鶴見大学・歯学部・口腔微生物学講座・大島朋子教授にインタビューを行い、口臭と口内細菌の関係性について伺いました。
女性の方が口臭リスクが高いといううわさの深層や、口臭の原因となる細菌は何なのかなど、お口のトラブルについて解説していただきます。
また、口臭を抑えるために自宅でできるケアも教えていただきます。
※前回の記事「口内細菌を増やさない歯磨きのタイミング!朝起きたらうがいをするべき?」
女性は口臭リスクが高い?うわさの真相を解明
Q1.女性は口臭リスクが高いと聞いたことがあります。それはなぜなのでしょうか?
歯周病が口臭の主な原因になるのですが、歯周病原菌の中には、女性ホルモンで増えていくものがいるんです。
そのため女性の方が歯周病になるリスクが高く、口臭のトラブルを抱えかねないということになります。
Q2.女性が歯周病、口臭のトラブルを抱えやすい時期などあるのでしょうか?
女性ホルモンが多くなるのは、第二次性徴期や妊娠しているときです。そのころは、歯周病原菌の増加に気をつけなければいけないと思います。
Q3.女性が口臭を気にして歯医者さんを訪れるケースは増えているのでしょうか?
女性の方が口臭を気にする傾向にあると思うので、来院する方は多いと思います。ですが、ビジネスマンや家族から指摘を受けて来院する男性の方も少なくありません。
鶴見大学歯学部附属病院の口臭外来を受診する人数に関していうと、ご専門の中川洋一先生に伺ったところ、「以前は女性の割合がとくに多かったが、最近は男女差が小さくなってきている」とのことです。
3つの口臭成分!口臭が病気にも関係?
Q4.口臭の原因は何なのでしょうか?
口臭成分は主に「硫化水素」「メチルメルカプタン」「ジメチルサルファイド」ですね。この3つは揮発性硫化水素(きはつせいりゅうかすいそ)といわれているグループで、揮発することで臭いにつながります。
そして、これらの成分がどこからやって来るのかというと、歯周病原菌の代謝産物としてつくられています。歯周病原菌は、我々が食事で取っているタンパク質を栄養素であるアミノ酸に変えており、それが臭いの原因になっているんですよ。
口腔の中にある分は微量ですから生体を脅かすということはありませんが、目で確認できるくらい量があると“猛毒”になる成分です。
Q5.口臭が病気につながる可能性はありますか?
口内にある揮発性硫化物は微量なので生体を脅かすことはないと言いましたが、細胞レベルでは影響を受けているんです。
あからさまな病的状態になるほどではないんですが、少しずつダメージを与えていきますので炎症状態が続いてしまうために、歯周病という炎症性の病気の進行につながりますよね。
口臭の細菌は舌にいる!?自宅でケアをするには
Q6.口臭を抑えるためにはどうしたらいいですか?
歯だけではなく、舌もきれいにした方がいいと思います。口臭を測定すると、だいたいの原因は舌から出てくることが多いんですよ。舌の表面にも菌が多くいて、その菌が主に口臭の原因になっているという意見もありますね。
歯周病はないのに口臭があるという方は、舌にいる細菌の代謝物が原因かもしれません。
ただし、舌のお掃除方法を間違えてしまうと、傷つけて炎症を引き起こしてしまうので、歯医者さんで正しいケアの方法を教えてもらってください。
Q7.口臭の原因となる舌にいる菌は、どういった種類の菌なのでしょうか?
舌にいる細菌の一部も、やはり歯周病原菌なんです。舌は“つるん”としているように見えますが、ミクロの目で見ると“凸凹(でこぼこ)”しているんですね。
その凸凹の一つひとつのくぼみには、酸素が流れ込まないような環境があるので、空気を嫌う嫌気性菌、歯周病原菌などがいます。
鶴見大学 歯学部 口腔微生物学講座 学内教授
【略歴】
1993年~2000年:鶴見大学歯学部 助手
2001年~2008年:鶴見大学歯学部 講師
2009年~2014年:鶴見大学歯学部 准教授
執筆者:
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