顎が外れることを「顎の脱臼」と言いますが、日常生活で自分や身近な人が経験することはあまりないでしょう。この記事では、顎の脱臼についての説明、その対処法や予防法について詳しくご紹介します。
この記事の目次
顎が外れたときの治し方
突然顎が外れた場合、自分で治そうとせず、できるだけ早く歯科口腔外科を受診しましょう。この記事では、すぐに病院に行けない場合の対処法もご紹介します。
歯科口腔外科を受診する
突然顎が外れた場合、慌てて自分で戻そうとする人もいるかもしれません。しかし、自力で戻すのは難しいため、すぐに病院に行くのが最善です。歯科口腔外科は、一般の歯科だけでなく、口内や唇、頬などの口周辺、顎や顔面に関わる幅広い疾患を扱う診療分野で、顎関節のさまざまな疾患にも対応しています。
すぐに病院に行けない場合
自分で治すのはあまり望ましくありませんが、すぐに治療を受けられないこともあるでしょう。そんな場合に備えて、自分で治す方法をご紹介します。ただし、他に選択肢がない場合の参考としてお読みください。
自分で戻す方法
顎が外れた状態とは、下顎頭が過剰に前にスライドして引っかかり、元に戻らない状態です。そのため、ただ後方に戻そうとしても上手くいきません。外れた顎を戻すには、下顎を下に引き下げながら後方に戻すことがポイントです。以下の手順を参考にしてください。
ステップ①
両手で下顎をしっかり持つ
ステップ②
下に強く引き下げる
ステップ③
下顎を下げたまま後方に押し戻す
この方法を試す際は、慎重に行ってください。
患部を冷やす
自分で顎を戻した後も、顎関節が炎症を起こす可能性があります。耳の下の顎関節部分を冷やしたり、市販の消炎鎮痛薬を服用しましょう。素人では顎が元の位置にしっかり戻ったかを確認するのは難しいため、大丈夫だと思っても、必ず病院を受診してください。
「顎が外れる」ってどういうこと?
顎の関節が外れている状態のこと
顎が外れた状態とは、顎の関節が外れて口が閉じなくなることを指します。医療用語では「顎関節脱臼」と呼ばれます。あくびなどで大きく口を開けた際に外れることが多く、歯科治療中にも発生することがあります。
顎関節の状態
正常な顎関節の動きでは、下顎の下顎頭(関節を構成する顎骨の突起部分)が口を開けたときに少し前方にスライドします。耳の下あたりに触れると、その動きがわかります。大きく口を開けた際に、この下顎頭が大きく前方にスライドしてしまうと、引っかかって元に戻らなくなります。
顎が外れたときの症状
主な症状は、開いた口を自力で閉じられなくなることです。これに関連して、顔が面長に伸びた状態になり、口が閉じられないため唾液が垂れてしまいます。顎を正しく動かせないので、発音がうまくできなくなります。また、顎関節が引っ張られるため、顎の筋肉が緊張して痛みを伴います。
顎が外れる原因
あくびや食事で口を大きく開けたときや、歯科治療中に顎が外れることがあります。咀嚼筋(顎を動かす筋肉)の筋力が低下していたり、顎関節症がある方は特に外れやすく、一度外れると癖になって習慣性になることもあります。
顎が外れないための予防法
顎の脱臼は、ぎっくり腰のようにちょっとしたきっかけで突然起こることがあります。しかし、いきなり外れるわけではなく、日頃から顎関節に負担をかけないようにすることで予防できます。ここでは、顎が外れないための予防法をご紹介します。
頬杖やうつ伏せ寝を避ける
頬杖やうつ伏せ寝が習慣化すると、顎関節に大きな負担がかかります。些細な癖のようですが、積み重なると顎に大きな歪みが生じます。
姿勢を正す
顎の筋肉は、咀嚼だけでなく、首の筋肉とともに頭を支える役割もあります。猫背で顎が前に出るような姿勢では、常に顎の筋肉に負担がかかってしまいます。
顎を動かすストレッチを行う
口を開けられる範囲で開けたり、下顎を前に突き出したり、引っ込めたり、左右にずらしたりする運動を、それぞれ15秒程度行います。これにより、顎関節の歪みを取り、関節の動きを良好に保つ効果があります。
過度なストレスを避ける
ストレスによって無意識に食いしばったり、何もしない時でも歯が接触している状態は、顎が常に緊張してしまいます。過度のストレスは避けるようにしましょう。
まとめ
口を大きく開けすぎた際に顎が外れることがありますが、日頃から顎に負担をかけたり、小さな歪みを放置していることが潜在的な要因となります。また、顎に負担のかかる生活習慣があると顎関節症になりやすく、普段から顎がずれていると、思わぬ拍子に外れてしまうことがあります。
頬杖やうつ伏せ寝などの悪い癖を改め、顎関節をストレッチしてほぐすなど、顎への負担や歪みを蓄積しないように心がけましょう。万一、顎が外れてしまった場合は、自分で戻そうとせず、速やかに歯科口腔外科で治療を受けてください。
2005年 東京歯科大学卒業
2005年~ ドルフィン歯科(千葉県佐倉市)勤務
2007年 駿河台下デンタルオフィス開業(東京都千代田区)
2008年 アイボリー歯科クリニック開業(東京都八王子市)
2010年 医療法人社団パーフェクトスマイル設立
2014年 三鷹駅前デンタルオフィス開業(東京都三鷹市)
2016年 荻窪駅前デンタルオフィス開業(東京都杉並区)
現在に至る

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