若い女性の間で発症するケースが多いとされているのが「顎関節症」です。その理由の一つとして挙げられるのがストレスで、20代~30代の女性が社会の中心になって働くことが多くなってきた分、こうした傾向が進んでいるのではないでしょうか。
顎関節症のはっきりとした原因については明らかになっていません。ただ、誰でも発症する可能性があり、さまざまな症状から「自分は顎関節症ではないか」と感じることがあると思います。
この記事では、私たちの日常生活とも関係している顎関節症の症状について解説していきます。自分と重なる部分があるかどうか、ぜひ確認してみてください。
この記事の目次
1.顎関節症3つの症状
原因がはっきりしない顎関節症ですが、症状を見逃してしまうと悪化の一途をたどることになりかねません。この章では、注意すべき顎関節症の3つの症状について解説していきます。
1-1 口を開けると「カクッ」と音がする
口を大きく開けて「カクッ」と音が鳴る場合、この音を「クリック音」といいます。これは、顎関節の中の空気が漏れたことを意味しています。「音が鳴る=顎関節症」であるとはいえませんし、そうでない人でも起きる症状です。
しかし、「ミシミシ」「ジャリジャリ」といった骨と骨が擦れたときのような「クレピタス音」は、顎関節が摩擦していることを意味しています。痛みを感じないことが多いのですが、顎関節症の症状として注意する必要性があります。
1-2 顎を動かすことで痛みを感じる
口を開けて顎を動かすことで痛みを伴うことがあります。これは、顎周辺の筋肉である「咀嚼筋」や「靱帯」が炎症を起こし、損傷していることで感じる痛みです。何もしなくても痛いという場合は、症状が悪化していることが考えられます。
1-3 口が開けづらい
口を開けることで痛みを感じるので、無意識に開けづらくなってしまうケースがあります。また、正常ならば、口の中に指が縦に3本分入る程度は口を開けることができるはずです。もしこれが、指2本以下しか入らないような場合、顎関節の異常が考えられます。
2.顎関節症の症状を分類別に解説
「口を開けると音が鳴る」「顎を動かすと痛い」「口が開けづらい」というのが顎関節症の症状ですが、これらの症状が実際に顎周辺のどの部位が原因なのかを細かく分類したかたち(Ⅰ~Ⅳ型)が存在します。これらは、一般社団法人「日本顎関節学会」がまとめた顎関節症の病態分類によるものです。
2-1 顎関節症Ⅰ型~咀嚼筋
顎関節症のⅠ型は、咀嚼筋が原因です。何らかの原因で筋肉が緊張状態になってしまうことで、血液の流れが悪くなってしまい、痛みを感じるようになります。
咀嚼筋の痛みを「咀嚼筋痛障害」といいます。咀嚼筋は、主に咬筋(こうきん)、側頭筋(そくとうきん)、外側翼突筋(がいよくとつきん)、内側翼突筋(ないよくとつきん)の4つが対象として挙げられ、咀嚼筋痛は、口を開閉する運動や食事の際の噛む動きによって生じる「運動時痛(うんどうじつう)のことをいいます。
また、首の痛みや肩こりといった関連痛を引き起こすこともあります。
2-2 顎関節症Ⅱ型~顎関節
顎関節そのものが痛むタイプがⅡ型に分類されます。顎関節の関節包や靱帯などの線維組織に強い力が加わることで痛みを伴います。この痛みは、捻挫のときのような「にぶい痛み」に例えられています。
2-3 顎関節症Ⅲ型~関節円板
1章の1-1で紹介した「口を開けると音が鳴る」という症状が、Ⅲ型を指しています。これは「関節円板(かんせつえんばん)の障害のことです。関節円板とは、下顎頭と下顎窩の間にあり、双方の圧力を和らげるためのクッションの役割を果たしています。この関節円板がズレてしまうことで、口を開けたときに音が鳴るという症状を引き起こします。この状態が進行すると「クローズド・ロック」と呼ばれる、口を大きく開けることが困難な状態に陥ります。
2-4 顎関節症Ⅳ型~変形性顎関節症
顎関節に強い負荷がかかり、繰り返されることで関節を作る骨の表面が吸収されてしまいます。また、新しい骨が作られてしまうこともあり、このⅣ型の症状を「変形性顎関節症」と呼びます。
3.顎関節症を招く5つの原因
顎関節症を招く原因として考えられるのが、主に生活習慣です。その他、外的要因による障害などもありますが、以下のように原因として考えられるものを挙げてみました。
・噛み合わせ
・咀嚼
・ストレスによる歯ぎしりや食いしばり
・頬杖をつく・うつ伏せで寝る癖
・TCH
自身の日常生活を見直してみて、注意すべき点がないかどうか確認してみましょう。
3-1 噛み合わせ
悪い噛み合わせのままでいることで、顎への負担は増していきます。顎関節症の原因でとくに多いとされているのが、この噛み合わせの悪さです。噛み合わせが悪くなるのは、歯並びの乱れによるもので、これが顎のズレにつながっていきます
3-2 咀嚼
食事をする際、左右どちらかだけで食べる癖がある人や柔らかいものだけを好んで食べる人など、偏った咀嚼の仕方をしていると、顎のバランスを悪くしてしまうことがあります。
3-3 ストレス
現代社会では、ストレスを受けずに生きていくことは困難です。ただ、ストレスが原因で、歯ぎしりや食いしばりをするというケースがあります。これが日常的になると、歯がすり減って噛み合わせに支障がでたり、顎に悪影響をもたらしたりすることになります。ストレスを抱え込まずに、自分なりの発散方法を見つけることが何より大切です。
3-4 頬杖をつく・うつ伏せで寝る癖
頬杖をつく癖のある人は、顎に頭全体の重さがのしかかるため、顎への負担は大きいといえます。うつ伏せで寝る癖のある人も同じで、知らないうちに顎に悪影響を及ぼしていることになります。普段、無意識に行っている姿勢を見直さないと、顎関節症を引き起こす可能性が高くなるのです。
3-5 TCH
ここまで紹介してきた4つの原因以外に、TCHが原因の可能性も挙げておきます。TCHとは、「Tooth Contacting Habit(歯列接触癖)」の略称で、無意識に上下の歯が少しの力で接触してしまう状態をいいます。
上下の歯が接触している時間は「1日20分未満」といわれています。接触している時間が長くなってしまうことで、咀嚼筋と呼ばれる下顎骨の運動を司る部分に負担がかかり、顎関節症を招く可能性が高くなります。
自分自身でTCHを防ぐ方法としては、「リマインダー」というやり方があります。TCHは何気なくテレビを見ているときなどに起こりやすいので、普段目に付きやすい場所に紙やシールなどで「歯を離すことを記した内容のもの」を貼っておくことで、意識を植え付けて予防につなげる方法です。
4.顎関節症の一般的な治療
「自分は顎関節症なのではないか」と気になったら、歯科口腔外科や大学病院で受診するのがおすすめです。まずはカウンセリングを受け、問診やレントゲン撮影を受けましょう。
綿密な診断を受けた後は、噛み合わせが悪くて矯正が必要な場合は矯正装置を使った治療法があります。マッサージによる改善や、睡眠中の歯ぎしりによって歯のすり減りを防ぐための「ナイトガード」を作製してもらうこともできます。
5.まとめ~顎関節症の症状セルフチェック
ここまで顎関節症の症状を中心に紹介してきましたが、最後に顎や身体に現れる症状についておさらいしておきます。自分に当てはまる項目がないかセルフチェックしてみましょう。
□口を開けると音が鳴る
□顎を動かすと痛みを感じる
□口が開けづらく感じる
□ストレスを溜めやすい
□歯ぎしりや食いしばる癖がある
□頬杖をつく・うつ伏せで寝る癖がある
□首の痛みや肩こりがする
今は口腔の周りの筋肉をマッサージして治します。それでダメな場合「マウスガード」を使用しますが、作成に当たり咬合診断を的確にしないと、余計に悪くなってしまうこともあります。最終処置で、大掛かりな補綴治療になることもあります。
電話:03-3601-7051
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