顎が鳴るのは、顎関節症の前兆…?顎関節症のメカニズムを解説

顎が鳴る

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口を開けたときに「顎が鳴る音」が聞こえませんか? どのような音が鳴るかは、人によって違います。ただ、一般的には「カクン」「ジャリジャリ」「ピキッ」などの擬音語で表現されることが多いようです。

さて、顎関節症は「顎関節・咀嚼筋などに問題があり、開口障害・痛み・違和感などが出た状態」を指す言葉です。そのため、顎関節症には複数の種類があり、原因・症状は種類ごとに異なります。

ちなみに、顎関節症を原因ごとに区分すると、4種類にカテゴライズ可能です。その中で「顎が鳴る症状」をきたすのは2種類であり、残りは「音がしない顎関節症」になります。こちらの記事では、4種類の顎関節症それぞれについて、特徴・原因をまとめることにしましょう。

1.関節円板障害(3型顎関節症)

関節というのは、「異なる2つの骨の連結部」です。顎関節の場合、連結されているのは「側頭骨(頭蓋骨の一部)」と「下顎骨(かがくこつ)」になります。連結部が動く結合を「可動性結合」と呼んでいます。顎関節のような関節は、可動性結合です。

さて、顎関節には「側頭骨と顎関節がスムーズに動くためのクッション材」が存在します。クッション材がないと、側頭骨と顎関節に摩擦が生じるからです。このクッション材のことを「関節円板」といいます。関節円板障害は名前のとおり、関節円板の機能に問題が起きている顎関節症です。

1-1 復位性関節円板転位

関節円板は、「側頭骨と下顎骨が摩擦による負担を受けないようにするためのクッション材」です。当然ながら、関節円板は、側頭骨と下顎骨が接触している部位に挟まるように存在しています。しかし、3型顎関節症になると、関節円板の位置が前方にずれてしまうのです。

2つの骨の隙間に関節円板が入っていないと、口を開けることはできません。摩擦による強い痛みが生じるからです。しかし、たいていの場合、「完全に口が開かない状態」にはなりません。口を開けようと動かしたとき、関節円板が元の位置に動くからです。

「関節円板の位置がずれているが、必要に応じて元の場所に戻る状態」を指して、「復位性関節円板転位」と呼んでいます。復位性関節円板転位になっていると、「カクン」「ジャリッ」「ピキッ」などと顎が鳴る症状が現れます。これは、ずれていた関節円板が元の位置に戻る音です。つまり、3型顎関節症は「顎が鳴る顎関節症」です。

ただ、顎が鳴るだけなら、一般に顎関節症とは診断されません。顎が鳴るだけなら、「顎関節症の予備群」という扱いになります。実際、「口はきちんと開くけれど、顎が鳴る人」は人口の1~3割を占めており、決して珍しくはありません。「顎が鳴る症状」に加えて、「口を開けると痛む」といった症状が出て、はじめて治療の対象となるのです。

1-2 非復位性関節円板転位

関節円板障害が悪化すると、「口を開けようとしても、関節円板の位置が戻らない状態」になることがあります。この状態を指して、「非復位性関節円板転位」と呼んでいます。関節円板が戻らないので、口を大きく開けることはできません。

通常、「口が4cm以上開けば正常」とされていますが、非復位性関節円板転位を起こしていると、最大でも2cm前後しか開かなくなります。だんだん開かなくなるのではなく、「ある日、突然に口が開かなくなる」という発症形態です。関節円板が戻らなくなった途端、急に開かなくなるからです。この状態を「クローズドロック」といいます。

2.変形性顎関節症(4型顎関節症)

顎関節にダメージが蓄積すると、軟骨が摩耗して、骨が変形することがあります。骨の変形により「口を開けるときに痛む」などの明確な症状が出ていれば、治療の対象になるでしょう。以上から、4型顎関節症は「顎が鳴る場合もある顎関節症」です。

3.咀嚼筋障害(1型顎関節症)

顎関節を動かしている筋肉を「咀嚼筋(そしゃくきん)」といいます。咀嚼筋にコリ・痛みが出ていると、「痛みで、口を開けるが困難になる」といった症状をきたす場合があります。あくまでも筋肉の問題なので、関節が鳴ることはありません。1型顎関節症は「顎が鳴らない顎関節症」です。

4.顎関節痛障害(2型顎関節症)

顎関節の「靱帯(じんたい)」「関節包」が損傷している状態を、「顎関節痛障害」と呼びます。口を開けるときだけでなく、「口を閉じるとき」「食べ物を噛むとき」など、さまざまな動きで痛みを感じます。損傷がひどい場合、何もしていないときに自発痛が出る場合もあるほどです。

軟組織の損傷であり、骨・関節の問題ではありませんから、やはり音はしません。2型顎関節症もまた、「顎が鳴らない顎関節症」になります。

5.顎関節症の一般的な治療法は…?

世間一般では顎関節症の治療を「噛み合わせ治療」と呼ぶことがあるせいか、「顎関節症は歯列矯正で治る」と誤解している人も多いようです。そこで、この章では「顎関節症の一般的治療法」を確認することにしましょう。

5-1 スプリント療法

「歯ぎしり」「食いしばり」「TCH(歯列接触癖)」などによるダメージが蓄積すると、顎関節症を起こすことがあります。TCHというのは、「日常的に上下の歯を噛み合わせる癖」のことです。「日常的に上下の歯が接触している」というだけでも、顎関節には大きな負担がかかってしまいます。

そこで、「顎関節にかかる力を吸収・分散する」という治療方針が成立します。マウスピースを装着して、「歯ぎしり」「食いしばり」「TCH」の負担を低減するわけです。「スプリント」と呼ばれるマウスピースを用いることから、スプリント療法と呼ばれています。

5-2 マイオモニター療法

電圧11~12Vの低周波パルスを5ミリセカンド(0.005秒)だけ発生する装置―マイオモニターを用いた治療法です。筋肉の緊張を緩和し、咀嚼筋のコリ・痛みに起因する問題を緩和します。

筋肉の緊張をほぐす…という方法なので、「1型・2型の顎関節症」に用いられるのが普通です。要するに、「顎が鳴らないタイプの顎関節症」に奏効する治療法です。

5-3 関節腔洗浄療法

関節に存在する「骨同士の隙間」を「関節腔」と呼んでいます。関節に起因する顎関節症の場合、関節腔に血液・炎症物質が溜まる傾向にあります。そこで、関節腔に注射針を刺し、そこから生理食塩水を注入して内部を洗浄するのです。注入した生理食塩水は、もう1本の注射針から排出します。

こうして、関節腔に溜まった血液・炎症物質を洗い流すと、痛みなどの症状が緩和する傾向にあります。「3型・4型の顎関節症」に用いられる治療法なので、「顎が鳴る顎関節症」に効果的な治療法です。

5-4 パンピングマニピュレーション

まずは、関節腔洗浄療法と同じように関節腔を洗浄します。その後、注射器のシリンジを操作して関節腔内部に圧力をかけ、関節円板の位置を動かします。ずれた関節円板を、元の位置に戻すわけです。

「3型顎関節症」のうち、関節円板が戻らないほどに悪化した症例(非復位性関節円板転位)に用いられる治療法です。

6.まとめ

顎関節症には「顎が鳴る症例」と「音のしない症例」が存在します。ただ、顎関節症の7割ほどが「3型顎関節症(関節円板障害)」なので、たいていの患者さんは「顎が鳴るタイプの顎関節症」ということになります。口を開けるときに音が鳴るなら、3型の顎関節症予備群ですから、「もし、口がきちんと開かなくなったら、すぐに歯科・歯科口腔外科を受診するべきだ」と頭に入れておきましょう。

高村歯科医院_顎が鳴る

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