歯を食いしばる癖がある人は、歯や歯茎に大きなダメージを与えてしまいます。それだけでなく、顎や身体の一部分にも支障が出る可能性もありますので、悪化しないうちに早めに防止することが大切です。
この記事では、歯の食いしばりを予防するための方法と、食いしばりが招くあらゆる症状についても紹介していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事の目次
1.食いしばりを防ぐ3つの方法とボトックス注射
この章では、歯の食いしばりを防ぐために活用される「マウスピース」の存在に注目します。その他、日頃の生活で自分自身が気を付けることで、食いしばる癖をやめることができるかもしれません。対策を紹介します。
1-1 マウスピースを使った予防法
無意識に食いしばる習慣を「クレンチング」と呼ぶ
歯と歯が1日に接している時間は、食事の際の15~20分間といわれています。普段は「安静空隙(あんせいくうげき)」という1~3mmほどの隙間ができているはずです。
しかし、夜寝るときに無意識に食いしばっていると、その力は強く、しかも長い時間続けることで歯や歯茎がやがて大きな損傷を負うことになります。この悪い習慣を「クレンチング」といいます。
就寝時の食いしばりを「ナイトガード」で予防
就寝時には「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを装着することで、歯や歯茎に受けるダメージを和らげます。
ナイトガードは、歯医者さんで作ってもらうことができ、自分に合った形式のものを作製してくれます。虫歯や歯周病がある方は、治療後に形が合わなくなるのを防ぐために、それらをまずは治療することから始めます。
上顎か下顎のどちらかの型を取って、1~2週間後には自分専用のマウスピースが完成します。最初は違和感を覚える場合がありますが、徐々に慣れていくようにしましょう。基本的には夜間使用するものですが、日中も食いしばりの癖を上手にコントロールできない方は使用しても構いません。
1-2 ストレスを発散させることが大切
歯を食いしばる癖のある人は、ストレスが原因である可能性があります。仕事やプライベートでストレスを抱え込んでしまわないように、適度に発散できる自分なりの何かを見つけましょう。ストレスを緩和させることが、食いしばりをなくす第一の方法である可能性があります。
1-3 認知行動療法
食いしばりをしないようにするため、普段の生活で目のつくところに「食いしばるのをやめる」といった内容の紙やシールを貼って自分に意識させることで、癖を防止する方法があります。これを「認知行動療法」と呼び、自分の思い次第で改善に向かうことができるはずです。
1-4 ボトックス注射(ボツリヌス菌注射)
噛み合わせで使う筋肉の緊張を和らげる注射です。美容外科でも使用され、「ボツリヌストキシン(分子量が約15万個のタンパク質)」を注射していく薬物療法です。顎関節症の症状で「口が開けづらい」方にも適した治療法です。
2.食いしばりが歯や歯茎、身体に及ぼす悪影響
無意識に食いしばる行為をしていると、歯や歯茎に悪影響を及ぼすことになる、とこれまで説明してきました。さらに、お口の中だけでなく、身体にも不具合が生まれてしまうことがあります。この章では、具体的にどんな箇所にどのような事態が発生するのかを解説していきます。
2-1 お口の中や周辺で起きる悪影響
食いしばる行為が頻繁に起こると、歯が欠けてしまったり、割れてしまったりすることがあります。また、歯の治療後に埋めた詰め物や被せものが欠けたり、割れたりするケースがあります。特にセラミック製のものは、縦から強い力が加わることで割れやすくなり、神経が死んでしまった歯は根っこの部分が割れやすく、歯根破折の状態になります。
さらに歯を支えている歯槽骨にも影響を及ぼす可能性があります。歯槽骨に負荷がかかると、歯がグラグラと動揺するケースが起きます。その他、歯の神経部分である歯髄が炎症を起こし、「歯髄炎」となることもあり得ます。
また、食いしばることで顎に負担がかかって、顎関節症を招く原因となる可能性も考えられます。
2-2 身体に及ぼす悪影響
食いしばる行為は、側頭筋や咬筋といった筋肉に悪影響を起こし、頭痛や肩こり、首のこりを引き起こす可能性があります。口周りの筋肉は、肩や首とつながっていることが多いため、このような症状が生まれます。食いしばりが原因であったことに気づかずないと、長い間、肩や首の痛みに悩まされることになってしまいます。
3.まとめ
日頃のストレスが引き金となって、歯を食いしばる行為を無意識に行うようになってしまいます。食いしばりが気になっていたとしたら、まずは心のリフレッシュから初めてみると良いかもしれません。ストレスを発散させることは身体にも大切なことです。
また、歯や歯茎へのダメージを悪化させないため、「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを就寝時にはめることも大事です。自分で意識して、食いしばる癖を予防し、改善する努力が必要です。
ボトックス注射は、ほとんどの歯科医院でやっていませんので、よく調べてから来院してください。やっていても美容診療などで保険がきかない可能性があります。
電話:03-3601-7051
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歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。