口を開けると顎が痛い!原因は顎関節症?三叉神経痛?

口を開けると顎が痛い!原因は顎関節症?三叉神経痛?

「口を開けると顎が痛い…」という症状に悩まされていませんか? 放っておくと、もしかしたら「口を大きく開けられない」などの深刻な症状に発展するかもしれません。なるべく早く原因を突き止め治療を受けるべきでしょう。そこで、こちらの記事では「開口痛(口を開けると顎が痛い症状)」の原因を解説することにしました。

開口痛の原因は、複数存在しています。もちろん、「口を開けると顎が痛い」と感じるなら、もっとも確率が高いのは顎関節症でしょう。しかしながら、「顎が痛い=顎関節症」と決めつけるのは早計だと思います。開口痛をきたす病気の種類を確認することにしましょう。

この記事の目次

1.口を開けると顎が痛いのは、顎関節症…?

「顎が痛い」というのが主な自覚症状であれば、やはり、もっとも高確率なのは顎関節症だと思います。ただ、顎関節症は、あくまでも症状の名前です。「顎の関節、咀嚼筋などに違和感・痛み・開口障害が出ている状態」を指す言葉であって、特定の病名ではありません。そのため、顎関節症には複数の原因が存在します。この章では、顎関節症の種別ごとに「特徴・原因」をまとめたいと思います。

1-1 顎関節症3型―顎関節円板障害

下顎骨は、頭蓋骨にぶら下がるようにして存在しています。そして、顎関節の部分は「下顎骨が側頭骨にはまりこんだ状態」です。下顎骨と側頭骨が蝶番(ちょうつがい)のようになって、顎関節が動くわけです。

さて、2つの骨が接触しているわけですから、接合部にはクッション材が必要になります。クッション材がないと、「下顎骨が側頭骨にはまっている部分」に摩擦が生じるからです。この「顎関節をスムーズに動かすためのクッション材」を指して「関節円板」と呼んでいます。3型の顎関節症は、関節円板がうまく機能しないことによって発症します。

復位性関節円板転位

クッション材である関節円板は、下顎骨と側頭骨の接触部に存在しなければなりません。接触している2つの骨の間に挟まることで、クッションの役割を果たすからです。しかし、3型顎関節症の人は、関節円板がもとの位置からずれて、前方に動いています。

下顎骨と側頭骨の隙間に関節円板がないと、痛くて口を開けることはできません。とはいえ、多くの場合、「口が開かない状態」にまでは至りません。口を開けようとしたとき、関節円板がもとの位置に戻るからです。必要に応じて元の場所に戻る状態であれば、「復位性関節円板転位」と呼ばれます。実のところ、人口の1~3割は関節円板がずれていて、それほど珍しい病態ではありません。口を開けたときに痛むようなら、早めに治療を受けるべきですが、「口が大きく開き、痛みもない」という人は治療対象にならないのが普通です。

ちなみに、復位性関節円板転位を起こしていると、口を開け閉めしたときに「パキッ」「カクッ」「ジャリッ」などの雑音が聞こえることが多いです。これは、関節円板が元の位置に戻るときの音です。顎関節から雑音がする場合、3型顎関節症を起こしていると考えてください。

非復位性関節円板転位

「非復位性」という名称から想像がつくように、「口を開けようとしても、関節円板の位置が戻らない病態」が存在します。非復位性関節円板転位の場合、口を大きく開けることはできません。痛みが強く、2cm程度しか開かなくなります。この状態を「クローズドロック」と呼んでいます。

1-2 顎関節症1型―咀嚼筋障害

下顎骨を動かす筋肉(咀嚼筋)に問題が起きていると、開口痛が生じます。咀嚼筋はいくつもの筋肉の総称であり、8つの筋肉に細分化することが可能です。開口筋(口を開けるための筋肉)に顎舌骨筋・頤(おとがい)舌骨筋・顎二腹筋・外側翼突筋(下頭)があり、閉口筋(口を閉じるための筋肉)に咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋(上頭)があります。これらの筋肉にコリ・痛みがあると、1型の顎関節症をきたします。

口を開けるときに痛みが生じるほか、筋肉の緊張に起因する頭痛・肩こり・手のしびれなど、幅広い症状をきたす傾向です。顎関節症の1つですが、口を開閉したときに音がすることはありません。

1-3 顎関節症2型―顎関節痛障害

顎関節の「関節包(関節を覆う組織)」「靱帯(じんたい)」が損傷していると、開口痛が生じます。関節の軟組織が損傷したことで痛むわけです。「口を開けるとき」だけでなく、「口を閉じるとき」「咀嚼するとき」「顎付近を圧迫したとき」など、さまざまなタイミングで顎が痛みます。損傷の程度によっては、何もしていないときに鈍痛を感じることもあります。

顎関節症のイメージとは裏腹に、やはり、関節から異音がすることはありません。関節自体がどうこう…というよりは、軟組織の問題だからです。むしろ、「顎関節の付近を捻挫したようなもの」と考えたほうが、実情に近いかもしれません。

1-4 顎関節症4型―変形性顎関節症

顎関節を使い続けるうちに、軟骨が摩耗して骨が変形する場合があります。長期的なダメージの蓄積…といったところです。明確な症状が出ていなければ問題ありませんが、開口痛・異音などの症状が出ることもあります。

2.三叉神経痛

顎を含めて「顔面が痛む」という症状をきたす病気に「三叉神経痛」があります。三叉神経は「眼神経」「上顎神経」「下顎神経」に枝わかれする神経で、顔の感覚の大部分をつかさどっています。

三叉神経痛は、「顔に触れたとき」「食べ物を噛んだとき」「口を開けたとき」など、何らかの動作に伴って、数秒ほどの痛みが発現します。口を動かした拍子に上顎神経・下顎神経の支配領域が痛む場合、「口を開けると顎が痛い」という自覚症状になることがあるのです。

さて、三叉神経痛の原因は「血管が神経を圧迫すること」にあります。特に動脈硬化を起こした血管は神経を圧迫する傾向があり、そのために50代以降での発症が多くなっています。

3.歯性感染症

歯科疾患がきっかけになり、口腔内に炎症が起こることを「歯性感染症」と呼んでいます。親知らずの周囲に溜まった細菌が歯茎に感染する「智歯周囲炎」、抜歯した傷口から細菌が入って歯槽骨に感染する「急性歯槽骨炎」などが代表的な歯性感染症です。

これらの感染症が拡大すると、「口を開けるのに困難を感じるほどの強い痛み」が現れることがあります。顎骨を覆う骨膜が感染する「顎骨骨膜炎(がっこつこつまくえん)」、口腔全体に感染が広がる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」などに発展した場合、強い開口痛・開口障害が起こります。

4.まとめ

「口を開けると顎が痛い…」という症状があるなら、多くは顎関節症だと思います。しかし、顎関節症にもいくつかの種類があり、自己判断で「これが原因」と特定するのは困難です。顎の痛みが続くようなら、一度、歯科医院・歯科口腔外科を受診して、きちんと診断を仰いだほうが良いでしょう。

 

先生からのコメント

この記事で触れている口を開けた時の痛みですが、他にも外耳道炎などの耳の疾患でも痛みが出ることがあります。もちろん歯医者さんで診てもらって歯科分野の疾患でなければ耳鼻咽喉科を紹介されるでしょうから、痛みを抱えているならぜひ一度かかりつけの歯医者さんで相談してみてください。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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