症状別で解説!よくわかる歯周病の治療方法

症状別で解説!よくわかる歯周病の治療方法

歯周病は、別名『サイレントキラー(静かな殺し屋)』と呼ばれ、気付かないうちに歯の周りの骨を溶かしていく怖い病気です。また、30代以上の成人の8割が歯周病に感染しているといわれ、歯周病はとても身近な病気です。

しかも、歯周病は歯を失う原因として第一にあげられています。歯周病は、口の中の歯周病菌を減らすことで改善させることができます。大切な歯を失う前に歯医者さんで治療を受けましょう。
この記事で、治療の流れを確認してみてください。

この記事の目次

歯周病の度合いをチェックしよう

歯周病の治療方法は症状の重さによって変わります。
まずは、歯周病チェックシートでセルフチェックをしてみてください。

①歯茎が下がって、歯が長く感じる
②生活が不規則である
③歯と歯の間にすき間ができた
④口臭が気になる
⑤冷たい水がしみる
⑥歯茎から膿が出る
⑦朝起きた時に口内が粘つく
⑧歯を磨くと血が出る
⑨歯がグラついている
⑩歯茎の色が赤く腫れている

【該当0: 健康
歯周病の可能性は低いです!
ただし、健康状態や生活習慣が乱れると歯周病のリスクが高まると言われています。今は歯周病でなくても油断せず、予防をしましょう。
※歯周病は他人からうつることもあります!

【1つ該当: 軽度
軽度の歯周病の可能性があります
歯周病菌が歯の周りの組織の中に進入し、歯槽骨(しそうこつ)や歯根膜(しこんまく)とよばれる、歯を支える骨や組織を溶かしはじめています。

【2~6つ該当: 中度
中程度まで歯周病が進行している可能性があります。
さらに歯周組織の破壊がすすんだ状態です。歯茎が腫れていたり、歯がぐらつきはじめるのが中度の症状です。あなたは大丈夫ですか?

【該当7つ以上: 重度
歯周病がかなり進行している可能性があります。

歯の周りの骨がかなり溶けてしまっており、歯がぐらぐらしています。重度まで歯周病が進行すると痛みも出るので、食事がしづらくないですか?
また、ここまで悪化してしまうと、自分では気付いていなかったとしても、口臭がきついはずです。

※診断結果は、あくまで目安としてお考え下さい。詳細な診断には歯医者での検査が必要です。

歯周病の治療の流れ

歯周病の治療方法を解説します。
『歯周病チェックシート』の診断結果を目安にして、自分に当てはまる治療法を確認してみてください。

0212_2軽度の歯周病治療の流れ
初回:
検査 ⇒ 歯磨き指導 ⇒ 歯の表面の歯石除去
2回目以降:
検査 ⇒ メンテナンス(+歯並び、噛み合せの調整)

初回の治療で歯周病を改善するために歯周病菌を取り除き、毎日のケア方法を見直します。
そして2回目以降の治療で、どのくらい改善されているか調べる必要があるので最低2回は検査を行い、メンテナンスをしていきます。
歯並びが悪くて汚れが付きやすい場合は、矯正治療も行うこともあります。

0212_2中度の歯周病治療の流れ
初回:
検査 ⇒ 歯磨き指導 ⇒ 歯の表面の歯石除去
2回目:
検査 ⇒ 歯茎の中の歯石除去
3回目以降:
精密検査 ⇒ メンテナンス (+歯並び、噛み合せの調整、外科治療)

軽度の治療法と検査を行い、歯周病の改善度を見ていきます。改善が見込めない場合は、外科治療(フラップ手術)を踏まえて、精密検査を行うこともあります。

0212_2重度の歯周病治療の流れ
初回:
検査 ⇒ 歯磨き指導 ⇒ 歯の表面の歯石除去
2回目:
検査 ⇒ 歯茎の中の歯石除去
3回目以降:
精密検査 ⇒ 外科治療(フラップ手術) ⇒ メンテナンス (+再生治療)

重度まで歯周病治療がすすむと歯周病の改善にはかなり時間がかかります。時間をかけて何度も検査をし、外科治療(フラップ手術)や歯の再生治療などを取り入れながら治療をおこないます。最悪の場合、治療が出来ずに抜かないくてはならない歯が出てくることもあります。

1.検査 【軽度中度重度

《保険適用:3割負担で¥2、000~¥3,000》

歯医者へ行くと、全員共通で歯周病の検査を行います。この検査で詳しい歯周病の進行度合いを調べます。保険内で、基本検査(歯周ポケットの深さを一番深い所で記録)、精密検査(歯周ポケットの深さを歯の周りの6点で記録)が受けられます。唾液検査などを受ける場合は保険外となり、¥30,000ほどかかることもあります。

▼歯周ポケット検査

『プローブ』とよばれる、歯科用ものさしを使い、歯と歯茎のあいだの溝(歯周ポケット)の深さを調べます。
治療や、メンテナンスに行くたびに歯周ポケットの深さを測り、症状が改善されているかを確認します。

ペリオプローブ出典:株式会社リンケージ藤波/ http://shop.f-linkage.com/

▼レントゲン検査

レントゲンで骨がどのくらい溶けているのかということを調べます。

レントゲン(歯科用CT)出典:https://haisha-yoyaku.jp

▼歯の動揺度検査

歯科医師が歯のぐらつきをピンセットなどの器具で1本1本調べていきます。
揺れ具合は0度~3度4段階で評価します。

2.歯磨き指導【軽度中度重度

歯周病は、口の中の生活習慣病です。毎日おこなっている歯磨きの方法が間違っていることが原因で、歯周病になっていたり歯周病の症状を悪化させていることがあります。

治療期間中も、日々のブラッシングは欠かせないので、正しい歯磨き指導を受けましょう。

3.歯石除去【軽度中度重度

《保険適用:検査料込みで¥3,500程》
※検査が必須なので単体で行われることはありません。
目安として、歯茎の上の掃除(スケーリング)単体では¥800ほど、歯茎の中の歯石取り単体は¥900~¥1,200です。

症状が軽い、重いに関わらず、初めの治療で歯石除去を行います。
歯石は歯周病菌のかたまりです!わずか1グラムの歯石に1,000億個以上の歯周病菌が存在しているといわれています。

4.歯並び、噛み合せ、修復物の調整【軽度中度重度

歯周病の症状がまだ軽い【軽度】の場合は、歯並びや噛み合せの観点から歯周病にアプローチをする治療法もあります。
歯並びが悪い場合は、磨き残しが増えやすく歯石がつきやすいため、歯周病を悪化させる要因となるのです。
また、噛み合せが悪い場合は、強く噛んでしまう場所と、ほとんど噛めてない場所ができてしまい、力が偏ってかかります。力が強くかかってしまっている部分には負担がかかりやすく、こちらも歯周病を悪化させる要因です。
過去の虫歯治療の修復物がうまく調整されていなかった場合も、力のかけ方が偏っている可能性があるので調整を行います。

ただし、歯並びや、噛み合せの治療をおこなうということは、矯正治療をおこなうことと同義です。
矯正治療には時間や費用がかかるので、必ずしも受ける必要はありませんが、徹底的に歯周病を治したい場合は、歯周病治療と矯正治療のどちらも診療項目としている歯医者を選んで相談するのがおすすめです。

5.外科治療【軽度中度重度

▼フラップ手術

《保険適用:3割負担で¥3,000~/1箇所》
《自由診療:10万~15万円/1箇所》

歯がぐらぐらしている【中度・重度】の歯周病の場合は、歯周ポケットが広くて深いので、溝の奥深くまで歯石がこびりついています。溝の奥に溜まってしまった歯石は、表面からは除去しきれません。
そこで、『フラップ手術』で歯茎を切り開き、中にたまっている膿や歯石を取り出す手術をおこないます。

フラップ手術を受けるメリットとしては、歯周ポケットの奥深くまでしっかり掃除することができ、悪化した口内環境をリセットできることです。

デメリットとしては、術後にある程度の痛みを伴います。また、治療の前よりも歯茎は下がります。これは、治療によって歯茎の環境が改善されて歯茎が引き締まる事と、手術による侵襲でいくらか歯茎が下がってしまうのです。

ただ、医院の方針によっては、「なるべく患者さんが辛くないように治療をしたいので、フラップ手術はしません」という先生もいらっしゃるので、担当医とメリット・デメリットを良く話し合って治療法を決定しましょう。

6.歯と骨の再生手術【軽度中度重度

▼GTR法 《保険適用:3割負担で¥5,000~》

GTR法(Guided Tissue Regeneration、歯周組織再生誘導法)とは、歯周外科手術で歯茎の中を清潔にしたあと、メンブレンという保護膜で歯周組織を保護し、組織の再生させる方法です。歯周組織の再生には半年~1年かかります。また、歯が再生したあとは、保護膜を除去するための再手術が必要です。

▼エムドゲイン法 《自由診療:10万円~》

一言でいうと、赤ちゃんの歯が生える原理を利用した歯の再生療法です。歯周外科手術で歯茎の中を清潔にしたあと、細胞増殖因子となるエムドゲインのゲルを塗り、歯が生えてきたときと同じ状態を再現します。
術後約1ヶ月は、歯茎に刺激を与えないように注意する必要があります。
GTR法よりも容易で、同等またはそれ以上に有用であるといわれていますが、保険外治療となるので費用が高額です。

▼再生治療の注意点

骨の再生には個人差があります。また、ぐらぐらしている歯が静止する状態にまで修復する保証はないので医師としっかり相談し、個人に合った診断をしてもらいましょう。
また骨の溶け方によって再生のしやすさが変わります。あごに対して垂直方向に骨が溶けている場合は、骨の再生がしやすく、水平に骨が溶けている場合は再生がしにくくなります。

挿絵_歯周病治療02(改)

7.メンテナンス【軽度中度重度

《保険適用:1回¥2,000~¥3,000》

メンテナンスは、歯周病の治療が一通り終わった後で、健康な状態を保つために行います。メンテナンスをおろそかにしてしまうと、これまでの治療の意味がなくなってしまいます。
メンテナンスでは、主に毎日のブラッシングができているかのチェックや、歯石の除去を定期的に行います。

通院の周期は個人によって違うので、下記を目安にしてください。

▼毎月通う方が良い場合

・重度の歯周病で、歯周ポケットが広い。
・外科治療を受けた場合。
・ブラッシングが苦手な方。
・歯周病が悪化しやすい要因(高血圧、糖尿病など)を患っている場合。

▼3ヶ月ごと

・中度の歯周病の方。
・噛み合せによって部分的に力がかかりやすい場所がある場合。

▼6ヶ月ごと

・軽度の歯周病でブラッシングが上手な場合。

医療技術の進歩「4つの治療方法」

1. マウスピースを使用『3DS除菌療法』

3DS除菌法(Dental Drug Delivery System)とは、専用のマウスピースを使って薬剤を浸透させて歯周病菌を殺菌する方法です。ただし、あくまで正しいブラッシングができていることが前提で、その補助として使われる方法です。もしくはブラッシングができない高齢者や、要介護者の歯周病対策として使われることが多いです。

方法としては、歯医者で歯の型を採り、マウスピースを作成し、その中に薬剤を塗り、歯に装着して歯を薬剤に浸すことで、口の中の歯周病菌の繁殖を防ぎます。

2.善玉菌を利用『プロバイオティクス』

歯周病に限らず、身体に善玉菌を住み付かせて悪い菌を追い出す治療法を『プロバイオティクス』とよびます。乳酸菌や、ロイテリ菌(母乳に含まれる善玉菌)などを体内に増やす方法なのでリスクが低いです。
抗生物質などの薬剤と違うのは、悪い菌を殺すのではなく、良い菌を増やしていくというところです。そのため、継続して使用する必要があります。
歯医者だけではなく、市販でも購入することができます。寝る前になめると、寝覚めの口の中がスッキリするそうです。

まとめ

歯周病の治療法は、進行具合だけでなく、患者さん一人ひとりの歯並びや噛み合せの状態、毎日きちんとケアができているかということ、そして薬剤を使う場合は体質を加味する必要があり、まさに”オーダーメイドの治療”が必要な病気なのです。

また、悪化すればするほど治療期間が長くなることや、費用がかかること、痛い治療を受けなくてはならないなど、様々な負担が待ち受けています。「歯周病かもしれない」と思ったタイミングで是非歯医者さんで一度検査を受けてみてください。

歯周病の治療方法について、QAサイトで質問してる方がいますので、そちらも参考にしてみて下さい。

『歯周病の治療』について、歯医者さんの回答を見る

経歴

2007年 第100回歯科医師国家試験合格
2007年 日本歯科大学 生命歯学部卒業
2008年 埼玉県羽生市 医療法人社団正匡会 木村歯科医院
歯科医師としてのホスピタリティの基礎を学ぶ。
2010年 埼玉県新座市 おぐら歯科医院
地域に密着した医院で地域医療に携わり、
小児から高齢者歯科まで治療を行う。
2011年 東京都文京区 後楽園デンタルオフィス
施設の訪問診療などにも携わる。
2015年 東京都港区 青山通り歯科 院長
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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