口臭外来での口臭治療の仕方と自分で行う口臭の予防と対策

口臭外来での口臭治療の仕方と自分で行う口臭の予防と対策

皆さんは、口臭を治すための方法として、どんなことを思い浮かべるでしょうか? 自分で行う対策も必要ですが、歯科医院や総合病院で開設している「口臭外来」を利用するという選択肢もあるのです。口臭は、歯医者さんの力を借りて改善を目指すことも可能なのです。

口臭外来での口臭治療は、臭いの発生原因を追究して、それに応じた対策を施すことが求められます。ただ、その仕組みについては詳しく理解している方が少ないと思います。

この記事では、口臭外来での口臭治療のやり方と、自宅で自分で行える口臭対策も紹介していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。

この記事の目次

1.口臭外来で行う口臭治療

1-1 口臭外来とは何か?

口臭外来は、歯医者さんや総合病院に開設されています。また、口臭だけを専門に扱い、単独で診療を行っている病院もあります。

口臭外来

口臭外来で行う治療は保険が適用されない「自由診療」で、機器などを使った詳細な口臭の検査と診断を行ってくれる施設なのです。これから、その口臭外来の治療の中身を詳しく説明していきます。

1-2 口臭の原因を探って治療方針を決める

口臭外来では口臭を治すための対策として、まず臭いの原因を探ることから始めていきます。つまり、その原因を突き止めることで、口臭治療の方向性を見出せるわけです。臭いの発生原因によって対策も異なるため、原因がわかれば、あとは医師が考えた治療方針で治療を進めてもらいましょう。そうすることで、不快な口臭を改善できる明るい道のりが開けてくるはずです。

1-3 口臭外来での治療の流れ

口臭治療は「2ヶ月程」の期間で改善を目指します。では、口臭外来での治療の流れを以下で紹介していきます。

①予約

②診断(初診の場合)

口臭外来での治療の流れ③再診

1~2週間の一度の割合で通院し、口臭が解消されたかどうかの再診を行う

 

口臭治療の検査は「約1時間」掛かります。費用は検査項目の数によっても異なりますので、「5~10万円程」となっています。保険が適用されない自由診療で行います。

1-4 口臭治療の検査の内容

口臭測定には以下のような機器を使用

口臭測定器

口腔内のガスや吐いた息から口臭の有無を測定する。口臭には三大要素となる「硫化水素」「メチルメルカプタン」「ジメチルサルファイド」に分けられ、この3つを『揮発性硫黄化合物(きはつせいいおうかごうぶつ)』と呼ぶ。それぞれのガス濃度をこの機器で測定でき、針のないプラスチック製の注射器の先の部分を加えて「1分間」口を閉じて採取を行う。採取した息は、下記のイラストのように「口臭測定器」に注入する

オーラルクロマ

MSハリメーター

揮発性硫黄化合物(VSC)のガス濃度をリアルタイムで測定できる。それだけでなく、呼気臭(口から吐いた息)や鼻臭(鼻からの息)も、この機器で測定が可能

ブレストロン

揮発性硫黄化合物(VSC)を10億分の1g単位・45秒の速さで計測できる測定器。下記のイラストのように、プラスチックのチューブで息を採取していく

ブレストロン

BBチェッカー

口臭、呼気臭、鼻臭といった臭いの原因になるガスを測定でき、さらに人間の嗅覚に変換して感覚的なレベルで測定できるのが特徴

インキュベーター

唾液を人間の体温と同じ温度にし、その臭いを嗅いで自分の口臭を確認する機器

 

「舌診(ぜっしん)」で舌をチェック

舌の色や形、乾燥具合や舌苔(ぜったい)が付着していないかなどをチェックして、口臭との関係性を診断します。

「唾液検査」による唾液の状態をチェック

唾液は口内の「酸」を中和してくれる性質があるため、その力と分泌量を測定していきます。その際用いるのが、唾液リスクをテストする「CAT21バフ」、「サリバPFTキット」と呼ばれるものです。

また、活動しているときや安静にしているときの唾液の状態の検査や、唾液の濁りや色合いもチェックしていきます。

 

検査項目の中には、以下のようなものも含まれます

・レントゲン検査

「歯並び」や「噛み合わせ」の状態をレントゲンで調べていく。口腔内の状態も検査

・官能検査

医師が患者さんの呼気臭や口腔内の臭いを直接嗅いで測定していく方法。自分の臭いが他者からどのように思われているのか、感覚的に判断する

官能検査

※口腔内検査と尿検査に関しては「2章」で説明していきます

 

検査後は、口臭の原因が何であったかが解明されます。口臭の種類には以下のようなものがあります。

・病的口臭(口内の病気と身体の病気)

・食べ物や飲み物、喫煙によって起きる口臭

・生理的口臭

・心理的口臭

2.口臭の種類とそれぞれの治療法

2-1 病的口臭の治療法

口臭の原因には、呼吸器や消化器官の異常などの身体の病気が原因で発生するものと、虫歯や歯周病といった口内の異常が引き起こす「病的口臭」が存在します。

ただ、病的口臭の9割は口内環境の悪化によるものなので、歯医者さんで治療してもらうことで口臭を解消することができるのです。もし身体の病気が原因であった場合は、各医療機関を利用して治療を行っていきます。

「口腔内検査」で口内の病的口臭をチェック

口内の病的口臭を見つけるには、医師が口腔内検査を行い、原因が虫歯なのか歯周病なのか、をチェックしていきます。また、口腔粘膜病や舌病などの口腔疾患かどうかの診断も可能です。

以下、歯医者さんで治療する病気とその他の医療機関で治療する病気をまとめました。

◆歯医者さんで治療する病気

歯周病の場合

歯周病は、歯垢が蓄積することで知らないうちに進行していきます。歯垢は口内で蓄積すると口臭の原因になってしまいます。さらに歯垢は48時間が経過すると歯石に変化し、歯垢の付着しやすい溜まり場になるのです。

治療法

歯医者さんでは、「PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)」と呼ばれる手法で歯垢除去を行います。専用の研磨剤を用いてクリーニングすることで、自分では落としきれない歯垢もきれいに取り除くことが可能です。

また、歯石を取り除くには、「スケーリング」という方法を用います。スケーラーと呼ばれるフック状の器具でこびり付いた歯石を除去していくのです。歯医者さんによっては「マイクロスコープ(手術用顕微鏡)」を使用して、取りづらい歯石を見やすくして除去していきます。

その他、歯の根っこの奥深くに付着した歯石を取るための「フラップ手術」という外科治療の方法もあります。

虫歯の場合

虫歯も歯周病と同じく、歯垢が蓄積することで発生します。歯垢の中に存在する「ミュータンス菌」と呼ばれる虫歯菌は、食事の際の糖分を吸収して酸を発生させます。これによって歯が溶かされ、虫歯になってしまうのです。

治療法

虫歯の治療は、虫歯の部分を削ったあとに、プラスチックを流し込んだり、金属やセラミック製の詰め物や被せ物で対処します。ただ、その際に施した詰め物の内側に細菌が繁殖してしまって、口臭の原因を作り出すこともありますので、歯医者さんにしっかり診てもらい状態にあった処置をしてもらいましょう。

 

◆その他医療機関で治療する病気

・消化器、呼吸器疾患

・肝硬変

・糖尿病

・気管支疾患

 

「尿検査」で原因を解明

口臭治療の検査項目の中の「尿検査」で、口臭の原因になり得る身体の病気の有無を診断できます。

治療法

口臭の原因が身体の異常によるものであった場合、その病気を治さなければ口臭の改善は見込めません。例えば、胃の不快感や便秘気味であった場合、消化器官の異常で口臭が発生しているかもしれません。

また、肝硬変や肝がんといった、重篤な病気が原因の場合、その病気独特の臭いが発生する可能性があります。医師としっかり相談し、まずは病気を治すことを念頭に入れて改善を目指していきましょう。

2-2 喫煙による口臭の治療法

ニンニクやアルコールなど、食べ物や飲み物が原因で起きる口臭は、日頃の食生活の中で自らが気をつけるべきことです。ただ、喫煙の習慣がある方は、歯に付着したヤニを取るため、歯医者さんで「クリーニング」をしてもらって口内環境を改善するやり方があります。

2-3 「心理的口臭」の治療法

心理的口臭とは、口臭がないにも関わらず、あると思い込んでしまうことを指します。これは、大きなストレスによる影響や、精神的に不安定な状態が続いてしまうことで生じる「自臭症(じしゅうしょう)とも呼ばれている精神疾患です。

この症状を改善するには、歯医者さんによる「精神科」への通院を促すアドバイスをしてあげることです。そして、精神科へ通院し続けられる態勢を整えることで、治療への前進が期待できるのです。

3.口臭外来を訪ねる前にセルフチェック

口臭を専門に扱う口臭外来は、口臭が気になっている方にとって、自分の口臭の原因が何なのかを細かく検査してくれる施設です。それゆえ、保険適用がないため高額な治療費が掛かってしまいます。

口臭は気になるけど、治療費が…と、考えている方は、まず自分でセルチェックを試みてください。口臭の主な原因になる病的口臭は、自分自身で症状を確認してみると、原因が見えてくることがあります。以下のような症状がないか自分で確かめてみてください。

虫歯による口臭

□穴の空いた歯がある

□差し歯を入れてある

虫歯が進行して穴が空いていると、口臭が発生している可能性があります。穴が小さい場合でも、中で広がっていることが多いといいます。虫歯菌で歯が溶かされると発酵し、口臭が発生しますので、虫歯があるならそれが口臭の原因であると疑ってみましょう。

また、以前に「差し歯」を入れてもらった方は、その中で虫歯が進行して口臭も発生しているかもしれません。差し歯は神経の治療を施した場合が多いので、気づかずに虫歯が悪化している場合があるのです。

虫歯の可能性があるのなら、口臭外来を経由するのではなく、直接、歯医者さんで虫歯治療を行ってもらえば口臭が改善されるかもしれません。

 

歯周病による口臭

□歯茎の炎症・赤み

□歯磨き時の出血

□歯茎の退縮や隙間がうかがえる

□歯茎から膿が出ている

歯周病のセルフチェックは、歯茎の状態を確認してみることです。歯茎に炎症が起きていたり、赤みが増していくようだと感じたら、歯周病を疑ってみましょう。それが原因で口臭が発生しているかもしれません。

さらに歯茎から膿が排出されているような場合、歯周病は悪化していますので、膿による強烈な口臭を防ぐために、歯医者さんでの治療が必要なのです。

4.自分でできる口臭予防と改善策

口臭外来での治療の他に、自分でできる口臭の予防と改善策をこの章で紹介していきます。毎日の歯磨きに加え、デンタルフロスなどのアイテムを使った効果的な口臭対策です。ぜひ参考にしてみてください。

4-1 デンタルフロスで口臭の有無を確認

本当に口臭が発生しているのかを確認する方法として、「デンタルフロス」を使った方法があります。デンタルフロスは、歯と歯の隙間にフロスを挿入して、歯ブラシでは取りにくい歯垢を除去することができます。

歯垢は不快なガスを発生させる口臭の原因となるものです。つまり、使用後のフロスの臭いを嗅いで悪臭がしたら、それは口臭が発生している証しであると認識しましょう。デンタルフロスを上手に使えば、口臭対策の大きな武器となります。

4-2 歯垢の溜まりやすい場所に注意してケアする

歯垢の溜まりやすい場所を下記のイラストで黄色く示しています。この部分に注意しながら、毎日のブラッシングを始めとした口内ケアを行っていく必要があります。

歯垢が溜まる“磨き残し”の多い場所

磨き残しの多い場所

 

例えば、「歯と歯茎の境目」は、ブラッシングの際、歯ブラシの毛先を「45度」に当てて、細かい振動で優しく磨くことが、歯垢を上手に落とすコツです。

歯ブラシの角度

4-3 歯間ブラシやワンタフトブラシを活用

「1-1」でデンタルフロスが口臭対策に役立つ理由を説明しましたが、その他のデンタルグッズも口臭を食い止めるために欠かせない役割を果たしてくれます。そのグッズが、「歯間ブラシ」と「ワンタフトブラシ」です。

◆「歯間ブラシ」と「ワンタフトブラシ」の特徴

歯間ブラシは、歯間部の大きさによって使い分けることができ、歯肉が下がって歯間部が広がってしまった人に有用です。また、ブリッジを装着している場合の清掃にも役立ちます。ブリッジは、失った歯の両隣をつなげるために“橋渡し”を行っていく治療法です。つなげた部分は、デンタルフロスを通すことができないため、歯間ブラシを使うことで、磨き残しを予防できる働きがあるのです。これは、三角毛のブラシが特徴的なワンタフトブラシにも同様の働きが期待できます。

ワンタフトブラシについては、“ポイントブラシ”と呼ばれるだけあって、ピンポイントに磨き残しの多い部分を磨くのに最適で、機能性に優れたデンタルグッズです。下記のイラストのように「ペングリップ」で持ちながら、歯と歯茎の境目をなぞるように磨くと、歯垢を上手に取ることができます。

ワンタフトブラシの「ペングリップ」での持ち方

歯ブラシの持ち方

歯と歯茎の境目をなぞるように磨いて歯垢を落とす

歯の磨き方

4-4 「生理的口臭」の対策

口臭の種類の一つに「生理的口臭」があります。これはお口の中が乾いて、唾液の分泌量が減ることで発生します。人は緊張状態に達すると口の中が乾き、潤いを失います。この現象は誰でも起こり得る口臭であり、言い換えれば、自分自身で解消できる口臭でもあるわけです。

口内が乾いてしまった場合、水分補給や、ガムなどで唾液の分泌量を増やしてあげることで潤いを取り戻す作業を行っていきます。

また、生理的口臭により「舌苔(ぜったい)」という、舌に白い苔のようなものが付着してしまうことがあります。これを取り除くために、『舌ブラシ』を使った方法があります。舌苔が付着しているかどうかの検査は、「1章」で紹介した「舌診(ぜっしん)」というやり方で診断することもできます。

5.まとめ

あなたを悩ます不快な口臭は、口臭外来で治療してもらうことが可能です。この記事では、その治療の方法や流れを説明してきました。また、自分でできる口臭の予防と改善策も紹介しました。2つの共通点としていえることは、口臭を改善するには、その原因を解明して対策を講じる必要があるということです。

経歴

1975年 東京歯科大学 卒業
1975年~1977年 新宿ビル歯科 勤務
1978年 早川歯科医院 開業
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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