血餅が抜歯の傷口を守る!ドライソケット予防の基礎知識

血餅

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「親知らず」「重度の虫歯」を抜歯すると、傷口に「ゼリー状の血の塊(かたまり)」が現れます。この「ゼリー状の血の塊」が「血餅(けっぺい)」です。

抜歯をした場合、「血餅が外れないように注意することが大事」と言われます。しかし、なぜ血餅がそんなに大切なのでしょうか? こちらの記事では、「血餅を維持する必要性」を主軸に「抜歯した後の注意点」をまとめたいと思います。

1.血餅は何のために存在するのか?

血餅は、赤血球・白血球・血小板などが「フィブリン」と呼ばれるタンパク質の作用で固まったものです。フィブリンは止血のために重要な働きをする繊維状タンパク質で、まわりの血球を捕まえて血餅を形成します。血餅は止血だけでなく、傷口を回復させる働きも担っています。

皮膚であれば、血餅の外側で血液が凝固し、「かさぶた」を形成します。ただ、皮膚の傷口であっても、かさぶたの内側には血餅があり、止血・回復の役割を主に果たしているのは血餅です。かさぶたは、血液が固まったことで生じる副産物に過ぎません。

口腔粘膜の場合、表面が湿潤なので「かさぶた」が形成されません。結果、血餅が傷口の表面を覆った状態になるわけです。

2.どのような歯が、抜歯対象になるのか?

さて、口腔内の血餅は「抜歯した傷口(抜歯窩)」に生じます。そこで、この章では「どのような歯が抜歯になるのか」をまとめることにしましょう。

歯医者さんで抜歯するのは、基本的に「親知らず」「重度の虫歯」です。まずは、親知らずと虫歯のそれぞれについて、「どのような場合に抜歯対象となるのか」を確認してみたいと思います。

2-1 親知らずの場合

世間一般では「親知らず=抜歯」というイメージがありますが、すべての親知らずが抜歯対象になるわけではありません。真っ直ぐ生えてきて、きちんと上下が噛み合っているなら、問題なく歯として機能します。抜歯となるのは、以下のような親知らずです。

不完全埋伏智歯

斜めに生えてきて一部が歯茎に埋まっている場合は、原則抜歯となります。「歯茎に隠れた部分」「隣接する歯との隙間」がうまくブラッシングできず、虫歯・炎症(智歯周囲炎)を起こすからです。

水平埋伏智歯

全部が全部というわけではありませんが、横向きに埋まっている親知らずも、抜歯になることが多いです。水平埋伏智歯は、歯茎を切開して歯を分割しながら抜歯する「水平埋伏智歯抜歯術」が必要になります。

親知らずの虫歯

親知らずは奥に生えているので、もともと適切な歯磨きが困難です。そのため、一度でも虫歯になるようなら、「治療しても、また虫歯になる」と判断する歯科医師も多いです。そのため、「虫歯になっているのであれば、治療せずに抜歯する」という判断になることがあります。

2-2 重度の虫歯になっている場合

虫歯が進行すると、やがて虫歯菌は歯髄(歯の神経)に感染します。すると歯髄炎を起こして、激しい痛みが生じます。これが「C3:歯髄の仮性露出」と呼ばれる段階です。多くの患者さんは、C3の段階になってから歯科医院を訪れます。とはいえ、この段階なら「神経を抜く処置」をすることで歯を保存することが可能です。

問題は、さらに悪化して「神経が死んでしまった虫歯」です。死んでしまった神経は、たいてい腐敗し、液状化して流れ出します。もはや、痛みを感じることはありません。この段階に至った末期虫歯は「C4:残根」と呼ばれます。

神経が死んでしまうと、歯の内部は細菌の巣窟になります。神経の入っていた「歯髄腔」、神経・血管の通り道である「根管」までが汚染され、もはや、歯を救う術はありません。この場合は、抜歯することになります。

3.抜歯した傷口の血餅が外れると…?

さて、親知らず・虫歯を抜歯した場合、傷口には血餅が形成されます。血餅が傷口を保護し、歯茎の修復をうながすわけです。ただ、血餅はかさぶたと違い、貼りついて固まるわけではありません。そのため、物理的要因で外れることがあるのです。

3-1 血餅が外れた傷口は、ドライソケットに…!

血餅が外れた場合、歯を抜いた傷口は「穴があいたままの状態」になります。歯を支える骨―歯槽骨まで直通した穴なので、かなりの痛みを伴います。特に、食べ物・飲み物がドライソケットに入りこむと、骨が直接刺激されて激痛が生じます。

普通、抜歯から2~3日が経過すると痛みがひいてきますが、ドライソケットの場合は2~3日経過した頃に、むしろ痛みが増大します。そして、かなりの痛みが2週間~1か月ほど継続するのです。

3-2 血餅が外れる要因には、どんなものがある?

先述したとおり、血餅が外れる代表的要因は「物理的刺激」です。たとえば、以下のような刺激で血餅が脱落します。

歯ブラシが接触する

歯磨きのとき、抜歯した部位をきちんと避けるようにしてください。特に抜歯の当日・翌日は、「抜歯した歯の周囲を磨かないようにする」くらいの注意が必要です。歯ブラシの毛先が血餅に触れると、血餅の脱落を招くからです。

ブクブクうがいをする

抜歯直後は出血があるので、常に血の味がするなどの不快感があります。そのため、不快感を拭い去ろうとうがいをする人が多いのです。しかし、うがいは「口に水を含んで、吐き出すだけ」にとどめてください。いわゆる「ブクブクうがい」をすると、水圧で血餅が外れることがあります。

舌・指で血餅をいじる

痛み・違和感を気にして、なんとなく傷口をいじってしまう…という人がいますが、絶対にNGです。舌・指などで血餅をいじるのは、血餅が外れるリスクを増やすだけです。

口で吸いこむ動作をする

「ストローで飲み物を飲む」「舌うちをする要領で、吸いこむ動作をする」などは、基本的に避けてください。吸いこむ動作をすると、傷口から血餅を吸い出す恐れがあるからです。

3-3 そもそも血餅が形成されない場合がある…?

ここまで、「血餅が外れる要因」を解説しましたが、中には「そもそも血餅が形成されないケース」が存在します。血餅が形成されなければドライソケットになってしまいますので、抜歯直後は「血餅の形成を妨げる要因」を避けるようにしましょう。

入浴・運動・飲酒

抜歯当日は「バスタブへの入浴」「激しい運動」「飲酒」を避けるようにしてください。血のめぐりが良くなりすぎると、出血量が増えてしまいます。出血量が多すぎると、うまく血が固まらず、血餅が形成できなくなることがあるのです。

経口避妊薬の服用

女性の場合、経口避妊薬(ピル)の服用が、血餅形成を妨げることがあります。経口避妊薬には血管を拡張させる作用があり、出血量を増やす恐れがあるからです。

喫煙

抜歯直後の喫煙もまた、血餅形成を妨げる要因になります。タバコには血管を収縮させて、血のめぐりを悪くする働きがあります。出血量が減りすぎると、今度は「血餅を作るために十分な量の出血」が得られず、やはりドライソケットの原因になります。

抗凝固薬・抗血小板薬(血をサラサラにする薬)の服用

持病などで「血液をサラサラにする薬」を服用していると、血餅が形成されにくくなります。血液が固まりにくくなるので、うまく血餅が作れないわけです。

4.まとめ

抜歯した傷口を塞いでくれる血餅は、傷を治癒させるための重要な働きをしています。血餅が外れたり、形成されなかったりすると、ドライソケットになり、治癒が大幅に遅れてしまいます。抜歯をおこなった場合は、歯科医師から伝えられる「抜歯当日の注意」をきちんと守るようにしましょう。血餅が外れないようにするためにも、しっかり歯科医師の指示を守ることが大切です。

高村歯科医院_血餅

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