は、口腔内の常在菌であるフローラが、活動しやすい状態になっています。これらを改善しない限り、フローラは元に戻り、歯周病も進行していきます。毎日水分をこまめに摂取するなどして、口腔環境を整備しておきましょう。
細菌が除去されない限り、歯周ポケットは治りません。細菌を取り除き、自浄性を高める唾液の状態を良くし、食生活の改善を行い、自己コントロールしていく事が大切です。
5.まとめ
歯周ポケットを改善するための歯磨き方法やコツ、歯周病ポケットが深くなる理由やその怖さについても説明してきました。毎日の歯磨きは勿論の事、日常生活にも原因があったとは、知らなかった方も多かったのではないでしょうか。
最悪、自分の歯を抜歯しなければならなくなる事もあるので、早めに歯周ポケットを改善していきたいものですね。いつまでも自分の歯でおいしく食事できるよう、毎日の歯磨きはおろそかにせず、生活習慣も整えていきましょう。
1975年 東京歯科大学 卒業
1975年~1977年 新宿ビル歯科 勤務
1978年 早川歯科医院 開業
現在に至る
執筆者:
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