咬合性外傷に要注意!虫歯・歯周病じゃないのに歯を失うリスクも…

咬合性外傷に要注意!虫歯・歯周病じゃないのに歯を失うリスクも…

歯を失う恐れがある口腔トラブルは、虫歯・歯周病だけではありません。噛み合わせに起因する「物理的な力」が、歯にダメージを与えるのをご存じでしょうか? 物理的ダメージが蓄積すれば、最終的には歯を失う恐れもあります。噛み合わせによる「歯・歯周組織へのダメージ」を指して、「咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)」と呼んでいます。

こちらの記事では、咬合性外傷のメカニズム・治療法を解説しています。将来的に歯を失わなくて済むように、あらゆる口腔トラブルの早期発見・早期治療に努めましょう。

この記事の目次

1.咬合性外傷のメカニズムとは…?

咬合性外傷は、「噛み合わせの力による物理的なダメージ」が原因です。しかし、歯・歯周組織に物理的な力が加わるメカニズムには、2通りが存在しています。そのため、厳密にはそれぞれ「一次性咬合性外傷」「二次性咬合性外傷」と呼んで区別しています。

1-1 一次性咬合性外傷

歯を強く食いしばるなど、限界を超えた力がかかった場合に生じる外傷です。たとえば、以下のようなケースで一次性咬合性外傷が起こります。

・噛み合わせに問題のある人が歯を強く食いしばったとき
・箸など固いものを強く噛んでしまったとき
・就寝中の歯ぎしりが特にひどかったとき

歯周組織は正常でも、度を超えた負荷がかかれば歯・歯槽骨(歯を支える骨)は損傷します。損傷が繰り返されれば、骨は破壊されていきます。ちなみに、相当に強い力がかかると、歯と歯槽骨の隙間を埋めている「歯根膜」という組織が炎症を起こします。細菌感染などの影響がない炎症なので「単純性歯根膜炎」と呼ばれます。

1-2 二次性咬合性外傷

一次性咬合性外傷・歯周病などの要因で、歯周組織にダメージが蓄積している場合、二次性咬合性外傷を起こすことがあります。すでに骨が損傷していたり、歯の周囲が炎症を起こしたりしているので、普段の力で噛み合わせただけでもダメージが拡大します。

つまり、二次性咬合性外傷では「噛み合わせの力に問題はないけれど、負荷に耐えられないほど歯周組織が弱っている」という状態になっているわけです。

1-3 咬合性外傷の主な症状

咬合性外傷の自覚症状としては、「歯がグラグラする」「歯が割れる・欠ける」「大きな虫歯と似たような痛み」があります。歯に損傷があるときはもちろん、「虫歯がないのに歯がズキズキ痛む」という場合も、咬合性外傷を疑ってください。

咬合性外傷が進むと、歯槽骨が吸収されて溶けていくほか、歯根(歯の根っこ)も吸収されてしまいます。放置すると歯を失う恐れがありますので、「咬合性外傷かな?」と思ったら早めに歯医者さんを受診するようにしましょう。

2.咬合性外傷の一般的な治療法は…?

咬合性外傷は「噛み合わせの力で歯・歯周組織が損傷している」という意味です。要するに「現在の状態」を示す言葉になります。治療方法は、咬合性外傷が起きている理由によって変わってきます。

2-1 噛み合わせに問題がある場合の一次性咬合性外傷

歯は垂直方法の負荷には強いですが、横方向の負荷には強くありません。そのため、「噛んだ拍子に横方向の力がかかる状態」になっていると咬合性外傷を起こしやすくなります。

噛み合わせによる咬合性外傷に関しては、噛み合わせ調整で対応します。根本原因を取りのぞけば、一次性の咬合性外傷は修復に向かいます。グラグラしていた歯も、たいていは2週間ほどで元通りになるでしょう。

2-2 固いものを噛んだ場合の一次性咬合性外傷

箸・種などを噛んだことによる咬合性外傷は、事故のような部分があります。原因はハッキリしていますし、もとの噛み合わせに問題があるわけでもないので、対症療法で問題ありません。鎮痛剤なので、「今の痛みを抑える」という方向の治療をおこないます。

2-3 歯ぎしりによる一次性咬合性外傷

歯ぎしりによるダメージが起きているなら、根本原因である歯ぎしりを治療します。マウスピースを装着することで、歯ぎしりを抑制できるほか、歯にかかる圧力を逃がすことが可能です。

2-4 二次性咬合性外傷

二次性咬合性外傷の場合、歯槽骨が溶けていることから「歯を失うリスク」が生じます。歯周病と同様、「歯を支える歯槽骨が溶け、歯がグラグラする」という特徴を持っているため、二次性咬合性外傷のことを「負担過重型歯槽膿漏」と呼ぶこともあります。二次性の咬合性外傷であれば、原因にかかわらず「歯を残すために手を打つこと」が第一になります。

具体的には、グラグラしている歯を救うために「隣の健全な歯と連結する」といった処置がおこなわれます。ブリッジの要領で、ひと続きのかぶせ物をして連結するわけです。この方法で、とりあえず歯の脱落を防ぐことができます。そのほか、歯周病と併発している場合などは歯周病治療をおこない、歯槽骨のダメージを食い止めます。

3.まとめ

虫歯・歯周病だけでなく、物理的なダメージによって歯を失う恐れもあります。咬合性外傷などの口腔トラブルを未然に防ぐためには、「何もなくても定期健診に行き、噛み合わせをチェックする」といった予防意識が不可欠です。将来的に歯を失うことがないように、定期的に歯医者さんを訪れる予防習慣を身につけましょう。

 

先生からのコメント

こわい病気です。歯ぎしりがひどいと歯がどんどん減ってきてしまいます。まだ表面のエナメル質だけなら良いですが、次の象牙質になると柔らかいので、減るのが早くなり、場合によってはしみたり、痛くなったりします。治療としては噛み合わせを良くしないとダメなのですが、セラミックなどは使えないことが多く、金属になってしまう場合が多くなります。ただ金属はアレルギー等があり、あまり使用したくないですね!

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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