【教授に聞く】親知らずを4本同時に抜歯!全身麻酔を使って“眠っているうちに治療”

親知らずを4本同時に抜歯する方法があることをご存じですか? 全身麻酔を使用することで、眠っているうちに抜いてしまうという治療方法です。

東京医科歯科大学・丸川恵理子(まるかわえりこ)先生にお話を伺い、どういった方がこの治療方法を選ばれるのか、治療時間はどのくらいで済むのかなど解説していただきました。

※前回の記事「インプラント埋入のため骨のボリュームをアップ!サイナスリフト手術の方法を解説

この記事の目次

どのような方向けの治療なのか、時間はどのくらいかかるのか?

歯の教科書 編集部

どういった患者さんが、全身麻酔を使用しての親知らずの4本同時抜歯を希望されるのでしょうか?

丸川恵理子先生

子供のころに歯科医療が“トラウマ”になってしまっているという方が多いですね。

やはりそういった方ですと、怖い思いをしないで気づかないうちに、1回で治療を終わらせたいと希望されます。

ほかには、時間がなくて何回も通うことができないから1回で終わらせたいと希望される方もいますよ。ただし、糸を取るために来ることにはなります。

歯の教科書 編集部

親知らずを4本抜歯するには、どのくらいの時間がかかるのでしょうか?

丸川恵理子先生

下に生えている親知らずを抜くのが大変なんです。1本につき30分から1時間くらい、複雑な症例だと1時間半以上かかる場合もあります。

ですから、下に生えた親知らずを2本抜くのに、1~3時間以上もかかってしまうというケースもあるんです。

上に生えている親知らずは、“おまけ”みたいな感じですね。1本、5分ほどで抜けてしまいますから、あまり治療時間にはカウントしていません。ただし、まれに1時間程度かかる場合もあります。

治療は保険適用で受けられるのか

歯の教科書 編集部

全身麻酔を使っての抜歯は、保険適用で受けられるのですか?

丸川恵理子先生

矯正目的以外は保険適応されます。ちなみに2時間以上かかる、歯科治療恐怖症がある場合が全身麻酔になるおよその基準です。

1時間程度はそのまま行い、1〜2時間の間が静脈麻酔で行う場合が多いです。

メリット・デメリットを解説

歯の教科書 編集部

4本同時に抜歯をするメリット・デメリットについて教えてください。

丸川恵理子先生

治療恐怖症の方でも、眠っているうちに親知らずを抜くことができるのがメリットです。下の親知らずを抜くために「1時間も口を開けているなんで無理です」という怖がりの方もいらっしゃいますからね。

デメリットとしては、4本同時に抜歯をするわけですから、1週間くらいでしょうか、食事を取りづらいです。また保険適用ではありますが、全身麻酔を受けられるかどうかの検査や、全身麻酔費、入院費と費用の負担は大きいですね。

歯の教科書 編集部まとめ

親知らずを4本同時に抜歯してしまうという治療は、全身麻酔を用いることで恐怖症の方でも1日で終えることができます。また、時間がなかなか取れないというかたも受けることが可能です。

ただし、4本同時に抜いてしまうということで、しばらく食事を取りづらくなるデメリットも含んでいます。ほかにも、入院をすることで治療費の負担が増えてしまう点なども考慮する必要があります。

東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科
口腔再生再建学
丸川恵理子教授監修
経歴・プロフィール

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 口腔再生再建学 教授

1997年3月:東京医科歯科大学歯学部 卒業
2000年2-3月:ドイツFreiburg大学顎顔面外科 留学
2000年3月:東京医科歯科大学大学院歯学研究科博士課程 修了
2000年4月:東京医科歯科大学歯学部附属病院口腔外科 医員
2002年4月:日本学術振興会 特別研究員
2004年8月:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎口腔外科学分野 助教
2013年4月:東京医科歯科大学歯学部附属病院口腔外科 講師
2014年6-8月:ドイツFreiburg大学顎顔面外科 留学
2017年4月:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎口腔外科学分野 准教授
2019年4月:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面外科学分野 准教授
2021年8月:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔再生再建学 教授    
現在に至る

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執筆者:歯の教科書 編集部

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