花粉症、食品アレルギー、ハウスダストによる鼻炎など、世の中には多種多様なアレルギーが存在しています。そして、さまざまなアレルギーの1つに「金属アレルギー」と呼ばれる種類があります。
近年、歯科治療に用いられる銀歯の影響で、金属アレルギーを発症するリスクが指摘されるようになりました。歯科治療に起因するアレルギーのことを、特に「歯科金属アレルギー」と呼んでいます。こちらの記事では、「歯科金属アレルギーの症状」と「歯科金属アレルギーの対策方法」を解説しています。
この記事の目次
1.歯科金属アレルギーを引き起こす原因は?
歯科金属アレルギーは、「金属アレルギーのうち、歯科治療で用いられる金属を原因とするもの」を指します。歯科金属アレルギーの原因となるものは主に3つあり、「アマルガム」「金銀パラジウム合金」「メタルコア」です。
1-1 アマルガム
アマルガムというのは、「水銀を使った合金」の総称です。歯科修復材料としてのアマルガムは、「銀とスズの合金に、亜鉛・銅粉末を添加して水銀で練る」という方法で作られる「銀スズアマルガム」です。
詰め物になっているアマルガムは安定しているので、水銀そのものが溶けだす…といった心配はありません。また、詰め物として硬化したアマルガムの水銀含有量は3%以下です。その上、アマルガムに使われているのは、体内に取りこまれにくく毒性の低い「無機水銀」です。水俣病の原因になった有機水銀(塩化メチル水銀)とは性質が異なるので、「水銀=毒物」といった過剰反応をする必要はありません。
とはいえ、アマルガムには金属が含まれているので、金属アレルギーの原因になる確率はあります。「水銀だから危険」というのではなく、「金属アレルギーの原因になる場合がある」という話です。
ちなみに、日本の歯科治療におけるアマルガム使用は、1970年代をピークに減り続けています。現在の歯科治療でアマルガムが使われることはほとんどありません。むしろ、安価であることから、現在は健康保険制度が存在しないアメリカで多用されています。
参照URL:http://www.ousda.jp/cmsdesigner/data/entry/saisin_news/saisin_news.03922.00000002.pdf
1-2 金銀パラジウム合金
金銀パラジウム合金は、世間で「銀歯」と呼ばれている詰め物の材質です。「銀50%程度、パラジウム20%程度、銅15%程度、金12%」の比率を採用した「12%金銀パラジウム合金」が主な銀歯の材料となっています。
頑丈で噛むのに適している反面、銀色で外見的に目立つ…などの欠点を抱えています。また、唾液に溶けだした銀イオンの影響で、歯茎に黒っぽい着色が生じる(メタルタトゥー)などの問題も知られるようになってきました。当然、金属なので歯科金属アレルギーの原因になる場合があります。
1-3 メタルコア
メタルコアは、かぶせ物(クラウン)の土台に使われる銀合金です。基本的には「銀70%前後、亜鉛15%前後、スズ10%前後、インジウム5%前後」の比率になっています。保険診療でかぶせ物を入れる場合、メタルコアを土台にするのが普通です。
銀歯と同様、銀イオンの影響により、歯茎が黒く着色することがあります。また、一定確率で歯科金属アレルギーの要因になるリスクがあることも、近年は問題視される場合があります。
2.歯科金属アレルギーの症状は?
金属アレルギーの原因は、金属から溶けだした金属イオンです。金属イオンが体内のタンパク質を変質させて、アレルゲンに変えてしまいます。特に金属アレルギーを起こしやすい金属はニッケル・クロム・コバルトなどですが、それ以外の金属イオンに対してアレルギー反応を起こす人もいて、一概には言えません。
この章では、「歯科金属アレルギーを起こすと、どのような症状が現れるのか」を確認することにしましょう。
2-1 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
「手のひら」「足の裏」に膿疱(膿の入った水ぶくれ)が生じます。たいてい、両手両足に多数の膿疱が出現します。膿というと、普通は細菌感染を想像しますが、アレルギーによる膿疱は細菌性ではありません。
2-2 扁平苔癬(へんぺいたいせん)
口腔粘膜には網目のような白斑、皮膚には2mm弱の丘疹が生じます。歯科金属アレルギーのほか、ストレス・細菌・ウイルスなどが原因になり得ると考えられています。
2-3 接触皮膚炎
アレルギーの原因物質に触れたとき、湿疹などの炎症を起こします。「原因物質の毒性」と「症状の程度」は比例しません。詰め物を原因とする歯科金属アレルギーの場合、口内炎のような症状が慢性的に現れる傾向にあります。
3.歯科金属アレルギーが疑われるときの対処法
「ひょっとして、金属アレルギーなのでは?」と思ったら、パッチテストを受けてみましょう。皮膚科のほか、一部の歯科医院でもパッチテストを実施しています。また、パッチテストで原因が不明だった場合ですが、ほかに原因となる金属製品が思いつかないのであれば「念のために金属製の歯科修復物・義歯などを外してみる」というのも1つの選択肢です。
ただ、金属製の修復物・義歯を外して、そのままにするわけにもいきません。メタルフリーの修復物・義歯を入れるなどして、きちんと噛む力を維持するようにしましょう。
4.まとめ
歯科金属アレルギーの場合、原因と思われる詰め物・かぶせ物を取りのぞいても、症状が消えるまでに数か月の時間を要します。また、「歯科金属アレルギーかな?」と思って修復物を取りのぞいても、症状が緩和しないこともあります。本当に歯科金属アレルギーかどうかを診断する方法がないからです。先入観で「金属アレルギーだ」と決めつけることは避け、ほかの原因である可能性も含めて、皮膚科・歯科などに相談してみましょう。
そもそも口腔内や人体に用いてよいとされている金属はチタンや金です。貴金属といわれる金属は基本使用不可なのです。この辺は治療費等の問題がある故、担当医と十分ご相談の上治療を検討してください。
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