口臭に悩む方は多いですが、どのような対策をしていますか?朝、出かける前に洗口液で口をゆすいだり、人に会う前にガムを噛んだりする方もいるでしょう。しかし、これらの対策を怠るとすぐに口臭が気になる場合、歯周病を疑ってみるべきです。
この記事では、歯周病が原因で発生するさまざまな口臭や、歯周病の治療法について詳しく解説します。
この記事の目次
歯周病ってどんな病気?
歯周病とは
口内には、善玉菌から悪玉菌まで、さまざまな細菌がバランスを保って存在しています。歯周病を引き起こすのは、歯周病菌と呼ばれる悪玉菌で、その種類は約300種類もあります。これらの菌は歯の表面に付着し、歯垢や歯石を形成します。歯垢や歯石は、まさに歯周病菌の楽園です。
歯周病菌が出す毒素は、歯肉に炎症を引き起こし、歯茎を後退させ、歯を支える骨を痩せさせます。歯周病はこのような症状を引き起こし、日本人が歯を失う最大の原因となっています。
歯周病の代表的な症状
歯茎の腫れや出血・痛み・口臭
歯垢や歯石がたまると、悪い細菌の温床となり、それと戦うために血液が集まります。これが歯茎を赤く腫れさせたり、時折出血させたりします。また、腫れが膿んでくると、口臭や痛みも発生します。
歯茎の後退・知覚過敏
歯周病菌に侵されると、腫れや出血を経て、歯茎が後退します。歯茎が下がると、知覚過敏の症状も現れます。
歯の動揺・歯並びの乱れ
歯周病菌の毒素は、歯を支える骨を後退させます。骨が痩せることで、歯がグラグラと揺れます。そのまま放置すると、弱くなった歯に他の歯が倒れ込むようになり、歯並びが乱れます。
歯が抜ける
これは症状というよりも、最悪の結末です。歯周病の毒素によって骨が痩せ続けると、最終的には歯が土台を失い、抜けてしまいます。
歯周病による口臭ってどんな臭い?
歯周病は「静かな病気」とも呼ばれ、かなり悪化するまでひどい自覚症状が出ないことが多いです。早期に対処するためには、口臭を歯周病の判断材料の一つとして活用しましょう。歯周病による口臭は、主に以下の3つです。
細菌が発生するガス臭
悪玉菌の中にはガスを発生するものもあります。特に空気を嫌う菌は、歯垢や歯石の中に潜み、硫化水素やメチルメルカプタンといった悪臭のガスを発生させます。口臭には内臓疾患が原因のものもありますが、口の中で発生する口臭については、歯周病菌や悪玉菌が発生するガスが主な原因の一つです。
出血の生臭さ
歯周病で見逃してはいけない症状の一つに出血があります。これは、悪い細菌と戦うために血液が集まってくるためです。出血はやがて収まることが多いため見過ごされがちですが、歯周病のサインと考えられます。このため、歯周病では口の中が血生臭くなることがあります。
歯茎にたまった膿の臭い
血液が集まり、細菌と戦うと、細菌や白血球の残骸がたまり、膿ができます。歯茎が腫れぼったくなり、膿の臭いも感じられるようになります。これは、傷が膿んだときのような、腐った独特の臭いです。
歯周病の治療法とは?
口臭の原因が歯周病菌だと考えられる場合、軽視せずに歯周病を根本的に治療することが重要です。歯周病の治療の基本は、磨き残した歯垢を除去し、固着した歯石を取り除くことです。歯周病菌の温床となる環境を放置せず、歯医者さんで定期的にチェックを受け、適切な治療を続けましょう。
歯のクリーニング
歯垢の段階であれば、歯医者さんでの定期的なクリーニングで改善できます。セルフケアでは取りきれない歯の汚れを、歯医者さんでしっかりと落としてもらうことで、歯周病の進行を大きく防ぐことができます。
スケーリング
スケーリングとは、固着した歯石を先端の鋭利な器具(スケーラー)で削り取る治療です。歯石は見えている部分だけでなく、歯と歯茎の隙間である歯周ポケットの内部にも付きやすいです。スケーラーが届く範囲の歯周ポケットであれば、スケーリングで歯石を取り除くことができます。
フラップ手術
歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなり、その奥に付いた歯石が取りにくくなります。スケーリングで届かないほど深くなった場合、歯肉を切開して歯石を取り除くフラップ手術が必要です。
歯周病の新しい治療法
歯周病は、歯周病菌が原因の感染症です。一般的な治療法として歯垢や歯石の除去がありますが、原因菌を薬剤で除去する方法もあります。
パーフェクトペリオ
パーフェクトペリオは、次亜塩素酸電解水を成分とした殺菌剤です。歯周病だけでなく、虫歯の予防にも効果があると注目されています。一般的なマウスウォッシュやうがい薬とは異なり、歯垢に存在する虫歯菌や歯周病菌を破壊し、徹底的に殺菌することができます。
内服薬
内服薬を使って歯周病菌を取り除く方法もあります。歯周内科などで行われる治療で、原因菌の種類を検査した後、それに適した内服薬を処方します。その上で、一般的な歯周病治療と同様に、歯垢や歯石を物理的に除去します。
3DS除菌療法
3DSとはデンタル・ドラッグ・デリバリーシステムの略で、マウスピースを使って歯周病の薬を歯や歯茎にじっくり浸透させる方法です。もちろん、これと並行して歯石の除去も行います。
まとめ
気になる口臭をすぐに改善したいと思う方も多いでしょう。しかし、その原因が歯周病であれば、まずはしっかりと治療を受けることが重要です。歯周病は「静かな病気」と呼ばれ、静かに進行しますが、症状のサインが全くないわけではありません。口臭もそのサインの一つですので、気になる場合は歯周病を疑い、できるだけ早く歯医者さんに相談して根本的な治療に取り組みましょう。
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

執筆者:
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