歯茎のぶよぶよは、痛みや出血・口臭も招く!8つの原因と治療法を解説

歯茎のぶよぶよは、痛みや出血・口臭も招く!8つの原因と治療法を解説

歯茎が腫れることは珍しくはありませんが、ぶよぶよの状態にまでなってしまうと、とても不安になると思います。膿や出血、痛みに加えて、口臭を引き起こす原因にもなる上に、多くの場合はお口の中ですでに大きなトラブルが起こっている可能性が高いです。

この記事では、歯茎がぶよぶよになる8つの原因と治療方法を解説しています。歯茎がぶよぶよになっているときにやってはいけないことや強く痛むときの応急処置、予防策についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

この記事の目次

1.歯茎がぶよぶよする8つの原因

1-1 歯周病

歯茎が腫れる原因で、もっとも多いのが歯周病です。そして、歯茎がぶよぶよになる状態は、重度の歯周病の症状である歯槽膿漏になっている可能性が考えられます。この段階になると、歯茎がぶよぶよになるだけでなく口臭や膿が溜まるなどの症状も見られます。

また、歯を支える骨が溶かされるのでグラグラするようになり、最終的には抜け落ちてしまいます。歯周病が恐ろしいのは、腫れや歯磨きによる出血はあっても日常的に痛みが出ることが少ないことです。自覚症状がないまま進行してしまうので、気づいたら歯を失う事態になっていることも多くあります。

1-2 親知らずによる歯茎の炎症

奥歯の歯茎がぶよぶよしている場合は、親知らずが原因で炎症を起こしている可能性があります。親知らずは斜めに生える、一部だけが顔を出すなど細菌が溜まりやすい環境を作り出します。奥歯は歯ブラシが届きにくいため、歯磨きがおろそかになって歯茎が腫れてぶよぶよになる場合があります。

1-3 口内炎

歯茎に口内炎ができることで、ぶよぶよした状態になる場合があります。アフタ性口内炎と呼ばれるもので、ストレスや疲労による免疫力の低下、外傷、ビタミン不足によって白い潰瘍ができます。触ると強い痛みがある場合が多いです。

1-4 エプーリスによる歯肉の増殖

エプーリスは、歯肉腫(しにくしゅ)と呼ばれることもあり、歯茎にできる良性の腫瘤(しゅりゅう)です。腫瘤とは体の中にできるイボやできもののような塊全般のことを言います。痛みはない場合が多いですが、放っておくと歯並びに影響を及ぼすことがあります。合っていない被せ物や歯石の刺激が原因と言われており、歯肉が増殖してぶよぶよした状態になります。

1-5 妊娠性歯肉炎

妊娠中はホルモンバランスの変化によって、歯茎に炎症が起きやすくなります。エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンの分泌が盛んになるので、それらを好む細菌が繁殖します。そのため、お口のケアが不十分だと歯茎の腫れや出血を引き起こします。

1-6 服用している薬の影響

血圧を下げる降圧剤やてんかんの薬は、長期間服用していると歯肉が増殖する副作用を引き起こす可能性があります。

1-7 歯の根の先に膿が溜まっている

歯の根の先に膿が溜まることを歯根嚢胞(しこんのうほう)と言います。この歯根嚢胞によって、歯茎がぶよぶよすることがあります。虫歯が歯の根の先まで進行した場合や、神経を取る治療をした後、細菌が残っていた場合に起こります。

また、過去に神経を取った歯の根に何らかの形で細菌が入ることで、歯根嚢胞になるときもあります。溜まった膿は歯茎にできた穴から排出される場合もあれば、歯茎が大きく腫れる場合もあります。大きく腫れると、神経が残っている歯であれば強い痛みを伴うことが多いです。

1-8 歯の根が割れている

歯の根が割れてしまうと、そこから歯や歯茎、それを支える骨の中に細菌が侵入しやすくなります。それが原因で、歯茎が炎症を起こしてぶよぶよした状態になります。強い痛みや歯がグラグラする症状が見られる場合も多いです。

2.歯茎のぶよぶよを解消するための治療法

2-1 歯周病治療と歯磨きによるセルフケア

歯茎のぶよぶよを治すためには、歯周病を改善する必要があります。そして、歯周病の主な治療方法は、細菌の塊である歯垢(プラーク)をコントロールすることと、歯石の除去の2つです。

歯茎がぶよぶよしているということは、歯周病が進行している可能性が高いのでまずは歯医者さんで診てもらいましょう。症状によってスケーリング、ルートプレーニング、フラップ手術という治療方法で歯石取りを行います。

スケーリング

鉤状の「スケーラー」と呼ばれる器具を使用して、歯茎から上の部分や歯周ポケットの浅いところの目に見える歯石を除去します。軽度の歯周病治療で行われます。

ルートプレーニング

スケーラーの種類の1つである細く鋭利な「キュレット」と呼ばれる器具を使用して、歯周ポケット深くにある歯石を除去します。歯茎の深いところまで器具を入れて歯石を取るので、局所麻酔をすることもあります。中程度の歯周病治療で行われます。

フラップ手術

局所麻酔を行ってから歯茎をメスで切開して、歯の根の周りの歯石や歯周病に感染した歯肉を除去します。歯石を取り終えたら歯茎を縫って、1週間後を目安に抜糸します。重度の歯周病治療で行われます。

歯磨きによるプラークコントロール

歯石を取っても、歯磨きなど普段のケアが十分でないと再び歯垢や歯石が溜まって歯周病は進行してしまいます。そのため、歯医者さんで歯科衛生士による正しい歯磨きの仕方、プラークコントロールの方法を指導してもらうことをおすすめします。

お口の状態や歯磨きの癖は人によって異なります。そのため、一人ひとりに合ったブラッシングの仕方を指導してもらうことで、磨き残しの少ない効率のいい歯磨きが可能となります。歯周病が原因で歯茎がぶよぶよしている場合は、歯医者さんで歯石を除去してもらって、毎日のセルフケアをしっかり行うことで改善できます。

2-2 親知らずの抜歯、抗生剤・鎮痛剤の投与

患部を消毒して、抗生剤や鎮痛剤によって炎症や痛みを鎮めます。その後は親知らずの生え方によって、どういった治療をするのか判断されます。斜めに生えて来ている場合は、歯茎の炎症だけでなく虫歯など大きなトラブルになる可能性も高いです。そのため、抜歯を行うことが多いです。

まっすぐに生えている場合やきれいに生えてくる見込みがある場合は、しっかり歯磨きをすることで改善できる可能性があります。ただし、炎症を繰り返すようなら抜歯する可能性もあります。

2-3 お口の中を清潔にして経過観察

口内炎は1~2週間で自然治癒します。お口の中を清潔に保って、経過を観察しましょう。痛みが強い場合は、歯医者さんで診てもらって軟膏などの薬を処方してもらうことをおすすめします。治らない場合や、お口の中に多くの口内炎ができている場合は、他の病気の可能性が考えられるので、すみやかに歯医者さんで診てもらうようにしてください。

2-4 エプーリスによって増殖した歯肉の切除

エプーリスができた場合は、麻酔をかけてから歯肉の増殖した部分を切除します。

2-5 出産後の経過観察

出産後、ホルモンバランスが落ち着くと歯茎の炎症も治ります。それまでは歯磨きをしっかり行って、炎症の発生と悪化防止に努めましょう。

2-6 服用薬の変更をお医者さんに相談

お医者さんに相談して、薬を変更してもらいましょう。

2-7 膿を排出

大きく腫れて痛みが強い場合は、膿を排出させる必要があるので歯医者さんに行きましょう。歯茎を切開して膿を出すか、歯の上部から穴を空けて膿を排出する通路を作ります。そして、抗生剤と鎮痛剤で炎症を抑えます。炎症が落ち着いたら、歯の根の治療を行います。

神経の入っている根管内の細菌に侵された組織を、先の尖ったやすりのようなファイルと呼ばれる器具で除去します。根管を消毒したら根管貼薬剤を入れて仮封します。根管内の清掃を繰り返して細菌に侵された組織をすべて取り除くことができたら、ゴムのような薬剤をしっかり詰めて、被せ物や詰め物をします。

2-8 根が割れている歯は抜歯

歯の根が割れたときは、基本的に抜歯となることが多いです。炎症が強いときは、まず抗生剤や鎮痛剤で鎮めて、症状が落ち着いてから後日に抜歯を行います。

3.歯茎のぶよぶよに強い痛みがあるときの応急処置

3-1 痛み止めを飲む

強い痛みがある場合は、痛み止めを飲みましょう。市販されているものでも、歯医者さんで処方してもらう痛み止めの成分に近いものがあります。30~1時間ほどで効いてきて、痛みが軽減されていくはずです。

3-2 冷やす

冷却シートや濡れタオルで患部を頬側から冷やすことで、痛みを抑えられます。歯茎が腫れている場合は、炎症を起こしている箇所が熱を持っているので冷やすことが有用です。しかし、氷などを使って冷やしすぎると、かえって痛みが増す場合があるので気をつけてください。

3-3 お口の中を清潔にする

歯茎の炎症は細菌に感染して起きている場合が多いので、お口の中を清潔にすることが大事です。痛みが少ない場合は、柔らかい歯ブラシで患部付近も優しくしっかり歯磨きをしましょう。また、刺激の少ない殺菌作用のあるうがい薬でうがいをするのも有用です。お口の中を清潔にすることで、歯茎の腫れが軽くなる場合もあります。

3-4 休養と栄養を取る

歯茎の腫れは、寝不足や疲労、病気などで免疫力が下がっているときに発生しやすいです。そのため、食事と睡眠をしっかり取って体力を取り戻すように努めてください。免疫力を取り戻せば、体の壊された組織を修復する力も活発になります。

4.歯茎がぶよぶよしているときのNG行動

4-1 歯茎のぶよぶよを意図的に潰す

歯茎の腫れや膿は潰したくなってしまいますが、細菌が入って悪化してしまうこともあるので、意図的に行うのは避けましょう。特に指で潰すと雑菌が傷口に入る可能性も高くなります。ただし、お口を清潔に保つことが重要なので、歯磨きはしっかり行いましょう。患部に細菌が溜まって悪化するのがとくに怖いので、歯磨き中の出血はある程度仕方ないです。

4-2 固い歯ブラシで力を入れて磨く

歯磨きによって歯茎のぶよぶよが潰れて、出血するのは仕方ないと言ってもできるだけ優しく丁寧にブラッシングすることが大事です。鉛筆を握るように歯ブラシを持つ「ペングリップ」の握り方なら、力が入りすぎないのでおすすめです。また、固い歯ブラシは避けて柔らかいものを使うようにしましょう。

4-3 運動・熱いお風呂

炎症部分は熱を持っているので、体を温めて血流がよくなると痛みが増します。運動を控えるのはもちろん、お風呂はぬるいお湯につかるか、シャワーで済ませるようにしましょう。

4-4 飲酒・喫煙

アルコールは血管を拡張する作用があるので、血流が良くなります。そのため、運動やお風呂と同じように痛みを増す原因となります。逆にタバコは血管を収縮させる作用があります。しかし、血流が悪くなりすぎると患部に送られる血液が減って、歯茎の修復が遅れることになります。

5.歯茎のぶよぶよ予防策

5-1 正しい歯磨きを行う

歯茎の腫れやぶよぶよの原因の多数は、口内環境の悪化です。そのため、お口の中を清潔に保つことが大きな予防策となります。そのためには、毎日の歯磨きが重要です。特に歯周ポケット(歯と歯茎の間)に溜まった歯垢が、炎症を引き起こすことが多いです。

45度の角度で歯ブラシを当てて、歯垢を掻き出すイメージで軽い力で横に小刻みに磨くようにしましょう。また、鏡で歯茎をチェックして腫れや赤みがあるようなら、β-グリチルレチン酸やTXA(トラネキサム酸)などの、抗炎症作用のある成分が含まれる歯磨き粉を使うのもおすすめです。

5-2 デンタルフロスや歯間ブラシを使う

歯周ポケットのほかに、歯と歯の間にも歯垢が溜まりやすいです。この部分は歯磨きだけではケアしきれないので、デンタルフロスや歯間ブラシを使ってきれいにしましょう。デンタルグッズを活用することで、歯茎の腫れの原因となる歯周病を予防できます。

5-3 規則正しい生活をする

前述したように歯茎の腫れは、体力の低下やストレスなどで免疫力が落ちているときにできやすいです。不規則な生活をしていると、寝不足や病気などの問題を引き起こします。規則正しい生活と適度な運動を心がけるようにしましょう。特に睡眠と食事をしっかり取ることが大事です。

5-4 歯医者さんで定期検診を受ける

歯磨きやデンタルグッズを使ったセルフケアでは取り切れない歯垢や歯石は、歯医者さんで定期的にきれいにしてもらいましょう。歯茎がぶよぶよになるまで腫れている状態は、重度の歯周病や虫歯、歯の根割れなど大きなトラブルが起こっているケースも考えられます。そんな深刻な事態を避けるために、定期検診を受けてお口と歯を守るようにしましょう。

6.まとめ

歯茎がぶよぶよ状態になっているのは、ほとんどの場合歯周病が原因です。歯周病でないケースでも歯根嚢胞や歯の根割れ、エプーリスなど歯医者さんでの治療が必要な場合が多いです。膿や出血、痛みに口臭を引き起こす原因にもなるので、歯茎がぶよぶよしているのに気づいたら、1度歯医者さんを受診するようにしましょう。

先生からのコメント

やはり基本は歯ブラシなどを使った予防ですね。口腔内を清潔にすることです。いつも通っている歯医者さんで定期健診を受けてみましょう!

医院情報
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電話:03-3601-7051
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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