「授乳後は歯磨きをした方が良いのかな…?」
赤ちゃんがいるお母さんは、心配になりますよね。夜の歯磨きをしたあと、寝かしつけるために授乳した場合は、虫歯のリスクなども気になるところではないでしょうか?
この記事では、夜、寝る前に授乳したあとの歯磨きの必要性や、赤ちゃんの虫歯リスクをできる限り抑えるためのポイントを紹介します。今日から実践できる内容ですので、ぜひ、赤ちゃんの虫歯予防に役立ててください。
1.母乳が直接の虫歯の原因にはならない
母乳は虫歯の直接の原因にはなりません。そればかりか、母乳には下記のように赤ちゃんにとって大切な要素がいくつも含まれているのです。
- ・赤ちゃんの成長に大切な栄養素(※)が豊富
・母乳は赤ちゃんの免疫機能を高める
・赤ちゃんとのスキンシップになる
・赤ちゃんの味覚を育てる
※母乳にはタンパク質、ビタミン、ミネラルといった栄養素が含まれています。また、牛乳よりも、赤ちゃんの消化や吸収を助ける働きがあります。
このことからも、虫歯になるかもしれないからと、母乳を与えるのをためらわなくて良いでしょう。夜、歯を磨いたあとでも、赤ちゃんがおっぱいを欲しがった場合は与えてあげましょう。
ただし、寝ている間は「唾液の分泌量」が減少します。唾液には、口の中の汚れを洗い流したり、虫歯菌の活動を抑えたりする役割があります。
大人より睡眠時間が長い赤ちゃんは、唾液の分泌量が少ない時間も長くなるため、唾液の働きを十分に得られない可能性があります。
次の章で説明している虫歯の原因と併せて、親御さんが虫歯リスクを把握しておくことが大切です。
2.歯垢をきちんと除去すれば虫歯予防になる
赤ちゃんが虫歯になってしまう原因は歯についた歯垢です。
乳歯に歯垢が付着した状態ですと、母乳に含まれた糖質と結びつき虫歯になりやすいという側面があります。
夜、寝る前にきちんと歯磨きをして歯垢を落としてあげれば、そのあとで母乳を与えたとしても、虫歯に対して過度な心配をする必要はありません。
なお、母乳は上の前歯に特に付着しやすいと言われています。歯が生えてきたら、上の前歯を入念に磨いてあげると良いでしょう。
3.虫歯になってしまう経路
生後1歳以前に虫歯になってしまうのは、哺乳瓶で甘いものを飲むことが原因として挙げられます。
実際、過去に「寝るときに哺乳瓶に乳酸菌飲料やスポーツドリンクを入れて与えた」ことで、重度の虫歯が発生したという問題も起こっています(※)。
もしくは、両親が虫歯菌(ミュータンス菌)を多く保有している場合、口移しなどで赤ちゃんが虫歯菌に感染してしまう可能性があります。
両親の虫歯治療や予防も、赤ちゃんが虫歯にならないようにするための対策になります。
※【参考】厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット[情報提供]「卒乳(断乳)時期とむし歯の関係」
4.「1歳半の歯科健診」のあとは定期的に歯医者さんへ
赤ちゃんへの歯磨きが上手にできているか、お母さん自身が不安になることがどうしてもあると思います。こうした不安を取り除くために、プロの歯医者さんが赤ちゃんの歯を直接診てくれるのが歯科健診です。
基本、1歳半のときに市などで歯科健診がおこなわれます。
生まれたばかりの赤ちゃんに虫歯はありませんが、成長していくうちに虫歯リスクは高まっていきます。プロの視点で虫歯予防についてのアドバイスを受けることで、抱えていた不安を解消できるはずです。
また、歯医者さんを定期的に受診することで、さらに虫歯リスクを抑えられる確率が高まります。
特に「フッ素(フッ化物)塗布」は、乳歯が生えてきた直後から受けることができますので、赤ちゃんの虫歯予防としてたいへん有用です。
毎日のケアと併せて、歯科健診や歯医者さんの定期健診を受けることで、赤ちゃんの虫歯リスクを減らしていきましょう。
赤ちゃんのフッ素塗布について詳しくは、「赤ちゃん虫歯予防の決定版!フッ素塗布」をご覧ください。
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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