出っ歯の矯正費用とメリットを解説!注意すべき点も【歯の矯正読本】

出っ歯の矯正費用とメリットを解説!注意すべき点も【歯の矯正読本】

最近は日本人の考え方も欧米に近づき、「歯並びを整える歯科治療」が広く浸透してきました。実際、上顎(うわあご)の前歯が目立つ「上顎前突(出っ歯)」、歯に隙間がある「空隙歯列(くうげきしれつ:すきっ歯)」などを矯正する人が増えています。

こちらの記事では、「出っ歯の矯正治療」に焦点をあて、「主な矯正治療の方法・費用」を解説することにしました。出っ歯の歯列矯正を検討しているなら、ぜひ、参考にしてみてください。

この記事の目次

1.ブラケット&ワイヤーを使った矯正

もっとも普及している矯正方法です。歯にブラケットと呼ばれる器具を装着し、ブラケットにワイヤーを通します。ワイヤーで歯を引っぱり、歯を動かすわけです。

1-1 ワイヤー矯正(表側矯正)

歯の表面にブラケットを装着する方法です。一般に「歯列矯正」と呼ぶ場合、多くの人が表側のワイヤー矯正を想像すると思います。

ワイヤー矯正の費用目安
60~80万円

ワイヤー矯正の優れた点

・歯を動かす力が強いので、重度の出っ歯でも矯正可能
・もっとも普及している手法なので、多くの歯科医院で実施可能
・美容面だけでなく、噛み合わせを機能的に整えられる

昔から用いられてきた方法なので、すでに技術が整っています。どこの歯科医院でもほとんど同じ期間で、同じ結果が得られるでしょう。また、見た目を美しくするだけにとどまらず、噛み合わせそのものを整えられるのも強みです。

ワイヤー矯正の注意点

・歯の表面に矯正器具を装着するので、目立ってしまう
・ブラケットが歯磨きの邪魔になり、虫歯リスクが上がる
・矯正器具が口腔内を傷つけるリスクがある

歯の表側にブラケットを装着するので、どうしても装置が見えてしまいます。しかし、最近は「白色・透明のブラケット」も出てきているので、過度に心配する必要はありません。むしろ、ブラケットを装着した部分に歯ブラシが届かなくなるなど、衛生面の問題に留意するべきでしょう。

また、スポーツをする人の場合、矯正期間中は口腔外傷のリスクが上がります。歯の表面にブラケットがあるので、口の周囲をぶつけると、唇の裏側に裂傷を負う恐れがあります。ブラケットが粘膜にめりこんでしまうからです。

1-2 ワイヤー矯正(舌側矯正・裏側矯正)

歯を動かすメカニズムは、表のワイヤー矯正と同じです。ただし、ブラケットを歯の裏側に装着する点が異なります。いくつかの呼び方がありますが、こちらの記事では舌側矯正で統一したいと思います。

舌側矯正の費用目安
100~180万円

舌側矯正の優れた点

・歯の裏側にブラケットを装着するので、目立たない
・歯の裏側は虫歯になりにくいので、虫歯リスクが低い
・ブラケットが口腔粘膜と密着しないので、外傷リスクが低い
・美容面だけでなく、噛み合わせを機能的に整えられる

歯の裏側に器具を取りつけるので、矯正期間中に外見的な影響を受けずに済みます。また、矯正中に虫歯になるリスクが低いのも大きな魅力です。歯の裏側は唾液腺に近く、唾液によって頻繁に洗われるので虫歯リスクが低くなります。

舌側矯正の注意点

・表側矯正に比べて、矯正にかかる期間が長い
・技術的に難しいので、実施可能な歯科医院が限定される
・ブラケットが舌にあたるので、違和感が強い

美容面・機能面ともにメリットの大きい舌側矯正ですが、いくつかのデメリットも存在しています。表側矯正により歯を動かす効率が低く、矯正を終えるまでの期間が長引きます。

また、表側矯正ほど普及していないので、舌側矯正を実施している歯医者さんは限られています。そのほか、ブラケットが舌にあたるので違和感が強くなります。舌の動きが制限されることから、「一部の音が発音しにくくなる」などの問題もあります。

2.取り外しできる器具を用いた矯正

歯列矯正にはさまざまな方法があり、最近では「ワイヤーを使わない矯正」も普及してきました。代表的なのが、マウスピースを使った歯列矯正です。

2-1 マウスピース矯正

患者さんが自分の意志で着脱できる「マウスピース」を用います。マウスピースは透明なので、傍目(はため)にはほとんどわかりません。

マウスピース矯正の費用目安
50~100万円

マウスピース矯正の優れた点

・矯正器具は透明なので、外見的にはほとんどわからない
・取り外しできるので、食事・歯磨きの邪魔にならない
・歯を直接引っぱるわけではないので、痛み・違和感が少ない
・美容面だけでなく、噛み合わせを機能的に整えられる

透明のマウスピースで歯に力を加えていく方法なので、ワイヤー矯正よりもはじめやすいでしょう。取り外しできますから、食事・歯磨きに悪影響も及びません。また、ワイヤー矯正に比べると、矯正中の痛み・違和感も少なくなります。

マウスピース矯正の注意点

・歯を動かす力が弱く、中等度~重度の出っ歯には向かない
・長時間、装着していないと十分な結果が期待できない

マウスピースの矯正力はそれほど高くありません。軽度の出っ歯なら矯正できますが、中等度~重度になると力不足です。また、装着時間が短いと結果が出ないので、矯正には本人の意志が求められます。「違和感があるから外したままになってしまった」というのでは、結果は望めません。

2-2 床矯正

「総入れ歯」に似た形状の器具を使う方法です。患者さんの意志で着脱できるのはもちろん、ネジを回すことで「矯正する力」まで調節できます。

床矯正の費用目安
約30万円

床矯正の優れた点

・ワイヤー矯正に比べると、矯正器具が目立たない
・ワイヤー矯正に比べると、痛みが少ない
・取り外しできるので、食事・歯磨きの邪魔にならない
・美容面だけでなく、噛み合わせを機能的に整えられる

1日8時間以上にわたって装着していれば矯正可能なので、食事・歯磨きのときは取り外してOKです。矯正期間中に虫歯になるリスクが低く、ワイヤー矯正より気兼ねなく矯正治療を受けることができます。

床矯正の注意点

・歯を動かす力が弱く、重度の出っ歯には向かない
・複数の歯を大ざっぱに動かすので、細かな矯正は不可能
・装置が大きいので、違和感が強い

床矯正は複数の歯を1ブロック単位で扱い、大ざっぱに動かす矯正法です。1本1本の位置を細かく調整することはできません。「キレイに歯を並べる」というのが、床矯正の限界です。また、装置が総入れ歯と同じくらいに大きいので、装着中の違和感はかなり強くなります。

3.美容面に特化した矯正

「見た目がキレイになれば良い」という方向性の治療も存在します。噛み合わせ自体は改善しませんが、「外見上、出っ歯ではなくなる」という結果を得ることができます。

3-1 部分矯正(ワイヤー矯正)

前歯だけを矯正し、美容面の問題を解消する方法です。部分矯正にもさまざまな手法がありますが、ここでは特に普及している「ワイヤーによる部分矯正」を解説します。

部分矯正の費用目安
30~50万円

部分矯正の優れた点

・歯を動かす力が強く、重度の出っ歯でも矯正できる
・全体を矯正するのに比べて、痛み・違和感が少ない

ワイヤー矯正と同じ方法なので、歯を動かす力は十分です。重度の出っ歯でも、問題なく整えることができるでしょう。また、奥歯にブラケットをつけないので、全体矯正よりも取りかかりやすいでしょう。

部分矯正の注意点

・ブラケットが歯磨きの邪魔になり、虫歯リスクが上がる
・見た目は整うが、機能的なメリットに乏しい

部分矯正は、あくまでも美容面に重きをおいた治療です。噛み合わせを整えるわけではないので、機能面でのメリットはほとんどありません。

3-2 セラミック矯正

近年、美容面の治療に特化した歯科医院で盛んにおこなわれているのが、「セラミック矯正」と呼ばれる手法です。ただ、この方法は厳密には矯正ではなく、「歯にかぶせ物をする方法」です。天然歯にダメージを与える治療法なので、その点を理解した上で検討するようにしてください。

セラミック矯正の費用目安
1本あたり7~15万円

セラミック矯正の優れた点

・セラミック治療システム等のCAD/CAMがある場合で、削って形をとって、次回装着ができる
・人工物なので、色合い・形状を細かく指定できる

セラミック矯正の注意点

・健康な歯を大きく削るので、歯の寿命が縮まる
・神経を抜くこともあり、決して健康的な方法ではない
・セラミックは10年ほどで寿命がくる
・見た目は整う、噛み合わせが良くなるわけではない

健康な歯を削り、セラミッククラウンに置き換えるわけですから、「歯の健康」を考える上では悪影響です。そもそも「歯を大きく削って、かぶせ物を入れる」というのは、重度の虫歯を治療するときの方法です。一般に、かぶせ物を入れると「歯の寿命を10年は縮める」といわれています。

4.矯正費用の「高い・安い」はどのように判断する?

矯正は自由診療なので、歯医者さんごとに料金設定が異なります。また、「歯列がどれくらい乱れているか」によって料金は変動する余地があります。しかし、「提示された金額が適正かどうか」を推測する方法は存在しています。

国立大学附属病院の矯正歯科は、全国統一の料金設定をおこなっています。国立大学附属病院が設定する金額と見比べて、大きく異なる場合は「なぜ、その料金なのか」をきちんと確認したほうが賢明でしょう。

たとえば、「舌側矯正だから、相場の1.5倍くらいになる」「見た目に優れる矯正装置を使用している」など明確な理由があれば、問題はありません。しかし、理由なく「国立大学附属病院の標準料金」から外れている場合は、きちんと説明を求めるべきだと思います。

国立大学附属病院に準拠する費用設定

初診・相談料:3,000円程度
検査・診断料:3万円程度
子供の歯列矯正:10~80万円程度
大人の歯列矯正(金属ブラケット):60~70万円程度
大人の歯列矯正(透明ブラケット):70~80万円程度
大人の歯列矯正(舌側矯正):100~180万円程度

5.まとめ

矯正歯科における治療法のバリエーションは、どんどん増えています。現在では、出っ歯を矯正するための方法も幅広くなりました。それぞれのメリット・デメリット、そして費用を踏まえて、自分に適した方法を選択してください。

 

先生からのコメント

値段等はネットで調べてよく検討した方が良いです。クーポンサイトなどでも安いのがありますが、よくその歯科医院と相談して決めてください。

医院情報
住所:東京都葛飾区お花茶屋2-5-16
電話:03-3601-7051
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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