インプラントの医療費控除で知っておきたい基礎知識

インプラントの医療費控除で知っておきたい基礎知識

インプラントと聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?歯科医院で勧められ、入れ歯にするよりも自分の歯に近い見た目や噛み心地を得られそうだけど、費用が高くてあきらめたという方もいるかもしれません。
医療費控除という制度を利用することで、インプラント治療にかかった費用が所得控除の対象となり、所得税などの負担が軽減される場合があります。また、すでにインプラント治療を受けた方も、過去の年分について還付申告できる場合があります。どのような仕組みになっているのか紹介していきます。

※本記事に掲載している自由診療の料金は、2026年時点でEPARK歯科に掲載されている歯科医院の料金情報を参考にしたものです。料金は地域や施術内容、使用する機材、歯科医院の方針等によって異なります。実際の料金については受診予定の歯科医院へご確認ください。

この記事の目次

1.インプラントに医療費控除は適用される?

1-1 医療費控除とはどんな制度?

医療費控除とは、どのような制度でしょうか。医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得控除を受けられる制度です。自分や、生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費が対象になります。
医療費控除額は、原則として次の式で計算します。
医療費控除額 実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円
ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。医療費控除額の上限は200万円です。
離れて暮らしている家族であっても、生計を一にしている場合は、支払った医療費を合計して申告できることがあります。

1-2 インプラントも適用対象になる場合がある

医療費控除は医療すべてが対象になるわけではありません。歯科に関して言えば、美容を目的とした治療は対象外です。

一方で、歯科医師による診療や治療の対価で、病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額は、医療費控除の対象となる医療費に該当するとされています。そのため、歯を失った部分を補うためのインプラント治療費は、医療費控除の対象となる場合があります。
インプラント治療にかかった費用には、検査、診断料、手術費、調整料、インプラント材料、かぶせ物などが含まれる場合があります。また、治療のための通院費も医療費控除の対象となることがあります。公共交通機関を利用した交通費は対象となりますが、自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代は対象外です。タクシー代は、症状などからみて公共交通機関での通院が難しい場合などに対象となることがあります。

歯科の治療においては、むし歯の治療費や薬代なども対象となる場合がありますし、他科の治療費や薬代なども合計して申告できます。

1-3 医療費控除の申請の仕方

医療費控除は確定申告の時に申告します。また、申告していない過去の年分については、一定期間さかのぼって還付申告できる場合があります。すでにインプラント治療を受けたにもかかわらず、この制度を利用していない方は、対象となるか確認してみると良いでしょう。

申告するには、医療費控除の明細書を作成し、確定申告書に添付します。領収書は提出不要ですが、税務署から提示または提出を求められる場合があるため、一定期間保管しておく必要があります。
交通費を申告したい方は、通院した日、利用した交通機関、金額を記録しておきましょう。給与所得者の場合、源泉徴収票は確定申告書への添付や提示は不要ですが、申告書を作成する際には必要です。

1-4 還付金の目安

では、インプラントの治療費を医療費控除で申告した場合、どれぐらいの金額が還付されるのでしょうか。医療費控除額の計算式は次の通りです。

医療費控除額の計算式

実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円

※総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。

※控除額の上限は200万円です。

生命保険や医療保険などから保険金を受け取った時は、その金額を医療費から差し引く必要があります。控除額が0円以下となる場合は、医療費控除額は生じません。

還付金の目安となる計算式

医療費控除額×所得税率=還付される所得税の目安

ただし、実際の還付額は課税所得、他の控除、復興特別所得税、住民税などによって変わります。所得税率は「所得金額」そのものではなく、各種所得控除を差し引いた後の課税される所得金額に応じて決まります。

※最新の税制は国税庁等で確認してください

<所得税率>

195万円以下:5%
195万~330万円以下:10%
330万~695万円以下:20%
695万~900万円以下:23%
900万を~1800万円以下:33%
1800万円~4000万円以下:40%
4000万円~:45%

所得税率は、課税される所得金額が多い人ほど高くなりますので、家族の中で所得の高い人がまとめて申告すると有利になる場合があります。ただし、生計を一にしていることや実際に支払った人などの条件が関係するため、必要に応じて税務署や税理士に確認しましょう。

1-5 インプラントを分割で払った時の控除は?

インプラント治療は、高額となることがあります。そのため、分割で支払われることがあると思います。クレジットカードで支払うことができる歯科医院もあります。また、デンタルローンという歯科治療専門のローンもありますので、これらを利用してインプラント費用を支払う場合もあるかもしれません。
歯科ローンを利用した場合、信販会社が立替払いをした金額は、その歯科ローン契約が成立した年の医療費控除の対象となります。歯科医師の領収書が手元にない場合は、歯科ローンの契約書や信販会社の領収書など、支出を証明する書類を保存しておきましょう。
なお、歯科ローンにかかる金利や手数料相当分は、医療費控除の対象にはなりません。

※詳細は国税庁等へ確認

2.インプラント治療の費用

2-1 インプラント治療は原則として保険が適用されない

インプラント治療は、検査、診察、手術、材料費、インプラント後の調整費などが自由診療となることが一般的です。失った歯を補う方法には、インプラント以外に入れ歯やブリッジといった保険診療で対応できる治療方法もあります。
ただし、インプラント治療でも、腫瘍や外傷などによる広い範囲の顎骨欠損など、一定の条件を満たす場合には、保険診療の対象となることがあります。通常のむし歯や歯周病などで歯を失った場合のインプラント治療は、原則として自由診療と考えておきましょう。

2-2 インプラント治療費の目安

実際、インプラントの治療費はどれくらいかかるものなのでしょうか。自由診療なので、歯科医院ごとに費用を設定することができます。大体の目安は1本あたり「35万~50万円」とされることがあります。

※2026年時点のEPARK歯科掲載情報を参考に編集部集計

インプラント治療を受けるには、全身の健康状態や口の中の状態、顎の骨の量や質などを確認する検査が必要です。骨造成などの追加処置が必要な場合は、費用が増えることもあります。
安ければ良いというものではなく、治療内容、治療後のメンテナンス、リスク、費用の内訳などを確認したうえで、インプラント治療を受ける歯科医院を選ぶことをおすすめします。

2-3 インプラントのメリット

インプラントは、歯のなくなってしまった所を補う治療法です。インプラント以外には、「入れ歯」や「ブリッジ」という治療法があります。この入れ歯やブリッジと比較した際の特徴を以下で紹介していきます。

固定されるため、自分の歯に近い感覚で噛める場合がある

インプラントは顎の骨の中に人工の歯根を埋め込みます。骨と結合して安定すれば、入れ歯と比べて動きにくく、自分の歯に近い感覚で噛める場合があります。ただし、噛み心地や噛む力の感じ方には個人差があります。

見た目に配慮しやすい

インプラントは、入れ歯のようにバネを歯にかけることがありません。また、ブリッジのように隣の歯を大きく削らずに治療できる場合があります。かぶせる歯の色や形を調整することで、自然な見た目を目指すことができます。

味覚への影響が少ない場合がある

入れ歯では、装置の形や大きさによって違和感が出たり、食事の味や温度を感じにくくなったりする場合があります。インプラントは、入れ歯のように広く粘膜を覆う装置ではないため、味覚への影響が少ないと感じる人もいます。ただし、感じ方には個人差があります。

適切な管理により長期間使用できる場合がある

インプラントは、治療後のメンテナンスやセルフケアなどの適切な管理により長期間使用できる場合があります。ただし、インプラント周囲炎、噛み合わせの問題、全身疾患、喫煙習慣などによって状態が悪くなることもあります。
インプラントを長持ちさせるためには、治療後も定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが大切です。

3.まとめ

インプラント治療は、医療費控除の対象となる場合があります。ただし、医療費控除は治療費の一部がそのまま戻る制度ではなく、所得控除によって所得税などの負担が軽減される制度です。
高額な治療だからと迷っている方は、医療費控除の対象となるか、どの程度の負担軽減が見込めるかを確認したうえで、インプラントを治療法の一つとして検討してみましょう。
また、すでにインプラント治療を受けた方で、医療費控除を利用していない方も、過去の年分について還付申告できる場合があります。領収書や医療費の明細、ローン契約書などを確認し、必要に応じて税務署や税理士に相談しましょう。

【参考サイト】
・国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
・国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm
・国税庁「No.2030 還付申告」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
・国税庁「所得税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

伊丹太郎 先生監修
プロフィール&経歴

目指したきっかけ:医療には関心あったが、やはり一番は両親の教育が大きかったのではないかと思う。
やりがい:大学のときは他の職種とは違う特殊性に惹かれていたのですが、実際歯科医になってからはお礼を言われる部分です。

松本歯科大学卒業後、同病院勤務。
琉球大学医学部付属病院歯科口腔外科にて
顎顔面領域悪性腫瘍治療に従事。
その後都内複数歯科医院勤務後、
麻布シティデンタルクリニックを開院。
現在に至る。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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