歯が欠ける4つの原因と欠けたときにおこなうべき対処法【歯科医師が監修】

歯が欠ける原因は、歯の健康が損なわれることで起こるケースや、外傷によって生じるケースがあります。
自分の歯がなぜ欠けてしまったのか、歯が欠ける原因を知っておくことで、原因に応じた対策を施すことが可能になります。

この記事では、歯が欠けるさまざまなケースについて触れ、歯が欠けないようにするための予防法も一緒に紹介していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。

この記事の目次

1.歯が欠ける原因は主に4つ

歯が欠ける原因は、歯の健康が損なわれて、弱くなったことに起因する場合と、外的に強い圧力がかかって、欠損してしまう場合があります。

前者は、適した予防策を講じる必要があり、後者は生活習慣の改善や外的なアクシデントを避ける手段が必要です。

1-1 歯の健康が損なわれているケース

ここで、キーワードとなるのは「エナメル質」と「酸」です。「エナメル質」は歯の表面を覆っている物質で、体の中でもっとも硬いと言われています。
「酸」は、このエナメル質を損傷する原因となる物質です。

虫歯

虫歯菌は、食事をした際の糖分などをエサとして酸を作り出します。
この酸が、エナメル質を侵食し、歯をもろくしていきます。
すべての人の口の中に、虫歯菌は存在しています。

酸蝕歯

虫歯菌が作り出す酸だけでなく、エナメル質は酸に弱いことを覚えておきましょう。
つまり、酸性の食べ物にも注意が必要になってきます。

酸が多く含まれる食品は、野菜や果物、お酢、炭酸飲料などさまざまです。
酸によって歯が透けたり黄ばんだりして、もろくなるのが酸蝕歯です。

1-2 外的な力がかかっているケース

歯自体がもろくなってしまうのではなく、歯にいつも大きな圧力がかかってしまうような生活習慣や、アクシデントによって、歯が損傷するほどの力が加わる場合もあります。

歯ぎしりや噛み締め

生活習慣の外的な力によって歯が損傷するのは、歯ぎしりや噛み締めです。

噛む力は、成人男性で50kg近くになると言われています。
寝ている間の歯ぎしりは、無意識のため加減がなく、その倍ほどの力になるとも言われています。

また、筋力のある方やスポーツをする方の中には、ぐっと歯に力を入れた際に80〜90kg以上の力が出る方もいるようです。
寝ている間の歯ぎしりのある方、いつも歯を食いしばってしまうような方は、歯に大きな負担をかけていることになります。

外的なアクシデント

事故によって、歯が損傷するほどの圧力を受けることもあります。

特に、気をつけたいのは、スポーツ時のアクシデントです。
歯を強く食いしばってパワーを出すスポーツや、激しく相手とコンタクトするようなスポーツでは注意が必要です。

2.歯が欠けたときの対処法

歯が欠けたときの歯医者さんでの処置を知り、小さな欠損から根こそぎ抜けてしまった場合まで、万一の際の速やかな対処につなげましょう。

2-1 小さな亀裂や欠損の場合

表面に引っかかりを感じる、くぼみができるといった浅い欠損では、引っかかる部分を削って平らにしたり、プラスチックでできた「コンポジットレジン」を使って欠けた箇所を埋めたりします。
コンポジットレジンは、虫歯や酸蝕歯の治療にも用いられます。

2-2 詰め物が取れた場合

詰め物自体が取れてしまったときには、詰め物を保管し、できるだけ早く歯医者さんを受診しましょう。
金属の詰め物の場合、5年程度で劣化が始まると考えておきましょう。

劣化を早期発見するためにも、歯医者さんの定期健診を受けることをおすすめします。

2-3 歯の根っこが割れる「歯根破折」の場合

歯の見えている部分ではなく、根っこが割れてしまうのが「歯根破折(しこんはせつ)」です。
外傷や食いしばりといった外的な力が加わって割れてしまうケースや、神経を抜いてもろくなった歯の根っこが割れてしまうケースもあります。

歯の根っこに達するほどの大きな亀裂では、神経を傷つけてしまう場合があります。
根が損なわれないようにサポートするための土台を作り、セラミックなどを被せて補強します。

2-4 グラグラになった場合

外的な衝撃を受けて歯がグラグラしている場合、歯根が折れていることも考えられるため、レントゲンで確認することがあります。
亜脱臼(全て脱臼してはいないが、脱臼しそうな状態)の場合、数週間程度で治ることもあるようです。

慌てず速やかに歯医者さんに相談しましょう。

2-5 根こそぎ抜けた場合

外的なアクシデントによって、歯が根こそぎ抜けてしまうこともがあります。
抜けた歯を持って速やかに歯医者さんに行くことができれば、歯を元に戻せる可能性も高くなります。

抜けた歯は、乾燥しないように牛乳の中に浸しておいたり、口の中に入れて唾液に浸しておいたりすると良いと言われています。

3.歯が欠けるのを防ぐ対策

3-1 正常な口内環境をキープしよう!

人の口の中では、「脱灰(だっかい=歯のエナメル質が溶け出してしまうこと)」が起こっても、唾液の作用によってその状態を修復する「再石灰化」がおこなわれます。

ところが、そのバランスが崩れてしまうと、脱灰が進み続け、エナメル質を大きく損傷し、歯をもろくしてしまいます。

強い歯をキープするために何が必要なのかを、ここで整理していきましょう。

虫歯予防

歯が欠ける原因を排除するために大切なのは、虫歯予防です。
エナメル質を保ち、硬く強い歯をキープすることが予防策となります。

酸性食品に要注意

酸っぱいフルーツや野菜、炭酸飲料など、さまざまな酸性食品があります。
食べてそのままだと、口の中の酸性状態が続いてしまうので、口をゆすいだり、歯磨きをしたりしてリセットしましょう。

歯の再石灰化を促す

歯は、脱灰と再石灰化を繰り返しています。
脱灰方向にバランスを崩さないよう、再石灰化を促すことが大切です。

再石灰化は、唾液によっておこなわれています。
したがって、口内環境を清潔に保つことで、自然に再石灰化がおこなわれることになります。

天然の甘味料であるキシリトールのガムは、虫歯菌の増殖力を弱めることで酸を出すことを抑え、唾液の作用を高めてくれます。

カルシウムの摂取

唾液による歯の再石灰化には、唾液中に含まれるカルシウムやリンが作用しています。
摂取したカルシウムは直接歯に作用するものではありませんが、唾液を通じて再石灰化に役立っています。

3-2 外的な要因に注意する

歯が欠けないように気をつけることとして、もう一つが外的な要因に注意するということです。
日常のストレスや、スポーツでの接触プレーによるアクシデントといったことは、あらかじめ注意してくおくことで、歯が欠ける事態をある程度防ぐことができます。

歯ぎしりや噛み締めはメンタルが影響

歯ぎしりや噛み締めは、主にメンタルに原因があると言われています。
ストレスを溜めやすい、時間に追われて多忙、負けず嫌いなどといった、精神的な部分が作用しているケースがあります。

日常生活の中に、ストレスを緩和するリラクゼーションといった工夫を取り入れてみましょう。

スポーツ用マウスピース

相手との激しいコンタクトがあるようなスポーツでは、歯が欠ける予防策として、スポーツ用のマウスピースがおすすめです。
コンタクトによるアクシデントだけではなく、ウェイトリフティングといった、瞬発的に大きな筋力を発揮しなければならないスポーツでも、マウスピースは有用です。

また、就寝中の歯ぎしりや噛み締めによる負担を軽減する役割もあります。

4.まとめ

そんなに硬いものを噛んだつもりはないのに、歯が突然欠けてしまったり、歯根まで到達するような亀裂が入ったりしてしまうと、ショックが大きいものです。
避けられない事故による歯の損傷は別にして、日頃から強い歯を保つことを心がけましょう。

また、歯ぎしりや噛み締めは、重大な歯の損傷に至るケースもあります。
精神的な要因もあるので、早目に歯医者さんに相談しましょう。
就寝中に、マウスピースで保護することも可能です。

経歴

2007年 第100回歯科医師国家試験合格
2007年 日本歯科大学 生命歯学部卒業
2008年 埼玉県羽生市 医療法人社団正匡会 木村歯科医院
歯科医師としてのホスピタリティの基礎を学ぶ。
2010年 埼玉県新座市 おぐら歯科医院
地域に密着した医院で地域医療に携わり、
小児から高齢者歯科まで治療を行う。
2011年 東京都文京区 後楽園デンタルオフィス
施設の訪問診療などにも携わる。
2015年 東京都港区 青山通り歯科 院長
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。