入れ歯の費用や種類、性能…治療に向けて知っておきたいポイント

入れ歯の費用や種類、性能…治療に向けて知っておきたいポイント

入れ歯はインプラントやブリッジよりも安価な分“美しさや性能が劣る”というイメージがあるかもしれません。入れ歯は保険適用かそうでないかで、費用や性能に大きく差が出ます。

入れ歯治療を受けるか悩んでいる人のために、入れ歯の性質や費用、選ぶときのポイントについて詳しく説明します。自由診療(保険適用外)は歯医者さんによって対応範囲や金額設定が異なります。詳細は、通っている歯医者さんで確認しましょう。

この記事の目次

1.「保険適用内」「保険適用外」入れ歯の費用と特徴

入れ歯には「保険適用内」と「保険適用外」があります。
治療内容や使用する素材が異なるため、かかる費用、性能が異なります。

どちらのパターンで治療するかは医師としっかり相談し、納得できる入れ歯選びをすることが大切です。

1-1 保険適用内で作製する入れ歯の費用の相場

入れ歯の種類には、歯をすべて失った場合におこなう「総入れ歯」、残った歯を利用して固定させる「部分入れ歯」があります。

保険適用内で入れ歯を作製する場合、決まった素材の中から組み合わせます。
保険でできるものは条件が細かく決まっています。

総入れ歯の費用は『1万円~』、部分入れ歯の費用は『5千円~』というのが相場となっています。

なお、入れ歯は作製したあと、6カ月間は作り直しができないことになっています。
もし6カ月の間に紛失してしまった場合は、保険適用外で作り直すことになってしまうので注意しましょう。

これは、制限を設けることで医療費の膨大を防ぐという目的があるからです。

ただし、壊れてしまったり、合わなくなってしまったりした場合の作り直しについては、6カ月以内でも保険が適用される可能性があります。

入れ歯を保険適用でする大きなメリットは、なんといっても価格面です。
ある程度の厚みをもって出来上がるため、強度もあります。

しかし、それにより食事の際に熱を感じにくくなってしまう場合や、安定性がないというデメリットもあります。

■保険適用内の入れ歯治療

総入れ歯 費用目安:10,000~16,000円(上下別)

歯が1本も残っていない場合は総入れ歯になります。
ピンクの樹脂に人工の歯を付けたものです。

歯肉部分はレジンという硬めのプラスチック素材か、スルフォン樹脂という弾力性のあるプラスチック素材になっています。

人工歯部分は、レジンやスルフォン樹脂、レジンをさらに強化した硬化レジンが使用できます。
素材によっては保険適用できなくなってしまうので、事前に歯医者さんに確認しましょう。

部分入れ歯 費用目安:5,000~20,000円(上下別)

部分的に歯がない場合に、「クラスプ」と呼ばれる金属の留め具を両側の歯に引っ掛けて固定させる入れ歯です。

クラスプの素材は、金銀パラジウムやニッケルクロム合金、鋼などがあります。
金属アレルギーなどがある人は注意が必要です。

■保険適用内の入れ歯の構造

「総入れ歯」と「部分入れ歯」は以下のイラストのような構造となっています。
どちらも「義歯床(ぎししょう)」と呼ばれる“歯茎”の部分が「プラスチック」になっています。

総入れ歯の場合は、歯肉(歯槽堤)の部分と吸着させます。
部分入れ歯の場合は、人工歯と歯茎と同じ色の義歯床に金属の留め具を付けたものを、残っている歯に固定させる構造になっています。

総入れ歯総入れ歯

部分入れ歯部分入れ歯

1-2 保険適用外で作製する入れ歯の費用の相場

保険適用外でおこなう入れ歯治療の場合、入れ歯の性能は保険適用内のものよりもグンとアップします。
それにともない、費用も高価になってきます。

材質の種類が豊富にあるので、見た目や噛み心地など、自分がどの部分を重視するかにより、合ったものを選ぶことができます。

保険適用外の総入れ歯は、“歯茎”の部分にあたる義歯床に金属やシリコンを使用します。
そうすることで、プラスチック素材を使用した保険適用内の義歯床に比べ、噛んだときの違和感が少ない、食事の際に熱を感じやすくなるといった利点が生まれます。

部分入れ歯の場合、金属のため目立っていた留め具の部分を「白いプラスチック」にすることで目立ちにくくなり、装着したときの違和感も軽減できる利点があります。

■保険適用外の「総入れ歯」の性能と費用

金属床
ゴールドプレート
費用:50~70万円
装着したときの適合性に優れ、変色も起きない
チタンプレート
費用:25~42万円
適合性に優れ、軽くてアレルギー反応も起こしにくい
チタンキャストプレート
費用:30~40万円
軽い素材のチタンであるため、装着時の違和感も少ない
コバルトクロムプレート
費用:15~30万円
薄いつくりのため、熱も伝わりやすくなっている
白金加金(合金にプラチナを混ぜたもの)
費用:85~130万円
味覚を変化させない、生体になじみやすい素材でよく噛める
トルティッシュプレート
費用:27~30万円
金属プレートがメッシュ状になっていて、より温度や味覚を感じやすい
シリコン床
シリコン
費用:13~20万円
薄くて軟らかいシリコン素材のため、歯茎にしっかり装着できる。
コンフォート
費用:20~26万円
クッション性に優れ、歯茎への負担を減らしてくれる「生体用シリコン」を使用。フィット感があり外れにくい

■保険適用外の「部分入れ歯」その性能と費用

本数や素材で費用は変わります。

金属床(ゴールド、チタン、コバルトクロム、白金加金など)
費用:15~45万円
床が金属になっている部分入れ歯。舌の動きを邪魔せず、汚れがつきにくいので衛生的
コーヌステレスコープ(セラミック)
費用:50~170万円
残っている歯に金属を被せ、その上から入れ歯を装着させる二重構造。留め具がない入れ歯
ノンクラスプデンチャー(スーパーポリアミドナイロン樹脂)
費用:18~21万円
特殊加工をしているため装着時に痛みを感じず、金具を使わないので見た目の良さも優れている
ホワイトクラスプ(プラスチック)
費用:2~3万円
金属の留め具(クラスプ)を使わずに、「白いプラスチック」で留める入れ歯
マグフィットデンチャー(磁石)
費用:33~40万円
入れ歯と残っている歯の両方に「マグネット」を取り付け、強力な磁力で入れ歯を固定する。義歯の費用以外に3~5万円かかるイメージ

2.こんな入れ歯もある!機能性・費用を紹介

第1章では、さまざまな種類や費用の入れ歯を紹介しました。
この章では、飲み物の味をしっかり味わうことができる機能性の高い入れ歯や、自然な笑顔になりやすい入れ歯などを紹介します。

2-1 テレスコープ義歯

■しっかりフィット!見た目も気にならない

テレスコープ義歯の特徴

テレスコープ義歯は部分入れ歯で、残っている歯に金属の冠を被せ、その上に入れ歯を装着する二重構造になっています。

しっかりフィットし、多少の衝撃ではガタつくこともなくしっかり噛めるうえ、金属の留め具(クラスプ)もないので見た目も気になりません。

装着したまま就寝でき、自分で着脱できるのでお手入れがしやすいです。

デメリットとしては、残っている土台の歯に金属の冠を被せる際、歯を削らないといけない、という点です。
また、入れ歯を外すと内側に被せた冠が見えて銀色が目立つ、ということが挙げられます。

こんな人におすすめ!気になる費用は

テレスコープ義歯は保険適用外になります。
必要な本数にもよりますが、2本入れる場合で54~75万円ほどが相場です。

作製にはかなりの技術力が必要になりますが、食事で歯ごたえを楽しみたい!なるべく歯を残したい!と考えている人におすすめの方法です。

2-2 トルティッシュプレート

■飲み物の味をしっかり味わえる総入れ歯

トルティッシュプレートの特徴

「多孔質金属(たこうしつきんぞく)メッシュプレート」と言われる特殊合金を使っています。
総入れ歯の中でも、飲み物の味しっかり味わうことができる性質を持つ貴重なものです。

メッシュプレートは、目に見えない小さな穴が空いているため、ビールやサイダーなどの炭酸の刺激や、スープを口にしたときの味を感じ取ることができるのも嬉しいところです。

入れ歯をすると味覚がなくなったという意見の人が多くいます。

人間は舌以外にも、口腔の上壁にあたる口蓋(こうがい)に「味蕾(みらい)」と呼ばれる味を感じ取る器官があります。

トルティッシュプレート以外の総入れ歯では、この口蓋の部分をプラスチックや金属などで覆ってしまうため、味を感じ取る機能を遮ってしまうのです。

こんな人におすすめ!気になる費用は

入れ歯を使うことになっても、今まで通り食事の楽しみを継続したい、という人にちょうど良い入れ歯です。
保険適用外で、費用の相場は27~30万円ほどです。

2-3 ノンクラスプデンチャー

■自然な笑顔が生まれる部分入れ歯

ノンクラスプデンチャーの特徴

入れ歯を使用するほとんどの人が抱くのは、口を開けたときに入れ歯だと気付かれたくないという思いだと言います。
部分入れ歯の場合、金属の留め具(クラスプ)を使うことから、入れ歯が目立ってしまうデメリットがありました。

そのデメリットを解消してくれるのが、「ノンクラスプデンチャー」と呼ばれる部分入れ歯です。

留め具の部分は本物の歯茎の色に合わせて作るため目立ちにくく、透明感のあるプラスチックを使うことで軟らかく馴染みやすいとされています。

装着時の違和感が少なく済むというメリットもあり、入れ歯を使用していても自然な笑顔で会話できるのが特徴です。
デメリットとして、耐久性がよくないと言われています。

こんな人におすすめ!気になる費用は

口を開けた際の見た目や、装着時の違和感などが気になる人におすすめです。
自然な見た目の部分入れ歯になります。
費用の相場は10~25万円ほどです。

2-4 インプラント義歯

■なによりも安定感を求めるなら

インプラント義歯の特徴

入れ歯の中でも特殊な手法として「インプラント義歯」があります。
顎の骨に「デンタルインプラント」といわれるネジのようなものを打ち込んで、それを土台にして入れ歯を装着させる治療法です。

このインプラント義歯のことを『オーバーデンチャー』とも呼びます。

入れ歯の中でも噛む力に優れていて、安定性の高いのがインプラント義歯です。
装着時の違和感も少なくて済むことから、自分の本当の歯と同じような感覚で日常生活を送ることができます。

ただし、インプラント義歯は手術が必要ということもあり、患者さんにとって負担になる場合があります。
治療時間は本数によりますが1~2時間程度で、埋め込まれたインプラントと顎の骨がくっつくまで約6カ月かかると言われています。

こんな人におすすめ!気になる費用は

安定性に優れているので、入れ歯を気にせず食事や会話を楽しむことに重点を置いている人、自分の歯と変わらない感触を求めている人におすすめです。

インプラント義歯は、本数や材質、治療方法などで費用が大きく変わります。
たとえばインプラント2~4本で総入れ歯を装着する場合60~100万円ほど、インプラント4本で固定性の人工歯を12本装着する場合は200万円超が見込まれます。

インプラント義歯インプラント義歯

3.入れ歯の費用を医療費控除制度やデンタルローンで

保険適用外の入れ歯を作製する際は、多額の費用が必要になってしまいます。
費用の負担を軽減できる医療費控除制度や、分割払いが可能なデンタルローンを利用するといった方法もあります。

3-1 医療費控除制度について

医療費控除制度は、年間の医療費の合計が10万円を超えた場合、あるいはその年の所得の合計が200万円未満の人は総所得の5%を超えた場合に利用できる制度です。

超えた分の医療費や所得の額に応じて、その年の住民税、所得税などから一定金額が控除されるというものです。

保険診療・自由診療どちらでも申請できるほか、扶養家族内であれば全員で合計して申請することも可能です。

確定申告の際に申請できるので、領収書をしっかりと保管しておきましょう。

3-2 デンタルローンについて

デンタルローンは、入れ歯やインプラントなどに使えるローンです。

ローンなので、銀行や信販会社の審査が必要になりますが、銀行への来店は不要で、専業主婦でも申し込みが可能などいろいろな特徴があります。

プランも銀行や会社などによりさまざまなものが用意されているので、まずは歯医者さんと相談することをおすすめします。

4.入れ歯、ブリッジ、インプラントの費用と特徴

入れ歯治療とよく比較されるのが「ブリッジ」や「インプラント」です。
この二つの費用の相場と特徴についてこれから紹介します。

4-1 ブリッジ:抜けた歯の両隣の歯が健康であること

ブリッジは、抜けてしまった歯の両隣の歯を削って“橋渡し”をする治療法です。

基本的には、抜けてしまった歯の両隣の歯が健康でなければブリッジを選択することはできません。
健康な歯を削るというデメリットがありますが、保険適用内で治療が可能なケースであれば、費用は約1~2万円程度と言われています(3割負担の場合)。

機能性や見た目を重視し、保険適用外の素材を使用する場合は、1本あたり8~18万円程度と負担が大きくなります。

4-2 インプラント:性能は高いが外科手術が必要で費用も高額

インプラントは保険適用外が基本(※)であり、費用の相場は1本あたり31万円から50万円程度と言われています。
本物の歯により近い感覚を取り戻したいという人にしてみれば、前向きに検討してみる価値がある治療法です。

しかし、外科手術が必要であり、高額な費用がかかります。
事前にしっかりと調査し、治療の説明や方針に納得できる歯医者さんで治療を受けましょう。

※この記事の「2章」で紹介した「インプラント義歯」の場合では、重い外傷や先天性の病気で歯を失ったなど特定のケースに限り、保険が適用されます。

4-3 外れやすいイメージを払拭した機能性の高い入れ歯も誕生

ブリッジやインプラントに比べ安価なのが入れ歯です。
保険適用内なら総入れ歯でも1万~1万6,000円、部分入れ歯なら5,000~2万円が費用の目安であると紹介しました。

従来、入れ歯は安価だが外れやすいというイメージが定着していましたが、その性能は進化を遂げ、より性質の高いものが生まれています。

インプラントとは違い、入れ歯は手術をおこなわずに治療できるので、治療中の負担を大きく減らすこともできます(ただしインプラント義歯は例外です)。

三つの治療法のうち、費用の面だけで選択するのは難しいかもしれません。
「この先生に治療して欲しい」と思える医師を見つけ、しっかり相談しながら、自分に合った治療のかたちを見つけ出しましょう。

5.まとめ

現代の入れ歯治療にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴や費用などが大きく変わってきます。
保険・自由診療に関わらず、自分が重要視するポイントを考えたうえで選んでみてください。

経歴

2003年 大阪歯科大学 卒業
2003年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 入学
2007年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 終了
2008年 大阪歯科大学 勤務
2016年 大阪歯科大学(歯周病学 助教)退職
2016年 本町通りデンタルクリニック 勤務

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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入れ歯の費用や種類、性能…治療に向けて知っておきたいポイント 2020-03-27T17:16:36+09:00
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