先天性欠如歯とは?歯が生えてこない場合の対処法まとめ

先天性欠如歯とは?歯が生えてこない場合の対処法まとめ

「子供の永久歯が生えてこない」と悩んでいる方はいらっしゃいませんか? もし、10~11歳頃になっても「一部の永久歯が生えてこない」という場合、ひょっとすると「先天性欠如歯」かもしれません。

先天性欠如は読んで字のごとく「生えてくるべき永久歯が存在しない」という意味です。こちらの記事では「先天性欠如歯に関する基礎知識」に加え、「先天性欠如がある場合の一般的対処法」も解説しています。

この記事の目次

1.先天性欠如は珍しくない!1/10の子供に欠如歯が見られる

親御さんの立場なら、お子さんの永久歯が生えてこないことを心配していることと思います。ただ、ひとまず不安になる必要はありません。先天的欠如そのものは、それほど珍しい例ではないのです。

2010年、日本小児歯科学会が1万5,544名の子供を対象におこなった調査結果によると、先天性欠如が見られた子供は1,568名でした。これは全体の10.09%に相当します。およそ10人に1人の子供に先天性欠如歯が存在するということです。

参照URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspd/48/1/48_29/_pdf

1-1 先天的欠如歯になりやすい歯はどれ?

同じく日本小児歯科学会の調査により、「先天性欠如を起こしやすい歯」の存在が明らかになりました。歯の種別によって「欠如が見られる割合」が大きく異なっていたからです。それでは、歯の種別ごとに「欠如割合」を確認してみましょう。

歯の種別による先天性欠如の発現頻度

上顎中切歯:0.14%
上顎側切歯:2.65%
上顎犬歯:1.04%
上顎第一小臼歯:1.00%
上顎第二小臼歯:2.98%
上顎第一大臼歯:0.23%
上顎第二大臼歯:0.75%
下顎中切歯:1.43%
下顎側切歯:3.81%
下顎犬歯:0.36%
下顎第一小臼歯:0.84%
下顎第二小臼歯:6.10%
下顎第一大臼歯:0.11%
下顎第二大臼歯:0.31%

以上の統計を踏まえると、先天性欠如を起こしやすい順に「下顎第二小臼歯」「下顎側切歯」「上顎第二小臼歯」「上顎側切歯」「下顎中切歯」「上顎犬歯」となります。それ以外は1%を下回っているので、欠損する確率は低い…といえます。

もっとも欠損しやすい下顎第二小臼歯は6.1%ですから、「欠損してもまったく不思議ではない」という認識が正しいとさえ言えるでしょう。

1-2 先天性欠如の原因は…?

乳歯の下には、永久歯のもとになる「歯胚(しはい)」が存在します。先天性欠如歯の場合、歯胚がつくられないままになっているということです。

ただ、「なぜ、歯胚がつくられないのか」に関しては、はっきりしていないのが現状です。「遺伝」「薬の副作用」「母親の胎内にいた頃の栄養不良」などが影響している…と考えられていますが、明確な因果関係が明らかになっているわけではありません。

2.先天性欠如が見られる場合の対処法

それでは、永久歯に先天性欠如があるとわかった場合、どのように対処するのでしょうか? この章では、「先天性欠如に対する一般的対処法」を解説したいと思います。

2-1 可能な限り、乳歯を長持ちさせる!

乳歯が抜けるのは、永久歯が生えてくるからです。永久歯に圧迫されるような形で歯根が溶けていき、徐々にグラグラして抜け落ちます。そのため、永久歯が生えてこない場合、10~11歳を迎えても乳歯が自然に脱落することは(多くの場合)ありません。

となれば、噛む力を維持するため、なるべく乳歯を長持ちさせることが第一目標になります。乳歯は、永久歯と比べてエナメル質が薄く、歯根も短いのが特徴です。何のメンテナンスもしなければ、10代のうちに虫歯になるか、あるいは脱落してしまうでしょう。歯医者さんで定期健診を受け、正しいメンテナンスを受けるようにしてください。

ただ、どれほど綿密に定期健診を受けても、「乳歯を一生使い続ける」というのは非現実的です。たいていは20代後半、どんなに長持ちしても30代半ばくらいには自然と抜け落ちるのが普通です。乳歯の保存は、あくまでも「人工物を入れるまでの時間稼ぎ」であることは否めません。

2-2 歯列矯正をおこなうのも有力な選択肢に!

乳歯が抜けてしまった場合、「欠損部分をどうするか」について考える必要がでてきます。欠損部分をそのままにしておくと、「両隣の歯が傾いてくる」などの問題が生じるからです。放置すると、全体の歯列に悪影響を与える恐れも否定できません。そこで、乳歯があった部分の隙間を埋めるため、「歯列矯正をする」という選択肢が有力になります。

また、乳歯が残せている時期でも、矯正することで隙間をうまく塞げるようなら「あえて乳歯を抜歯し、歯列矯正する方針」もあり得ます。このあたりは、歯医者さんと相談しながら臨機応変に検討してください。

2-3 欠損部分には、補綴(ほてつ)をおこなう場合も!

先天性欠如歯が1本なら、「歯列矯正で隙間を塞ぐ方法」がもっとも便利だと思います。ただ、歯列矯正は自由診療です。中には「保険診療の選択肢を知りたい」という人もいるのではないでしょうか? また、数本連続で先天性欠損歯がある場合、「矯正だけで隙間を塞ぐのが難しい」というケースもあると思います。

そういった場合は、補綴によって噛む力をサポートすることになります。補綴とは、入れ歯・ブリッジ・インプラントなど「人工物で歯を補う治療」を指します。入れ歯・ブリッジならば保険診療も可能なので、ニーズに合わせて歯医者さんと相談してみてください。

3.まとめ

子供の1割に先天性欠損があることを考えると、「永久歯が生えない」というのは誰から見ても他人事ではありません。一定年齢になっても生えてこない歯がある場合、早めに歯医者さんを受診して相談するようにしましょう。

お子さんはきっと、入れ歯には抵抗があると思います。早めに「乳歯をなるべく長く残す方針」で検討をはじめれば、若いうちの補綴を避けることにもつながるはずです。

 

先生からのコメント

歯牙の先天性欠如は将来的に歯列矯正やインプラント治療に移行する可能性が高いため、子供のうちに専門の歯科医院での検査をお受けになることをお勧めいたします。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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