歯を失った場合、部分入れ歯を使うことで歯並びを元に戻すことができます。ただし、保険が適用されるものとされないものがあり、治療方法もさまざまです。部分入れ歯にはどのような種類があるのでしょうか?また、保険が適用されるのはどのような場合でしょうか?
ここでは、部分入れ歯の種類や保険適用範囲について解説します。部分入れ歯を選ぶ際の参考にしてください。
この記事の目次
部分入れ歯は保険適用になる?
保険適用になるものとならないものがある
部分入れ歯には保険が適用される場合がありますが、種類によっては適用されないものもあるため注意が必要です。保険が適用される部分入れ歯は、プラスチック(レジン)製のものや、クラスプと呼ばれる金属の留め具を使用したものに限定されます。一方、保険適用外の部分入れ歯では、患者の希望に合わせて素材を自由に選ぶことができます。これらの素材を使用すると費用が高くなることがありますが、入れ歯が目立ちにくくなるなどのメリットがあります。
保険適用になる部分入れ歯の値段
保険を適用して部分入れ歯を取り付ける場合、手ごろな値段で仕上げることができます。ただし、費用は部分入れ歯の本数によって異なります。部分入れ歯の本数が少ない場合は約5,000円、ほぼ総入れ歯に近い本数の場合は約13,000円かかることがあります。
注意すべき点として、入れ歯を一度作ると、その後半年間は作り直しができないことがあります。使用開始後に作り直す場合は保険が適用されません。ただし、部分入れ歯に不備があったり壊れたり、明らかに合わなくなった場合は保険が適用されることがありますので、歯医者さんに相談してみると良いでしょう。
保険適用になる部分入れ歯の特徴
保険が適用される部分入れ歯は素材が限定されており、人工歯はプラスチック(レジン)のみです。また、保険が適用される部分入れ歯のメリット・デメリットは以下のとおりです。
保険適用になる部分入れ歯のメリット
①治療費が安い
保険適用外の部分入れ歯の場合、10万円を超えることも多くありますが、保険適用の部分入れ歯であれば、本数が少なければ5,000円程度、ほとんど総入れ歯に近い本数であれば13,000円程度で作ることができます。
②簡単に修理ができる
万が一壊れたり合わなくなったりした場合でも、保険適用の部分入れ歯は簡単に修理ができます。保険適用外の部分入れ歯はほぼオーダーメイドであるため、再度素材を購入するには高額になり、作り直すのに時間がかかることがあります。しかし、保険適用の部分入れ歯は構造が簡単で同じ素材を使っているため、修理にもさほど時間がかかりません。また、壊れてしまった場合は使用期間が短くても保険が適用されるので、費用も手ごろな金額で済みます。
保険適用になる部分入れ歯のデメリット
①目立ちやすい
保険適用の部分入れ歯は、クラスプと呼ばれる留め具の部分が金属に限定されているため、金属の部分が見えて目立ってしまいます。
②汚れが溜まりやすい
保険適用の部分入れ歯は、留め具を使用しているため汚れが溜まりやすくなります。特にクラスプ部分は汚れやすく、水で洗い流すだけでは汚れを落とすことができません。汚れを放置すると菌が繁殖し、他の歯に悪影響を与えることがあるので注意が必要です。入れ歯専用のブラシや歯磨き粉を使用して、丁寧にお手入れしましょう。
③装着時に違和感がある
使用中に違和感が生じやすいこともデメリットの一つです。これは、義歯や義歯床に使われるプラスチックが、個々の細かい噛み合わせに完全には対応できないためです。また、食べ物を噛んでいる感覚が薄れたり、温かさや冷たさを感じにくくなることもあります。
保険対象外の部分入れ歯の特徴
値段の目安
保険適用外の部分入れ歯では、好きな素材を選んで目立ちにくくするなど、自由度が高くなります。例えば、留め具のクラスプを使用しないスマイルデンチャーは、部分入れ歯を目立ちにくくしますが、費用は約10万円かかります。また、人工歯を金属に変更すると、費用は30万~100万円ほどかかることがあります。
保険対象外の部分入れ歯の種類
保険対象外の部分入れ歯をいくつかご紹介します。
スマイルデンチャー
スマイルデンチャーは、歯茎のような色や素材を使って歯を固定し、個人の歯にぴったりと合わせて作られるため、部分入れ歯をつけているようには見えないのが特徴です。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーも金属を使わない部分入れ歯ですが、歯茎にしっかりと固定するために、義歯床の部分を広めに取っています。スマイルデンチャーに比べて少し厚めですが、ノンクラスプデンチャーの方が費用を抑えることができます。
テレスコープデンチャー
テレスコープデンチャーはクラスプを使用せず、残っている歯を覆う冠を使って固定するため、取り外しが簡単にできる部分入れ歯です。また、残っている歯ごと固定することで安定感があり、他の部分入れ歯よりも安定しています。
金属タイプの部分入れ歯
金属製の部分入れ歯は、保険適用のプラスチック製と比べて軽量で、重さによるストレスを軽減できます。また、プラスチック製よりも薄く作れるため、噛み合わせに関するトラブルが起きにくくなります。
保険対象外の部分入れ歯のメリット
①アレンジがしやすい
素材を選べる部分入れ歯は、自分の好みに合わせてアレンジすることが可能です。保険適用外の素材には、保険適用時と同様にプラスチック製のものもありますが、汚れがつきにくく、壊れにくい性質を持っているため、使いやすく長持ちする部分入れ歯を作ることができます。
②見た目が自然
保険適用外の部分入れ歯を利用する大きなメリットは、保険適用のものよりも目立ちにくく、部分入れ歯をしていることが気づかれにくい点です。さまざまな種類や素材があるため、自分の希望に合ったものを歯医者さんに相談してみましょう。
保険対象外の部分入れ歯のデメリット
①治療費が高い
デメリットとして、保険が適用されないため治療費が高額になることが挙げられます。また、保険適用内であれば壊れたり不備があったりしても簡単に修理できますが、適用外のものは個人に合わせて作られているため、修理にも時間や費用がかかります。
まとめ
部分入れ歯は保険が適用されますが、素材を選びたい場合や目立たないようにしたい場合は、保険適用外の治療を選ぶことができます。ただし、保険適用外の治療は個人の好みに合わせて行える反面、費用が高額になることがあります。そのため、予算をしっかりと考慮して選ぶことが重要です。費用や使用感を十分に調べ、歯医者さんと相談しながら、自分にとって最適なものを選びましょう。
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

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