【教授に聞く】歯周病予防に大切なこと!歯磨きの順番や磨き方のコツを解説

歯周病予防に大切なことを、日本歯科大学生命歯学部・沼部幸博(ぬまべゆきひろ)教授に教えていただきます。

沼部教授には、歯磨きの際にスタートとゴールを決める重要さや、歯ブラシの握り方のコツなどを解説していただきました。

また、自分自身で行う口腔ケアのポイントや、歯科医師や歯科衛生士に任せてほしいポイントなども紹介します。

※前回の記事「壊れた歯茎や骨を修復させる“歯周組織再生療法”とは?根本から治すことは可能なのか

この記事の目次

“一筆書き法”という磨き方と“ペングリップ”という握り方

歯の教科書 編集部

歯周病予防のために大切なことは何でしょうか?

沼部幸博教授

歯周病の予防は、プラークコントロール、すなわち歯磨きにつきますね。

たとえ毎日磨いていても、しっかりと磨けていないと意味がないので、自分に合った歯ブラシを歯科医院で選んでいただき、正しい順番で歯を磨けるようにしてください。

そのために、“一筆書き法”という磨き方を推奨しています。例えば、右上の奥歯から歯磨きをスタートさせる場合、右上奥歯のほっぺた側を前歯に向かいゆっくり磨いていって、さらに左上の奥歯へと歯ブラシを動かし、ほっぺた側で一番左奥の歯まで辿りついたら、次にその歯の内側の部分(歯の裏側)に歯ブラシを当て直し、内側を同じように前歯に向かいゆっくり磨きながら動かして行き、スタートした右上奥歯の内側を目指します。

上の歯を磨き終わったら次は下の歯へと移ります。同じように右下の奥歯のほっぺた側から前歯に向かいゆっくり磨き進めて、反対側、左下奥歯を目指します。その後、左下奥歯の舌のある内側の部分を順番に磨いて行き、右下の奥歯の舌側でゴールという流れです。

最後は、上の歯と舌の歯の噛む面を順番に丁寧に磨いて下さい。

わかりやすく説明しますと、スタートとゴールを決めておいて、道草をしないように順番に歯の表と裏、噛む側を磨いていきましょうという方法です。

一筆書き法を推奨する理由としては、毎日、歯磨きを行っていても、痛い部分とか気持ち悪い箇所というのは、どうしても無意識のうちに避けてしまうものなんですね。ですが、この磨き方によって、そういうところも避けないで磨かなければいけないので、磨き残しを減らすことができるんです。

歯の教科書 編集部

磨き方のこつなどはありますでしょうか?

沼部幸博教授

歯ブラシの持ち方を“ペングリップ”にするといいですね。なぜかというと、字を書くときのように歯に当てる角度や力、動かし方をコントロールできるからです。毛先を正しく汚れに当てることができるようになりますよ。

日々のケア以外に重要な、かかりつけの歯医者さん

歯の教科書 編集部

“一筆書き法”や“ペングリップ”を実践するほかに大切なことはありますか?

沼部幸博教授

うまく歯磨きができるようになっても、慣れてきてしまうと油断も生じ、スキルが徐々に落ちていくことがあります。そして、磨き残しができやすくなってしまう。なので、やはり定期的に歯医者さんに通っていただき、歯や歯茎の状態と合わせて、磨き残しのチェックをしてもらうことが大切ですね。

また、歯科医院では変化する患者さんのお口の中に合った歯ブラシや補助清掃器具を教えてくれます。さらに、チェックを受けた際の歯の磨き方の状態のデータを残しておいてくれるので、次に行ったときに、どう変化しているのかを確認して、現状に合わせた指導をしてくれます。そのため、かかりつけの歯科医院を持っておくということは必要なことですね。

正しいケアは、患者さんと歯医者さんの2人3脚

歯の教科書 編集部

歯ブラシのかたさ、形などは、どのように選んだ方がいいでしょうか?

沼部幸博教授

炎症のある歯茎は、かたい歯ブラシだと傷ついてしまうので、最初はやわらかい歯ブラシを使っていただくのがいいですね。しばらくやわらかい歯ブラシで磨いてもらって、炎症が治まってきたら、ふつうのかたさの毛にしたり、かためにしたりという段階を踏んでもらえればと思います。

そこで毛先の形は、あまり気にしなくてもよいのではないかと思います。それよりも、歯ブラシの毛先が磨くべき箇所に、ちゃんと当たっているかを確認することが大切ですね。

細い毛先が歯周ポケットに入りやすいという歯ブラシもありますが、入っても1〜2mm程度です。歯周病の患者さんの場合で深くなった歯周ポケットの汚れは、歯医者さんに任せてください。

歯の教科書 編集部

歯ブラシのかたさ、形などは、どのように選んだ方がいいでしょうか?

沼部幸博教授

よく患者さんに話すのは、患者さんの担当と歯医者さんの担当は違うんですよということです。どういう意味かといいますと、歯茎から上の部分は患者さん、歯ブラシの毛先の届かない歯茎から下の部分は歯科医師や歯科衛生士が担当ということですね。

健康な歯茎の状態ですと、歯と歯茎の境目の溝の深さは0.5mmから1mmくらいなので、歯ブラシの毛先が中に届きやすいのです。ですが、歯周病になり歯周ポケットの深さが4mmとかになってしまうと、歯ブラシの毛先が届かなくなります。また、歯周病の治療後は歯茎に炎症はなくても、深い部分が残ってしまったりします。ですから、歯科医院に来ていただいて、専門的なクリーニングを受けてもらいたいですね。

歯の教科書 編集部まとめ

歯周病予防で何より大切になってくる歯磨きですが、より良いブラッシングを実現するためには“一筆書き法”と“ペングリップ”を意識することだと学びました。

また、「患者さんの担当と歯医者さんの担当は違う」という教えのもと、歯と歯茎の状態の変化を見逃さないためにも、歯科医院で定期的に見てもらうことが大切ですね。

日本歯科大学 生命歯学部 歯周病学講座
沼部幸博教授監修
経歴・プロフィール

1983年3月:日本歯科大学歯学部卒業
1987年3月:日本歯科大学大学院修了(歯学博士)
1987年4月:日本歯科大学歯学部歯周病学教室 助手
1989年4月:日本歯科大学歯学部歯周病学教室 講師
1989年9月:カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)歯学部 客員講師(〜1991年)
1993年4月:日本歯科大学歯学部歯周病学教室 助教授
2005年6月~:日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座 教授
2018年4月~:日本歯科大学生命歯学部 学部長
現在に至る

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執筆者:歯の教科書 編集部

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