【教授に聞く】差し歯や被せ物が変色!ホワイトニングはできるのか

【教授に聞く】差し歯や被せ物が変色!ホワイトニングはできるのか

せっかく治療した差し歯や被せ物、インプラントも手入れを怠っていると着色汚れがついてしまいます。また、単に着色汚れといってしまっても、表面についているだけなのか、内部まで浸透してしまっているのかで大きく違ってきます。

では、人工の歯についてしまった着色汚れを落とすにはどうしたらいいのでしょうか、ホワイトニングで白くすることはできるのでしょうか。愛知学院大学・冨士谷盛興教授に解説していただきます。

この記事の目次

何にでもつく着色汚れ!表面着色と内部変色の違い

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

差し歯や被せ物、インプラントにも着色汚れはつくのでしょうか?

冨士谷盛興教授
冨士谷盛興教授

紅茶やウーロン茶、コーヒー、カレー、赤ワインなどによる着色汚れはどんなものにもつきますよ。実は、歯の表面は薄いタンパク質の膜で被われているんです。その膜に着色汚れが吸着するんですね。

歯は毎回きれいに磨けていればその着色汚れは落ちてしまいますが、磨き方が悪かったり、飲食物で表面がざらざらしたりしてくると、着色汚れが歯の表面に蓄積されて取れにくくなってしまいます。

もちろん、差し歯や被せ物、インプラントといった人工物にも着色汚れは付着します。填め物や被せ物に多く用いられるレジンという強化プラスチック材料は、天然の歯よりも着色汚れがつきやすいですね。

人工の歯に使われる素材ですとセラミックスは、ほかの材料と比べて着色汚れはつきづらいといえます。ただし、着色汚れが起きないということではありません。

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

磨いただけではきれいにならないのはなぜなのでしょうか?

冨士谷盛興教授
冨士谷盛興教授

天然の歯に関してもですが、表面についた着色と、内部にまで浸透してしまった変色では意味が違います。外部についているだけの着色汚れでしたら、歯科医院で専門的なクリーニングを受ければきれいになります。

ですが、着色汚れをずっと残し、歯の表面にこびりついてしまいますと、内部にまで色素分子が入ってしまい、歯の内部のタンパク質と結びついて変色を起こしてしまいます。内部から変色してしまっている場合は、磨いてもきれいな色に戻ることはありません

例えば、カップに紅茶や赤ワインを入れたままにしていたり、シャツにカレーを落としたりしたら、洗ってもなかなか取りづらいですよね。どこか色素が残っているような感じになってしまう。歯でも同じようなことが起こってしまうんです。

先ほども話しましたが、差し歯や被せ物、インプラントも変色してしまう恐れはあります。セラミックスは表面がつるつるである限り、中国四千年の陶器ではないですが変色はしにくいですね。

人工歯はホワイトニング不可!着色汚れを防止するには

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

汚れてしまった人工の歯を、ホワイトニングなどを行って、きれいな状態に戻すことはできますか?

冨士谷盛興教授
冨士谷盛興教授

表面だけの着色汚れでこびりついていない限り、汚れを浮かせる界面活性剤や、研磨剤入りの歯磨き粉を使用して上手に磨いていけばきれいにすることができます。

でも、こびりつくまで放置した着色汚れは、ブラッシングだけでは取れません。歯科医院での専門的クリーニングで除去することが望ましいです。自分で適当な器具を使って除去すると、表面を傷つけてしまって着色汚れがもっとつきやすくなってしまう危険性がありますから、注意してくださいね。

ところが残念なことに、人工の歯を過酸化物によって漂白、いわゆるホワイトニングをすることはできません

セラミックスであれば、内部にまで汚れが浸透することはほとんどないので、表面を再度研磨してきれいな状態に戻せます。金属の場合も、表面を再研磨して輝きを取り戻すことができます。

しかし、プラスチック素材で表面だけの汚れなら再研磨できれいにすることができますが、内部にまで汚れが浸透してしまうと、きれいにするのは難しいですね。そういう時は、表面を一層削って詰め直すか、全部やり直すかしか方法はありませんね。

定期的に専門的クリーニングを受けていれば、そのような状態に陥ることは滅多にありません。

歯の教科書 編集部
歯の教科書 編集部

着色汚れを起こさないために注意すべき点を教えてください。

冨士谷盛興教授
冨士谷盛興教授

食生活と歯ブラシが大きく関係してきますので、食べたり、飲んだりしたら、まずはお口をすぐにゆすぐことを心がけてください。飲食終了後、その美味しい余韻はあまり楽しまないことが大事ですね(笑)。

すぐゆすぐのは良いこともありますよ。食事をするとお口の中は酸性状態になります。虫歯の始まりですね。すぐゆすげば、酸性状態をできるだけ早く中性近くに戻すことができます。また、食べ物カスや細菌も洗い流すことができます。虫歯や歯周病の予防にもなりますよ。

また、歯医者さんで歯垢や歯石の除去など、専門的なケアを定期的に受けていただくことも重要です。

それから、紅茶やウーロン茶などを飲んで、そのまま寝てしまうのは危険です。ホワイトニングに取り組んでいたら作用が働かない場合もありますし、後戻りの原因にもなります。歯磨き後は、水を飲むようにしましょう。

歯の教科書 編集部まとめ

人工の歯につく汚れ

●紅茶やウーロン茶、コーヒー、カレー、赤ワインなどによる着色汚れはどんなものにもつきます。

●天然の歯でも人工の歯でも、表面についているだけの着色汚れと、内部まで浸透してしまった変色では大きく違います。

人工の歯についた汚れを落とすには

●表面だけの着色汚れであれば、丁寧な歯磨きでもきれいにすることができます。

●こびりついた着色汚れは、歯科医院で専門的なクリーニングで落とすしかありません。

●人工の歯をホワイトニングすることはできません。

●内部からの変色を起こしづらいセラミックスや金属素材であれば、表面を再度研磨してきれいにできます。また、内部が変色してしまったプラスチック素材を、再研磨によりきれいにすることはできないため、白くしたい場合は表面を一層削って詰め直すか、全部やり直すかになってしまいます。

着色汚れを防止するには

●食べたり、飲んだりしたら、すぐにゆすぐということが大切です。

●歯磨き後には、着色する可能性がある紅茶やウーロン茶などを飲むのは控えましょう。

愛知学院大学 歯学部 特殊診療科
歯学部附属病院 審美歯科診療部
冨士谷盛興教授監修
冨士谷盛興教授からのコメント

歯はもちろんですが、填め物や被せ物もいつまでもきれいに輝いていて欲しいですね。着色汚れがこびりつかないようにするには、毎回のブラッシングを丁寧にするしかありません。

でも、それは面倒だと思う方へのワンポイントアドバイス…。食べたり、飲んだりしたら、まずはすぐにゆすぐことを心がけましょう。飲食終了後、その余韻はあまり楽しまないことが大事です。虫歯や歯周病の予防にも繋がりますよ。

そして、定期的にかかりつけの歯科医院に通って、お口の中のチェックと専門的クリーニングを欠かさないことが一番です。

白く輝くきれいな歯、装着時と同じ輝きをもつ詰め物や被せ物。専門的ケアと自身のケアについて主治医とよく話し合い、お互いに納得した方法を選択できる“二人三脚の歯科医療”が望ましい環境ですね。

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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